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69 この痕が消えないように
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空が白み始めるまで、アドルファスさんの攻勢は続いた。
四回まではわかっていたが、五回目以降は私の意識も朦朧として、ほぼ条件反射で彼を受け入れていた。
体中に情事の痕を残し、ぐったりと横たわる。
「もう…だめ…」
うつらうつらしながら、寝言のように呟く。抱き寄せるアドルファスさんの体はもともと体温が高いのか熱を帯び、引き締まった中にもきめ細かい肌の弾力が気持ちがいい。
「そんなかわいいことを言って煽らないでください」
お腹のあたりにまたも彼のペニスが鎌首を持ち上げるのを感じる。
「だめ、そんなに一度は…むり」
半ば恐怖を感じて、体を強張らせる。どこまで体力があるのか。
行為の最中の「だめ」「むり」「やだ」というのは実際はその逆の状況だが、こればかりは本心だった。
「わかっています。あなたにこれ以上無理はさせません。これくらいなら自分で何とかします」
『自分で』とはどうするのだろう。気にはなったが、そこは敢えてつっこまない。もしかしたら異世界あるあるではないが、私の想像したのとは違う方法がないとも言い切れない。何しろ魔道具で精液がどこかへ消え失せてしまうくらいだから。
「でも。意外によく頑張りましたね。もっと早くに降参してくると思いました」
何の耐久レースか。私がどこまで頑張れるか試していたようだ。それならもっと早くに言ってほしかったと思うのはおかしいだろうか。
「それでは、最後の仕上げといきましょう」
「え?」
そう言ったかと思うと、私の股間に手を滑り込ませてきた。
「ア、アドルファス…さ」
ふわりと暖かい空気が脚の間に流し込まれる。
途端にさっきまでヒリヒリしていたものが無くなった。
「……?」
何が起こったのかわからなくて、アドルファスさんに無言のまま、「何?」と目で訴える。
「私のせいで傷ついたあなたのここ、魔法で綺麗にさせていただきました」
次いで体中にシャワーミストのように水滴が降り注ぎ、一陣の風と共に水分が飛んで体が綺麗に洗われた。
キスマークだけが一夜の出来事の名残を残す。
私の体を綺麗にすると、今度は自分の体を綺麗にする。
「すごい…」
ドライヤー代わりの魔法も便利だが、一瞬にして体が綺麗になるこの魔法には思わず拍手を贈った。
「すごいですね、魔法」
どんなに科学が進歩してもこの一瞬の魔法の便利さには敵わない。
「ほんの子供騙しですが、そんなに喜んでもらえてありがとうございます」
彼にとっては簡単な魔法なのだろうが、私があまりにすごいと感嘆するので、逆に恐縮している。
「遠征など野外生活の際には便利ですが、湯船に浸かる醍醐味は捨てきれませんけどね」
確かにただ綺麗にするならシャワーでもいいが、日本人なので浴槽に体を沈めて温まることの素晴らしさはわかる。
「さて、そろそろ起きないといけませんね」
すっかり夜は明けて光が部屋に差し込んできた。
「仕事…アドルファスさん、寝なくて大丈夫なのですか?」
今更だが、ほぼ完徹の状態で仕事は大丈夫だろうか?
「私の仕事を気にしてくれているんですか。ひと晩徹夜したくらいでは何てことはありません。三日三晩不眠不休で闘ったこともあります」
「…でも…」
「それに、不思議とまったく疲労を感じていません。こんなことは初めてです」
単に彼が絶倫なのでは?とも思ったけど、口にはしなかった。
「ここまで続けたられたのは初めです。昨夜の発作のこともそうですが、やはり、あなたにも聖女と似た力があるのではないでしょうか?」
「まさか…」
そんなこと…と言おうとして、魔法については私より彼の方がずっと知識もあって馴染みがある。
その彼が言うのだから、もしかしたら私の想像もつかない何かがあるのかもしれない。
「でも、私は何の力も感じません。今も体は限界ですし。誰かさんのせいで…」
「夢中にさせるあなたが悪いんです。あなたの中はとても気持ちよくて…自分の体の一部があなたに包まれていると思うと、何とも言えない快感が襲ってくるんです。いつもこんな感じなんですか?」
恨みがましく言ってみれば、にこりと返された。
「いえ…私も…初めて…」
我を忘れてしがみ付くように繋がりあったのは初めてだった。それは認めざるを得ない。まだ彼のものが中にあった感触が残る部分を意識してモゾモゾする。
「私の肌であなたを傷つけたりしなかったですか?」
「平気です」
それより彼が付けた執着の証の方が目立った。
「まだまだ付け足らないですね。点と点ではなく線になるくらい付けないと」
飛び飛びに付いている痕を指でなぞる。私の見える範囲だけでもかなりの数なのに、更に付けようとしている。
「いえ、これで十分ですよ」
「そうですか? では、数は増やさず、この痕が消えないように最大限努力しましょう」
「え…」
