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第51話 リコリア戦、その後
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戦が終わり1日後にリコリアの中心地では捕虜が並び、改宗させられていた。
無理だと拒んだものは処刑されていく。その様をリコリアの市民に兵士、王子の軍や傭兵達は余興を見るかのようにヤジを入れながら見ていた。
そんな僕らもギレルさんから、敵国に捕まった魔導士、魔道兵の最後を見届けるようにと命じられ、群衆の中に混じりその広場にいた。
異教徒の捕虜は300人ほど。その半数以上は処刑されていく・・・
たかが宗教・・・僕にとってはこの程度の気持ちだが、異教徒に王国、帝国の人達は何よりも宗教を重んじている。
自分の命が助かるのなら、僕は喜んで改宗するのに・・・苦渋の決断のような顔をみなしていた。
そして最後・・・異教徒の魔導士、マリーナの番となる。リコリアの兵の指揮官と思われる人が、マリーナを市民たちに知らしめるように紹介する。
マリーナは異教徒が着ていた、中東のような服から、ずた袋のようなワンピースに着替えさせられていた。外傷は少ないようにしているが、やはり魔法を受けた事で自分ではうまく立てないのか、首に縄を掛けられそれを引っ張られ無理矢理立たされていた。
「この者は異教徒の魔導士マリーナ!数々の多くの兵士の命を奪った。その命、ミスライ様でも救う事は出来ぬと判断し、ここに絞首刑を言い渡す!!」
「うぉーーーー!!」
「ころせーーー!」
「地獄におちろ!」
絞首刑を言い渡した時には、一層熱気が高まった。
他の異教徒は首を落とされて淡々と処理が進んでいっていたが・・・彼女だけは嫌な特別扱いをうけていた。
そんな彼女をみると、いたたまれない気持ちになると同時に・・・自分の死に際もああなるのではないかと恐怖がわく・・・
ずるずると引きずられ絞首台へと連れていかれる。
そんな彼女は泣き叫び、改宗を要求している様子がまた哀れに思えてくる・・・
だがそれは僕だけであって、周りは彼女が泣き叫ぶほど殺せとボルテージが上がっていくのだ。
首に繋がれた縄をそのまま絞首台に括りつけられていく。周りではクスクスと笑い声さえ聞こえてきている。
「いやよ、いやーーー!お兄ちゃーーーん!!」
それが僕が聞いた彼女の最後の言葉だった・・・
ぶらりと宙に浮かぶ彼女は、もがき苦しみの後に動かなくなった。
余興の終わりとばかりに市民たちは散っていく。残されたのは兵士達が処理をしていった。
祭りの後のように、ガヤガヤとした雰囲気は途端に静かになりそれが余計に僕の気持ちを沈めた。
「戻るか・・・」
「はい・・・」
ベルトリウスさんの言葉で、僕らもリコリアの砦の自室へと戻る。ここも今日立つ予定との事。
「はー、セシリアさんがいないと空気が重くないねぇ」
「・・・」
そんな事わざわざ言わなくてもいいのに・・・
鈍感なのか、わざと明るい雰囲気を作ってくれようとしているのか分からないが、ヘンリーさんの言葉に返事が出来なかった。
ヘンリーさんの言葉を無視する形のまま、荷造りをしていく。
まだ異教徒は南の地で暴れている。それにあの魔導士2名は生きている・・・よその部隊に混ざり、マリーナの敵討ちとばかりにグリモワールの力を振るわないか心配だ。
カバンに荷物を詰め込み、部屋を出ると丁度アンリさんと出くわす。そのケープには星が3つ並べられメイジ1級へと昇級していた。
火炎すらまともに出せなかった彼女だが、やはり異教徒の魔導士の一人を討ち取ったという功績・・・それをベルトリウスさんが失敗した中で成し遂げたという事で大きく評価されていた。
「あんた、いつも暗い顔してるわね」
「えっ・・・そんな事は」
不意に声を掛けられるとは思わなかった。
「あるわよ、戦に負けた顔してるわ。辛気臭いわ」
「・・・」
口をゆがませるだけで、反論する言葉は浮かばない。なぜ・・・そんなに言われなければいけないんだ。
「はぁー・・・そこで黙られると、私がいじめてるようじゃない。私は・・・一応あんたにお礼をいうつもりだったのよ。戦場では助かったわ」
「えっ」
「だから、ありがとうって言ってるの!次も私を守りなさいよ」
「・・・えっと、はい」
それだけ言うと、荷物を抱えスタスタと歩いて行った。
えっと・・・最初の悪口は、会話のとっかかりってこと?
