41 / 65
第四章
⑧
しおりを挟む
『ボク、姿を隠すことができるよ』
「え?」
そう言ったかと思うと、ポチタマはさっと半透明になった。
「えっと、見えている・・けど?」
「オレには見えない。デルフィーヌには見えているのか?」
「え?」
ルウの言葉に驚いて、彼を見てそれからもう一度ポチタマを見た。
『デルフィーヌはボクの主だから見えるんだ。ボクが見えるのはデルフィーヌと、同じドラゴンだけだ』
「だそうよ」
私はポチタマの言葉をそのままルウに伝える。
「しかし、実際の質量はどうなんだ? 見えなくても物体として存在していたら、見えない壁にぶつかるようなものだろ? それに今はいいが、成長すれば普通の邸では収まりきらない」
今度はルウの言葉をポチタマに伝える。
『大丈夫、ボクは体の大きさも変えられる」
そう言って今度は掌サイズに姿を小さくした。
「か、かわいい」
『これがせいいっぱいだけど、これでいい?』
「これで大丈夫かって、聞いているわ」
手乗りドラゴンになったポチタマに思わず頬ずりする。
昔ゲームセンターで夢中になって取ったぬいぐるみ達を思い出した。
「可愛いか?」
「あ!」
ルウがひょいとポチタマの羽を掴んで、私の掌から持ち上げた。
『は、はなせ、はなせよ』
ポチタマは四つ足をバタバタさせながら、尻尾を振ってルウの手から逃れようとジタバタする。
必死になっているが、縮んだ分前足なども小さくてとても可愛い。
「ポチタマ、かわいい。可愛すぎる。ルウとちびポチタマ、どっちも好き」
口元に両手を当てて、そんな彼らに感動して声を漏らした。
「な、なんだよそれ・・オレとこいつ一緒かよ」
『こいつ、意地悪だよ』
どちらも互いを睨みあっているが、「好き」と言われて満更でもなさそう。
どっちもツンデレなようだ。
「とりあえず、小さくなれるなら、普段はそうしていろ。オレとデルフィーヌの前なら姿を見せてもいい」
「だって、良かったね。ポチタマ」
『じゃあ、ボク、デルフィーヌと一緒にいられる? 置いていかない?』
「って言っているけど、一緒でいいって言っていい?」
「オレがどうこう言っても、デルフィーヌはもうこいつを放っておくつもりはないんだろう?」
「うん。ごめんね、ルウ」
コテンとルウに寄り添って謝った。
「デルフィーヌはずるいな。そんな風に言われたら、許すしかないだろ」
それから私達は支度をして、洞窟を出た。
丸一日洞窟の中にいて、外の明るさが眩しかった。
ルウがヒューッと口笛を吹くと、山の向こうから翼竜が飛んできた。
けれど翼竜は私達に近づこうとせず、少し離れた上空から旋回する。
「どうしたのかな?」
「そいつのせいだろ?」
ルウが私の肩に乗っているポチタマを指差した。
「ポチタマ?」
「チビでもそいつは竜だ。魔獣は人間より相手の力に敏感だ。だから恐れて近づけないんだろう」
「ええ!」
驚いてポチタマを見る。確かに竜種だし、姿を消したり大きさを変えたりする力はあるけど、私にはかわいい竜にしか見えない。そんな秘めた力があるようには思えない。
私が見つめると、ポチタマはキュルルと鳴いて首を傾げた。
「こんなに可愛いのに、強いなんてすごいね」
指で頭を撫でると、ポチタマはゴロゴロと喉を鳴らして尻尾をパタパタさせた。猫が甘えて出す声みたいで、尻尾を振るのは犬みたい。
なんだか犬と猫を両方合わせたみたいで、両方飼っているようで得した気分だ。
「どうすればいい?」
「力を抑える方法を学ばないとな」
「え、そんなことできるの?」
「できるよ。オレだってそうしているから」
「ルウも?」
「ああ、そうしないとオレにも翼竜は近づかない」
確かにRPGにおいては序盤はレベル1の主人公が、数々の試練を乗り越え、レベルアップしていくものだ。納得して頷いた。
「でも時々漏れ出して失敗するけどね」
「そうなの?」
「溢れ出す力を無理に押さえつけると、その歪みで返って具合が悪くなるんだ。適度に放出しないと溜まった力が爆発して暴走する」
ずれたプレートが戻ろうとして起る大地震みたいなものだろうか。
「今は大丈夫なの?」
どこまでルウは強くなったんだろう。
強すぎる力が諸刃の剣みたい、かえって仇になるとは思わなかった。
「大丈夫。今はすこぶる調子がいい。やっぱりデルフィーヌとやったからかな?」
「え?」
「不思議なんだよな。デルフィーヌを抱いてから調子いいんだ。いい具合に緩和されたというか、やっぱりオレとデルフィーヌって最高の相性かも知れない。だって、いくら力を注いでもデルフィーヌが柔らかく受け止めてくれるんだ」
そう言って恍惚とした表情を浮かべるのを見て、ルウの頭の中で、私とのあれやこれやが思い出されているのがわかった。
「え?」
そう言ったかと思うと、ポチタマはさっと半透明になった。
「えっと、見えている・・けど?」
「オレには見えない。デルフィーヌには見えているのか?」
「え?」
ルウの言葉に驚いて、彼を見てそれからもう一度ポチタマを見た。
『デルフィーヌはボクの主だから見えるんだ。ボクが見えるのはデルフィーヌと、同じドラゴンだけだ』
「だそうよ」
