13 / 22
13 魔力の痕跡
しおりを挟む
何とか家にたどり着き、肩で息をする。全速力で走ったので足はガクガクだ。
『アディーナ様、何があったのですか?』
ダニエルが訊ねた。
「それが…」
起こった出来事をアディーナはダニエルに話した。
『すいません……私のせいでこんな……』
ハンスが責任を感じてしゅんと項垂れる。
「気にしないで、それに目的は果たせたから、結果良好だよ」
水を一気に飲み呼吸が落ち着いた頃にアディーナがそう言うと、ハンスはほっとして笑顔を見せた。
「それに、信じるか信じないかわからないけど、ジャクソンのことも伝えられたしね。これこそ怪我の功名?」
『何とか逃げ切れたな』
そこへ祖父が戻ってきた。
「おじい、ありがとう」
『アディーナが無事で良かった』
「それで彼は?」
『護衛騎士たちが駆けつけて合流した』
「まさか、傷つけたりしてないよね」
『その点は心配ない。しかし術者がいなくなっても石が飛んでくるので驚いてはいたな』
「魔法で攻撃されていると思っていたらそうでしょうね」
事前に術式を書いていたのならまだしも、普通は魔法を放つ者がその場にいなければ攻撃を仕掛けることはできない。
彼の驚きは容易に想像できた。
実際は霊の力だから魔法の痕跡を探しても無駄なことだ。
「まあ、正体はばれてないか……」
顔は見られずに済んだだけ助かった。性別もばれていないとは思う。
「それにしても……あれって何だったのかな」
王子から何かが流れ込み、それがお腹のあたりに落ち着いたと思ったら、途端に魔法が解けた。その時のお腹に感じた熱は今は綺麗に消え失せている。
『そのことじゃがのう』
祖父が何やら心当たりがあるのか、話し出した。
「おじい、何が起こったかわかる?」
『なぜそんなことが起こったのかはわからん。しかし、あの時流れ込んだのは確かに王子の魔力だった』
「え?」
『そうね。まるで水が流れるようにあなたに殿下の魔力が流れていったのが見えたわ』
『拘束魔法が消え失せたのも、アディーナに流れ込んだ魔力が術を掛けた王子自身の魔力に反応して、自然と解除されたのかも知れんな。何しろ魔法を掛けた本人に魔法を掛けているのだから』
「つまり……相殺して消え失せた?」
『そうとしか考えられん。そして王子の魔力を使って魔法を解除したのはアディーナ、そなたじゃ』
「魔法……あれが、魔力?」
あの時の感覚はすごく気持ち良かったと思い出した。今はもう何も感じない。
『逃げようとする時にも同じ魔法を放ったようだが、それもアディーナの体に吸収されたようだ』
『しかし、他人の魔力を流されるのは辛くてきつい筈です』
『そうねぇ……いくら相性がよくても他人の魔力には拒絶反応してしまうものですけど……』
『例外はあの時くらいじゃな』
『いやですわ、お義父上様、この子は成人前ですよ』
『わかっておる。今回はそういうことではない』
「あの時って?」
なぜか顔を赤らめる母に対して男性三人はニヤニヤしている。それに成人しているかしていないかで何が変わるのか。
『あなたにはまだ早いわ。来年…そう、あなたが成人の儀を無事に終えたら教えて上げます』
「ええ、すごく気になる。私だけ知らないの?」
一人疎外感を感じでアディーナが頬を膨らませて拗ねる。
『さあさあ、アディーナ、いつまでもその格好では寛げませんよ、着替えしましょう』
『そうじゃな、今夜はもう休め、霊力を注いで疲れただろう』
「あれくらい、何ともありません」
そう言いながらも、王子とのやり取りに疲れきって目蓋が重くなっている。
『アディーナ様、本当にありがとうございました。お陰で心残りが半分無くなりました。後は弟子にあなたのための道具を作らせたら、私は思い残すことはありません。あなたがいなかったらどうなったかわかりません』
「お役に立ててよかったです」
母に付き添われて寝室へ行き、『闇の天使』の衣裳をクローゼットの奥の羽目板を剥がした所へ隠す。
ネグリジェに着替えてベッドに潜り込むと、口ではああ言ったが疲れてしまい、朝陽が昇るまでにアディーナは眠りに落ちた。
