101 / 118
101 人生一生勉強
しおりを挟む
この世界に存在する魔法全部の属性があると言われても、私には壮大すぎて想像もつかない。
「落ち着いてください。大丈夫、私がついています」
怖がる私の手を握り、アドルファスが優しくそう言ってくれた。それだけでパニックになりかけた私は気持ちが落ち着いた。
「ほお…ユイナ殿はレインズフォード卿のことをかなり信頼しているのだな」
その様子を見て国王がニマニマと微笑む。
「ええ、私達は将来を誓いあった仲ですから」
握った手にキスを落とし、ドヤ顔でそう言う。
「え、やっぱり? そうだと思っていました。おめでとうございます」
アドルファスを怖がっていた財前さんも、彼が私を救うため躊躇うことなく魔巣窟に飛び込んだことから、すっかり尊敬するようになっているらしい。
「今度領地へ行って両親にも紹介するつもりです」
本当は他にも目的があるのだけど。
避妊リングの件は、クムヒム神官に先に事情を説明し、「判定の玉」の件が済んだら、帰りに神殿に寄る予定になっている。
そしてそのまま、領地のアドルファスさんのご両親に会いに行くつもりでいる。
「両親に合わせたら、すぐに婚約を発表し、式の準備に取り掛かる予定です」
「前公爵にか…そうか」
国王はアドルファスの母親の事情を知っているそうで、意味ありげに頷く。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます。アドキンス殿」
祝の言葉を口にするアドキンス氏にお礼を言う。
「実を申せば、私もユイナ様に心惹かれておりました」
「え、あの…」
薄々気づいていたけど、この場で言われるとは思わなかった。
アドルファスが鋭い視線を向ける。
「過去の話です。私にはレインズフォード卿のように、あなたを追って魔巣窟に飛び込む勇気はございません。そこまではユイナ様を想いきれておりませんでした」
アドルファスの視線にたじろぎ、苦笑いする。
「カザール殿もそうでしょう」
不意にカザール氏が話を振られ、皆で彼を見る。
「アドキンス殿もお人が悪い。しかし、私は異性としてと言うより、あなたには聖女としての力があるのではと、ずっと疑っていて、そういう意味で気になっておりました」
「そうなのですか?」
彼の隣にいる財前さんが尋ねた。
「『判定の玉』が壊れる直前、何か反応があったように見えました。多分私が立っている位置からしか見えなかったのでしょう」
確証ないことだったため、何も言わずにいたのだと彼は言った。
「あの、ところで先生がそんなに色んな適性があるとわかって、これからどうなるのですか」
それは私も聞きたい。
もしかしたらアドルファスとの今後の関係にも影響があるかも知れないことだ。
「本来なら若いうちに属性の適性を判定し、それらを伸ばすために訓練をします。そしてある程度訓練した後、より適性の高い属性を伸ばします」
アドキンス氏が教えてくれる。
「訓練するうちに伸び悩む属性が出てくる。適性と得意なものは違うから。大体数年は掛かる」
「そうなんですか…でも、それを今から私もするということなのですか?」
人生一生勉強とは言え、今の年齢から魔法について学び、得意なものとそうでないものを振り分けていくというのは、数年は掛かるというなら、アドルファスとの結婚も先延ばしになるのだろうか。
「何もかも初めてのことなので、これから決めていくことになるでしょう。あなたの意思を尊重しつつ、決めていけばいい。でも私はあなたとの結婚を先延ばしにするつもりはありません。それだけは変わりません」
断固とした決意の言葉だった。
「ははは、レインズフォード、そなたがそこまで言い切るとは、余程彼女に惚れ込んでいるのだな。レインズフォードらしいと言えばらしいな。そなたの父親を思い出す。周囲が体の弱い令嬢は止めておけと言っても、彼は受け入れなかった」
この前聞いたアドルファスの両親の話を国王が持ち出した。
「しかし、前列がないこと故に、彼の言うことももっともだ。国としては不足している属性を伸ばしてほしいところではあるが、それも平均より劣るなら、そこに今から時間を費やすのも考えものだ」
「魔法学校の初等科で特別授業をしつつ、様子を見てはいかがでしょう」
「しょ、初等科?」
それは小学校のこと?
