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第一章

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 実際、ルドウィックじゃなくて誰と結婚するのかと考えても、これまで出会った男性の中にはいない。

「もしかしたら、王都で運命的な出会いがあるかもね。いいなぁ、いい人が出来たら、私にもその人の知り合い紹介してね」
「カイラさんは結局はそれですか」
「なによ、悪い?」

 オットーさんにバカにされて、カイラさんがムキになる。

「見つかるかどうかなんて、わかりませんよ。ルドウィックのお祝いに行くのであって、私の婚活に行くわけじゃないですから」
「そんなこと言っていると結婚できないわよ」

 日本では結婚しないという選択肢もあったが、ここではまだまだ結婚するのが当たり前で、しないのは何か後ろ暗いところがあると思われる。

「町長も、ご両親が一緒に行くのに、心配する必要なくないですか?」
「ま、まあ、それなら・・」

 チラリと町長がファルビオを見る。

「純粋に、彼女の仕事ぶりに興味があるだけです」

 町長の真意を悟った彼が、宣誓するように片手を上げる。

「そ、そうか。そうだな。彼女の仕事は確かに素晴らしい」

 あからさまにほっとした町長が、それならいいかと頷いた。


 それから早退させてもらって家にファルビオさんと一緒に家に行くことにした。
 いつも家から徒歩で通っていたが、彼の好意に甘えて馬車に乗せてもらった。

「旅で使う馬車なので、見かけより使い心地を重視しているんです」

 彼の馬車は装飾の類いは一切省いた、質素なものだったがその分長旅でも耐えられる頑丈な造りになっていた。壁も厚く矢を射貫かれても簡単には貫通しなさそうだ。
 車輪も太くて大きく、中の座席もクッションが効いていて振動を軽減させるようになっている。
 ブレアル家にある馬車は荷物を運ぶ荷馬車と、張りぼてのような一頭立てのものがあるのみ。

「女性を乗せるにはいささか素っ気なくて」
「いいえ、そんなことありません。質重視はいいことです」

 自動車に比べればまだまだという具合だが、道もアスファルトで舗装されていないのだし仕方が無い。

「馬車の乗り心地については色々案はあるのですが、なかなか技術がなくて」
「へえ、どんな案ですか?」
「たとえば、車輪にゴムを巻くとか」
「ゴム?」
「はい。鉄より衝撃を吸収しますから。でも石など道にあれば裂けちゃうかも知れません」
「つまり、悪路では難しいわけですね。他には?」
「えっと、車体にバネを仕込んで衝撃を吸収するんです。すると直接の振動が座席に伝わらなくなって、揺れが軽減されます」
「それは面白いですね」
「でも、それを実現する技術力がなくて、街の鍛冶屋とかは農具や馬具を直すのは得意ですが、そういう開発系は難しいと言われました。すぐにお金にはなりませんし」
「そうですね。でも、いいことを聞きました。開発に成功すれば、需要はあると思います」
「本当ですか?」
「ええ。素晴らしいと思います」

 ファルビオさんにアイデアを認めてもらえたばかりか、褒めてもらえて喜んだ。

「早速商業ギルドに掛け合ってみます」

 話しているうちに我が家に着いた。

「あれ、お客さん?」

 家に着くと見慣れない馬車が停まっていた。

「出直した方が良いでしょうか」

 先客があるなら遠慮しようとファルビオさんが言ったが、少し待ってもらって様子を見てくると言って先に家の中へと入った。

「帰ってください!」

 玄関を入って出迎えてくれる執事はいない。一応いるのだが、高齢なのでいちいち出迎える必要はないと言ってある。

 だからそのまま客間の方へ向かいかけて、父の怒鳴る声が聞こえて驚いた。
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