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第五章
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なんだかうまくルウに嵌められた気もしないではないが、あの後、軽く入浴を済ませて着換えてから、私達は食堂へ向かった。
ルウが手伝うとか、わけのわからないことを言ってきたが、それは丁寧に断固として断った。
ポチタマにはチャールズさんがこっそり鳥の丸焼きを差し入れてくれた。
鳥の丸焼きがこっそり差し入れるメニューかと言えば、ちょっと疑問だけど。
前菜はポタージュスープ。メインは分厚く切った牛に似た魔獣のステーキ。柔らかいパンは焼立てで香ばしく、食欲をそそる。
我が家では使用人たちも皆一緒に食べていたので、皆で一緒にどうかと誘ったが、とんでもないと断られた。
「ルドウィック様、申し訳ございません。王宮から伝令が来ております」
食事もそろそろ終わりだという時、チャールズさんが申し訳無さそうに入ってきた。
「チッ」
ルウからはっきり舌打ちが聞こえた。
「オレは留守だ」
「翼竜が飛ぶのを目撃されています。結界を通る際にも、ルドウィック様の乗った翼竜だと確認されております」
居留守を使うつもりだったようだが、どうやらそれは通らないらしい。
考えてみれば、翼竜に乗れる人物も限られているし、その翼竜に付けた石が結界に反応したのなら、IDみたいにすぐわかってしまうんだろう。
それはルウもわかっていたはずだ。
「ルウ、知ってたの?」
「戻ったことは、すぐバレることは思っていた」
「だったら最初から居留守を使うつもりだったの?」
「休暇の最中だ。応じる必要はない」
キッパリはっきり言い切る。
「せっかくのデルフィーヌとの時間を邪魔するやつになんか、放っておけばいい」
「でも、一応、対応だけはしてあげたら? その人だって上から言われて来ているんだし。それに応じないと、後で色々難癖付けられたら面倒じゃない」
長い物には巻かれろのタイプの私は、ルウの立場が悪くなるのを恐れて言った。
「デルフィーヌが言うなら、会うだけは会ってやる」
私が言うと、ルウはコロリと態度を軟化させた。
「ただし会うだけだ。王宮には行かない」
「うん、ありがとう。それでもいいよ」
「じゃあ、ちゃっちゃっと行ってくるか。部屋で待ってて」
「わかった」
食堂を出てルウは使者に会いに、私はポチタマの待っている部屋に向かった。
「ポチタマ、お待たせ」
『デルフィーヌ!』
部屋の扉を開けて名前を呼ぶと、ポチタマが羽をパタパタさせながら私の所へ飛んできた。
そんなポチタマを私はぎゅっと抱きしめた。
「ご飯、食べた?」
『うん、全部食べたよ。美味しかった』
「そうか、偉いね・・って全部?」
驚いてポチタマのご飯が入っていただろうお皿を覗いた。
お皿の上は骨の一本も残っていなかった。
「骨まで食べたんだ」
『うん、柔らかいところと固いところと色々あって美味しかった」
「よ、良かったね」
この前卵から孵ったばかりなのに、鳥一匹骨まで食べ尽くすとは、牛一頭を平らげるのもすぐじゃないだろか。
お腹がいっぱいになったのか、ポチタマは大きなあくびをしたので、鋭い鮫のような牙が見えた。
その鋭さは、ひと咬みで人の腕など簡単に食いちぎりそうだ。
ほんとにこの子を私がテイムしたんだろうか。
それにドラゴンテイマーとか、本当なんだろか。
それから、溢れるルウのパワーに対しても、私が何らかのスキルで緩和しているらしいというのは、どうなんだろうか。
モブで何の力もない存在だったのに、実はチートだった。なんて展開になりつつあるのだろうか。
私がいる部屋からは、最初私達が降り立った庭が見える。反対に正面の入り口は見えない。
家の中にいて、他の部屋にいる人の様子がわかった日本の住宅と違い、この部屋からは一階の様子まではわからない。