何か・・・思ったよりも悪い人ではない?よくわからない人には違いないが、ヘンリーさんよりかは僕は好きになれそうだった。
リコリアを出て、丘の野営地へと夜に戻ってくる。
「おかえりノエル君」
「戻りましたデリックさん」
リーディアや兵士の何人かは拠点を防衛していたが、ここは何ともない様子。
魔導士が逃げた時に、ヤード砦の事が頭をよぎっていたが今回の敵は逃げるのに必死だったようだ。逃げていく方角も違ったので、少しの心配だけだった。
「疲れただろ、リコリアからも食料が届いているから今日はゆっくりしてくれ」
「はい、ありがとうございます」
たった一週間ほどの戦であったが、心労的には疲れた。
そして一人の空間になれた事ですごく落ち着く、狭いテントの中。
落ち着いた一人の空間で思い出すのはあの魔導士の3人。一人は憎しみの目をこちらに向け、もう一人は冷たい目。最後に思い出すのはマリーナの処刑される姿の耳に残っている彼女の声。
目をつぶると彼らの姿が蘇り、中々寝付けない・・・
「はー・・・」
ため息を何度も履いても、まったく彼らの光景が瞼の裏に張り付き離れない。
いつか彼らが報復してくると思うと、体がムズムズとじっとはしていられない。
古代のグリモワールを開き、読んでみるが全く集中できず、すぐに閉じる。
そしてやることもなく、また開き、閉じてを繰り返し時間を持て余していると
外でデリックさんが誰かと喋っている声が聞こえる。
そっとテントから顔を覗かせると、ベルトリウスさんの姿が見えた。
「・・・こんばんは」
「あっ悪いな、疲れているのを知らずうるさかったか」
「いえ、大丈夫ですよ」
覗かせた顔から体を出して、外にでる。
テント内の籠った空気とは違い、熱い夜のはずがどこか涼しさがあった。
「ほらギレル様の言っていたあの事だ。今日ぐらいどうかと思ったんだが」
「あまりノエル君の顔色が悪かったので、私が今日は休ませてあげて欲しいとお願いしていたんだ」
ベルトリウスさんの言っている事は、傭兵達と仲良くなることだろう。
それをデリックさんが僕の顔を見て心配してくれたのか。
「あっ・・・そうですね。体調は悪くないので、行きましょう」
「大丈夫かい?あまり無理はしないほうがいいぞ」
「ご心配ありがとうございます・・・。でも、嫌な事があったので今日はそっちの方がいいかもしれないので」
「そうか、なら行こうか。デリックさん、騎士を2人ぐらい呼んできてくれるかい」
「はい、分かりました」
デリックさんは騎士を呼びに行く。
「顔色が悪いって何かあったのか?」
その間、ベルトリウスさんも心配してくれている。
「いえ・・・異教徒の魔導士の事を考えていたら・・・少し」
「そうか・・・すぐに忘れた方がいいといってやりたいが、2人をとり逃しているからな・・・」
「はい、それにあのマリーナという女性の最後は・・・」
「そうだな・・・。そういうのも含めて今日は傭兵の所へ行き俺達も羽根を伸ばそう。彼らから聞こえてくる陽気な音楽は今の俺達に必要なものかもしれん」
崖の下から聞こえるリュートの音にあわせて聞こえてくる歌声は、僕らの様子とは正反対。
「ですね、少しは気分が晴れるかもしれません」
傭兵達だけではない。兵士達も勝利ムードなのに辛気臭くしているのは僕だけかもしれない。
ベルトリウスさんも僕がこの会話をするまでは、そこまで暗くはなかったために余計な事をいってしまったなと後悔だ。
デリックさんが騎士を連れてくると、僕らは陽気な音楽に誘われるように傭兵達のもとへと向かっていった。
無理だと拒んだものは処刑されていく。その様をリコリアの市民に兵士、王子の軍や傭兵達は余興を見るかのようにヤジを入れながら見ていた。
そんな僕らもギレルさんから、敵国に捕まった魔導士、魔道兵の最後を見届けるようにと命じられ、群衆の中に混じりその広場にいた。