私はポチタマの言葉をそのままルウに伝える。
「しかし、実際の質量はどうなんだ? 見えなくても物体として存在していたら、見えない壁にぶつかるようなものだろ? それに今はいいが、成長すれば普通の邸では収まりきらない」
今度はルウの言葉をポチタマに伝える。
『大丈夫、ボクは体の大きさも変えられる」
そう言って今度は掌サイズに姿を小さくした。
「か、かわいい」
『これがせいいっぱいだけど、これでいい?』
「これで大丈夫かって、聞いているわ」
手乗りドラゴンになったポチタマに思わず頬ずりする。
昔ゲームセンターで夢中になって取ったぬいぐるみ達を思い出した。
「可愛いか?」
「あ!」
ルウがひょいとポチタマの羽を掴んで、私の掌から持ち上げた。
『は、はなせ、はなせよ』
ポチタマは四つ足をバタバタさせながら、尻尾を振ってルウの手から逃れようとジタバタする。
必死になっているが、縮んだ分前足なども小さくてとても可愛い。
「ポチタマ、かわいい。可愛すぎる。ルウとちびポチタマ、どっちも好き」
口元に両手を当てて、そんな彼らに感動して声を漏らした。
「な、なんだよそれ・・オレとこいつ一緒かよ」
『こいつ、意地悪だよ』
どちらも互いを睨みあっているが、「好き」と言われて満更でもなさそう。
どっちもツンデレなようだ。
「とりあえず、小さくなれるなら、普段はそうしていろ。オレとデルフィーヌの前なら姿を見せてもいい」
「だって、良かったね。ポチタマ」
『じゃあ、ボク、デルフィーヌと一緒にいられる? 置いていかない?』
「って言っているけど、一緒でいいって言っていい?」
「オレがどうこう言っても、デルフィーヌはもうこいつを放っておくつもりはないんだろう?」
「うん。ごめんね、ルウ」
コテンとルウに寄り添って謝った。
「デルフィーヌはずるいな。そんな風に言われたら、許すしかないだろ」
それから私達は支度をして、洞窟を出た。
丸一日洞窟の中にいて、外の明るさが眩しかった。
ルウがヒューッと口笛を吹くと、山の向こうから翼竜が飛んできた。
けれど翼竜は私達に近づこうとせず、少し離れた上空から旋回する。
「どうしたのかな?」
「そいつのせいだろ?」
ルウが私の肩に乗っているポチタマを指差した。
「ポチタマ?」
「チビでもそいつは竜だ。魔獣は人間より相手の力に敏感だ。だから恐れて近づけないんだろう」
「ええ!」
驚いてポチタマを見る。確かに竜種だし、姿を消したり大きさを変えたりする力はあるけど、私にはかわいい竜にしか見えない。そんな秘めた力があるようには思えない。
私が見つめると、ポチタマはキュルルと鳴いて首を傾げた。
「こんなに可愛いのに、強いなんてすごいね」
指で頭を撫でると、ポチタマはゴロゴロと喉を鳴らして尻尾をパタパタさせた。猫が甘えて出す声みたいで、尻尾を振るのは犬みたい。
なんだか犬と猫を両方合わせたみたいで、両方飼っているようで得した気分だ。
「どうすればいい?」
「力を抑える方法を学ばないとな」
「え、そんなことできるの?」
「できるよ。オレだってそうしているから」
「ルウも?」
「ああ、そうしないとオレにも翼竜は近づかない」
確かにRPGにおいては序盤はレベル1の主人公が、数々の試練を乗り越え、レベルアップしていくものだ。納得して頷いた。
「でも時々漏れ出して失敗するけどね」
「そうなの?」
「溢れ出す力を無理に押さえつけると、その歪みで返って具合が悪くなるんだ。適度に放出しないと溜まった力が爆発して暴走する」
ずれたプレートが戻ろうとして起る大地震みたいなものだろうか。
「今は大丈夫なの?」
どこまでルウは強くなったんだろう。
強すぎる力が諸刃の剣みたい、かえって仇になるとは思わなかった。
「大丈夫。今はすこぶる調子がいい。やっぱりデルフィーヌとやったからかな?」
「え?」
「不思議なんだよな。デルフィーヌを抱いてから調子いいんだ。いい具合に緩和されたというか、やっぱりオレとデルフィーヌって最高の相性かも知れない。だって、いくら力を注いでもデルフィーヌが柔らかく受け止めてくれるんだ」
そう言って恍惚とした表情を浮かべるのを見て、ルウの頭の中で、私とのあれやこれやが思い出されているのがわかった。
152
お気に入りに追加
620
あなたにおすすめの小説
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
メイドから家庭教師にジョブチェンジ~特殊能力持ち貧乏伯爵令嬢の話~
Na20
恋愛
ローガン公爵家でメイドとして働いているイリア。今日も洗濯物を干しに行こうと歩いていると茂みからこどもの泣き声が聞こえてきた。なんだかんだでほっとけないイリアによる秘密の特訓が始まるのだった。そしてそれが公爵様にバレてメイドをクビになりそうになったが…
※恋愛要素ほぼないです。続きが書ければ恋愛要素があるはずなので恋愛ジャンルになっています。
※設定はふんわり、ご都合主義です
小説家になろう様でも掲載しています
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる