14 / 23
13
しおりを挟む
(何なのよ。あの人)
逃げるように会社に向かう。
今更だけど名刺を渡したのはまずかったと思うが、それも後の祭りだ。
(そう言えば、尚弥さんのこと、どうしよう)
国見さんとのやり取りで、すっかり忘れていたが、突然別れのメールを送ってきた彼のことを思い出した。
(これが怪我の功名?)
メールを見たときは、青天の霹靂。お先真っ暗な気分だったけど、お腹が膨らみ、国見さんとのやり取りでハラハラしたりドキドキしたおかげで、一歩引いて彼との関係を見つめ直すことが出来た。
考えてみれば、三ヶ月前の近藤家のお通夜に行った頃から、彼の様子がおかしかった。
メールの返事は遅いし、デートも仕事の帰りに食事をする程度で、休みの日は実家の親がとか、同級生がとか、色々理由を付けては会ってくれなくなった。
『メールじゃなく、一度きちんと会って話をしたい。連絡ください』
そうメールを送った。文章だと、感情が伝わりにくい。それが今は有り難かった。
事務所に帰り、事務を片付け、定時には仕事を終えて帰ろう。
今は決算期ではないので、殆ど定時に退勤出来ている。
私もメールをチェックしてから帰った。
その時、携帯が鳴った。
発信元は森本尚弥だ。
深呼吸して、私は携帯に出た。
「もしもし」
「お前が何を言っても、俺は別れると決めた。もともと何の約束もしていなかったはずだ」
開口一番、そう畳み掛けてきた。
「…別れるのがイヤとか、駄々をこねるつもりはないわ。ただ、どういう経緯で、そう結論に至ったのか、聞きたいだけ」
「お前より、もっといい女性に巡りあった。向こうも俺のことが好きだと言ってくれて、暫く前から付き合っている」
「二股?」
「お前みたいなお固くて、つまらない女が、俺みたいな男と付き合えただけでも、有り難く思ってくれ」
「……なにそれ、酷い」
酷い言われように、携帯を持つ手が震える。
最初からモラハラめいた所はあったけど、容赦ない言葉に涙が滲む。
「会って話すことない。月曜からはただの先輩と後輩だ」
「……そんないきなり…」
「嫌なら仕事、辞めるか? その方がお前も楽だろう」
「なんで…私が辞めるのよ」
気不味くさせたのは、向こうなのに、私が辞めると決めつけられ、腹が立った。
「とにかく、二人きりでは会わない。彼女も嫌がるし」
「わかったわ」
あまりに腹が立って、私から電話を切った。
すぐに、「勝手に切るな」と抗議のメールが来たが、無視することにした。
酷い、酷すぎる。
なんであんなふうに言われないといけないのか。悪いのは先に浮気した向こうなのに。
それとも、私のほうが浮気なんだろうか。
もんもんとした想いを抱えながら、私は週末を過ごした。
逃げるように会社に向かう。
今更だけど名刺を渡したのはまずかったと思うが、それも後の祭りだ。
(そう言えば、尚弥さんのこと、どうしよう)
国見さんとのやり取りで、すっかり忘れていたが、突然別れのメールを送ってきた彼のことを思い出した。
(これが怪我の功名?)
メールを見たときは、青天の霹靂。お先真っ暗な気分だったけど、お腹が膨らみ、国見さんとのやり取りでハラハラしたりドキドキしたおかげで、一歩引いて彼との関係を見つめ直すことが出来た。
考えてみれば、三ヶ月前の近藤家のお通夜に行った頃から、彼の様子がおかしかった。
メールの返事は遅いし、デートも仕事の帰りに食事をする程度で、休みの日は実家の親がとか、同級生がとか、色々理由を付けては会ってくれなくなった。
『メールじゃなく、一度きちんと会って話をしたい。連絡ください』
そうメールを送った。文章だと、感情が伝わりにくい。それが今は有り難かった。
事務所に帰り、事務を片付け、定時には仕事を終えて帰ろう。
今は決算期ではないので、殆ど定時に退勤出来ている。
私もメールをチェックしてから帰った。
その時、携帯が鳴った。
発信元は森本尚弥だ。
深呼吸して、私は携帯に出た。
「もしもし」
「お前が何を言っても、俺は別れると決めた。もともと何の約束もしていなかったはずだ」
開口一番、そう畳み掛けてきた。
「…別れるのがイヤとか、駄々をこねるつもりはないわ。ただ、どういう経緯で、そう結論に至ったのか、聞きたいだけ」
「お前より、もっといい女性に巡りあった。向こうも俺のことが好きだと言ってくれて、暫く前から付き合っている」
「二股?」
「お前みたいなお固くて、つまらない女が、俺みたいな男と付き合えただけでも、有り難く思ってくれ」
「……なにそれ、酷い」
酷い言われように、携帯を持つ手が震える。
最初からモラハラめいた所はあったけど、容赦ない言葉に涙が滲む。
「会って話すことない。月曜からはただの先輩と後輩だ」
「……そんないきなり…」
「嫌なら仕事、辞めるか? その方がお前も楽だろう」
「なんで…私が辞めるのよ」
気不味くさせたのは、向こうなのに、私が辞めると決めつけられ、腹が立った。
「とにかく、二人きりでは会わない。彼女も嫌がるし」
「わかったわ」
あまりに腹が立って、私から電話を切った。
すぐに、「勝手に切るな」と抗議のメールが来たが、無視することにした。
酷い、酷すぎる。
なんであんなふうに言われないといけないのか。悪いのは先に浮気した向こうなのに。
それとも、私のほうが浮気なんだろうか。
もんもんとした想いを抱えながら、私は週末を過ごした。
19
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
【R18/TL】息子の結婚相手がいやらしくてかわいい~義父からの求愛種付け脱出不可避~
宵蜜しずく
恋愛
今日は三回目の結婚記念日。
愛する夫から渡されたいやらしい下着を身に着け、
ホテルで待っていた主人公。
だが部屋に現れたのは、愛する夫ではなく彼の父親だった。
初めは困惑していた主人公も、
義父の献身的な愛撫で身も心も開放的になる……。
あまあまいちゃラブHへと変わり果てた二人の行く末とは……。
────────────
※成人女性向けの小説です。
この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
拙い部分が多々ありますが、
フィクションとして楽しんでいただければ幸いです😊
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜
まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください!
題名の☆マークがえっちシーンありです。
王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。
しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。
肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。
彼はやっと理解した。
我慢した先に何もないことを。
ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。
小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。
【R18】絶倫にイかされ逝きました
桜 ちひろ
恋愛
性欲と金銭的に満たされるからという理由で風俗店で働いていた。
いつもと変わらず仕事をこなすだけ。と思っていたが
巨根、絶倫、執着攻め気味なお客さんとのプレイに夢中になり、ぐずぐずにされてしまう。
隣の部屋にいるキャストにも聞こえるくらい喘ぎ、仕事を忘れてイきまくる。
1日貸切でプレイしたのにも関わらず、勤務外にも続きを求めてアフターまでセックスしまくるお話です。
巨根、絶倫、連続絶頂、潮吹き、カーセックス、中出しあり。
【R18】セックスアンドロイド
桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの女性向け風俗。
恋人プレイだのイチャイチャなんて必要ない。
ただ気持ち良くなって性欲を発散したいだけの私にぴったりなデリヘルを見つけた。
当店はオーダーシートに従ってキャストを派遣します。
ーセックスアンドロイドー
18禁
風俗・中出し・絶倫・潮吹き・お漏らし・アナル・二穴プレイ・連続絶頂・執着責めなど
苦手な方はご遠慮ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる