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第四章 白薔薇を愛でる会
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その後、二人は教室に戻って授業を受けた。
ロムル王国の王立学園では、貴族の子女は十五歳から十八歳までの間、ここで学ぶ。
一年目は一般教養の授業をAからFクラスに別れて受ける。クラスはもちろん入学前に受けたテストの成績順に振り分けられる。一番上がAクラスで、一番下がFクラスだ。ひとクラス二十人ほどで、シャンティエはA、ベルテはBだった。
二年目からは選択制となり、普通科、特進科、騎士科、魔法科に別れる。
普通科以外の科を選択する際は、適性検査を受ける。
特進科は更に高度な知識を習得しつつ、政治経済などを学ぶ。必要なのは一定以上の学力のため、難問ばかりの筆記試験を受ける。
騎士科はもちろん、武術の腕や体力を測る。
魔法科は魔力量と魔法の精度が求められる。
卒業後すぐに結婚するような令嬢達はほとんどが普通科に進み、令息達は特進科、騎士科、魔法科へ進む。
その人数の割合は時期によって違うそうだ。
将来は王太子妃、そして王妃となる予定だったシャンティエは特進科に進み、ベルテは魔法科へと進んだ。ちなみにアレッサンドロも特進科だった。
彼の成績では特進科に受かるはずもないと思っていたのに、なぜ彼が特進科に入れたのかベルテは不思議に思っていたのだが、受けた試験の結果も不正だったと判明し納得した。
ほかの科でも、最低限魔法の授業はあるのだが、魔法科はカリキュラムの二割が一般教養、五割が実技、後の三割が呪文や薬草、魔法陣などの教養科目という割合だ。
将来錬金術師を目指すベルテは、魔法科一択だった。
学舎の本館一階すべてが一年生のクラスで、二階に特進科と普通科の二、三年生のクラスがある。
魔法科と騎士科は広い裏庭がある北館にあって、北館と本館両方の棟を繋げるように食堂や図書館など共通の施設がある。
ヴァレンタイン・ベルクトフはかつて騎士科に進み、その成績はかなりのものだったらしい。
騎士科で一年に数回行われる総合武術大会において、在籍中は常に優勝候補だったとも聞く。
(美貌と才能、天は二物を与えないと言うけど、そんな人いるのね)
北館と本館を繋ぐ廊下には、学園創設以来行われている武術大会の歴代優勝者の写真と名前が掲示されている。
授業が終わり、食堂へ行くために廊下を歩きながら、ふと目にした彼の輝かしい栄光を、ベルテはぼんやりと眺めていた。
「ベルテ様、こちらです」
食事は並べられた品の中から自分の食べたい物を取ってトレイに乗せる。
ベルテはチキンサンドとスープ、そしてブドウやイチゴのフルーツだった。
空いた席を探していると、ベルテは声をかけられた。
「え、あ、えっとシャンティエ様?」
食堂の中央の辺りで、ベルテに満面の笑みでシャンティエが手を振っていた。
周りの生徒たちがそんなシャンティエとベルテ
を交互に見て注目している。
シャンティエは一人で食べていることが多い。ベルテも同様だったが、シャンティエの場合は、単に皆が彼女を特別視していて近寄り難かったからで、ベルテは無愛想で嫌煙されていたきらいがある。
「シャ、シャンティエ様、な、何か?」
何か用でもあるのかと思い、ベルテは近づいた。出来るだけ人目は集めたくないが、もう無駄だろう。それに、無視すればまた悪目立ちしてしまう。
「北館からはここまで距離がありますでしょ? ですから場所を確保しておきましたわ」
そう言って彼女は自分の前の席を指し示した。
確かに普通科と特進科の方が食堂に近く、魔法科の授業が終わってここに来ると、席がまったく空いていなくて暫く待つか、他へ行くことがある。
「あの、場所って…」
「お友達同士は、お昼を一緒に食べるものでしょう?」
「え?」
それを聞いて、ベルテは目を丸くしてシャンティエを見た。
「私…また何かおかしなことを申しましたか?」
そんなベルテを見て、シャンティエは眉根を寄せた。
「い、いえ…えっと確かに、友人同士でお昼を一緒に食べていますが…」
「あの、朝、お友達になっていただけるとおっしゃっていましたから、てっきりお昼を一緒に食べるものだと…」
友達になるとは言ったが、お昼を一緒に食べる約束はしていない。ほかの人たちも多分事前に約束をしてから食堂で落ち合ったりしているとは思う。じゃあお昼に食堂で、とやり取りしているのを何度かベルテは見たことがある。
が、シャンティエはその辺りのやり取りを目にすることがなかったのだろう。
「それで、お昼を一緒にと、待っていてくれたのですか?」
「ご、ご迷惑でしたか?」
ベルテの様子を窺い、その反応をじっと見守るシャンティエは、これまでの印象とはまったく違っていた。
王太子アレッサンドロの婚約者として、常に他の模範となるべく己を律してきたシャンティは、その仮面を取り払えば、普通の友達づきあいも知らない、気弱な令嬢だった。
「いえ、ありがとうございます」
机の上にトレイを置いて、ベルテはお礼を言った。
お礼を言われたシャンティエは、とても嬉しそうに微笑んだ。
「さあ、あまり時間がありませんから、早く食べましょう」
「え、ええ」
二人で椅子に座る。