床に並べたクッションの上にふらふらと移動し、ウトウトし出したポチタマを見ながら、私もいつの間にか椅子に座ったままゆっくりと目を閉じた。
ルウが手伝うとか、わけのわからないことを言ってきたが、それは丁寧に断固として断った。
ポチタマにはチャールズさんがこっそり鳥の丸焼きを差し入れてくれた。
鳥の丸焼きがこっそり差し入れるメニューかと言えば、ちょっと疑問だけど。
前菜はポタージュスープ。メインは分厚く切った牛に似た魔獣のステーキ。柔らかいパンは焼立てで香ばしく、食欲をそそる。
我が家では使用人たちも皆一緒に食べていたので、皆で一緒にどうかと誘ったが、とんでもないと断られた。
「ルドウィック様、申し訳ございません。王宮から伝令が来ております」
食事もそろそろ終わりだという時、チャールズさんが申し訳無さそうに入ってきた。
「チッ」
ルウからはっきり舌打ちが聞こえた。
「オレは留守だ」
「翼竜が飛ぶのを目撃されています。結界を通る際にも、ルドウィック様の乗った翼竜だと確認されております」
居留守を使うつもりだったようだが、どうやらそれは通らないらしい。
考えてみれば、翼竜に乗れる人物も限られているし、その翼竜に付けた石が結界に反応したのなら、IDみたいにすぐわかってしまうんだろう。
それはルウもわかっていたはずだ。
「ルウ、知ってたの?」
「戻ったことは、すぐバレることは思っていた」
「だったら最初から居留守を使うつもりだったの?」
「休暇の最中だ。応じる必要はない」
キッパリはっきり言い切る。
「せっかくのデルフィーヌとの時間を邪魔するやつになんか、放っておけばいい」
「でも、一応、対応だけはしてあげたら? その人だって上から言われて来ているんだし。それに応じないと、後で色々難癖付けられたら面倒じゃない」
長い物には巻かれろのタイプの私は、ルウの立場が悪くなるのを恐れて言った。
「デルフィーヌが言うなら、会うだけは会ってやる」
私が言うと、ルウはコロリと態度を軟化させた。
「ただし会うだけだ。王宮には行かない」
「うん、ありがとう。それでもいいよ」
「じゃあ、ちゃっちゃっと行ってくるか。部屋で待ってて」
「わかった」
食堂を出てルウは使者に会いに、私はポチタマの待っている部屋に向かった。
「ポチタマ、お待たせ」
『デルフィーヌ!』
部屋の扉を開けて名前を呼ぶと、ポチタマが羽をパタパタさせながら私の所へ飛んできた。
そんなポチタマを私はぎゅっと抱きしめた。
「ご飯、食べた?」
『うん、全部食べたよ。美味しかった』
「そうか、偉いね・・って全部?」
驚いてポチタマのご飯が入っていただろうお皿を覗いた。
お皿の上は骨の一本も残っていなかった。
「骨まで食べたんだ」
『うん、柔らかいところと固いところと色々あって美味しかった」
「よ、良かったね」
この前卵から孵ったばかりなのに、鳥一匹骨まで食べ尽くすとは、牛一頭を平らげるのもすぐじゃないだろか。
お腹がいっぱいになったのか、ポチタマは大きなあくびをしたので、鋭い鮫のような牙が見えた。
その鋭さは、ひと咬みで人の腕など簡単に食いちぎりそうだ。
ほんとにこの子を私がテイムしたんだろうか。
それにドラゴンテイマーとか、本当なんだろか。
それから、溢れるルウのパワーに対しても、私が何らかのスキルで緩和しているらしいというのは、どうなんだろうか。
モブで何の力もない存在だったのに、実はチートだった。なんて展開になりつつあるのだろうか。
私がいる部屋からは、最初私達が降り立った庭が見える。反対に正面の入り口は見えない。
家の中にいて、他の部屋にいる人の様子がわかった日本の住宅と違い、この部屋からは一階の様子まではわからない。
床に並べたクッションの上にふらふらと移動し、ウトウトし出したポチタマを見ながら、私もいつの間にか椅子に座ったままゆっくりと目を閉じた。
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