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1 お嬢様と私
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「アシュリーお嬢様、この子がコリンヌです。今日からアシュリーお嬢様の遊び相手を努めさせていただきます。いずれはお嬢様専属のメイドとなります」
私は初めて訪れた公爵家で、この家の長女、アシュリー様に紹介された。
「こんにちは、コリンヌ」
そう言って笑うお嬢様は、銀糸の髪が陽光にキラキラ輝き、宝石のように綺麗な紫の瞳が美しい天使のようだった。
その笑顔を見て四歳の私は突然前世の記憶を思い出した。
ーあれ、これって私がこの前まではまっていた乙女ゲーム?アシュリーって、フランシスルートの悪役令嬢じゃなかった?コリンヌって彼女の手駒としてヒロインを苛めたりするメイドじゃなかった?
「こらコリンヌ、お嬢様に見惚れていないでちゃんと挨拶しなさい。お嬢様すいません。この子、いつもはきちんと挨拶できる子なんですが……」
「ほほ、まだ四歳なのだから無理はないわ」
「すみません。奥様……」
私の隣のぽっちゃりしたおばさん。修道院長が申し訳なさそうに謝る。
コリンヌはもとは男爵家の娘だったが、二歳の時に流行り病で両親を亡くし、修道院に併設された孤児院で育った。
帰る家もなく、悪役令嬢となるアシュリーにこき使われるしかなかった。
というのがコリンヌの境遇。
私の無作法にも怒ることなく、アシュリーお嬢様の母上、マデリーン公爵夫人は、優しく微笑む。アシュリーと同じ色の髪で瞳は深い緑をしていてはかなげな美女だ。彼女は今妊娠中で、今にもはちきれそうなお腹をしている。
あれ?アシュリーの母親は彼女が六歳の時に亡くなったんじゃなかった?確か妊娠中にアシュリーのせいで階段を踏み外して事故にあって……そのせいで父親である公爵に厳しくされて性格が歪んじゃったんじゃなかった?
「あの……アシュリーは、今何歳ですか?」
「こら、お嬢様とお呼びなさい」
「構わないわ。そのうち礼儀作法を身に付けさせますから」
「アシュリーはね、もうすぐ六歳よ」
指を六本立てて教えてくれるお嬢様は、年相応のあどけなさを見せた。その仕草はとても愛らしい。
「あら、どうしたのかしら、顔が真っ青よ。初めて来た場所で緊張したのかしら」
彼女の年齢を聞いて、さあっと血の気が引いた私は、その場でばったり倒れこんでしまった。
私は初めて訪れた公爵家で、この家の長女、アシュリー様に紹介された。
「こんにちは、コリンヌ」
そう言って笑うお嬢様は、銀糸の髪が陽光にキラキラ輝き、宝石のように綺麗な紫の瞳が美しい天使のようだった。
その笑顔を見て四歳の私は突然前世の記憶を思い出した。
ーあれ、これって私がこの前まではまっていた乙女ゲーム?アシュリーって、フランシスルートの悪役令嬢じゃなかった?コリンヌって彼女の手駒としてヒロインを苛めたりするメイドじゃなかった?
「こらコリンヌ、お嬢様に見惚れていないでちゃんと挨拶しなさい。お嬢様すいません。この子、いつもはきちんと挨拶できる子なんですが……」
「ほほ、まだ四歳なのだから無理はないわ」
「すみません。奥様……」
私の隣のぽっちゃりしたおばさん。修道院長が申し訳なさそうに謝る。
コリンヌはもとは男爵家の娘だったが、二歳の時に流行り病で両親を亡くし、修道院に併設された孤児院で育った。
帰る家もなく、悪役令嬢となるアシュリーにこき使われるしかなかった。
というのがコリンヌの境遇。
私の無作法にも怒ることなく、アシュリーお嬢様の母上、マデリーン公爵夫人は、優しく微笑む。アシュリーと同じ色の髪で瞳は深い緑をしていてはかなげな美女だ。彼女は今妊娠中で、今にもはちきれそうなお腹をしている。
あれ?アシュリーの母親は彼女が六歳の時に亡くなったんじゃなかった?確か妊娠中にアシュリーのせいで階段を踏み外して事故にあって……そのせいで父親である公爵に厳しくされて性格が歪んじゃったんじゃなかった?
「あの……アシュリーは、今何歳ですか?」
「こら、お嬢様とお呼びなさい」
「構わないわ。そのうち礼儀作法を身に付けさせますから」
「アシュリーはね、もうすぐ六歳よ」
指を六本立てて教えてくれるお嬢様は、年相応のあどけなさを見せた。その仕草はとても愛らしい。
「あら、どうしたのかしら、顔が真っ青よ。初めて来た場所で緊張したのかしら」
彼女の年齢を聞いて、さあっと血の気が引いた私は、その場でばったり倒れこんでしまった。
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