謎めいたおじさまの溺愛は、刺激が強すぎます

七夜かなた

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「旭、どこに行っていた⁉」

 式場に戻ると、父が待ち構えていた。

「えっと…」
「有美の弟だとか言う男を追いかけて行ったと聞いたが、何を話していた」
「別に…ただ返礼品を渡しただけで…」
「旭さん、だめよ。あんな子、相手にしては」

 有美さんが横から口を出す。

「あんなって…」

 色々事情はあるだろうけど、半分血が繋がった弟なのに。

「あの子、あの顔でしょ。昔から女性にもてて、中学生の頃からとっかえひっかえで、トラブルも多かったのよ。警察ざたになったこともあるのよ。不良の仲間とつるんで無断外泊ばかりしていて、本当に困った子だったわ」

 有美さんはホトホトと彼の過去について語る。何でも大げさに言う人なのはわかっているので、私は話半分に聞いていた。

「女に節操のないような、悪い男に関わるな。お前は特に気をつけろ。父さんの言っている意味は分かっているな」

 母親のようになるな。言外にそう言っているのだ。

「高校を卒業したらすぐにいなくなって、何処で何をしているのか…」
「ふん、あの様子ではヒモにでもなっているか、ホストか何かだろう」

 確かにホストっぽい名刺を出したし、迎えに来た女性も水商売風だった。

「別に…私は。ただ、香典をいただいたのに、何もないなんて、悪いと思ったから…」
「まあ、そんな男に引っかかるのは、馬鹿で頭の軽い、淫乱だろうけどな」

 明らか偏見で、女性蔑視な父の言い方は今に始まったことではない。それより私は、彼の目に浮かんでいた涙が気になっていた。

「まあまあ、そう、あからさまに怒らないでください。私が頼んだんです」

 区長が助け舟を出してくれて、その場はそれ以上ガミガミ言われることはなかった。

「かなりおじさんだけど、確かに格好良かったわよね」

 私が叱られているのを黙って見ていた穂香が、こっそり父達に聞こえないように私に言った。
 
「イケオジだし、危ない雰囲気が素敵じゃない? お姉ちゃんもそう思ったでしょ」
「私は…そんなこと」

 顔は良いのは否定しないが、だからと言って、私には縁のないタイプなのは明らかだ。
 彼を迎えに来た女性も、スタイルも良く化粧のお陰もあるだろうけど、かなり美人だった。
 
「お姉ちゃんは、真面目だもんね。お固い仕事のつまんない人と結婚するんだろうな。ああいう人は、お父さんが絶対認めないだろうし」
「当たり前でしょ」
「あ~私がもっと年上だったら、お付き合いくらいしてみたかったなぁ」
「だめよ穂香」
「わかってます、冗談よ。大学生くらいまでならいいけど、お母さんの弟だし、三十過ぎのおじさんじゃあねぇ」

 穂香は冗談だと言っていたが、私は冗談でもそんなこと言えない。

 でも、こんなにも違うんだなぁと、さっきの女性の姿を思い出して思った。
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