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第一章 巡礼の街
23 イルジャ
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(やってしまった)
イルジャは気を失ったアルブを見ながら、心の中で呟いた。
間違いなく艶事は初めてだろうアルブを相手に、最初は気持ちよくイかせられたら手を引こうと思っていた。
しかし想定外にアルブの反応が素直で、あまりに扇情的に自分の腕の中で乱れる様を見て、もっと色々なアルブを見てみたいと欲望が止まらず、後孔まで弄ってしまった。
初めてであろつ刺激に悶えるアルブの姿に、冷静であらねばという思いは吹き飛び、かなり強引にことを進めてしまった。
アルブが自分に少なからずの好意を持ち、身を委ねてくれているという歓びが、己の行為に更に拍車を掛けた。
「しかし、こんなに無防備で、よく今まで無事だったものだ」
透き通るような肌に、美しい顔立ち。痩せ過ぎではあるが、悩まし気な風情は十二分に醸し出している。
とっくにどこかの好色な金持ちの男妾に囲われていても不思議ではない。
もしくは、不埒な輩に男娼専門の館に売られていたかもしれない。
「この体質のお陰か」
太陽の光に弱く、光に触れると赤く腫れ上がるらしいアルブの肌。そのため外にいる時はいつもすっぽりと濃い色の分厚い外套を羽織り、フードを目深に被っている。
奇異の目で見られることもあるだろうが、それ故に衆人にその姿を晒すこともなかった。
「怪我の功名だな」
しかし、それもいつまでもつかわからない。
薬草を売りにギネシュの街へ頻繁に行くというアルブ。いつかはアルブの美しさに気付く者も出てくるだろう。
アルブが迫害されるよりは、受け入れられるほうがいいことはわかるが、なぜかもやっとした気分だ。
穏やかな寝息を立てて眠るアルブの細い首に、イルジャは視線を移す。
まだ自分が何者であるかの記憶は戻っていないが、昨夜のことはうっすらと思いだしていた。
よりにもよって、アルブの首を絞めてしまっていた。
アルブは何も言わなかったが、きっと恐ろしかっただろう。
「なんであんなこと…」
誰と間違えてあんなことをしたのか、靄のようなものに遮られてはっきりしない。
それでもアルブが自分のことを知っていてくれたお陰で、名前とどこの出身かはわかった。彼がいなければもっと途方に暮れていただろう。
それどころか寝床まで用意してくれた。
「俺にとってはまさに神の御使いだな。…神?」
そう呟いた時、何かが気になった。
そして改めてアルブの顔を覗き込んだ。
ぼんやりとした灯りの中で、アルブの寝顔は神々しいまでに輝いている。
一年前に逃げていた彼を助けたというのを聞いたが、そのことはやはり思い出せない。
でも、それだけではない気がする。
「ん、イル…ジャ」
「どうした?」
アルブが小さく呟く。長い睫が震え目を開けるかと思ったが、瞼は開くことはない。どうやら寝言らしい。
「なんだ寝言か。どんな夢を見ているんだか」
彼の夢の中に自分がいるのだと思うと、イルジャはそれだけで股間に熱が集まった。
「結局眠れないな」
アルブの白い柔肌に触れたくて悶々として、寝床を抜け出して外の空気を吸いに出た。
しかし実際に触れてアルブと肌を重ねても、やはり眠れない。
体の向きを変えて、アルブに向き直る。
自分との口づけで腫れぼったくなったアルブの唇に、そっと指を当てる。ふにゃりと柔らかい唇の感触に、口元がほころんだ。
「おやすみアルブ」
イルジャはそっとアルブの唇に唇を重ねた。
イルジャは気を失ったアルブを見ながら、心の中で呟いた。
間違いなく艶事は初めてだろうアルブを相手に、最初は気持ちよくイかせられたら手を引こうと思っていた。
しかし想定外にアルブの反応が素直で、あまりに扇情的に自分の腕の中で乱れる様を見て、もっと色々なアルブを見てみたいと欲望が止まらず、後孔まで弄ってしまった。
初めてであろつ刺激に悶えるアルブの姿に、冷静であらねばという思いは吹き飛び、かなり強引にことを進めてしまった。
アルブが自分に少なからずの好意を持ち、身を委ねてくれているという歓びが、己の行為に更に拍車を掛けた。
「しかし、こんなに無防備で、よく今まで無事だったものだ」
透き通るような肌に、美しい顔立ち。痩せ過ぎではあるが、悩まし気な風情は十二分に醸し出している。
とっくにどこかの好色な金持ちの男妾に囲われていても不思議ではない。
もしくは、不埒な輩に男娼専門の館に売られていたかもしれない。
「この体質のお陰か」
太陽の光に弱く、光に触れると赤く腫れ上がるらしいアルブの肌。そのため外にいる時はいつもすっぽりと濃い色の分厚い外套を羽織り、フードを目深に被っている。
奇異の目で見られることもあるだろうが、それ故に衆人にその姿を晒すこともなかった。
「怪我の功名だな」
しかし、それもいつまでもつかわからない。
薬草を売りにギネシュの街へ頻繁に行くというアルブ。いつかはアルブの美しさに気付く者も出てくるだろう。
アルブが迫害されるよりは、受け入れられるほうがいいことはわかるが、なぜかもやっとした気分だ。
穏やかな寝息を立てて眠るアルブの細い首に、イルジャは視線を移す。
まだ自分が何者であるかの記憶は戻っていないが、昨夜のことはうっすらと思いだしていた。
よりにもよって、アルブの首を絞めてしまっていた。
アルブは何も言わなかったが、きっと恐ろしかっただろう。
「なんであんなこと…」
誰と間違えてあんなことをしたのか、靄のようなものに遮られてはっきりしない。
それでもアルブが自分のことを知っていてくれたお陰で、名前とどこの出身かはわかった。彼がいなければもっと途方に暮れていただろう。
それどころか寝床まで用意してくれた。
「俺にとってはまさに神の御使いだな。…神?」
そう呟いた時、何かが気になった。
そして改めてアルブの顔を覗き込んだ。
ぼんやりとした灯りの中で、アルブの寝顔は神々しいまでに輝いている。
一年前に逃げていた彼を助けたというのを聞いたが、そのことはやはり思い出せない。
でも、それだけではない気がする。
「ん、イル…ジャ」
「どうした?」
アルブが小さく呟く。長い睫が震え目を開けるかと思ったが、瞼は開くことはない。どうやら寝言らしい。
「なんだ寝言か。どんな夢を見ているんだか」
彼の夢の中に自分がいるのだと思うと、イルジャはそれだけで股間に熱が集まった。
「結局眠れないな」
アルブの白い柔肌に触れたくて悶々として、寝床を抜け出して外の空気を吸いに出た。
しかし実際に触れてアルブと肌を重ねても、やはり眠れない。
体の向きを変えて、アルブに向き直る。
自分との口づけで腫れぼったくなったアルブの唇に、そっと指を当てる。ふにゃりと柔らかい唇の感触に、口元がほころんだ。
「おやすみアルブ」
イルジャはそっとアルブの唇に唇を重ねた。
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