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そして彼はもう一度上着の内ポケットに手を入れ、黒の水引が付いた香典袋を取り出し、手島氏に渡す。
一体いくら入っているのかわからないが、香典にしてはとても分厚かった。
「いや、喪主からは香典は遠慮するようにと…」
「そうなんですか? でもせっかく用意してきたので、受け取ってください」
そう言って、彼はさっさと式場の方へ行ってしまった。
「……もらっていいんですか?」
百万くらい入っていそうな香典袋を眺め、三人で顔見合わせる。
「まあ…身内から…だしな」
区長がそう言うならと、口出しはしないで置こうと思った。
「帰れ!」
怒鳴り声が聞こえてきたのは、その時だった。
「どの顔でここに来た!」
怒鳴り声は有美さんのお兄さんで、喪主の正尚さんだ。
「やっぱりな」
区長がボソリと呟いた。
「今更来て遅いんだ!」
「ちょっと兄さん、やめてよ」
有美さんが注意する声も聞こえてる。
「まあ、そうなるだろうな」
訳を知っているらしい区長さんが、苦虫を噛み潰したような顔でため息をついた。
「唯斗さんって、亡くなった宰さんが水商売の女に産ませた子供で、母親に捨てられえ近藤家に引き取られたって聞いてます」
会計係の太田さんが、自分の知っていることを話す。
「まあ、正尚君たちにとっては面白くないわな。自分たちの母親が病気で入院している間に、父親が外に女を作って子供まで産んだなんて知ったら」
「結局、恭子さん…正尚君たちの母親は亡くなってしまって、唯斗君の母親も他に男が出来て、宰さんに押しつけるように唯斗君を置いていったから」
まるでドラマ一本出来上がりそうな話だった。
でも母親が男と…それを聞いて、私はドキリとしてしまった。
一体いくら入っているのかわからないが、香典にしてはとても分厚かった。
「いや、喪主からは香典は遠慮するようにと…」
「そうなんですか? でもせっかく用意してきたので、受け取ってください」
そう言って、彼はさっさと式場の方へ行ってしまった。
「……もらっていいんですか?」
百万くらい入っていそうな香典袋を眺め、三人で顔見合わせる。
「まあ…身内から…だしな」
区長がそう言うならと、口出しはしないで置こうと思った。
「帰れ!」
怒鳴り声が聞こえてきたのは、その時だった。
「どの顔でここに来た!」
怒鳴り声は有美さんのお兄さんで、喪主の正尚さんだ。
「やっぱりな」
区長がボソリと呟いた。
「今更来て遅いんだ!」
「ちょっと兄さん、やめてよ」
有美さんが注意する声も聞こえてる。
「まあ、そうなるだろうな」
訳を知っているらしい区長さんが、苦虫を噛み潰したような顔でため息をついた。
「唯斗さんって、亡くなった宰さんが水商売の女に産ませた子供で、母親に捨てられえ近藤家に引き取られたって聞いてます」
会計係の太田さんが、自分の知っていることを話す。
「まあ、正尚君たちにとっては面白くないわな。自分たちの母親が病気で入院している間に、父親が外に女を作って子供まで産んだなんて知ったら」
「結局、恭子さん…正尚君たちの母親は亡くなってしまって、唯斗君の母親も他に男が出来て、宰さんに押しつけるように唯斗君を置いていったから」
まるでドラマ一本出来上がりそうな話だった。
でも母親が男と…それを聞いて、私はドキリとしてしまった。
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