「初等科はあくまで魔法の基礎を学ぶところです。学ぶ者は十歳より前の者もいれば、十代半ば…聖女レイと同じくらいの者もいます」
「そ、そう…」
小学生に混じって学べと言うなら仕方がないが、もう少し年齢が上の生徒もいると聞いてほっとした。
社会人を経て学生に戻る人もいるから、それと同じだと思えば何とかなりそうだ。
今後のことは私達が領地から戻ってきてからと言うことで、その場は解散になった。
「落ち着いてください。大丈夫、私がついています」
怖がる私の手を握り、アドルファスが優しくそう言ってくれた。それだけでパニックになりかけた私は気持ちが落ち着いた。
「ほお…ユイナ殿はレインズフォード卿のことをかなり信頼しているのだな」
その様子を見て国王がニマニマと微笑む。
「ええ、私達は将来を誓いあった仲ですから」
握った手にキスを落とし、ドヤ顔でそう言う。
「え、やっぱり? そうだと思っていました。おめでとうございます」
アドルファスを怖がっていた財前さんも、彼が私を救うため躊躇うことなく魔巣窟に飛び込んだことから、すっかり尊敬するようになっているらしい。
「今度領地へ行って両親にも紹介するつもりです」
本当は他にも目的があるのだけど。
避妊リングの件は、クムヒム神官に先に事情を説明し、「判定の玉」の件が済んだら、帰りに神殿に寄る予定になっている。
そしてそのまま、領地のアドルファスさんのご両親に会いに行くつもりでいる。
「両親に合わせたら、すぐに婚約を発表し、式の準備に取り掛かる予定です」
「前公爵にか…そうか」
国王はアドルファスの母親の事情を知っているそうで、意味ありげに頷く。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます。アドキンス殿」
祝の言葉を口にするアドキンス氏にお礼を言う。
「実を申せば、私もユイナ様に心惹かれておりました」
「え、あの…」
薄々気づいていたけど、この場で言われるとは思わなかった。
アドルファスが鋭い視線を向ける。
「過去の話です。私にはレインズフォード卿のように、あなたを追って魔巣窟に飛び込む勇気はございません。そこまではユイナ様を想いきれておりませんでした」
アドルファスの視線にたじろぎ、苦笑いする。
「カザール殿もそうでしょう」
不意にカザール氏が話を振られ、皆で彼を見る。
「アドキンス殿もお人が悪い。しかし、私は異性としてと言うより、あなたには聖女としての力があるのではと、ずっと疑っていて、そういう意味で気になっておりました」
「そうなのですか?」
彼の隣にいる財前さんが尋ねた。
「『判定の玉』が壊れる直前、何か反応があったように見えました。多分私が立っている位置からしか見えなかったのでしょう」
確証ないことだったため、何も言わずにいたのだと彼は言った。
「あの、ところで先生がそんなに色んな適性があるとわかって、これからどうなるのですか」
それは私も聞きたい。
もしかしたらアドルファスとの今後の関係にも影響があるかも知れないことだ。
「本来なら若いうちに属性の適性を判定し、それらを伸ばすために訓練をします。そしてある程度訓練した後、より適性の高い属性を伸ばします」
アドキンス氏が教えてくれる。
「訓練するうちに伸び悩む属性が出てくる。適性と得意なものは違うから。大体数年は掛かる」
「そうなんですか…でも、それを今から私もするということなのですか?」
人生一生勉強とは言え、今の年齢から魔法について学び、得意なものとそうでないものを振り分けていくというのは、数年は掛かるというなら、アドルファスとの結婚も先延ばしになるのだろうか。
「何もかも初めてのことなので、これから決めていくことになるでしょう。あなたの意思を尊重しつつ、決めていけばいい。でも私はあなたとの結婚を先延ばしにするつもりはありません。それだけは変わりません」
断固とした決意の言葉だった。
「ははは、レインズフォード、そなたがそこまで言い切るとは、余程彼女に惚れ込んでいるのだな。レインズフォードらしいと言えばらしいな。そなたの父親を思い出す。周囲が体の弱い令嬢は止めておけと言っても、彼は受け入れなかった」
この前聞いたアドルファスの両親の話を国王が持ち出した。
「しかし、前列がないこと故に、彼の言うことももっともだ。国としては不足している属性を伸ばしてほしいところではあるが、それも平均より劣るなら、そこに今から時間を費やすのも考えものだ」
「魔法学校の初等科で特別授業をしつつ、様子を見てはいかがでしょう」
「しょ、初等科?」
それは小学校のこと?
「初等科はあくまで魔法の基礎を学ぶところです。学ぶ者は十歳より前の者もいれば、十代半ば…聖女レイと同じくらいの者もいます」
「そ、そう…」
小学生に混じって学べと言うなら仕方がないが、もう少し年齢が上の生徒もいると聞いてほっとした。
社会人を経て学生に戻る人もいるから、それと同じだと思えば何とかなりそうだ。
今後のことは私達が領地から戻ってきてからと言うことで、その場は解散になった。
4
お気に入りに追加
954
あなたにおすすめの小説
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
キャベツとよんでも
さかな〜。
恋愛
由緒だけはある貧乏男爵令嬢ハイデマリーと、執事として雇われたのにいつの間にか職務が増えていた青年ギュンターの日常。
今日も部屋を調える――お嬢様の疲れが癒えるように、寛いでもらえる様に――
一見ゆったりとした緩い日常の話です。設定もユルいです。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる