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第68話 人との繋がり
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僕が全員治すと言う事で、農民の人はふてくさりながらも並び直し、シープス卿はカッコつけるなと耳元で小言を言われた。
それから30人を急いで治療をしたが、ハンスさんやマジールさんと行った救護テントの経験が生きてかあの時よりも上手くやれたのだ。
「ふー・・・とりあえず終わりましたか」
30人の治療を終えて、ズキズキと響く頭痛に頭を押さえて一息いれた。
「お疲れ様です、ノエルさん」
「30人そこらで、体力のないやつだな本当に」
連続30人の癒しの光って、結構すごいって褒めて貰った事あるのにな・・・
「ちょっと失礼します・・」
先ほど貰った葡萄をパクりと口に。渋みは少しあるが甘くて美味しい、それに軽く噛んだらつるっと喉を水気と一緒に通っていくので食べやすい。
「これで一通り、終わらせましたので館に戻りましょうか。ドライフルーツもお約束しておりますからね」
用事は終わったので戻ろうという提案のアイシャさんの言葉に、シープス卿は待ってたにも関らず今思いついたようだ素振りで話だす。
「あー、折角だから少し村を案内して頂けないか」
「あっそれもいいですね、果物がお二人ともお好きならもぎ立てを食してみてください」
もぎ立てというのに心を惹かれるが、シープス卿の目は僕を見ていて何を伝えようとしているのかはよく分かっていた。
「えっと・・・僕は魔力の使い過ぎで疲れているので、嬉しいお誘いですが先にもどり休ませて頂きます」
その言葉にシープス卿は今までにない笑みを浮かべる。
「そうか、お前は立派な戦力だからな。休息は大事だ」
「それでしたら、シープス様には他の者をおつけしますので私はノエルさんと一緒に館に戻りましょう」
そう言って、アイシャさんは近場の者に声を掛けに行った。
シープス卿が、あっいやっと止める間もなくだ。
「魔道兵、お前邪魔をするつもりか」
「えぇ~・・・僕は協力しようとしてたじゃないですか・・・」
すぐに低い言葉で僕の耳元で脅してくるシープス卿。
だがアイシャさんは若い村娘を連れてきたので、怒り気味のシープス卿もすぐに機嫌をなおした。
「いや折角アイシャさんにと思ったが、忙しい身であるのなら仕方ない」
「では、ルーシィ、シープス様をご案内して。粗相のないようにね」
「はい、アイシャ様。ではご案内いたしますわシープス様」
ルーシィというアイシャさんには劣るが、可愛い女性の案内ということでご機嫌に僕らから離れて行った。僕の護衛じゃなかったのかと言いたくなるが、僕も一緒に居たい訳ではないのでせいせいした。
「ノエルさんはしばらく休息してからにいたしましょうか」
「申し訳ないですが、そうして頂けたらと思います・・・」
ずっと立ちっぱなしだった事で、村の広場にあるベンチに腰掛けて一度休息をとる。
「ふー・・・」
「そんなにグリモワールとはお疲れになるものなのでしょうか」
「そうですね・・・連続で使用は人それぞれですが・・・疲れます」
「そうですか・・・よかったら横になりますか?」
そういうアイシャさんは自分の膝をポンポンと叩いた。
「え?」
「そのままでは堅いので頭がいたくなると思ったのですが」
それが膝枕をしてくれるのだと分かると僕は一気にかっと体があつくなった。
「だだだいじょぶです。こうやって座って何か食べればゆっくりと魔力を回復していけ、いけるので」
「うふふ遠慮する必要はありませんのに」
「あっええっと、アイシャ様は生まれが、みな、港街という事ですが、ロックベイですか?」
焦った気持ちで強引に話を変えてしまったので、久しぶりにめちゃくちゃ噛んでしまう。
「はいそうですわ、ロックベイをご存じでしたか?」
