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11 王子の守護霊
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アディーナの纏う魔力防御のフードはそこそこの魔法なら防ぐことができる。先日騎士団に攻撃された時もこれがあったから逃げおおせた。
だが、今声を掛けてきた男はそれを上回る実力があるとわかる。
『すごい魔力の男だぞ、アディーナ』
『こんなの見たことないわ』
フードも腕輪も明らかに反応しているが、まるで効いていない。
「魔力防御か……その程度のものでは私には通用しないぞ」
隣でハンスがオロオロとしているのがわかるが、彼にもどうすることもできない。
どんどん近づいてくるのが足音でわかる。拘束されているのは手と足だけなので、それ以外は動くため後ろを振り向こうとした。
「振り向くな、前を見ていろ」
しゃべろうとして声も封じられているとわかる。魔法を発動する詠唱を阻止するためだ。
「貴様、何者だ」
男が近づくにつれポケットの指輪が何故か熱を帯びてくるのがわかる。男の魔力に反応しているのか。
それより声を封じているのに喋れるわけがないのがわかっていないのか。
『アシェル殿下』
ハンスが驚く名前を口にした。
(どういうこと?)
こちらを覗き込むハンスに目で訴える。
『この魔力はアシェル殿下のものです。何度もお会いしたことがありますからわかります』
どうしてここに第一王子がいるのか。
『納得じゃ、噂通りの魔力じゃな』
『感心している場合ですか、アディーナは魔力がないんですよ。どうするんですか』
『暫く様子を見て、相手が怯んだ隙に逃げるしかないじゃろう』
『だからそれをどうやって』
「喉の封印を解く。余計な真似はするな」
後ろから肩越しに刃物が当てられる。余計な真似とは魔法を使うなということだろう。こくこくと頷くと喉に感じていた圧迫感が無くなった。
ケホケホと咳き込む。
「もう一度訊ねる。貴様、何者だ」
「と、通りすがりの者です」
「嘘を吐くな。簡素な魔力防御を施したものを身に付けておきながら、貴様から魔力が感じられない。この私に察知できないほど強力をする者がそうそういてたまるか。それに、そのポケットにあるものはなんだ」
魔力が感知できないのは魔力がないからです。
そう言えばどうなるだろう。
「こちらを向け」
殿下がそう言うと勝手に体が反転した。
「!」
思った以上に近くにいて、すぐ目の前に立っていたので驚いた。
自分と同じようにフードを被り、口元をマスクで覆っているが、こちらを鋭い目で睨む紫の瞳が印象的だった。
背はアディーナよりは頭ひとつ高い。
こちらを向いたアディーナの瞳が黒いことに驚いている。
「声は出せる筈だ。訊かれたことに答えろ」
『殿下、この者は怪しいものではありません。私に協力して盗まれた指輪を取り戻してくれたのです』
『そうです、アディーナは何も悪いことなどしていません』
ハンスと母親が必死で彼の耳元で叫ぶが、当然彼の耳には聞こえない。
「無理だ。彼には聞こえない」
女とばれないように声音を低くしてハンスに伝える。
「何が聞こえないというのだ」
当然自分に言われたと思った彼は聞き返す。
「ポケットの中身が気になるなら、ご自分でどうぞ。何せ手足を拘束されているので私は取り出せませんから」
相手が王子だとわかっても少しも安心できないが、正体がわかっただけ恐怖も少し和らいだ。
警戒しながらも彼はフードのポケットを探り、指輪を取り出すと、それをじっくりと観察して更に剣を突きつけてきた。
だが、今声を掛けてきた男はそれを上回る実力があるとわかる。
『すごい魔力の男だぞ、アディーナ』
『こんなの見たことないわ』
フードも腕輪も明らかに反応しているが、まるで効いていない。
「魔力防御か……その程度のものでは私には通用しないぞ」
隣でハンスがオロオロとしているのがわかるが、彼にもどうすることもできない。
どんどん近づいてくるのが足音でわかる。拘束されているのは手と足だけなので、それ以外は動くため後ろを振り向こうとした。
「振り向くな、前を見ていろ」
しゃべろうとして声も封じられているとわかる。魔法を発動する詠唱を阻止するためだ。
「貴様、何者だ」
男が近づくにつれポケットの指輪が何故か熱を帯びてくるのがわかる。男の魔力に反応しているのか。
それより声を封じているのに喋れるわけがないのがわかっていないのか。
『アシェル殿下』
ハンスが驚く名前を口にした。
(どういうこと?)
こちらを覗き込むハンスに目で訴える。
『この魔力はアシェル殿下のものです。何度もお会いしたことがありますからわかります』
どうしてここに第一王子がいるのか。
『納得じゃ、噂通りの魔力じゃな』
『感心している場合ですか、アディーナは魔力がないんですよ。どうするんですか』
『暫く様子を見て、相手が怯んだ隙に逃げるしかないじゃろう』
『だからそれをどうやって』
「喉の封印を解く。余計な真似はするな」
後ろから肩越しに刃物が当てられる。余計な真似とは魔法を使うなということだろう。こくこくと頷くと喉に感じていた圧迫感が無くなった。
ケホケホと咳き込む。
「もう一度訊ねる。貴様、何者だ」
「と、通りすがりの者です」
「嘘を吐くな。簡素な魔力防御を施したものを身に付けておきながら、貴様から魔力が感じられない。この私に察知できないほど強力をする者がそうそういてたまるか。それに、そのポケットにあるものはなんだ」
魔力が感知できないのは魔力がないからです。
そう言えばどうなるだろう。
「こちらを向け」
殿下がそう言うと勝手に体が反転した。
「!」
思った以上に近くにいて、すぐ目の前に立っていたので驚いた。
自分と同じようにフードを被り、口元をマスクで覆っているが、こちらを鋭い目で睨む紫の瞳が印象的だった。
背はアディーナよりは頭ひとつ高い。
こちらを向いたアディーナの瞳が黒いことに驚いている。
「声は出せる筈だ。訊かれたことに答えろ」
『殿下、この者は怪しいものではありません。私に協力して盗まれた指輪を取り戻してくれたのです』
『そうです、アディーナは何も悪いことなどしていません』
ハンスと母親が必死で彼の耳元で叫ぶが、当然彼の耳には聞こえない。
「無理だ。彼には聞こえない」
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「何が聞こえないというのだ」
当然自分に言われたと思った彼は聞き返す。
「ポケットの中身が気になるなら、ご自分でどうぞ。何せ手足を拘束されているので私は取り出せませんから」
相手が王子だとわかっても少しも安心できないが、正体がわかっただけ恐怖も少し和らいだ。
警戒しながらも彼はフードのポケットを探り、指輪を取り出すと、それをじっくりと観察して更に剣を突きつけてきた。
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