異教徒の捕虜は300人ほど。その半数以上は処刑されていく・・・
たかが宗教・・・僕にとってはこの程度の気持ちだが、異教徒に王国、帝国の人達は何よりも宗教を重んじている。
自分の命が助かるのなら、僕は喜んで改宗するのに・・・苦渋の決断のような顔をみなしていた。
そして最後・・・異教徒の魔導士、マリーナの番となる。リコリアの兵の指揮官と思われる人が、マリーナを市民たちに知らしめるように紹介する。
マリーナは異教徒が着ていた、中東のような服から、ずた袋のようなワンピースに着替えさせられていた。外傷は少ないようにしているが、やはり魔法を受けた事で自分ではうまく立てないのか、首に縄を掛けられそれを引っ張られ無理矢理立たされていた。
「この者は異教徒の魔導士マリーナ!数々の多くの兵士の命を奪った。その命、ミスライ様でも救う事は出来ぬと判断し、ここに絞首刑を言い渡す!!」
「うぉーーーー!!」
「ころせーーー!」
「地獄におちろ!」
絞首刑を言い渡した時には、一層熱気が高まった。
他の異教徒は首を落とされて淡々と処理が進んでいっていたが・・・彼女だけは嫌な特別扱いをうけていた。
そんな彼女をみると、いたたまれない気持ちになると同時に・・・自分の死に際もああなるのではないかと恐怖がわく・・・
ずるずると引きずられ絞首台へと連れていかれる。
そんな彼女は泣き叫び、改宗を要求している様子がまた哀れに思えてくる・・・
だがそれは僕だけであって、周りは彼女が泣き叫ぶほど殺せとボルテージが上がっていくのだ。
首に繋がれた縄をそのまま絞首台に括りつけられていく。周りではクスクスと笑い声さえ聞こえてきている。
「いやよ、いやーーー!お兄ちゃーーーん!!」
それが僕が聞いた彼女の最後の言葉だった・・・
ぶらりと宙に浮かぶ彼女は、もがき苦しみの後に動かなくなった。
余興の終わりとばかりに市民たちは散っていく。残されたのは兵士達が処理をしていった。
祭りの後のように、ガヤガヤとした雰囲気は途端に静かになりそれが余計に僕の気持ちを沈めた。
「戻るか・・・」
「はい・・・」
ベルトリウスさんの言葉で、僕らもリコリアの砦の自室へと戻る。ここも今日立つ予定との事。
「はー、セシリアさんがいないと空気が重くないねぇ」
「・・・」
そんな事わざわざ言わなくてもいいのに・・・
鈍感なのか、わざと明るい雰囲気を作ってくれようとしているのか分からないが、ヘンリーさんの言葉に返事が出来なかった。
ヘンリーさんの言葉を無視する形のまま、荷造りをしていく。
まだ異教徒は南の地で暴れている。それにあの魔導士2名は生きている・・・よその部隊に混ざり、マリーナの敵討ちとばかりにグリモワールの力を振るわないか心配だ。
カバンに荷物を詰め込み、部屋を出ると丁度アンリさんと出くわす。そのケープには星が3つ並べられメイジ1級へと昇級していた。
火炎すらまともに出せなかった彼女だが、やはり異教徒の魔導士の一人を討ち取ったという功績・・・それをベルトリウスさんが失敗した中で成し遂げたという事で大きく評価されていた。
「あんた、いつも暗い顔してるわね」
「えっ・・・そんな事は」
不意に声を掛けられるとは思わなかった。
「あるわよ、戦に負けた顔してるわ。辛気臭いわ」
「・・・」
口をゆがませるだけで、反論する言葉は浮かばない。なぜ・・・そんなに言われなければいけないんだ。
「はぁー・・・そこで黙られると、私がいじめてるようじゃない。私は・・・一応あんたにお礼をいうつもりだったのよ。戦場では助かったわ」
「えっ」
「だから、ありがとうって言ってるの!次も私を守りなさいよ」
「・・・えっと、はい」
それだけ言うと、荷物を抱えスタスタと歩いて行った。
えっと・・・最初の悪口は、会話のとっかかりってこと?
