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1 前世の記憶
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私が前世の記憶を思いだしたのは、5歳の時。
その日、私は殺されかけた。
領地に現れた脱走兵崩れの野党に襲われ、胸に矢を射られた。
薄れゆく意識の中で、フラッシュバックのように、色々な場面が現れた。
「あれ、前にも私、胸を撃たれて死んだ?」
よみがえったのは、日本で、来宮 巴として生きた30年間の記憶。
小さい頃から父に鍛えられ、父と同じ警察官を目指し、就いた仕事は要人警護。
自慢ではないが、優秀だった。
でも、いくら身体を鍛えても、流石に飛んでくる銃弾は弾き返せなかった。◯◯プト星からきた宇宙人ではないのだから。
「「ローリィ!」」
「お嬢様!」
胸に矢傷をおって、生死の境をさ迷いながら、誰かに必死に呼び掛ける声が、両親と乳母のそれだっと、そして呼びかけられているのが、ローゼリアの愛称で、それがローゼリア・アイスヴァインという現在の自分だってことを知るのは、一週間後のことだった。
流れた血が大量だったことと、続く高熱により九死に一生を得て、ようやく意識を取り戻したのは、ケガを負ってから一週間後。
そこから、寝台から起き上がれるようになるまで、更に一週間かかった。
「あら、ローリィ、またご本を読んでいるの?まだまだ体調は万全ではないのだから、無理をしてはいけませんよ」
枕をいくつも背中に当てて、読者に没頭する私に声をかけたのは、クレア・アイスヴァイン伯爵夫人。私の母だ。
真っ直ぐに伸びた癖のないプラチナブロンドと、淡いグリーンの瞳、肌は透き通るように白く、儚げな印象の女性だ。実際のところ、本当に体が弱い。
私が意識を失っている時も、いつまでも容態が安定しない私につきっきりで張り付き、看病する側が倒れてどうするのだと、皆に叱られていた。そして、私が目覚めてホッとしたのか、それから丸二日寝込んでしまったみたらしい。
「お母様、もう寝てばかりで飽きてしまいました。ご本を読むくらいお許しください」
顔の前で両手を組み、瞳を潤ませてそう言うと、仕方ないわね。と母は不承不承許してくれた。
「やぁ、お嬢様方、今日もご機嫌いかがかな?」
二人でお茶をいただいている時に、朝の仕事を終えた父が入ってきた。
ロード・アイスヴァイン伯爵が父の名前。そう、私は伯爵家の一人娘として転生していた。
明るめの茶色の髪を肩の辺りで切り揃え、アメジスト色の瞳、少し浅黒く日焼けした肌が貴族らしくないと言えばそうだが、これは庭に出てよく剣の鍛練をしているからだろう。鍛練した父の体は筋肉隆々とはいかなくても、がっしりとしていて、とても頼りになり感じだ。
私は父とも母とも違うストロベリーブロンドの髪に父のアメジストの瞳の色を受け継いでいた。
前世が黒髪黒目の日本人だったから、色味溢れる現世の容姿がちょっと嬉しかったりする。
目は大きすぎず、小さすぎず、少しつり目。小さめの鼻に、ちょっと薄目の唇、欲を言えばもう少しぽってりもよかったかなと思うが、総じて、美貌の母親と凛々しい父親の要素を受け継ぎ、満足なできばえだと思う。
アイスヴァイン伯爵の領地は豊かな森と美しい湖が自慢ののんびりした田舎だから、獣なんかも多く、領民は自衛も兼ねて小さい頃から男も女もなく体を鍛えている。
「ねぇ、父さま、お願いがあります。」
父親と母親が揃って側にいる今のタイミングで、私は目が覚めてから考えていたことを、父に頼んで見ることにした。
先ほどの母に見せたぶりっ子ポーズを再現したことは言うまでもない。
