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105 異世界の温泉
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ルキシヴェラはおもちゃ箱のような雰囲気の街だった。
屋根や壁は鮮やかな色に塗られ、石畳さえカラフルに色を塗られていた。
ルキシヴェラでも指折りの高台に建つ豪華な宿がその日の宿泊先だった。
異世界にも温泉らしきものがあると聞いて、アドルファスのご両親に会うという緊張も、幾分か和らいでいた。
アドルファスと共に案内されたのは、その宿でも一番豪華な部屋。俗に言うエグゼクティブスィートのようなもので、部屋は入ってすぐの居間を挟んで寝室が二つあった。
それぞれに浴室も付いていて、街の景色が一望できた。
寝室が二つなのは、私とアドルファスとそれぞれ別に使うため。
これも今彼がリングを付けていないからだ。
「部屋の鍵はかけると魔法防御がかかって、専用の鍵でなければ開きません。だから安心して休んでください」
部屋に入るとアドルファスが説明してくれた。
「大丈夫です。アドルファスのことは信用していますから」
再びリングを付けるまでは性交は禁止だけど、そこまでしなくてもと思った。
「いえ、これはそういうことだけではなく、きちんと正式に何もなかったことを証明するためにも必要はことです。後であらぬ疑いを持たれないためにも、今夜はどうか鍵を掛けてください」
鍵が実際に使われ、ちゃんと別に寝たことを証明しておかなければ、宿側の責任も問われるらしい。
飲酒運転をしたら店側にも責任が問われるようなものかな。
「わかりました。アドルファスの名誉のためにも、今夜はきちんと鍵を掛けて寝ます」
朝早く出発するということで、間の居間に食事を運んでもらい、早目に寝ることにした。
お風呂は思っていたより温泉っぽくはなく、普通のお湯に温泉の素を入れたような水質だったけど、それなりきツルツルになった。
これがここの泉質なら、ちょっと物足りない気がした。
今度はアドルファスと一緒に入れたら…なんていきなり一緒に入ろうなんて言ったらどう思われるだろう。
なんて思いながら眠りについた。
早くに寝たからか、ホロンが昇る前に目が覚めた。
身支度を済ませ、鍵を差して扉を開けると、既に居間にアドルファスが待機していた。
「おはようございます。寝坊したのでなければいいんですが」
「おはようございます。大丈夫です。そろそろ声をかけようと思っていたところです。ぐっすり眠れましたか?」
「はい、アドルファスは?」
「まあまあです。両親に会うことを考えると、緊張してしまって…いい年をして恥ずかしいです」
「そんなことありません。色々とあったのですから」
「朝食は食堂でいただけるそうです。行きましょうか」
「はい」
アドルファスと二人で食堂へ行くと、まだ少し早い時間なので、人もまばらだった。
朝食を終えると、いよいよボルサットへと出発した。
屋根や壁は鮮やかな色に塗られ、石畳さえカラフルに色を塗られていた。
ルキシヴェラでも指折りの高台に建つ豪華な宿がその日の宿泊先だった。
異世界にも温泉らしきものがあると聞いて、アドルファスのご両親に会うという緊張も、幾分か和らいでいた。
アドルファスと共に案内されたのは、その宿でも一番豪華な部屋。俗に言うエグゼクティブスィートのようなもので、部屋は入ってすぐの居間を挟んで寝室が二つあった。
それぞれに浴室も付いていて、街の景色が一望できた。
寝室が二つなのは、私とアドルファスとそれぞれ別に使うため。
これも今彼がリングを付けていないからだ。
「部屋の鍵はかけると魔法防御がかかって、専用の鍵でなければ開きません。だから安心して休んでください」
部屋に入るとアドルファスが説明してくれた。
「大丈夫です。アドルファスのことは信用していますから」
再びリングを付けるまでは性交は禁止だけど、そこまでしなくてもと思った。
「いえ、これはそういうことだけではなく、きちんと正式に何もなかったことを証明するためにも必要はことです。後であらぬ疑いを持たれないためにも、今夜はどうか鍵を掛けてください」
鍵が実際に使われ、ちゃんと別に寝たことを証明しておかなければ、宿側の責任も問われるらしい。
飲酒運転をしたら店側にも責任が問われるようなものかな。
「わかりました。アドルファスの名誉のためにも、今夜はきちんと鍵を掛けて寝ます」
朝早く出発するということで、間の居間に食事を運んでもらい、早目に寝ることにした。
お風呂は思っていたより温泉っぽくはなく、普通のお湯に温泉の素を入れたような水質だったけど、それなりきツルツルになった。
これがここの泉質なら、ちょっと物足りない気がした。
今度はアドルファスと一緒に入れたら…なんていきなり一緒に入ろうなんて言ったらどう思われるだろう。
なんて思いながら眠りについた。
早くに寝たからか、ホロンが昇る前に目が覚めた。
身支度を済ませ、鍵を差して扉を開けると、既に居間にアドルファスが待機していた。
「おはようございます。寝坊したのでなければいいんですが」
「おはようございます。大丈夫です。そろそろ声をかけようと思っていたところです。ぐっすり眠れましたか?」
「はい、アドルファスは?」
「まあまあです。両親に会うことを考えると、緊張してしまって…いい年をして恥ずかしいです」
「そんなことありません。色々とあったのですから」
「朝食は食堂でいただけるそうです。行きましょうか」
「はい」
アドルファスと二人で食堂へ行くと、まだ少し早い時間なので、人もまばらだった。
朝食を終えると、いよいよボルサットへと出発した。
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