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16 突然のカミングアウト
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「青い薔薇と救世の乙女」という乙女ゲームで、悪役令嬢アシュリーの手先、コリンヌ
それが私の生まれ変わった人物だ。
婚約者であるフランシス王子に近づく邪魔な虫てして、ヒロインに数々の嫌がらせをする悪役令嬢と、その実行犯であるコリンヌは、最後には国外追放される。
その後の人生は語られることはないが、せっかく生まれ変わった人生で、そんな結末は御免被りたい。
お嬢様にヒロインのことで、私に頼み事があると言われ、私は身構えた。
(まさかお嬢様、ヒロインに嫌がらせしろとか?)
「た、頼み事…とは? いくらお嬢様の頼みでも、人の物を壊したり怪我をさせたりは無理です」
「え?」
先に断ってしまおう。
「何を言っているの? そんなこと、コリンヌにさせるわけがないでしょ。第一、私もそんなことしたくないわ」
「あ、そ、そうですよね。すみません」
つい先走って言ってしまった。
「今日は変よ、やっぱり具合でも悪い?」
「いえ、大丈夫です」
「本当に? 無理していない?」
「ほ、ほんとに大丈夫です。それより、私にしてほしいこととは?」
怪我をしたことがあるからか、私の体調をお嬢様はいつも気遣われる。
「ああ、今朝あなたが見たという女性は、キャロラインと言うのだけどね」
「やっぱり」
「え?」
「あ、いえ、何でもありません。それで、そのキャロラインというお嬢さんは、どのような方なのですか?」
「彼女、平民だけど魔法が使えるの」
それも知っている。平民の中には時折魔法が使える者がいて、ヒロインの彼女はそれがあるからこのアカデミーに通える。
「それで昔、お忍びで街に出たフランシス殿下とお会いしたこともあって…」
「殿下と?」
ヒロインと攻略対象の王子が、過去に実は出会っていた。
そんなエピソードあったのかな?
「彼は彼女のことが好きなの」
「え、な、なんですって! だ、誰が誰を好きって?」
「フランシス殿下がキャロラインを、キャロラインも殿下のことが好き」
「そ、それは相思相愛と言うのでは? え、殿下はお嬢様と婚約されているのですよね?」
ヒロインと攻略対象か結ばれるというのがゲームの設定だから、仕方がないとは言え、考えてみれば、婚約者がいる相手を横から割り込んできたヒロインが誘惑するとか、倫理的にどうなんだろう。
「婚約は、あくまでも婚約で、結婚するかどうかはわからないわ。それに、私は殿下と結婚するつもりはないの」
「え? あの、ちょっと待ってください。結婚する気はないって?」
殿下とお嬢様が結ばれる云々とか、殿下がヒロインを好きになり、相思相愛とかは予想できたが、お嬢様が殿下と結婚するつもりはないとか、まるで予想していなかった。
「一体どうなっているのですか?」
「私も殿下も婚約はあくまで周りからうるさく言われないための、言わば偽装なの」
「ぎ、偽装?」
「そうよ。殿下はキャロラインのことが好きで、彼女と結婚したい。でも、平民の彼女と王子である殿下の結婚を周りがすんなり認めるわけがないでしょ」
「そ、それは…そうですが」
「でも誰とも婚約しないと、周りがうるさい。だから私と偽装婚約をして、他の令嬢との婚約話が来ないようにしていたの」
王子とヒロインはアカデミー入学前にすでに恋仲だった。
それを知っていて、お嬢様は仮の婚約を受け入れた。
「彼女が魔法を使え、その力が認められれば周りを説得もできると思うの。だから私はアカデミーにいるうちに魔法と淑女教育について、彼女の助けをするの。私が受けた王子妃教育を、そのままあの子に教えてあげてね。あなたにも協力してほしいの」
「でも、殿下の事情はそうだとして、お嬢様は? お嬢様はなぜ殿下に協力するのですか?」
殿下の事情はわかったが、お嬢様がそこに協力する理由とは、何なのだろう。
単に王子の頼みだから断れなかったとかだろうか。
「私の病気、もうすぐ治りそうなの。もし病気が治ったら、その後のことで王家の力が必要になるから、そのための取引よ」
「え、お、お嬢様、ご病気、治るんですか!」
色々聞かされて驚きの連続だが、今日一番驚いたのは、そのことだった。
それが私の生まれ変わった人物だ。
婚約者であるフランシス王子に近づく邪魔な虫てして、ヒロインに数々の嫌がらせをする悪役令嬢と、その実行犯であるコリンヌは、最後には国外追放される。
その後の人生は語られることはないが、せっかく生まれ変わった人生で、そんな結末は御免被りたい。
お嬢様にヒロインのことで、私に頼み事があると言われ、私は身構えた。
(まさかお嬢様、ヒロインに嫌がらせしろとか?)
「た、頼み事…とは? いくらお嬢様の頼みでも、人の物を壊したり怪我をさせたりは無理です」
「え?」
先に断ってしまおう。
「何を言っているの? そんなこと、コリンヌにさせるわけがないでしょ。第一、私もそんなことしたくないわ」
「あ、そ、そうですよね。すみません」
つい先走って言ってしまった。
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「いえ、大丈夫です」
「本当に? 無理していない?」
「ほ、ほんとに大丈夫です。それより、私にしてほしいこととは?」
怪我をしたことがあるからか、私の体調をお嬢様はいつも気遣われる。
「ああ、今朝あなたが見たという女性は、キャロラインと言うのだけどね」
「やっぱり」
「え?」
「あ、いえ、何でもありません。それで、そのキャロラインというお嬢さんは、どのような方なのですか?」
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そんなエピソードあったのかな?
「彼は彼女のことが好きなの」
「え、な、なんですって! だ、誰が誰を好きって?」
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「そ、それは相思相愛と言うのでは? え、殿下はお嬢様と婚約されているのですよね?」
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「え? あの、ちょっと待ってください。結婚する気はないって?」
殿下とお嬢様が結ばれる云々とか、殿下がヒロインを好きになり、相思相愛とかは予想できたが、お嬢様が殿下と結婚するつもりはないとか、まるで予想していなかった。
「一体どうなっているのですか?」
「私も殿下も婚約はあくまで周りからうるさく言われないための、言わば偽装なの」
「ぎ、偽装?」
「そうよ。殿下はキャロラインのことが好きで、彼女と結婚したい。でも、平民の彼女と王子である殿下の結婚を周りがすんなり認めるわけがないでしょ」
「そ、それは…そうですが」
「でも誰とも婚約しないと、周りがうるさい。だから私と偽装婚約をして、他の令嬢との婚約話が来ないようにしていたの」
王子とヒロインはアカデミー入学前にすでに恋仲だった。
それを知っていて、お嬢様は仮の婚約を受け入れた。
「彼女が魔法を使え、その力が認められれば周りを説得もできると思うの。だから私はアカデミーにいるうちに魔法と淑女教育について、彼女の助けをするの。私が受けた王子妃教育を、そのままあの子に教えてあげてね。あなたにも協力してほしいの」
「でも、殿下の事情はそうだとして、お嬢様は? お嬢様はなぜ殿下に協力するのですか?」
殿下の事情はわかったが、お嬢様がそこに協力する理由とは、何なのだろう。
単に王子の頼みだから断れなかったとかだろうか。
「私の病気、もうすぐ治りそうなの。もし病気が治ったら、その後のことで王家の力が必要になるから、そのための取引よ」
「え、お、お嬢様、ご病気、治るんですか!」
色々聞かされて驚きの連続だが、今日一番驚いたのは、そのことだった。
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