魅惑の微笑み。顔半分に傷があっても、もともとが見目麗しい人間の微笑みの破壊力は凄まじかった。
四回まではわかっていたが、五回目以降は私の意識も朦朧として、ほぼ条件反射で彼を受け入れていた。
体中に情事の痕を残し、ぐったりと横たわる。
「もう…だめ…」
うつらうつらしながら、寝言のように呟く。抱き寄せるアドルファスさんの体はもともと体温が高いのか熱を帯び、引き締まった中にもきめ細かい肌の弾力が気持ちがいい。
「そんなかわいいことを言って煽らないでください」
お腹のあたりにまたも彼のペニスが鎌首を持ち上げるのを感じる。
「だめ、そんなに一度は…むり」
半ば恐怖を感じて、体を強張らせる。どこまで体力があるのか。
行為の最中の「だめ」「むり」「やだ」というのは実際はその逆の状況だが、こればかりは本心だった。
「わかっています。あなたにこれ以上無理はさせません。これくらいなら自分で何とかします」
『自分で』とはどうするのだろう。気にはなったが、そこは敢えてつっこまない。もしかしたら異世界あるあるではないが、私の想像したのとは違う方法がないとも言い切れない。何しろ魔道具で精液がどこかへ消え失せてしまうくらいだから。
「でも。意外によく頑張りましたね。もっと早くに降参してくると思いました」
何の耐久レースか。私がどこまで頑張れるか試していたようだ。それならもっと早くに言ってほしかったと思うのはおかしいだろうか。
「それでは、最後の仕上げといきましょう」
「え?」
そう言ったかと思うと、私の股間に手を滑り込ませてきた。
「ア、アドルファス…さ」
ふわりと暖かい空気が脚の間に流し込まれる。
途端にさっきまでヒリヒリしていたものが無くなった。
「……?」
何が起こったのかわからなくて、アドルファスさんに無言のまま、「何?」と目で訴える。
「私のせいで傷ついたあなたのここ、魔法で綺麗にさせていただきました」
次いで体中にシャワーミストのように水滴が降り注ぎ、一陣の風と共に水分が飛んで体が綺麗に洗われた。
キスマークだけが一夜の出来事の名残を残す。
私の体を綺麗にすると、今度は自分の体を綺麗にする。
「すごい…」
ドライヤー代わりの魔法も便利だが、一瞬にして体が綺麗になるこの魔法には思わず拍手を贈った。
「すごいですね、魔法」
どんなに科学が進歩してもこの一瞬の魔法の便利さには敵わない。
「ほんの子供騙しですが、そんなに喜んでもらえてありがとうございます」
彼にとっては簡単な魔法なのだろうが、私があまりにすごいと感嘆するので、逆に恐縮している。
「遠征など野外生活の際には便利ですが、湯船に浸かる醍醐味は捨てきれませんけどね」
確かにただ綺麗にするならシャワーでもいいが、日本人なので浴槽に体を沈めて温まることの素晴らしさはわかる。
「さて、そろそろ起きないといけませんね」
すっかり夜は明けて光が部屋に差し込んできた。
「仕事…アドルファスさん、寝なくて大丈夫なのですか?」
今更だが、ほぼ完徹の状態で仕事は大丈夫だろうか?
「私の仕事を気にしてくれているんですか。ひと晩徹夜したくらいでは何てことはありません。三日三晩不眠不休で闘ったこともあります」
「…でも…」
「それに、不思議とまったく疲労を感じていません。こんなことは初めてです」
単に彼が絶倫なのでは?とも思ったけど、口にはしなかった。
「ここまで続けたられたのは初めです。昨夜の発作のこともそうですが、やはり、あなたにも聖女と似た力があるのではないでしょうか?」
「まさか…」
そんなこと…と言おうとして、魔法については私より彼の方がずっと知識もあって馴染みがある。
その彼が言うのだから、もしかしたら私の想像もつかない何かがあるのかもしれない。
「でも、私は何の力も感じません。今も体は限界ですし。誰かさんのせいで…」
「夢中にさせるあなたが悪いんです。あなたの中はとても気持ちよくて…自分の体の一部があなたに包まれていると思うと、何とも言えない快感が襲ってくるんです。いつもこんな感じなんですか?」
恨みがましく言ってみれば、にこりと返された。
「いえ…私も…初めて…」
我を忘れてしがみ付くように繋がりあったのは初めてだった。それは認めざるを得ない。まだ彼のものが中にあった感触が残る部分を意識してモゾモゾする。
「私の肌であなたを傷つけたりしなかったですか?」
「平気です」
それより彼が付けた執着の証の方が目立った。
「まだまだ付け足らないですね。点と点ではなく線になるくらい付けないと」
飛び飛びに付いている痕を指でなぞる。私の見える範囲だけでもかなりの数なのに、更に付けようとしている。
「いえ、これで十分ですよ」
「そうですか? では、数は増やさず、この痕が消えないように最大限努力しましょう」
「え…」
魅惑の微笑み。顔半分に傷があっても、もともとが見目麗しい人間の微笑みの破壊力は凄まじかった。
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