『アディーナ様、何があったのですか?』
ダニエルが訊ねた。
「それが…」
起こった出来事をアディーナはダニエルに話した。
『すいません……私のせいでこんな……』
ハンスが責任を感じてしゅんと項垂れる。
「気にしないで、それに目的は果たせたから、結果良好だよ」
水を一気に飲み呼吸が落ち着いた頃にアディーナがそう言うと、ハンスはほっとして笑顔を見せた。
「それに、信じるか信じないかわからないけど、ジャクソンのことも伝えられたしね。これこそ怪我の功名?」
『何とか逃げ切れたな』
そこへ祖父が戻ってきた。
「おじい、ありがとう」
『アディーナが無事で良かった』
「それで彼は?」
『護衛騎士たちが駆けつけて合流した』
「まさか、傷つけたりしてないよね」
『その点は心配ない。しかし術者がいなくなっても石が飛んでくるので驚いてはいたな』
「魔法で攻撃されていると思っていたらそうでしょうね」
事前に術式を書いていたのならまだしも、普通は魔法を放つ者がその場にいなければ攻撃を仕掛けることはできない。
彼の驚きは容易に想像できた。
実際は霊の力だから魔法の痕跡を探しても無駄なことだ。
「まあ、正体はばれてないか……」
顔は見られずに済んだだけ助かった。性別もばれていないとは思う。
「それにしても……あれって何だったのかな」
王子から何かが流れ込み、それがお腹のあたりに落ち着いたと思ったら、途端に魔法が解けた。その時のお腹に感じた熱は今は綺麗に消え失せている。
『そのことじゃがのう』
祖父が何やら心当たりがあるのか、話し出した。
「おじい、何が起こったかわかる?」
『なぜそんなことが起こったのかはわからん。しかし、あの時流れ込んだのは確かに王子の魔力だった』
「え?」
『そうね。まるで水が流れるようにあなたに殿下の魔力が流れていったのが見えたわ』
『拘束魔法が消え失せたのも、アディーナに流れ込んだ魔力が術を掛けた王子自身の魔力に反応して、自然と解除されたのかも知れんな。何しろ魔法を掛けた本人に魔法を掛けているのだから』
「つまり……相殺して消え失せた?」
『そうとしか考えられん。そして王子の魔力を使って魔法を解除したのはアディーナ、そなたじゃ』
「魔法……あれが、魔力?」
あの時の感覚はすごく気持ち良かったと思い出した。今はもう何も感じない。
『逃げようとする時にも同じ魔法を放ったようだが、それもアディーナの体に吸収されたようだ』
『しかし、他人の魔力を流されるのは辛くてきつい筈です』
『そうねぇ……いくら相性がよくても他人の魔力には拒絶反応してしまうものですけど……』
『例外はあの時くらいじゃな』
『いやですわ、お義父上様、この子は成人前ですよ』
『わかっておる。今回はそういうことではない』
「あの時って?」
なぜか顔を赤らめる母に対して男性三人はニヤニヤしている。それに成人しているかしていないかで何が変わるのか。
『あなたにはまだ早いわ。来年…そう、あなたが成人の儀を無事に終えたら教えて上げます』
「ええ、すごく気になる。私だけ知らないの?」
一人疎外感を感じでアディーナが頬を膨らませて拗ねる。
『さあさあ、アディーナ、いつまでもその格好では寛げませんよ、着替えしましょう』
『そうじゃな、今夜はもう休め、霊力を注いで疲れただろう』
「あれくらい、何ともありません」
そう言いながらも、王子とのやり取りに疲れきって目蓋が重くなっている。
『アディーナ様、本当にありがとうございました。お陰で心残りが半分無くなりました。後は弟子にあなたのための道具を作らせたら、私は思い残すことはありません。あなたがいなかったらどうなったかわかりません』
「お役に立ててよかったです」
母に付き添われて寝室へ行き、『闇の天使』の衣裳をクローゼットの奥の羽目板を剥がした所へ隠す。
ネグリジェに着替えてベッドに潜り込むと、口ではああ言ったが疲れてしまい、朝陽が昇るまでにアディーナは眠りに落ちた。
10
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる