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第一章
⑦
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「王都でも、勇者様の人気は凄いですよ。過去に暗黒竜討伐を行った勇者の中でも、群を抜いた強さと人気だと噂されています」
ファルビオさんが皆に語って聞かせてくれる王都での勇者人気は、想像以上のものだった。
男性たちも目をキラキラ輝かせて聞いている。
ファルビオさんは商業ギルドに勤めて十年。主要都市のギルドを定期的に回って、ギルドの運営などに不正がないか滞りがないか、新しい販路や取引材料などを開拓しているという。
駆け出しの頃は経理もしていたらしく、そっち方面も関心があるそうだ。
「勇者の像を作る話まで出ていて、商業ギルドや職人ギルドに話が持ちかけられています。勇者景気ですね。絵姿が出れば飛ぶように売れて、限られた品物を巡って信奉者のような人達で喧嘩もあるそうです。親衛隊なんて出来ているらしいです」
「へ、へえ~、親衛隊、ねえ…」
その喧嘩がどんな風か、私の頭に思い浮かんだ。
何しろルドウィックが六才くらいの頃から、そんな光景は時折繰り広げられたからだ。
祭りにルドウィックが誰と回るのかとか、ルドウィックの誕生日のプレゼントが誰のが一番か、とか、ルドウィックが絡むと女子たちの雰囲気が殺伐としていた。
最終的には、「デルフィーヌと一緒に回る」「デルフィーヌからのプレゼントが一番」という安全パイな彼の返答で事なきを得たのだが、恨みがましい目で女の子たちから見られたことを思い出した。
(あれ? あれって角が立たないように私を利用したんじゃなくて、もしかして本気だったのかな?)
今頃になってルウの言動が、もしかしたら本気の本気だったのかと思い至った。
(ていうか、いつから? 確かずっと前からみたいに言ってたけど)
ふと二年半前のあの夜のことが蘇った。
ルウに組み敷かれ、メス落ちしてアンアン喘いでしまった。
(確かに、気持ち良かった)
思い出して赤くなってしまい、慌てて皆の話に耳を傾けた。
「こっちでも、皆がルドウィックに感謝してますけど、規模が違いますね」
リタさんが感心して言う。
こっちでは、ルドウィックのことを昔から知っているから、あの子がねぇ、立派になって、みたいに思う人が多い。
人口ピラミッドも年長者が多いので、どちらかと言えば親目線なんだろう。
しかし、王都ではまるでアイドルグループの追っかけみたいな展開になっている。
アイドルはトイレに行かないとか、訳のわからない幻想があった。
さすがにこっちの世界ではそこまで言わないだろうけど、もし勇者が私に告白し、迫ったと知られたら、きっと無事では済まされない。
秘密にしていて良かったと思った。
今のところルドウィックが私を大事に思っていたことは知られているが、シスコンくらいの認識ですんでいる。
「王宮で今度祝宴が開かれるそうですが、ブレアル家の皆さんも招待されていらっしゃるんですね」
ファルビオさんが私の方に顔を向けた。
「は、はい。それでここも暫く休むので、今日が最後なんです」
「そうなんですよ。デルフィーヌにすっかり経理を任せてたから、どうしようかと思っているんです」
自分にその穴埋めが降り掛かってくるリタさんは、今からとても不安そうだ。
「だから、そのための手引きとして資料もつくりましたし、戻ったらまた確認しますから」
「え、そんなものを作ってあるのですか!」
そこにファルビオさんが食いついた。
「それ、私も拝見させていただけますか?」
「えっと、構いませんけど…何部かありますから、一部差し上げますよ」
「本当ですか、ありがとうございます!」
カイラさんから一部もらって、彼はいたくご満悦になった。
「ところで、王都にはすぐにでも出発されるんですか?」
資料をパラパラ捲って目を通してから、ファルビオさんが聞いてきた。
「二、三日のうちには…まだ準備も途中なので」
何しろ私も母も王都どころか街を出るのも初めて。父に至っては十年ぶりの旅になる。王都に行くにはそれなりに時間も費用も掛かり、これまで行くのも大変だった。
(飛行機なんかがあればすぐなんだろうけど)
基本的に陸路の移動は徒歩か馬、馬車になる。翼竜などもあるが、それを使えるのは王族貴族だけ。貴族でも地方の貧乏貴族には手が出ない代物だ。
「もし良かったら、私達の商隊も王都に戻りますので、一緒にいかがですか? 護衛も付きますし、王都までの道のりも大勢なら心強いですよね」
いきなりの提案だったが、願ってもない提案に思えた。
正直、王都までの道のりを安全に進むには、色々不安がある。
そこらへんを考慮して、ルウからはいくら費用がかかってもいいと言われているが、貧乏生活が身に付いている私達としては、少しでも費用を押さえたいところだ。
