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第七章
②
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最終的に私の数値は、判定器の限界値ギリギリで止まった。
「ウソだろ…」
表示された数値やステータスを見て、三人で呆然とする。
ステータス画面
これを見る度に、やっぱりここはゲームの世界なんだなと、実感する。
レベルや職業、能力やステータスなどが表示されているよく見慣れた画面だけど、他と違うところ、明らかに変わっているところがあった。
まず、レベルや各数値の後ろに、プラスで別の数字が表示されている。
そしてステータスにはドラゴンテイマーの文字があり、その横には「テイムしたドラゴン ポチタマ」と書かれてあった。
「多分、このレベル二十三が、私の本来のレベルじゃないかな。魔力レベルも三だし、魔力量も二十くらいだったから」
「じゃあ、この横にあるプラスがテイムしたドラゴンの分か」
レベルはプラス百。身体能力も元の百倍。魔力レベルもプラス二百。魔力量は二百倍になっていた。
「ルドウィック並だな。俺よりレベル高いかも」
「ポチタマ、凄いね」
『ふふふ』
褒められてポチタマは得意気だ。
(可愛い)
猫が獲物を取って得意気に飼い主に見せたり、ボールを取ってきて尻尾を振ったりする犬の姿を思い浮かべる。
「テイマーは、テイムした従魔の能力を使う。空を飛ぶ従魔の目を使って偵察するとか、小動物に隙間から忍び込ませて中から鍵を開けたり、探らせたりな。でも、これはドラゴンの能力を使うとかじゃないな。テイマー自体の能力が上がるとか、聞いたことがない」
バッカスの言葉に私も同意見だ。
こんなレベルになっているとは、自分自身特に何か変わったところもない。戦闘はしていないから、本当のところはわからないけど。
「ねえ、これって何かな?」
ポチタマをテイムした結果については、数値は驚きだったけど、ある程度の予想は出来ていた。テイムした従魔の能力
ステータス自体は、精神攻撃体制や物理防御などが軒並み瀑上りしていたけど、中身自体は特に普通だった。
でも、ステータスの最後に付け加えられた「勇者の加護」というのは、見るのも聞くのも初めてだった。
その言葉の後ろには、「プラスα」という記載もある。
勇者の加護というものの効果が、プラスαということなのだろうとは思う。
でも、それがどういう意味なのかはわからないし、普通、加護は勇者に与えられるもので、勇者が与えるものだろうか。
こんな効果は、ゲームにもなかった。
もともと冒険RPGゲームの主人公はルウだから、こんな効果は運営側だって考えていなかったのではないだろうか。
(こんなのチュートリアルでもないとわからないわ)
「俺も思った。お前は何かわかるか?」
バッカスがルウを振り返って尋ねる。
「わからない」
ルウも首を振る。
「でも…」
「「でも?」」
考え込んでルウが何かを言いかけたので、バッカスと二人でハモった。
「なんでデルフィーヌとハモルんだよ」
息ぴったりみたいな私達の反応に、ルウがバッカスを睨みつける。
「知るか、俺を睨むな」
「デルフィーヌはオレの大事な人だ。ハモっていいのもオレだけだ」
「もう、ルウったらバッカスさんは別に私なんか興味ないから、いちいちつっかからないで。ねえ、バッカスさん」
「姉ちゃん、ニヤけてるぞ」
私の顔を見て、バッカスが指摘する。
「え、うそ。やだ。そうですか?」
ルウが焼いてくれているのかと思うと、何だか嬉しくなって自然と顔がニヤけていたようだ。
「やっぱり、焼きもち焼いてくれてるのかと思うと、恥ずかしいけど、嬉しくて」
「俺には重い気がするけど、本人がいいならまあいいか」
バッカスはそれからルウに視線を移す。
「それで、続きを聞こうか」
バッカスがルウにその先を促した。
「『勇者』がオレのことなら、デルフィーヌにオレの加護が付いているってことだろ? どんな効果があるかわからないけど、それって最高なことだ。ステータス上でもオレがデルフィーヌを守ってるってことなんだから」
「まあ、そういうことに、なるか」
「ルウが何かしたわけじゃないのね?」
「そうなら、そう言っているよ。デルフィーヌのために出来ることなら、何だってするつもりだから」
私の髪をひと房掬い上げ、キスをする。
『デルフィーヌ、ボクも』
ルウに対抗してか、反対側の髪にポチタマが顔を埋めてきた。
「オレの真似をするな。デルフィーヌを真に守るのはオレだ」
『ボクだって、デルフィーヌのこと守れるもん』
「オレのデルフィーヌへの想いは年季が違う。十年以上も想って来たんだ。昨日今日生まれたお前が敵うわけないだろ」
『ボクとデルフィーヌは見えない絆で繋がってるんだぞ。ボクはデルフィーヌが何処にいてもすぐにわかるんだからな!』
私を挟んで彼らは言い合いを始めた。
「おい、こいつら、言葉通じてるのか? 俺にはドラゴンの言葉はさっぱりわからない。ギャーギャー言っているようにしか聞こえない」
それを見て、バッカスが尋ねる。
「多分、本当にはわかっていないと思うけど、不思議と掛け合いになってるのよね」
「人族同士なら言語理解の魔法が使えれば通じ合うが、ドラゴンとじゃあ無理だよな。と、すれば、あれな、悪口は万国共通とか?」
「そうかも…ねえ、ルウ、ポチタマ、その辺にして」
