【完結:R18】女相続人と辺境伯

七夜かなた

文字の大きさ
上 下
34 / 68

33

しおりを挟む
三日目の朝に扉を開けると、廊下にメリッサとクリオが待っていた。

「待っていたのか」

「そろそろだと思っておりました……」

「ようやく眠りについた……様子を診てやってくれ」

体をずらし、二人が中に入るのと入れ替わりに廊下に出て歩きだす。

「急いで湯浴みの支度を」

「いい。少し仮眠を取る」

ヘドリックが駆け寄ってきたので、そうやり取りをして自分の寝室に向かうと、どさりと寝台に倒れ込んだ。後ろからついてきたヘドリックが差し込む朝日を遮るためにカーテンを引く。

体は微かな疲労を感じてはいるが、気は昂っていてすぐには眠れそうにない。

「何かあったか?」

枕に顔を臥せたまま、丸二昼夜籠っていた間にあったことについて訊ねる。

「昨日が亡くなりました」

あの者とはもちろんセレニアに薬を飲ませた男のことだ。名はカーターだったか。

「……………そうか……で、父親は自分の息子がしたことについて何か言ってきたか?」

禁制の薬を手配し、暴力で女を拉致して手込めにしようとした息子の所業を、父親がまったく知らなかったとは考えにくい。

「旦那さまに目通りしたいと昨夜詰めかけてきましたが、取り込み中だと言って追い返しました」
「警使に通報して、薬の入手経路を確認しろと言え。父親が何か知っているだろう」
「はい、そのように既に手配しております」

手際の早さにヘドリックの方を振り返ると、すました顔で畏まっている。

「優秀な家令で助かる」
「お褒めに預かり光栄でございます。それで、もうひとつの方はいかがしたしましょう」
「ヴェイラート家か……何か言ってきたか?」
「表立っては何も……自分たちには責任のないことと思っているようです」
「あそこから呼び出された帰りにあのような目にあったのだ。少なくともセレニアがあの夜あそこに行くことは伝わっていたということ。カーターがしようとすることが何か知らなかったとしても、おびきだす手助けはしたはずだ」
「セレニアさんを送った馬車の御者にそれとなく探りを入れております。頭に怪我を負っていて襲われたと申しておりますが、恐らく嘘でしょう」
「わかった。そのまま調べを続けてくれ」
「かしこまりました。それで、セレニアさんの容態は?」
「今は眠っている。多分だが薬は抜けただろう」
「そうですか……安心いたしました」
「取りあえず大事には至らなかったが、目が覚めたらきっと取り乱すだろう」

命は助かったが、次に目が覚めて自分の身にあったことを知れば、喜んでばかりもいられないだろう。
救いは、意識が混濁する前に自分が何を飲まされ、これからどうなるのか、どうすれば助かるのか聞かされていたことだ。

わけもわからず気がつけば純潔を失っていたことを知るよりは、すぐには受け入れなくても致し方なかったと納得してくれるかもしれない。

「何かお召し上がりになりますか?」

「そうだな、頼む」

「では、用意してまいります」

ヘドリックが出ていき、一人になると、まだ体に残る残り香や肌に触れた時の感触を思い出す。

確かに豊満さには欠けていたかも知れない。だが、十分に成熟した美しい女性に成長していた。

薬のせいでかなり敏感になっていたのか、初めてにしては最初から濡れていて、よく反応していた。

沈み込んだ意識の中で、何度も何度も彼女は絶頂を迎え、次第にその間隔が短くなっていった。
明らかに彼女の体が開きつつあることを実感した。

彼女の中に精を放ち、少し休んでまた抱くというのを繰り返した。一回では彼女の熱は収まらない。途中何度もぐったりしながらも、疼く体が歯痒いのか、無意識に自分の手で快感を得ようと手足を動かす。
その度に満足できるように手を添えると、恍惚とした表情で喘いだ。

彼女の中は火傷しそうなくらいに熱く、中にある自分のものが熔けそうだった。

しなやかに長い手足を絡み付かせ、控え目な双丘の先端がピンと勃つのを見て、思わずごくりと唾を飲み込んだ。

少女から大人へ、両親を亡くして祖父母の家に引き取られた時から、その成長を見守ってきた。

5年前、討伐に向かうところを祖父母たちと見送りにきていたのは、つい昨日のように思う。

それが今、自分の下に組み敷き、命を救うためとは言え、熱が覚めるまで貫かれ抱き続けられている。

何度目かの絶頂に、私の性器を咥え込んだまま彼女の膣壁が痙攣して、遂に自分もった。

「く……」

汗で湿り気を帯びた彼女の体を正面から抱き締め、自分の中で彼女の存在がどれ程大きかったか、ようやく気づき愕然とした。

こんなことにならなければ、果たして気づいただろうか。

きっと失って初めて気づいたかも知れない。

顔に貼り付く髪をかきあげて彼女の紅潮した顔を覗き込む。

サリヴァン子爵家のメリルリースを見て、気持ちが動かされていなければ、自分の内にあった本当に大切なものに気づかなかったかも知れない。

音を立てず静かに落ちてやがて積みあがっていく落ち葉のように、しんしんと降り積もる雪のように、セレニアへの慈しみが心の奥底に重なり積もっていた。

熱く猛り狂うような激しさはなく、ただただ、彼女が愛おしい。

頬に何かが流れるのに気づき、自分が泣いていることに気付いた。

彼女が望むなら、自分は彼女の望むものになろう。

兄でも父でも何でもいい。願わくは、彼女が愛する唯一無二の男でありたい。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

処理中です...