13 / 266
13 踊り子達との出会い
しおりを挟む
ミリィに半ば連れ込まれるように連れて行かれたのは、同じような大きさの建物が建ち並ぶ通りだった。
「ただいま!お母さん」
「ミリィ!あなた今までどこに行ってたの?」
玄関からミリィが声をかけると、パタパタと奥から足音がして、黒髪をぴっちりと後ろで一つにまとめたぽっちゃりとした中年の女性が姿を現した。
(今、彼女お母さんって言った?でも似てないよね。ミリィはお父さん似?)
「ミリィ、その顔、どうしたの」
灰色の瞳を見開き、ミリィのお母さんは彼女の腫れた右頬をみて驚いた。
「ボロロのやつらにやられてたのよ。あいつら絶対マリアに頼まれたのよ」
憎々しげにミリィが呟いた。
何か、色々事情があるみたい。
「あの、ミリィ…それで、この方は?」
ミリィが腕を絡ませている私を見て、お母さんが尋ねた。
「この人はローリィ、ボロロのやつらに絡まれてるところを助けてくれたの。この人が助けてくれなかったら、こんな程度じゃ済まなかったわ。ローリィ、彼女は私のお母さん、と言っても本当のお母さんじゃなくて、私達踊り子みんなのお母さん、私達ここで何人かで住んでるの」
ミリィは互いを紹介した。
「こんにちは、ローリィ・ハインツと言います。今日ナダルに着いたばかりで、道に迷ったところを偶然出くわしまして、こちらに招待していただきました。」
「まあ、それはそれは、私からもお礼を申し上げすわ。どうぞどうぞ、何のお構いも出来ませんが、ゆっくりしていってください」
「いえ…」
「ミリィが帰ってきたの?」
「ミリィ!今までどうしてたの?」
そんなにゆっくりは出来ないと言おうとしたが、続く賑やかな声にかき消されてしまった。
「やだ、ミリィその顔」
次々現れた三人の女性たちは、ミリィの顔と横に立つ私を見てその場に立ち尽くした。
フワフワの茶色の髪に褐色の瞳の一番最年少の子はフラー
まっすぐ伸びたオレンジ色の髪に黒曜石の瞳の、一番背が高い子はカーラ
最年長のモニクは、ブルーの髪にアイスブルーの瞳
今、ミリィたちは四人でこの家に一緒に住んでいる。
三人はミリィの顔を見て青ざめ、私を見て赤らんだ。
そして、私は四人プラスお母さんのティータの強引な誘いを受け、その夜、一緒に晩餐をいただくことになった。
ウィリアムさんとこに今日はもう行けないなぁ
「ところで、さっきの人達に嫌がらせされる理由、何かあるの?確かマリアとか言う人がどうとか…」
食べ始めてから、私はみんなに尋ねた。
「ああ…」
五人は互いに目配せしあい、苦い顔をした。
「嫌がらせというか、ナダルにはうちみたいに複数の踊り子たちを面倒みて、依頼を受けて貴族や商人、大きな祭りなんかに派遣してる'舞屋,と言うものがいくつかあるんだけど、まあ、ピンからキリまで質や規模は色々で、うちは抱えてる踊り子の人数は中堅規模だけど、踊り子の技能にかけては定評があるのよね」
ミリィが言うには、各'舞屋,でそれぞれ舞う踊りの型や、目的もあって勝手に他所の舞を舞ったりするのも禁じられているそうだ。
「へぇ…」
地方では人口もそれほど多くないため、舞屋はほとんど一軒しかなく、そういう決めごとはない
「もちろん、複数の'舞屋,が同じ舞の型を持つこともあるから、専売特許とはいかないところもあるのだけれどね」
一子相伝、門外不出ではないらしい。
「それで、こちらの舞はどのような?」
私が訊ねると、ミリィが得意気に答えた。
「うちは'戦勝の舞,と'英雄の舞,'鎮魂の舞,だよ」
「マリアのとこは'英雄の舞,と、'鎮魂の舞,あとは'長寿の舞,なんだけど」
「'英雄,と'鎮魂,がかぶってますね」
だから面倒なんだと、お母さんと5名の踊り子たちは深々とため息を吐いた。
「それで仕事の依頼がうちの方が多いもんだから、何かと嫌がらせや妨害をしてくるのよ」
「舞では敵わないからね。マリアさんってうちのお母さんと同じ舞屋出身なんだけど、腕はうちのお母さんの方がずっといいから、昔から妬んでるのよ」
そうなんだ、すごいねと私が言うと、お母さんは照れて下を向いた。
女っていくつになっても乙女だな。
「ただいま!お母さん」
「ミリィ!あなた今までどこに行ってたの?」
玄関からミリィが声をかけると、パタパタと奥から足音がして、黒髪をぴっちりと後ろで一つにまとめたぽっちゃりとした中年の女性が姿を現した。
(今、彼女お母さんって言った?でも似てないよね。ミリィはお父さん似?)