「いえ、知り合いが港町出身の人でロックベイは良い街だといつも言ってましたけど、行ったことはありません」
「それは勿体無い、季節ごとに獲れる魚にいつ行っても美味しい料理が待ってますのに」
「あはは、その知り合いも魚魚って言ってました。あっこれもその知り合いから貰った物なんですよ」
ちょっと共通点と魔力の回復が始まったのか、僕はリラックスとした気持ちになっていた。そしてアルスさんから貰った水晶がついたチョーカーを服の中から取り出す。
「水晶ですか・・・あら?それはどなたに貰ったものでしょう」
僕が首から下げたままのチョーカーを、じっくりと見るために少しアイシャさんの顔が近くにきてドキっとしてまた僕の心拍数はあがった。
「えあ、アルスさんという方です。僕の兵の先輩であり友人であり恩人です」
「アルス?アルスをご存じなのですか?体が大きく、髪は色は黒から少し色が抜けたような赤毛。太い眉毛にきりっとした目の」
アルスさんの特徴を言われ、僕の知っているアルスさんと同じような為にアイシャさんはアルスさんの事を知っているのだと分かった。
アイシャさんは落ち着きながらも、少し早口な様子で聞いてくる感じはただの知り合いや顔見知りという訳では無い事が分かる。
「あっお知り合いですか?その人で会ってると思います」
「彼は、彼はまだ生きているのでしょうか?」
「はい、えっと一か月ほど前までは一緒にいましたので」
「そ、そうですか・・・今はどちらにかはご存じでしょうか?」
「北へ行くと聞いてます、帝国との国境付近にと」
「あぁ・・・そうですか・・・」
アイシャさんも国境付近が一番危ない事を知っている様子で、僕の言葉で意気消沈というような表情をした。
「で、でもアルスさんも僕と同じ魔道兵です。前線ではなく、後方からの魔法がメインになるかと・・・すいません気休めですが・・・」
自分でいいつつ、魔道兵だからといってずっと後方から魔法を撃つのが戦ではないのは知っていた為に、言い切る前に自信を無くしてしまった。
「アルスが魔道兵ですか!?あのアルスが!?」
だがそんな僕の尻すぼみの言葉に少し被る様に、驚いた様子のアイシャさん。僕の最後の方はほぼ聞こえていなかったかもしれない。
「は、はい。そうですよ」
「本当に魔道兵になっちゃうなんて・・・やっぱりすごいわねアルスは」
そういうアイシャさんの表情は落ち着いた微笑みに変わっていた。
「アイシャさんはアルスさんとは仲が良かったんですか?」
「そうよ、小さい頃から一緒だったの――――――――」
僕らはお互いの共通点が出来た事で、その場で話し込んだ。周りがせっせて戦の準備をしている中、広場の隅の木陰になっているその場所で。
・
・
・
「――――――本当、アルスなんて読み書きも18ぐらいにやっと覚えたのよ、それが魔道兵でグリモワールを読んでいるなんてうふふ」
「でも生まれ持った魔力は人並み以上らしいので、素質は高いようですよ」
「それもビックリですよ、はー・・可笑しいわ。久しぶりにロックベイにいた頃のように笑ったわ、あの時は私、リア、アルス、スナイプの4人でいつも些細な事で笑ってたわね~・・・あっそういえばアルスがいるのなら、スナイプもしっているのかしら?」
小一時間この場所で喋っていた。頭の隅にはスナイプさんの事もあった、だが無意識に自分からは避けていたのかスナイプさんの話題にはならなかったが・・・アルスさんと幼馴染と言う事はスナイプさんともなのは必然だった。
「あっ・・・」
そして片隅にあったとしても僕は、その質問に固まってしまった。どう答えるのが正解なのか・・・
嘘でも知る術がすぐにないのなら生きているといえばいい、アルスさん同様に今は知らないでもよかった。折角楽しい時間を過ごしているのなら、壊す必要はなかったのだ。
「・・・」
「・・・」