何人かはその様子を物珍しげに眺めていた。
婚約解消した相手の妹と、元婚約者の令嬢が仲睦まじげに食事を取る光景は、他から見れば奇妙に映るかも知れない。
ロムル王国の王立学園では、貴族の子女は十五歳から十八歳までの間、ここで学ぶ。
一年目は一般教養の授業をAからFクラスに別れて受ける。クラスはもちろん入学前に受けたテストの成績順に振り分けられる。一番上がAクラスで、一番下がFクラスだ。ひとクラス二十人ほどで、シャンティエはA、ベルテはBだった。
二年目からは選択制となり、普通科、特進科、騎士科、魔法科に別れる。
普通科以外の科を選択する際は、適性検査を受ける。
特進科は更に高度な知識を習得しつつ、政治経済などを学ぶ。必要なのは一定以上の学力のため、難問ばかりの筆記試験を受ける。
騎士科はもちろん、武術の腕や体力を測る。
魔法科は魔力量と魔法の精度が求められる。
卒業後すぐに結婚するような令嬢達はほとんどが普通科に進み、令息達は特進科、騎士科、魔法科へ進む。
その人数の割合は時期によって違うそうだ。
将来は王太子妃、そして王妃となる予定だったシャンティエは特進科に進み、ベルテは魔法科へと進んだ。ちなみにアレッサンドロも特進科だった。
彼の成績では特進科に受かるはずもないと思っていたのに、なぜ彼が特進科に入れたのかベルテは不思議に思っていたのだが、受けた試験の結果も不正だったと判明し納得した。
ほかの科でも、最低限魔法の授業はあるのだが、魔法科はカリキュラムの二割が一般教養、五割が実技、後の三割が呪文や薬草、魔法陣などの教養科目という割合だ。
将来錬金術師を目指すベルテは、魔法科一択だった。
学舎の本館一階すべてが一年生のクラスで、二階に特進科と普通科の二、三年生のクラスがある。
魔法科と騎士科は広い裏庭がある北館にあって、北館と本館両方の棟を繋げるように食堂や図書館など共通の施設がある。
ヴァレンタイン・ベルクトフはかつて騎士科に進み、その成績はかなりのものだったらしい。
騎士科で一年に数回行われる総合武術大会において、在籍中は常に優勝候補だったとも聞く。
(美貌と才能、天は二物を与えないと言うけど、そんな人いるのね)
北館と本館を繋ぐ廊下には、学園創設以来行われている武術大会の歴代優勝者の写真と名前が掲示されている。
授業が終わり、食堂へ行くために廊下を歩きながら、ふと目にした彼の輝かしい栄光を、ベルテはぼんやりと眺めていた。
「ベルテ様、こちらです」
食事は並べられた品の中から自分の食べたい物を取ってトレイに乗せる。
ベルテはチキンサンドとスープ、そしてブドウやイチゴのフルーツだった。
空いた席を探していると、ベルテは声をかけられた。
「え、あ、えっとシャンティエ様?」
食堂の中央の辺りで、ベルテに満面の笑みでシャンティエが手を振っていた。
周りの生徒たちがそんなシャンティエとベルテ
を交互に見て注目している。
シャンティエは一人で食べていることが多い。ベルテも同様だったが、シャンティエの場合は、単に皆が彼女を特別視していて近寄り難かったからで、ベルテは無愛想で嫌煙されていたきらいがある。
「シャ、シャンティエ様、な、何か?」
何か用でもあるのかと思い、ベルテは近づいた。出来るだけ人目は集めたくないが、もう無駄だろう。それに、無視すればまた悪目立ちしてしまう。
「北館からはここまで距離がありますでしょ? ですから場所を確保しておきましたわ」
そう言って彼女は自分の前の席を指し示した。
確かに普通科と特進科の方が食堂に近く、魔法科の授業が終わってここに来ると、席がまったく空いていなくて暫く待つか、他へ行くことがある。
「あの、場所って…」
「お友達同士は、お昼を一緒に食べるものでしょう?」
「え?」
それを聞いて、ベルテは目を丸くしてシャンティエを見た。
「私…また何かおかしなことを申しましたか?」
そんなベルテを見て、シャンティエは眉根を寄せた。
「い、いえ…えっと確かに、友人同士でお昼を一緒に食べていますが…」
「あの、朝、お友達になっていただけるとおっしゃっていましたから、てっきりお昼を一緒に食べるものだと…」
友達になるとは言ったが、お昼を一緒に食べる約束はしていない。ほかの人たちも多分事前に約束をしてから食堂で落ち合ったりしているとは思う。じゃあお昼に食堂で、とやり取りしているのを何度かベルテは見たことがある。
が、シャンティエはその辺りのやり取りを目にすることがなかったのだろう。
「それで、お昼を一緒にと、待っていてくれたのですか?」
「ご、ご迷惑でしたか?」
ベルテの様子を窺い、その反応をじっと見守るシャンティエは、これまでの印象とはまったく違っていた。
王太子アレッサンドロの婚約者として、常に他の模範となるべく己を律してきたシャンティは、その仮面を取り払えば、普通の友達づきあいも知らない、気弱な令嬢だった。
「いえ、ありがとうございます」
机の上にトレイを置いて、ベルテはお礼を言った。
お礼を言われたシャンティエは、とても嬉しそうに微笑んだ。
「さあ、あまり時間がありませんから、早く食べましょう」
「え、ええ」
二人で椅子に座る。
何人かはその様子を物珍しげに眺めていた。
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