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第七章 武闘大会
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ヴァレンタインは順調に勝ち進んだ。
それとともにベルテの手元の花が増えていく。
そしてバーラードも、予想通りというか、何とか勝ち進んでいる。
彼もまた、勝利を掴む度にベルテに花を持ってくる。
ベルテの手元には既に十二本の薔薇があった。
「ベルクトフもだが、バーラードもなかなか頑張るな。これはもしかすると、もしかしますね」
状況を見据えるデルペシュがムムムと唸る。
「もしか……だな」
「そうね」
「その可能性は大ですね」
国王とエンリエッタ、そしてディランも唸る。
「もしか……とは?」
ベルテにも彼らが何か言いたいのかわかっていたが、まさかと思いつつ聞いてみた。
「次勝てば、それぞれ準決勝です。そうなると、決勝はベルクトフとバーラードの対決となります」
「なかなか面白い組み合わせだな。まるで謀ったかのようだ」
「それについては小細工なしですよ」
「わかっておる。まあ、我々としてはベルテの婚約者であるベルクトフに勝ってほしいところだが、そこは勝負ゆえ、何とも言えんな」
「もう今回花を一番たくさん貰ったのはベルテ様に間違いありませんね。そしてその二人が運命の対決をする。なんて素敵な展開なのかしら」
エンリエッタが目をキラキラさせてベルテを見るが、ベルテは先程から会場中の女性の敵意にさらされている感じだった。
ちなみにエンリエッタのところにも花が一輪届けられている。
「あ、バーラードの試合の決着がついたようですよ」
対戦も後半になってくると、全員の力量もぐっとレベルが上がる。
なので、最初の頃より試合の時間も長引き、熾烈になってくる。
「ポーションは後一本か。まあ、妥当だな」
回復ポーションで傷や体力を回復しても構わないが、使える本数は三本までと決まっている。
どの段階で使うか。最後まで戦う力を温存しつつ、状況を見極める戦略的な意味合いもあるためだ。
そしてポーションをすべて使い切ってしまい、救護班が出動するほどの怪我を負うと、再起不能と判断され、そこで敗退が決まる。
「ベルテ様、どうぞ」
「あ、ありがとう……」
差し出された花を受け取り、ぎこちない笑顔でお礼を言う。
「次にベルクトフが勝てば、彼と対戦することになります。大々的に応援は出来ないでしょうが、密かに祈っていただけると嬉しいです」
そう言われてベルテは何て返せばいいのか、笑顔を強張らせる。
「あ、ベルクトフの試合も終わったようです。どうやら彼の圧勝ですね」
その時デルペシュが声を発し、皆でスクリーンを見上げる。
汗で髪が顔や首筋に張り付き、泥にまみれていたが、目立った怪我はなさそうだ。
「ベルクトフも、ポーションは残り一本半か」
残ったポーションの瓶の量は、ヴァレンタインの方が多かった。
すぐさま洗浄魔法がかけられ、顔も服もきれいになった。
「ベルテ様」
ヴァレンタインが花を手にベルテの元へやってきて、その場にまだ居座っているバーラードを睨んだ。
「貴殿も勝ったのか」
「そういう貴殿も。ですか」
「もちろん。私はこの大会に出ると決めた時から、優勝一択だ」
ドンっとヴァレンタインが胸を張る。
「どうぞ、ベルテ様。私の勝利をあなたに」
「ありがとう…ございます」
左手にバーラードからの花を持ち、右手でヴァレンタインの花を受け取る。
両者の間に火花が散っているように見えるのは、気のせいだろうか。
「ベルテ様、私とベルクトフのために、激励の言葉をいただけますか?」
「激励の言葉……ですか」
「はい」
「ベルテ様、無理に彼の頼みを聞く必要はありません」
「でも……」
「狭量だな。いくら貴殿がベルテ殿下の婚約者であろうと、ここは王女殿下としてのお立場もあるのだ」
バーラードの言うことも一理ある。
こういう場合、(一応)婚約者のヴァレンタインを応援すればいいが、王女としては努力している騎士に労いの言葉を掛けることも必要だ。
二人のせいで変に注目を集めているこの状況に、ベルテは居たたまれなくなり、ここは何でもいいからさっさと終わらせたかった。
「ヴァレンタイン様、バーラード様、頑張ってください」
ベルテがそう言うと、バーラードはしたり顔で「有難き幸せ、恐悦至極にございます」と、騎士の礼を取り、ヴァレンタインはどこか不機嫌に「有難き幸せにございます」とだけ言って、頭を下げた。
(あれ? 私、何か間違えたかな)
なぜ彼が不機嫌なのかベルテにはわからない。
「ベルテ様」
バーラードが先にその場を離れ行ってしまうと、ヴァレンタインは立ち止まってベルテを振り返った。
「始まる前に申し上げたこと、覚えていらっしゃいますか。私は本気ですから見ていてください」
まるで死地にでも赴くのかと言うような思い詰めた表情でそう言って、ヴァレンタインは決勝戦へと向かう。
「さて、それでは陛下、私は決勝戦の審判に参りますので、暫く席を外します」
「うむ」
デルペシュが場を頭を下げて場を辞した。
「姉上のモテ期到来ですか」
「も…? あなた何を言っているの?」
また意味のわからないことを口にするディランに、ベルテは問い返した。
「優勝候補二人から熱烈なアプローチ、今日一番花を贈られたのは姉上ですね。姉上はどちらを応援するのですか?」
「ど、どっちって……それは……」