何か・・・思ったよりも悪い人ではない?よくわからない人には違いないが、ヘンリーさんよりかは僕は好きになれそうだった。
リコリアを出て、丘の野営地へと夜に戻ってくる。
「おかえりノエル君」
「戻りましたデリックさん」
リーディアや兵士の何人かは拠点を防衛していたが、ここは何ともない様子。
魔導士が逃げた時に、ヤード砦の事が頭をよぎっていたが今回の敵は逃げるのに必死だったようだ。逃げていく方角も違ったので、少しの心配だけだった。
「疲れただろ、リコリアからも食料が届いているから今日はゆっくりしてくれ」
「はい、ありがとうございます」
たった一週間ほどの戦であったが、心労的には疲れた。
そして一人の空間になれた事ですごく落ち着く、狭いテントの中。
落ち着いた一人の空間で思い出すのはあの魔導士の3人。一人は憎しみの目をこちらに向け、もう一人は冷たい目。最後に思い出すのはマリーナの処刑される姿の耳に残っている彼女の声。
目をつぶると彼らの姿が蘇り、中々寝付けない・・・
「はー・・・」
ため息を何度も履いても、まったく彼らの光景が瞼の裏に張り付き離れない。
いつか彼らが報復してくると思うと、体がムズムズとじっとはしていられない。
古代のグリモワールを開き、読んでみるが全く集中できず、すぐに閉じる。
そしてやることもなく、また開き、閉じてを繰り返し時間を持て余していると
外でデリックさんが誰かと喋っている声が聞こえる。
そっとテントから顔を覗かせると、ベルトリウスさんの姿が見えた。
「・・・こんばんは」
「あっ悪いな、疲れているのを知らずうるさかったか」
「いえ、大丈夫ですよ」
覗かせた顔から体を出して、外にでる。
テント内の籠った空気とは違い、熱い夜のはずがどこか涼しさがあった。
「ほらギレル様の言っていたあの事だ。今日ぐらいどうかと思ったんだが」
「あまりノエル君の顔色が悪かったので、私が今日は休ませてあげて欲しいとお願いしていたんだ」
ベルトリウスさんの言っている事は、傭兵達と仲良くなることだろう。
それをデリックさんが僕の顔を見て心配してくれたのか。
「あっ・・・そうですね。体調は悪くないので、行きましょう」
「大丈夫かい?あまり無理はしないほうがいいぞ」
「ご心配ありがとうございます・・・。でも、嫌な事があったので今日はそっちの方がいいかもしれないので」
「そうか、なら行こうか。デリックさん、騎士を2人ぐらい呼んできてくれるかい」
「はい、分かりました」
デリックさんは騎士を呼びに行く。
「顔色が悪いって何かあったのか?」
その間、ベルトリウスさんも心配してくれている。
「いえ・・・異教徒の魔導士の事を考えていたら・・・少し」
「そうか・・・すぐに忘れた方がいいといってやりたいが、2人をとり逃しているからな・・・」
「はい、それにあのマリーナという女性の最後は・・・」
「そうだな・・・。そういうのも含めて今日は傭兵の所へ行き俺達も羽根を伸ばそう。彼らから聞こえてくる陽気な音楽は今の俺達に必要なものかもしれん」
崖の下から聞こえるリュートの音にあわせて聞こえてくる歌声は、僕らの様子とは正反対。
「ですね、少しは気分が晴れるかもしれません」
傭兵達だけではない。兵士達も勝利ムードなのに辛気臭くしているのは僕だけかもしれない。
ベルトリウスさんも僕がこの会話をするまでは、そこまで暗くはなかったために余計な事をいってしまったなと後悔だ。
デリックさんが騎士を連れてくると、僕らは陽気な音楽に誘われるように傭兵達のもとへと向かっていった。
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