ただ僕の一言と表情でアイシャさんは悟ってしまった。僕も何か言えばいいのに、アイシャさんの表情で何も言葉は出なくなってしまった。
静かに涙を流したアイシャさんへ、言葉が見つからず、ただアイシャさんが泣き止むのをまっていた。
それから30人を急いで治療をしたが、ハンスさんやマジールさんと行った救護テントの経験が生きてかあの時よりも上手くやれたのだ。
「ふー・・・とりあえず終わりましたか」
30人の治療を終えて、ズキズキと響く頭痛に頭を押さえて一息いれた。
「お疲れ様です、ノエルさん」
「30人そこらで、体力のないやつだな本当に」
連続30人の癒しの光って、結構すごいって褒めて貰った事あるのにな・・・
「ちょっと失礼します・・」
先ほど貰った葡萄をパクりと口に。渋みは少しあるが甘くて美味しい、それに軽く噛んだらつるっと喉を水気と一緒に通っていくので食べやすい。
「これで一通り、終わらせましたので館に戻りましょうか。ドライフルーツもお約束しておりますからね」
用事は終わったので戻ろうという提案のアイシャさんの言葉に、シープス卿は待ってたにも関らず今思いついたようだ素振りで話だす。
「あー、折角だから少し村を案内して頂けないか」
「あっそれもいいですね、果物がお二人ともお好きならもぎ立てを食してみてください」
もぎ立てというのに心を惹かれるが、シープス卿の目は僕を見ていて何を伝えようとしているのかはよく分かっていた。
「えっと・・・僕は魔力の使い過ぎで疲れているので、嬉しいお誘いですが先にもどり休ませて頂きます」
その言葉にシープス卿は今までにない笑みを浮かべる。
「そうか、お前は立派な戦力だからな。休息は大事だ」
「それでしたら、シープス様には他の者をおつけしますので私はノエルさんと一緒に館に戻りましょう」
そう言って、アイシャさんは近場の者に声を掛けに行った。
シープス卿が、あっいやっと止める間もなくだ。
「魔道兵、お前邪魔をするつもりか」
「えぇ~・・・僕は協力しようとしてたじゃないですか・・・」
すぐに低い言葉で僕の耳元で脅してくるシープス卿。
だがアイシャさんは若い村娘を連れてきたので、怒り気味のシープス卿もすぐに機嫌をなおした。
「いや折角アイシャさんにと思ったが、忙しい身であるのなら仕方ない」
「では、ルーシィ、シープス様をご案内して。粗相のないようにね」
「はい、アイシャ様。ではご案内いたしますわシープス様」
ルーシィというアイシャさんには劣るが、可愛い女性の案内ということでご機嫌に僕らから離れて行った。僕の護衛じゃなかったのかと言いたくなるが、僕も一緒に居たい訳ではないのでせいせいした。
「ノエルさんはしばらく休息してからにいたしましょうか」
「申し訳ないですが、そうして頂けたらと思います・・・」
ずっと立ちっぱなしだった事で、村の広場にあるベンチに腰掛けて一度休息をとる。
「ふー・・・」
「そんなにグリモワールとはお疲れになるものなのでしょうか」
「そうですね・・・連続で使用は人それぞれですが・・・疲れます」
「そうですか・・・よかったら横になりますか?」
そういうアイシャさんは自分の膝をポンポンと叩いた。
「え?」
「そのままでは堅いので頭がいたくなると思ったのですが」
それが膝枕をしてくれるのだと分かると僕は一気にかっと体があつくなった。
「だだだいじょぶです。こうやって座って何か食べればゆっくりと魔力を回復していけ、いけるので」
「うふふ遠慮する必要はありませんのに」
「あっええっと、アイシャ様は生まれが、みな、港街という事ですが、ロックベイですか?」
焦った気持ちで強引に話を変えてしまったので、久しぶりにめちゃくちゃ噛んでしまう。
「はいそうですわ、ロックベイをご存じでしたか?」
「いえ、知り合いが港町出身の人でロックベイは良い街だといつも言ってましたけど、行ったことはありません」
「それは勿体無い、季節ごとに獲れる魚にいつ行っても美味しい料理が待ってますのに」