二つのスクリーンに、それぞれの顔が映し出され、ベルテはゴクリと息を呑んだ。
それとともにベルテの手元の花が増えていく。
そしてバーラードも、予想通りというか、何とか勝ち進んでいる。
彼もまた、勝利を掴む度にベルテに花を持ってくる。
ベルテの手元には既に十二本の薔薇があった。
「ベルクトフもだが、バーラードもなかなか頑張るな。これはもしかすると、もしかしますね」
状況を見据えるデルペシュがムムムと唸る。
「もしか……だな」
「そうね」
「その可能性は大ですね」
国王とエンリエッタ、そしてディランも唸る。
「もしか……とは?」
ベルテにも彼らが何か言いたいのかわかっていたが、まさかと思いつつ聞いてみた。
「次勝てば、それぞれ準決勝です。そうなると、決勝はベルクトフとバーラードの対決となります」
「なかなか面白い組み合わせだな。まるで謀ったかのようだ」
「それについては小細工なしですよ」
「わかっておる。まあ、我々としてはベルテの婚約者であるベルクトフに勝ってほしいところだが、そこは勝負ゆえ、何とも言えんな」
「もう今回花を一番たくさん貰ったのはベルテ様に間違いありませんね。そしてその二人が運命の対決をする。なんて素敵な展開なのかしら」
エンリエッタが目をキラキラさせてベルテを見るが、ベルテは先程から会場中の女性の敵意にさらされている感じだった。
ちなみにエンリエッタのところにも花が一輪届けられている。
「あ、バーラードの試合の決着がついたようですよ」
対戦も後半になってくると、全員の力量もぐっとレベルが上がる。
なので、最初の頃より試合の時間も長引き、熾烈になってくる。
「ポーションは後一本か。まあ、妥当だな」
回復ポーションで傷や体力を回復しても構わないが、使える本数は三本までと決まっている。
どの段階で使うか。最後まで戦う力を温存しつつ、状況を見極める戦略的な意味合いもあるためだ。
そしてポーションをすべて使い切ってしまい、救護班が出動するほどの怪我を負うと、再起不能と判断され、そこで敗退が決まる。
「ベルテ様、どうぞ」
「あ、ありがとう……」
差し出された花を受け取り、ぎこちない笑顔でお礼を言う。
「次にベルクトフが勝てば、彼と対戦することになります。大々的に応援は出来ないでしょうが、密かに祈っていただけると嬉しいです」
そう言われてベルテは何て返せばいいのか、笑顔を強張らせる。
「あ、ベルクトフの試合も終わったようです。どうやら彼の圧勝ですね」
その時デルペシュが声を発し、皆でスクリーンを見上げる。
汗で髪が顔や首筋に張り付き、泥にまみれていたが、目立った怪我はなさそうだ。
「ベルクトフも、ポーションは残り一本半か」
残ったポーションの瓶の量は、ヴァレンタインの方が多かった。
すぐさま洗浄魔法がかけられ、顔も服もきれいになった。
「ベルテ様」
ヴァレンタインが花を手にベルテの元へやってきて、その場にまだ居座っているバーラードを睨んだ。
「貴殿も勝ったのか」
「そういう貴殿も。ですか」
「もちろん。私はこの大会に出ると決めた時から、優勝一択だ」
ドンっとヴァレンタインが胸を張る。
「どうぞ、ベルテ様。私の勝利をあなたに」
「ありがとう…ございます」
左手にバーラードからの花を持ち、右手でヴァレンタインの花を受け取る。
両者の間に火花が散っているように見えるのは、気のせいだろうか。
「ベルテ様、私とベルクトフのために、激励の言葉をいただけますか?」
「激励の言葉……ですか」
「はい」
「ベルテ様、無理に彼の頼みを聞く必要はありません」
「でも……」
「狭量だな。いくら貴殿がベルテ殿下の婚約者であろうと、ここは王女殿下としてのお立場もあるのだ」
バーラードの言うことも一理ある。
こういう場合、(一応)婚約者のヴァレンタインを応援すればいいが、王女としては努力している騎士に労いの言葉を掛けることも必要だ。
二人のせいで変に注目を集めているこの状況に、ベルテは居たたまれなくなり、ここは何でもいいからさっさと終わらせたかった。
「ヴァレンタイン様、バーラード様、頑張ってください」
ベルテがそう言うと、バーラードはしたり顔で「有難き幸せ、恐悦至極にございます」と、騎士の礼を取り、ヴァレンタインはどこか不機嫌に「有難き幸せにございます」とだけ言って、頭を下げた。
(あれ? 私、何か間違えたかな)
なぜ彼が不機嫌なのかベルテにはわからない。
「ベルテ様」
バーラードが先にその場を離れ行ってしまうと、ヴァレンタインは立ち止まってベルテを振り返った。
「始まる前に申し上げたこと、覚えていらっしゃいますか。私は本気ですから見ていてください」
まるで死地にでも赴くのかと言うような思い詰めた表情でそう言って、ヴァレンタインは決勝戦へと向かう。
「さて、それでは陛下、私は決勝戦の審判に参りますので、暫く席を外します」
「うむ」
デルペシュが場を頭を下げて場を辞した。
「姉上のモテ期到来ですか」
「も…? あなた何を言っているの?」
また意味のわからないことを口にするディランに、ベルテは問い返した。
「優勝候補二人から熱烈なアプローチ、今日一番花を贈られたのは姉上ですね。姉上はどちらを応援するのですか?」
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二つのスクリーンに、それぞれの顔が映し出され、ベルテはゴクリと息を呑んだ。
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