「もちろん、かかる食費などはいくらかいただきますが、護衛などは少し上乗せすれば、ブレアル家の皆さんくらいなら、安くつきますよ」
ファルビオさんが皆に語って聞かせてくれる王都での勇者人気は、想像以上のものだった。
男性たちも目をキラキラ輝かせて聞いている。
ファルビオさんは商業ギルドに勤めて十年。主要都市のギルドを定期的に回って、ギルドの運営などに不正がないか滞りがないか、新しい販路や取引材料などを開拓しているという。
駆け出しの頃は経理もしていたらしく、そっち方面も関心があるそうだ。
「勇者の像を作る話まで出ていて、商業ギルドや職人ギルドに話が持ちかけられています。勇者景気ですね。絵姿が出れば飛ぶように売れて、限られた品物を巡って信奉者のような人達で喧嘩もあるそうです。親衛隊なんて出来ているらしいです」
「へ、へえ~、親衛隊、ねえ…」
その喧嘩がどんな風か、私の頭に思い浮かんだ。
何しろルドウィックが六才くらいの頃から、そんな光景は時折繰り広げられたからだ。
祭りにルドウィックが誰と回るのかとか、ルドウィックの誕生日のプレゼントが誰のが一番か、とか、ルドウィックが絡むと女子たちの雰囲気が殺伐としていた。
最終的には、「デルフィーヌと一緒に回る」「デルフィーヌからのプレゼントが一番」という安全パイな彼の返答で事なきを得たのだが、恨みがましい目で女の子たちから見られたことを思い出した。
(あれ? あれって角が立たないように私を利用したんじゃなくて、もしかして本気だったのかな?)
今頃になってルウの言動が、もしかしたら本気の本気だったのかと思い至った。
(ていうか、いつから? 確かずっと前からみたいに言ってたけど)
ふと二年半前のあの夜のことが蘇った。
ルウに組み敷かれ、メス落ちしてアンアン喘いでしまった。
(確かに、気持ち良かった)
思い出して赤くなってしまい、慌てて皆の話に耳を傾けた。
「こっちでも、皆がルドウィックに感謝してますけど、規模が違いますね」
リタさんが感心して言う。
こっちでは、ルドウィックのことを昔から知っているから、あの子がねぇ、立派になって、みたいに思う人が多い。
人口ピラミッドも年長者が多いので、どちらかと言えば親目線なんだろう。
しかし、王都ではまるでアイドルグループの追っかけみたいな展開になっている。
アイドルはトイレに行かないとか、訳のわからない幻想があった。
さすがにこっちの世界ではそこまで言わないだろうけど、もし勇者が私に告白し、迫ったと知られたら、きっと無事では済まされない。
秘密にしていて良かったと思った。
今のところルドウィックが私を大事に思っていたことは知られているが、シスコンくらいの認識ですんでいる。
「王宮で今度祝宴が開かれるそうですが、ブレアル家の皆さんも招待されていらっしゃるんですね」
ファルビオさんが私の方に顔を向けた。
「は、はい。それでここも暫く休むので、今日が最後なんです」
「そうなんですよ。デルフィーヌにすっかり経理を任せてたから、どうしようかと思っているんです」
自分にその穴埋めが降り掛かってくるリタさんは、今からとても不安そうだ。
「だから、そのための手引きとして資料もつくりましたし、戻ったらまた確認しますから」
「え、そんなものを作ってあるのですか!」
そこにファルビオさんが食いついた。
「それ、私も拝見させていただけますか?」
「えっと、構いませんけど…何部かありますから、一部差し上げますよ」
「本当ですか、ありがとうございます!」
カイラさんから一部もらって、彼はいたくご満悦になった。
「ところで、王都にはすぐにでも出発されるんですか?」
資料をパラパラ捲って目を通してから、ファルビオさんが聞いてきた。
「二、三日のうちには…まだ準備も途中なので」
何しろ私も母も王都どころか街を出るのも初めて。父に至っては十年ぶりの旅になる。王都に行くにはそれなりに時間も費用も掛かり、これまで行くのも大変だった。
(飛行機なんかがあればすぐなんだろうけど)
基本的に陸路の移動は徒歩か馬、馬車になる。翼竜などもあるが、それを使えるのは王族貴族だけ。貴族でも地方の貧乏貴族には手が出ない代物だ。
「もし良かったら、私達の商隊も王都に戻りますので、一緒にいかがですか? 護衛も付きますし、王都までの道のりも大勢なら心強いですよね」
いきなりの提案だったが、願ってもない提案に思えた。
正直、王都までの道のりを安全に進むには、色々不安がある。
そこらへんを考慮して、ルウからはいくら費用がかかってもいいと言われているが、貧乏生活が身に付いている私達としては、少しでも費用を押さえたいところだ。
「もちろん、かかる食費などはいくらかいただきますが、護衛などは少し上乗せすれば、ブレアル家の皆さんくらいなら、安くつきますよ」
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