「あはは、その知り合いも魚魚って言ってました。あっこれもその知り合いから貰った物なんですよ」
ちょっと共通点と魔力の回復が始まったのか、僕はリラックスとした気持ちになっていた。そしてアルスさんから貰った水晶がついたチョーカーを服の中から取り出す。
「水晶ですか・・・あら?それはどなたに貰ったものでしょう」
僕が首から下げたままのチョーカーを、じっくりと見るために少しアイシャさんの顔が近くにきてドキっとしてまた僕の心拍数はあがった。
「えあ、アルスさんという方です。僕の兵の先輩であり友人であり恩人です」
「アルス?アルスをご存じなのですか?体が大きく、髪は色は黒から少し色が抜けたような赤毛。太い眉毛にきりっとした目の」
アルスさんの特徴を言われ、僕の知っているアルスさんと同じような為にアイシャさんはアルスさんの事を知っているのだと分かった。
アイシャさんは落ち着きながらも、少し早口な様子で聞いてくる感じはただの知り合いや顔見知りという訳では無い事が分かる。
「あっお知り合いですか?その人で会ってると思います」
「彼は、彼はまだ生きているのでしょうか?」
「はい、えっと一か月ほど前までは一緒にいましたので」
「そ、そうですか・・・今はどちらにかはご存じでしょうか?」
「北へ行くと聞いてます、帝国との国境付近にと」
「あぁ・・・そうですか・・・」
アイシャさんも国境付近が一番危ない事を知っている様子で、僕の言葉で意気消沈というような表情をした。
「で、でもアルスさんも僕と同じ魔道兵です。前線ではなく、後方からの魔法がメインになるかと・・・すいません気休めですが・・・」
自分でいいつつ、魔道兵だからといってずっと後方から魔法を撃つのが戦ではないのは知っていた為に、言い切る前に自信を無くしてしまった。
「アルスが魔道兵ですか!?あのアルスが!?」
だがそんな僕の尻すぼみの言葉に少し被る様に、驚いた様子のアイシャさん。僕の最後の方はほぼ聞こえていなかったかもしれない。
「は、はい。そうですよ」
「本当に魔道兵になっちゃうなんて・・・やっぱりすごいわねアルスは」
そういうアイシャさんの表情は落ち着いた微笑みに変わっていた。
「アイシャさんはアルスさんとは仲が良かったんですか?」
「そうよ、小さい頃から一緒だったの――――――――」
僕らはお互いの共通点が出来た事で、その場で話し込んだ。周りがせっせて戦の準備をしている中、広場の隅の木陰になっているその場所で。
・
・
・
「――――――本当、アルスなんて読み書きも18ぐらいにやっと覚えたのよ、それが魔道兵でグリモワールを読んでいるなんてうふふ」
「でも生まれ持った魔力は人並み以上らしいので、素質は高いようですよ」
「それもビックリですよ、はー・・可笑しいわ。久しぶりにロックベイにいた頃のように笑ったわ、あの時は私、リア、アルス、スナイプの4人でいつも些細な事で笑ってたわね~・・・あっそういえばアルスがいるのなら、スナイプもしっているのかしら?」
小一時間この場所で喋っていた。頭の隅にはスナイプさんの事もあった、だが無意識に自分からは避けていたのかスナイプさんの話題にはならなかったが・・・アルスさんと幼馴染と言う事はスナイプさんともなのは必然だった。
「あっ・・・」
そして片隅にあったとしても僕は、その質問に固まってしまった。どう答えるのが正解なのか・・・
嘘でも知る術がすぐにないのなら生きているといえばいい、アルスさん同様に今は知らないでもよかった。折角楽しい時間を過ごしているのなら、壊す必要はなかったのだ。
「・・・」
「・・・」
ただ僕の一言と表情でアイシャさんは悟ってしまった。僕も何か言えばいいのに、アイシャさんの表情で何も言葉は出なくなってしまった。
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