「なんだい?」
娘からのお願いに、父は少々デレッとした親バカぶりで答えた。
その日、私は殺されかけた。
領地に現れた脱走兵崩れの野党に襲われ、胸に矢を射られた。
薄れゆく意識の中で、フラッシュバックのように、色々な場面が現れた。
「あれ、前にも私、胸を撃たれて死んだ?」
よみがえったのは、日本で、来宮 巴として生きた30年間の記憶。
小さい頃から父に鍛えられ、父と同じ警察官を目指し、就いた仕事は要人警護。
自慢ではないが、優秀だった。
でも、いくら身体を鍛えても、流石に飛んでくる銃弾は弾き返せなかった。◯◯プト星からきた宇宙人ではないのだから。
「「ローリィ!」」
「お嬢様!」
胸に矢傷をおって、生死の境をさ迷いながら、誰かに必死に呼び掛ける声が、両親と乳母のそれだっと、そして呼びかけられているのが、ローゼリアの愛称で、それがローゼリア・アイスヴァインという現在の自分だってことを知るのは、一週間後のことだった。
流れた血が大量だったことと、続く高熱により九死に一生を得て、ようやく意識を取り戻したのは、ケガを負ってから一週間後。
そこから、寝台から起き上がれるようになるまで、更に一週間かかった。
「あら、ローリィ、またご本を読んでいるの?まだまだ体調は万全ではないのだから、無理をしてはいけませんよ」
枕をいくつも背中に当てて、読者に没頭する私に声をかけたのは、クレア・アイスヴァイン伯爵夫人。私の母だ。
真っ直ぐに伸びた癖のないプラチナブロンドと、淡いグリーンの瞳、肌は透き通るように白く、儚げな印象の女性だ。実際のところ、本当に体が弱い。
私が意識を失っている時も、いつまでも容態が安定しない私につきっきりで張り付き、看病する側が倒れてどうするのだと、皆に叱られていた。そして、私が目覚めてホッとしたのか、それから丸二日寝込んでしまったみたらしい。
「お母様、もう寝てばかりで飽きてしまいました。ご本を読むくらいお許しください」
顔の前で両手を組み、瞳を潤ませてそう言うと、仕方ないわね。と母は不承不承許してくれた。
「やぁ、お嬢様方、今日もご機嫌いかがかな?」
二人でお茶をいただいている時に、朝の仕事を終えた父が入ってきた。
ロード・アイスヴァイン伯爵が父の名前。そう、私は伯爵家の一人娘として転生していた。
明るめの茶色の髪を肩の辺りで切り揃え、アメジスト色の瞳、少し浅黒く日焼けした肌が貴族らしくないと言えばそうだが、これは庭に出てよく剣の鍛練をしているからだろう。鍛練した父の体は筋肉隆々とはいかなくても、がっしりとしていて、とても頼りになり感じだ。
私は父とも母とも違うストロベリーブロンドの髪に父のアメジストの瞳の色を受け継いでいた。
前世が黒髪黒目の日本人だったから、色味溢れる現世の容姿がちょっと嬉しかったりする。
目は大きすぎず、小さすぎず、少しつり目。小さめの鼻に、ちょっと薄目の唇、欲を言えばもう少しぽってりもよかったかなと思うが、総じて、美貌の母親と凛々しい父親の要素を受け継ぎ、満足なできばえだと思う。
アイスヴァイン伯爵の領地は豊かな森と美しい湖が自慢ののんびりした田舎だから、獣なんかも多く、領民は自衛も兼ねて小さい頃から男も女もなく体を鍛えている。
「ねぇ、父さま、お願いがあります。」
父親と母親が揃って側にいる今のタイミングで、私は目が覚めてから考えていたことを、父に頼んで見ることにした。
先ほどの母に見せたぶりっ子ポーズを再現したことは言うまでもない。
「なんだい?」
娘からのお願いに、父は少々デレッとした親バカぶりで答えた。
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