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第1章
第12話 初仕事
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今日から働く場所を案内して貰い、働く人に挨拶をして回った。
最後に寝泊りをする部屋へ行き、荷物を下ろす頃には日が昇っている。
「メイド服はあちらのクローゼットにありますので、後で着替えて下さい。サイズは聖女様より伺っております。靴と靴下も中に入っておりますが、問題があれば言ってください」
「分かりました」
「ソフィー様のお食事は7時30分に持って行きますので、その時間には厨房に来てください」
メイド長はそう言って、部屋を出て行った。
部屋の時計を見る。後15分程後の話だ。
マリアはメイド服に着替え、鏡に自分の姿を映す。
メイド長よりスカートの丈が短く、エプロンとキャプ、靴下にまでフリルが付いている。靴はローファータイプのシンプルなデザインだ。
見慣れない自分の姿に少し笑ってしまう。
全般的に可愛らしいデザインとなっている。
働くのにフリルは必要なのか? マリアはそう考えた後、夜伽と言う単語がちらつき、頭を振った。
マリアは自分の頬を叩いて気合を入れると、部屋を出た。
***
厨房の中は、先程より人数が増え慌ただしくなっている。
メイド長と目が合うと、大きめな銀色のトレイを持って部屋から出て来た。料理が冷めないよう、銀色の蓋で閉まっている。
長い廊下を2人で歩く。
「料理、持ちましょうか?」
「今回は私が持っていきます。ただ、突き当りにある扉を開けるのはマリアにお願いします」
突き当りの扉を開けると、中は螺旋階段になっており、マリアは息を飲んだ。
長い、果てしなく長い。
マリアは嫌な予感がした。
「もしかしてここ、一番高い塔の中ですか?」
「そうです、大体60m程の高さと聞いています」
「これを1日3回上るわけですよね?」
「その通りです」
これはある意味、畏怖だなぁと、マリアは思った。
メイド長の後に続いて、階段を上る。
小さな窓から日の光が入って来るが、基本的には薄暗く、不気味だ。
この塔は城の一番端の方に建っており、ここはある意味牢獄だと、マリアは感じた。
最上階にある部屋の扉を叩こうとした時、すぐに止められた。
「会議などがない時は、基本的にはまだ眠りに付いています。ソフィー様は煩わしいのを嫌います。静かに戸を開ける、静かに仕事を行う事を心掛けてください」
「お昼と夜もですか?」
「そうです。いつ来るか分かるのなら、こちらが意思表示をする必要はない、と言うのが姫様の考えです」
長いトレイを器用に片手だけで持ち、ポケットから懐中時計を取り出す。
「つまり、時間遵守でお願いします。それぞれの時間帯は後で紙に書いて渡します」
針が時を刻む。
「今から入りますが、音を立てない、声は出さない、を心掛けて下さい。質問は後で伺います」
戸が開き、部屋の風景が広がる。
広々としているが、薄暗い。
部屋に入ってすぐに一人用の机があり、トレイがすでに置かれているが、その横に同じ物を乗せられる。
ドーム型の天井、アーチ型の細長い窓が北、東、西の壁にそれぞれ点在している。
部屋の奥に天蓋付きのベット。カーテンが閉まっており、中は見えない。
メイド長は部屋の隅にある扉を開き、マリアが入ると直ぐに閉めた。
洗面台、トイレ、お風呂があり、棚から掃除用具を取り出し磨いて行く。
マリアは言われた通り、黙って観察した。
掃除が終わると、机にある昨日のトレイを回収し、部屋から出ていく。
「朝はこれがルーチンとなります。昼と夜は食事の運搬だけです」
「部屋の掃除とかはいいんですか?」
「部屋の掃除、シーツの交換は月一の会議でソフィー様がいない時に人数を集めて終わらせますが、それはは2日前に終っています。次の掃除の時までに人手が集まらなければ、マリアにも参加して貰います」
「分かりました」
「他に質問はありますか?」
「そうですね、今は特にありませんかね」
「分かりました。質問は何時でも伺います」
「ありがとうございます」
「厨房に戻る頃にはみんな仕事が落ち着いている筈です。そしたら、食事にしましょう」
マリアはお腹の音で返事をする。
沈黙。
「大丈夫かと思いますが、ソフィー様の前では気を付けて下さい」
マリアは顔を赤くして頷いた。
***
厨房の近くにメイド達の食事をする部屋があり、そこで食卓に付く。
各々が厨房から自分の分の食事を運び、好きな場所に座って食べる。
全員で20人程。マリアは全員に挨拶と自己紹介は終わらせている。
いくつかのグループに別れているが、メイド長だけは一人で食事に着いている。嫌がられるかなぁと思ったが、マリアは彼女の隣の席に座った。
「先程はありがとうございました」
「いえ、御礼を言うのは私達の方です。マリアには感謝をしています」
「御礼はまだ早いですよ。だって、私はまだ何もしていませんし。だから、無事に全てをやり遂げたら、その時に言って貰えたら、私は凄く嬉しいですねぇ」
「そうですね、そうかもしれません。マリア、期待しています。頑張ってください」
「はい、でも、程々に頑張ります」
「なんですか、それ」
「仕事は楽しく、無理せずにが私のモットーですから」
「変わった人ですね、あなたは」
「そうですかね?」
「聖女様が言っていたように、あなたは変わった人ですよ」
またセラ様のせいかと、マリアは考えた。
