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第23話 報告

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「おっノエル君!こっちだ!」

砦へと進み、建物の中へと入る前にグリンデルさんが僕を呼んだ。

「はい」

グリンデルさんに近づき、セラさん達もまたついてくる。一応僕を守ってくれている様子なのだ。

「上にギレル参謀と王子がいらっしゃる。襲われた状況を知りたいようだ、俺からも報告はしているが、生き残りが2人という事だからな。今から出来るかい」

「・・・緊張しますが、はい」

グリンデルさんに連れられ、階段を昇っていく。砦の中にはいるのも初めてだなと思いながら登る。

砦の中には大きな建物が4つあり、一番奥にある大きな建物の中、その2階へと足を運んだ。

扉の前に騎士が2人立っている。そこでグリンデルさんが生き残りを連れてきたと伝えると、騎士が中に入っていく

・・・緊張してきた。今回はアルスさんもいない、僕がメインで喋るのか・・・

扉の前でバクバクとすでに心臓は破裂しそうな音を出している

「いいぞ、入れ」

騎士が出てくると、僕に入れと声を掛けてくるので入っていくが。グリンデルさんは隣にはいなかった。

うそ・・・本当に一人・・・

グリンデルさんは隣に立ってくれているものだと思ったが、僕の淡い期待はくずれ眩暈がしながら玉座のような椅子に座る王子の前へと辿り着く

真っ白になりそうな頭で、僕は跪く

「よいよい。顔をあげて報告を頼む」

「ハッ」

王子は前のように楽にしろというが、難しい事をと心で思いながら。僕なりの言葉で伝える。爆発、敵の数などから。

「ふむ・・・騎兵が20人ほどか」

「ノエルや、そのものらの顔は見ておらぬか?」

僕のしどろもどろの言葉に王子は、考える様子で、ギレルさんは質問してきた

「はい、伏せた状態で隙間からしか見ておらず・・・私が確認できたのは足元だけです。隊長と呼ばれる男性、ジゼルという手下、それと不在ではあったような口ぶりのエリオットと・・・デーン城に帰るという言葉でした」

「・・・傭兵か?ギレルどう思う」

「その線が濃厚ですな、元からここはならず者が支配していた砦、急遽雇ったのでしょう。他に何か見ておらぬか」

「・・・後は同じ魔道兵のハンスさんが、敵に殺されるのを・・・何もできず、そのまま隠れて見ておりました。その後やつらはハンスさん、マジールさんのグリモワールと紋章を奪い・・・去って行きました」

報告をしていると、ハンスさんの最後がフラッシュバックし、マジールさん達の死体が脳裏に浮かび、悲しさと不甲斐なさ、恐怖などの負の感情が僕を取り巻き、声が震えた。

「そうか、報告ご苦労。下がってよいぞ」

「ハッ!」

僕が見たことは全て包み隠さずに報告し終えて、僕はその大広間を後にしようとする。

「おっまてノエル」

「ハッ!」

安堵したのも束の間、また王子に呼び止められ背筋がピンと伸びた

「私はこう思うぞ。生き残って、こうやって私達に情報を提供できた事が価値あるものだと。あまり自分を責めるなよ、ギレル」

「なんですかな」

「ノエルをメイジ2級へ昇級し、金一封を授与する。手配を頼むぞ。ノエル、ゆっくり休めよ」

「ありがとうございます」

「承知いたしました。では儂もこのままノエルと少し話があるので失礼しますぞ」

ギレルさんと大広間を出て、扉が閉まるのを確認する

「はぁー・・・」

緊張の糸が解かれ、深い息を吐く

「なにをそんな緊張しておるのじゃ・・・王子は堅くないぞ。そんな強張らなくてもよいわ」

「それは・・・僕みたいな平民が王子と喋る機会なんて、一生ないと思ってましたので・・・」

そんな事を言うが、ギレルさん以外の指揮官であるワーズさんや他の騎士も堅くなっているのだ。その中で僕だけフレンドリーに行くことなんて出来るわけがないのだ

「まぁよい。よく戻ってきたな。ハンスとマジールは残念じゃが・・・お主が無事でよかったぞ」

「いえ・・・ありがとうございます」

ギレルさんに誘導されながら、建物内を歩いていく

「それに昇級とはの、新しい詠唱が学べるな」

「はい、攻撃魔法だとナタリアさんに伺ってます」

「そうじゃな、ここからは魔法は選択性じゃ。どんな魔法が覚えたいかよく考えておくのじゃな」

「選択制ですか?」

「そうじゃ、グリモワールの中には種類にもよるが30ほどの魔法があるのじゃ。じゃがの普通の人はな30もの魔法の詠唱を覚えることは不可能じゃ。だから自分が覚えたい魔法を選択し覚えるということじゃな。ナタリアからは聞いておらぬか?」

「はい、初めて聞きました」

ギレルさんは顎に手を付け、考える素振りを見せるが

「アルスの詠唱を優先したかの。まぁよいか、一応魔道兵はメイジとウィザード、ソーサラーという級の中で3ずつ別れておるのでな、9の魔法を覚えることが出来るわ。まぁ普通は5か6覚えていっぱいいっぱいじゃからの。慎重に選ぶことじゃな」

まだ知らぬ魔道兵としてのルールのような物を説明された。

「あの、ギレル様はいくつの詠唱を覚えているのでしょうか」

「わしか?ふふ、秘密じゃ。ではの、ここ登ればアルスやナタリアがおるでなしっかりと休むとよい」

「えっはい」

ギレルさんは来た道を戻っていった。僕に話があるという事だったと思ったが・・・特段連絡などはなかったため、僕を気遣ってくれた様子だった。

一人になり階段を昇りながら、ギレルさんの言葉を思い出す。

詠唱は普通の人は5か6。優秀な人で8や9・・・

だが、それは一種類の魔導書の話だ。以前きいたマーリンという伯爵は4元素、神聖、深淵を使えるという古代のグリモワールを持っているという話だ。そのマーリンさんは王国一の魔法使いと言われているという事は、そのグリモワールを使いこなしているという事。

使いこなすという事は、3種類のグリモワールの詠唱を覚えているという事なのだ。そんな事可能なのか・・・

ウォルター伯爵という化け物じみた人に、興味が湧いたのだ。

階段を昇るが通路となり、部屋がいくつもある様子にどこに行けば?とまた意味もなく焦りだす

「ノエル!」

だがそんな焦りもすぐ吹き飛ばしてくれる声が、僕の名前を呼んだ。

「アルスさん!」

通路を進んでいっていると、アルスさんが走ってこちらに向かってきていた。その後ろにナタリアさんの姿をみえた。

アルスさんは僕の前で止まり

「おい!よく無事だったな!後方部隊が襲撃されたと聞いた時は・・・嫌な予感が浮かんだぜ!まったくヒヤヒヤさせやがって!」

僕の肩に手を置いて、嬉しそうな笑顔でそういった。

「結構ギリギリでしたよ。後で詳しくお話しますね、でもアルスさん達も無事でよかったです」

「ギリギリでもなんでも、生きてさえいればいいんだよ!そうだな・・・こっちも色々あったからな、俺達に割り振られた部屋に行こうぜ」

「おぉ、部屋がもらえるんですか」

アルスさんはそのまま僕に肩を組み、部屋がある方へと向かっていく

「ノエル、無事でよかったわ。おかえりなさい」

「ご心配おかけしました」

ナタリアさんも笑顔ではあるが、心配してくれていたのか僕を見てほっとしている様子だった。

何はともあれ、僕ら3人は無事再会することができ、一室へと向かった。
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