左手でルウの手を握り、反対の手でポチタマの前足を掴んで、こちらに注意を向けさせた。
「ウソだろ…」
表示された数値やステータスを見て、三人で呆然とする。
ステータス画面
これを見る度に、やっぱりここはゲームの世界なんだなと、実感する。
レベルや職業、能力やステータスなどが表示されているよく見慣れた画面だけど、他と違うところ、明らかに変わっているところがあった。
まず、レベルや各数値の後ろに、プラスで別の数字が表示されている。
そしてステータスにはドラゴンテイマーの文字があり、その横には「テイムしたドラゴン ポチタマ」と書かれてあった。
「多分、このレベル二十三が、私の本来のレベルじゃないかな。魔力レベルも三だし、魔力量も二十くらいだったから」
「じゃあ、この横にあるプラスがテイムしたドラゴンの分か」
レベルはプラス百。身体能力も元の百倍。魔力レベルもプラス二百。魔力量は二百倍になっていた。
「ルドウィック並だな。俺よりレベル高いかも」
「ポチタマ、凄いね」
『ふふふ』
褒められてポチタマは得意気だ。
(可愛い)
猫が獲物を取って得意気に飼い主に見せたり、ボールを取ってきて尻尾を振ったりする犬の姿を思い浮かべる。
「テイマーは、テイムした従魔の能力を使う。空を飛ぶ従魔の目を使って偵察するとか、小動物に隙間から忍び込ませて中から鍵を開けたり、探らせたりな。でも、これはドラゴンの能力を使うとかじゃないな。テイマー自体の能力が上がるとか、聞いたことがない」
バッカスの言葉に私も同意見だ。
こんなレベルになっているとは、自分自身特に何か変わったところもない。戦闘はしていないから、本当のところはわからないけど。
「ねえ、これって何かな?」
ポチタマをテイムした結果については、数値は驚きだったけど、ある程度の予想は出来ていた。テイムした従魔の能力
ステータス自体は、精神攻撃体制や物理防御などが軒並み瀑上りしていたけど、中身自体は特に普通だった。
でも、ステータスの最後に付け加えられた「勇者の加護」というのは、見るのも聞くのも初めてだった。
その言葉の後ろには、「プラスα」という記載もある。
勇者の加護というものの効果が、プラスαということなのだろうとは思う。
でも、それがどういう意味なのかはわからないし、普通、加護は勇者に与えられるもので、勇者が与えるものだろうか。
こんな効果は、ゲームにもなかった。
もともと冒険RPGゲームの主人公はルウだから、こんな効果は運営側だって考えていなかったのではないだろうか。
(こんなのチュートリアルでもないとわからないわ)
「俺も思った。お前は何かわかるか?」
バッカスがルウを振り返って尋ねる。
「わからない」
ルウも首を振る。
「でも…」
「「でも?」」
考え込んでルウが何かを言いかけたので、バッカスと二人でハモった。
「なんでデルフィーヌとハモルんだよ」
息ぴったりみたいな私達の反応に、ルウがバッカスを睨みつける。
「知るか、俺を睨むな」
「デルフィーヌはオレの大事な人だ。ハモっていいのもオレだけだ」
「もう、ルウったらバッカスさんは別に私なんか興味ないから、いちいちつっかからないで。ねえ、バッカスさん」
「姉ちゃん、ニヤけてるぞ」
私の顔を見て、バッカスが指摘する。
「え、うそ。やだ。そうですか?」
ルウが焼いてくれているのかと思うと、何だか嬉しくなって自然と顔がニヤけていたようだ。
「やっぱり、焼きもち焼いてくれてるのかと思うと、恥ずかしいけど、嬉しくて」
「俺には重い気がするけど、本人がいいならまあいいか」
バッカスはそれからルウに視線を移す。
「それで、続きを聞こうか」
バッカスがルウにその先を促した。
「『勇者』がオレのことなら、デルフィーヌにオレの加護が付いているってことだろ? どんな効果があるかわからないけど、それって最高なことだ。ステータス上でもオレがデルフィーヌを守ってるってことなんだから」
「まあ、そういうことに、なるか」
「ルウが何かしたわけじゃないのね?」
「そうなら、そう言っているよ。デルフィーヌのために出来ることなら、何だってするつもりだから」
私の髪をひと房掬い上げ、キスをする。
『デルフィーヌ、ボクも』
ルウに対抗してか、反対側の髪にポチタマが顔を埋めてきた。
「オレの真似をするな。デルフィーヌを真に守るのはオレだ」
『ボクだって、デルフィーヌのこと守れるもん』
「オレのデルフィーヌへの想いは年季が違う。十年以上も想って来たんだ。昨日今日生まれたお前が敵うわけないだろ」
『ボクとデルフィーヌは見えない絆で繋がってるんだぞ。ボクはデルフィーヌが何処にいてもすぐにわかるんだからな!』
私を挟んで彼らは言い合いを始めた。
「おい、こいつら、言葉通じてるのか? 俺にはドラゴンの言葉はさっぱりわからない。ギャーギャー言っているようにしか聞こえない」
それを見て、バッカスが尋ねる。
「多分、本当にはわかっていないと思うけど、不思議と掛け合いになってるのよね」
「人族同士なら言語理解の魔法が使えれば通じ合うが、ドラゴンとじゃあ無理だよな。と、すれば、あれな、悪口は万国共通とか?」
「そうかも…ねえ、ルウ、ポチタマ、その辺にして」
左手でルウの手を握り、反対の手でポチタマの前足を掴んで、こちらに注意を向けさせた。
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