肉料理に手を付け、驚愕する。
こんなものを毎日食べていたら、前の食事には戻れない気がした。
最後に寝泊りをする部屋へ行き、荷物を下ろす頃には日が昇っている。
「メイド服はあちらのクローゼットにありますので、後で着替えて下さい。サイズは聖女様より伺っております。靴と靴下も中に入っておりますが、問題があれば言ってください」
「分かりました」
「ソフィー様のお食事は7時30分に持って行きますので、その時間には厨房に来てください」
メイド長はそう言って、部屋を出て行った。
部屋の時計を見る。後15分程後の話だ。
マリアはメイド服に着替え、鏡に自分の姿を映す。
メイド長よりスカートの丈が短く、エプロンとキャプ、靴下にまでフリルが付いている。靴はローファータイプのシンプルなデザインだ。
見慣れない自分の姿に少し笑ってしまう。
全般的に可愛らしいデザインとなっている。
働くのにフリルは必要なのか? マリアはそう考えた後、夜伽と言う単語がちらつき、頭を振った。
マリアは自分の頬を叩いて気合を入れると、部屋を出た。
***
厨房の中は、先程より人数が増え慌ただしくなっている。
メイド長と目が合うと、大きめな銀色のトレイを持って部屋から出て来た。料理が冷めないよう、銀色の蓋で閉まっている。
長い廊下を2人で歩く。
「料理、持ちましょうか?」
「今回は私が持っていきます。ただ、突き当りにある扉を開けるのはマリアにお願いします」
突き当りの扉を開けると、中は螺旋階段になっており、マリアは息を飲んだ。
長い、果てしなく長い。
マリアは嫌な予感がした。
「もしかしてここ、一番高い塔の中ですか?」
「そうです、大体60m程の高さと聞いています」
「これを1日3回上るわけですよね?」
「その通りです」
これはある意味、畏怖だなぁと、マリアは思った。
メイド長の後に続いて、階段を上る。
小さな窓から日の光が入って来るが、基本的には薄暗く、不気味だ。
この塔は城の一番端の方に建っており、ここはある意味牢獄だと、マリアは感じた。
最上階にある部屋の扉を叩こうとした時、すぐに止められた。
「会議などがない時は、基本的にはまだ眠りに付いています。ソフィー様は煩わしいのを嫌います。静かに戸を開ける、静かに仕事を行う事を心掛けてください」
「お昼と夜もですか?」
「そうです。いつ来るか分かるのなら、こちらが意思表示をする必要はない、と言うのが姫様の考えです」
長いトレイを器用に片手だけで持ち、ポケットから懐中時計を取り出す。
「つまり、時間遵守でお願いします。それぞれの時間帯は後で紙に書いて渡します」
針が時を刻む。
「今から入りますが、音を立てない、声は出さない、を心掛けて下さい。質問は後で伺います」
戸が開き、部屋の風景が広がる。
広々としているが、薄暗い。
部屋に入ってすぐに一人用の机があり、トレイがすでに置かれているが、その横に同じ物を乗せられる。
ドーム型の天井、アーチ型の細長い窓が北、東、西の壁にそれぞれ点在している。
部屋の奥に天蓋付きのベット。カーテンが閉まっており、中は見えない。
メイド長は部屋の隅にある扉を開き、マリアが入ると直ぐに閉めた。
洗面台、トイレ、お風呂があり、棚から掃除用具を取り出し磨いて行く。
マリアは言われた通り、黙って観察した。
掃除が終わると、机にある昨日のトレイを回収し、部屋から出ていく。
「朝はこれがルーチンとなります。昼と夜は食事の運搬だけです」
「部屋の掃除とかはいいんですか?」
「部屋の掃除、シーツの交換は月一の会議でソフィー様がいない時に人数を集めて終わらせますが、それはは2日前に終っています。次の掃除の時までに人手が集まらなければ、マリアにも参加して貰います」
「分かりました」
「他に質問はありますか?」
「そうですね、今は特にありませんかね」
「分かりました。質問は何時でも伺います」
「ありがとうございます」
「厨房に戻る頃にはみんな仕事が落ち着いている筈です。そしたら、食事にしましょう」
マリアはお腹の音で返事をする。
沈黙。
「大丈夫かと思いますが、ソフィー様の前では気を付けて下さい」
マリアは顔を赤くして頷いた。
***
厨房の近くにメイド達の食事をする部屋があり、そこで食卓に付く。
各々が厨房から自分の分の食事を運び、好きな場所に座って食べる。
全員で20人程。マリアは全員に挨拶と自己紹介は終わらせている。
いくつかのグループに別れているが、メイド長だけは一人で食事に着いている。嫌がられるかなぁと思ったが、マリアは彼女の隣の席に座った。
「先程はありがとうございました」
「いえ、御礼を言うのは私達の方です。マリアには感謝をしています」
「御礼はまだ早いですよ。だって、私はまだ何もしていませんし。だから、無事に全てをやり遂げたら、その時に言って貰えたら、私は凄く嬉しいですねぇ」
「そうですね、そうかもしれません。マリア、期待しています。頑張ってください」
「はい、でも、程々に頑張ります」
「なんですか、それ」
「仕事は楽しく、無理せずにが私のモットーですから」
「変わった人ですね、あなたは」
「そうですかね?」
「聖女様が言っていたように、あなたは変わった人ですよ」
またセラ様のせいかと、マリアは考えた。
肉料理に手を付け、驚愕する。
こんなものを毎日食べていたら、前の食事には戻れない気がした。
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