【R18】勇者の姉は究極のモブではなかったんですか?

七夜かなた

文字の大きさ
上 下
34 / 65
第四章

しおりを挟む
 何度も体位や角度を変えて、私とルウは繋がった。

「デルフィーヌ、疲れたら言って。オレが治療魔法で回復してあげるから。あ、身体強化もかけるけど、他のはかけないから安心して。だってデルフィーヌの生で感じている感覚は大事にしたいからね。純粋に感じてイくデルフィーヌが見たいもん」

 達した時の脱力時はそのまま放置し、私が体力の限界を覚え始めるとすぐに回復魔法をかけ、ルウの激しい腰振りにも耐えられるように、身体強化魔法をかける。そして汗や精液でぐっしょり汚れれば洗浄魔法の出番だ。
 お陰でシーツも体もいつも清潔に保たれる。でも一回しただけでは洗浄魔法はかけてくれない。
 自分の体液にまみれる私の全身を見て、更に興奮するのだとか。
 
「体中全部オレが触って舐めて、オレに染まっているデルフィーヌ、最高にそそる」

 貴重な魔法を、ただただ私と繋がりセックスするために惜しげも無く使うとか、ほんとに無駄使いとしか言いようがない。
 
 一度の射精が一回と数えるなら、連続二十回はヤッただろうか。
「竜の寝床」に辿り着いたのはお昼過ぎ。いつの間にか夜になり、もう朝になろうとしていた。
 
 それに気がついたのは、暗かった洞窟の中に光が差し込み始めたからだ。
 強化魔法と回復魔法で疲労は感じていないものの、睡魔には勝てなかった。
 何度も達した余韻に、微睡みの中浸りながら、洞窟に空いた小さな穴から差し込む光をぼんやりと眺めながら、隣で眠るルウの寝息を聞いていた。
 
「竜の寝床」はルウたちが倒した暗黒竜の住家だったところ。
 ここにベッドなどを運び込み、ルウが密かに隠れ家にしようとしたのはわかるが、どうしてここだったんだろう。
 ぽっかりと空いた広々とした空間は、竜がどれほど大きかったのかと空想を掻き立てる。
 
「・・・・・」

 ふと、何かが聞こえた気がして、隣で眠るルウを見た。
 すっきり通った鼻筋に長い睫。緩く結ばれた口元に意志の強そうな顎。一晩経ったのかちょっと髭がはけかけている。
 でも、肌つやも良く満足げに眠るルウは、変わらず静かな寝息を立てているだけだ。
 それに、聞こえてきた何かは、ルウからではない。
 
「気のせいかな?」

 光が差し込む隙間から吹き込んできた風の音かも知れない。

 そう思って、まったりとしたこの空気感にもう一度浸りたくで、枕に頭を戻そうとした。

「・・・・て」

 やっぱり何かが聞こえて周囲を見渡す。
 それはずっと洞窟の奥の方から聞こえる。

「ん・・・デルフィーヌ? もう起きたのか」

 起き上がってもう一度耳をすませる。
 私が動いたので、ルウも目が覚めたようで眠たげな声で私の名を呼ぶ。

「まだ時間があるし、もう一回する?」

 起き上がってシーツを捲ると、そこには臨戦態勢のルウのものがあった。
 あれだけして、まだ足りないのか。私の知る限り、ルウは洗浄魔法は自分にも掛けていたようだが、強化魔法も回復魔法も自分自身には掛けていなかった。
 それとも、私が気づかないうちに掛けていたのか。
 
「自分には掛けていないよ」

 私の顔にその疑問が浮かんでいたのか、ルウが教えてくれた。

「二十三回、一日一回としてひと月三十日だから、まだまだ一ヶ月分すら取り戻せていない。一日で一ヶ月分なら後七回か」
「いや、どんな目標立ててるのよ」

 指折り数えているルウにツッコミを入れる。

「・・・て」
「あ、また」
「デルフィーヌ?」
「し、黙って」

 聞こえてくるのは誰かの声。問いかけるルウを制し、そちらに注意を向ける。

「・・けて。誰か・・ここに来て、助けて」
「助けて?」
「デルフィーヌ?」
「ルウ、この奥に誰かいるみたい。助けてって言っているわ」
「え?」

 ベッドから慌てて降りて、散らばった衣服をかき集める。

「デルフィーヌ、何が聞こえるって? オレには何も聞こえない」

 そう言いつつ、ルウもベッドから全身素っ裸で立ち上がった。
 立派な筋肉に包まれた、美神の化身のような裸体が視界に入る。まだ勃ち上がったままの立派なものも目に入って、自分の体もそれを求めて疼いた。

 でも、今はそれどころではない。下着を身につけ、ズボンを履いてチュニックを頭から被る。

「ルウには聞こえないの?」

 ベルトが見当たらなくて、とりあえずブーツだけを探した。ルウも何が何やらわからないまま。「もっとしたかったのに。後五回はやりたいのに」とブツブツ言いながらも、衣服を身につけていく。

「あ、待って。何があるかわからないから、オレも行く」

 ベッドを置いてあった場所から奥へ行くと、人一人がやっと通れるほどの隙間があった。

「・・助けて」

 声はそこから聞こえる。

「デルフィーヌ!」

 普通ならルウの言うように何があるかわからないと、警戒するべきなのに、私はいてもたってもいられずに、何の躊躇も無く奥へと進んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...