忘れられた公主と幽霊宮女

桜陽(おうよう)国はかつて家臣である高氏が隆盛を極め国を支配し、皇帝さえも牛耳っていた。しかし若き皇帝の劉帆(りゅうほ)が信頼のおける家臣と共に高氏を滅し、皇帝の権力を取り戻すことに成功した。
高氏の一族である皇后、華蘭は廃妃となり、冷宮に幽閉され、貴妃であった柳 紅花(りゅう ほんふぁ)が皇后となった。紅花皇后はすぐに皇太子の泰然(たいらん)を生んだ。しかしほぼ同日、廃妃華蘭も皇帝の娘を生んだ。廃妃は出産と同時に生命を落とし、廃妃から生まれた公主は、父劉帆から名も与えられず、そのまま冷宮でわずかな使用人と共に育つ。
 それから十数年、劉帆と紅花の間にはもう一人公主凜花(りんふぁ)も生まれ、皇帝劉帆の治世は前途洋々だった。
しかし皇太子泰然は皇帝となるにはいささか突出した才能もなく、側近で一歳違いのいとこ柳 愁宇(りゅう しゅうゆ)の優秀さに敵わなず、そのことに苛立ちを覚えていた。
一方、廃妃が生んだ公主は名も無いまま、華蘭の娘を略して蘭娘(らんにゃん)と呼ばれ冷宮で暮らしている…はずだった。

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