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第五章

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 何度かの失敗を繰り返し、ポチタマはようやく力を抑え込むことに成功した。

「これくらいならいいだろう」
「ポチタマ、成功だって」
『ヤッター!』
「やったね、ポチタマ偉いよ」

 お墨付きをもらって、私はポチタマと一緒に喜んだ。

「ルウもありがとう、ほらあなたもお礼を言いなさい」
『あ、ありが…とう』

 私が促すと、ポチタマはたどたどしかったが、お礼を言った。
 言葉は通じなくても、何を言われたのかはルウもわかったようだ。

「別に、デルフィーヌのためにやったことだ。お前にお礼を言われることじゃない」

 ツンデレのルウも可愛い。

「ねえ、さっきの話だけど、ほんとに今は大丈夫なの?」
「うん。別に力がほどよくあって、魔力も欠乏している感じもなくて、ちょうどいい感じだ」

 軽く腕を回して調子がいいことをアピールする。
 ほんとに私にルウの力を緩和する力があるのかわからないが、調子がいいなら大丈夫かなと思った。

 ポチタマの力が抑えられると、翼竜がすかさず近づいてきた。

「そろそろ出発しよう」
「うん」

 私達は王都へ向かう父たちを、王都のルウの家で待つ予定で出発する。
 私がルウと共にここへ来てから一日半、父たちはまだ道のりの三分の二程度のところにいる筈だ。
 二人で翼竜に乗る。
 私が前に乗り、ルウがその後ろに、ポチタマは私の前だ。

「お腹が空いただろ、先にどこか近くの町で何か食べよう」

 言われて空腹なのに気づく。
 持っていた携帯食を少し食べたが、ちゃんと器に盛られた温かいものが食べたくなった。

「早くデルフィーヌの作ったものが食べたいな。ずっと食べたくて夢にまで見ていたんだ」
「嘘でも嬉しいわ。何が食べたいの?」
「嘘じゃない。でも、鳥の丸ごとスープかな。鳥の中に色々詰めたやつ。でも、唐揚げも食べたい。カリカリのじゃが芋とか、お祭りの時とかしか食べられなかったやつ」 

 鳥丸ごとスープは、参鶏湯さむげたん風のやつだ。唐揚げも前世の記憶で作った。ニンニクで下味を付け、小麦粉をまぶして揚げた。芋も普段は焼いたり蒸したりして食べているが、その時はフライドポテトやポテトチップスにして食べた。どれも材料や揚げ油が貴重だから滅多に食べられなかったので、我が家では特別な日の特別なオカズだった。

「でも、いつものご飯もいいな」  

 いつものといえば、材料はあまりなかったけど、狩った獣の骨などを煮込んだスープなど、材料の無い中で工夫して作っていた。

「勇者様なんだから、もっと豪華な料理を食べているんじゃない?」
「豪華でも、あれは誰にでも振る舞う料理だ。デルフィーヌがオレのために作ってくれたのとは全然違う。オレにとってはあれが故郷の味だ」
「じゃあ、今度作ってあげるね」
「楽しみにしている。一応使用人は雇ったけど、デルフィーヌがしたいようにすればいい」
『ボクも、デルフィーヌのご飯、食べたい』
「ポチタマにも作ってあげるから待っててね」  
『ヤッター、デルフィーヌのご飯、デルフィーヌのご飯、デルフィーヌのご飯』
「ちょっと、暴れると落ちちゃうよ」
「おい、そいつに言っておいて、感情が揺れると力が溢れてくる。気をつけろって」 
「あ、うん、わかった。ポチタマ、喜んでくれるのはいいけど、力が漏れちゃってるって」

 空中で翼竜に振り落とされたら困る。
 ルウに後ろからしっかり腰を抱かれているので、落ちはしないだろうけど。

「ところでさ。王宮のパーティって、私、マナーとかまったくわからないんだけど」

 社交界デビューもしていないし、マナーもわからない。
 
「ドレスのことは任せて。マナーについても伝手があるから」
「伝手?」
「パーティのメンバーでマナーに詳しい人がいるからね」
「パーティって、暗黒竜討伐のためのパーティ?」
「そう。その中で王族の人がいるんだ。きっと必要だろうと思って、デルフィーヌたちを迎えに来る前に頼んだら、快く引き受けてくれた」
「王族?」

 ルウのパーティのメンバーで、王族って?

「聖女で公爵令嬢、今の王様の姪にあたるベネデッタ様だ」
「せ、聖女、様!?」

 またもや私の声が大空に響き渡った。
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