「ミリィ、その顔、どうしたの」
灰色の瞳を見開き、ミリィのお母さんは彼女の腫れた右頬をみて驚いた。
「ボロロのやつらにやられてたのよ。あいつら絶対マリアに頼まれたのよ」
憎々しげにミリィが呟いた。
何か、色々事情があるみたい。
「あの、ミリィ…それで、この方は?」
ミリィが腕を絡ませている私を見て、お母さんが尋ねた。
「この人はローリィ、ボロロのやつらに絡まれてるところを助けてくれたの。この人が助けてくれなかったら、こんな程度じゃ済まなかったわ。ローリィ、彼女は私のお母さん、と言っても本当のお母さんじゃなくて、私達踊り子みんなのお母さん、私達ここで何人かで住んでるの」
ミリィは互いを紹介した。
「こんにちは、ローリィ・ハインツと言います。今日ナダルに着いたばかりで、道に迷ったところを偶然出くわしまして、こちらに招待していただきました。」
「まあ、それはそれは、私からもお礼を申し上げすわ。どうぞどうぞ、何のお構いも出来ませんが、ゆっくりしていってください」
「いえ…」
「ミリィが帰ってきたの?」
「ミリィ!今までどうしてたの?」
そんなにゆっくりは出来ないと言おうとしたが、続く賑やかな声にかき消されてしまった。
「やだ、ミリィその顔」
次々現れた三人の女性たちは、ミリィの顔と横に立つ私を見てその場に立ち尽くした。
フワフワの茶色の髪に褐色の瞳の一番最年少の子はフラー
まっすぐ伸びたオレンジ色の髪に黒曜石の瞳の、一番背が高い子はカーラ
最年長のモニクは、ブルーの髪にアイスブルーの瞳
今、ミリィたちは四人でこの家に一緒に住んでいる。
三人はミリィの顔を見て青ざめ、私を見て赤らんだ。
そして、私は四人プラスお母さんのティータの強引な誘いを受け、その夜、一緒に晩餐をいただくことになった。
ウィリアムさんとこに今日はもう行けないなぁ
「ところで、さっきの人達に嫌がらせされる理由、何かあるの?確かマリアとか言う人がどうとか…」
食べ始めてから、私はみんなに尋ねた。
「ああ…」
五人は互いに目配せしあい、苦い顔をした。
「嫌がらせというか、ナダルにはうちみたいに複数の踊り子たちを面倒みて、依頼を受けて貴族や商人、大きな祭りなんかに派遣してる'舞屋,と言うものがいくつかあるんだけど、まあ、ピンからキリまで質や規模は色々で、うちは抱えてる踊り子の人数は中堅規模だけど、踊り子の技能にかけては定評があるのよね」
ミリィが言うには、各'舞屋,でそれぞれ舞う踊りの型や、目的もあって勝手に他所の舞を舞ったりするのも禁じられているそうだ。
「へぇ…」
地方では人口もそれほど多くないため、舞屋はほとんど一軒しかなく、そういう決めごとはない
「もちろん、複数の'舞屋,が同じ舞の型を持つこともあるから、専売特許とはいかないところもあるのだけれどね」
一子相伝、門外不出ではないらしい。
「それで、こちらの舞はどのような?」
私が訊ねると、ミリィが得意気に答えた。
「うちは'戦勝の舞,と'英雄の舞,'鎮魂の舞,だよ」
「マリアのとこは'英雄の舞,と、'鎮魂の舞,あとは'長寿の舞,なんだけど」
「'英雄,と'鎮魂,がかぶってますね」
だから面倒なんだと、お母さんと5名の踊り子たちは深々とため息を吐いた。
「それで仕事の依頼がうちの方が多いもんだから、何かと嫌がらせや妨害をしてくるのよ」
「舞では敵わないからね。マリアさんってうちのお母さんと同じ舞屋出身なんだけど、腕はうちのお母さんの方がずっといいから、昔から妬んでるのよ」
そうなんだ、すごいねと私が言うと、お母さんは照れて下を向いた。
女っていくつになっても乙女だな。
4
お気に入りに追加
1,930
あなたにおすすめの小説

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?


ヤンデレお兄様から、逃げられません!
夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。
エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。
それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?
ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる