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第11話 朝の集会

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魔道兵になった翌朝

枯草の上にシーツをかぶせ、その上にマットを引いた簡易ベッドが僕らの寝床

少しカサカサと煩いが、地面に寝るよりはかなり寝心地がいい

別働隊からの帰還もあり、歩き疲れたのかぐっすりと眠れていると

「おはよう、3人とも起きなさい」

天幕の入り口から光が差してくると同時に、ナタリアさんの声が聞こえた

「ううん・・・おはようございます」

「朝か・・・」

「おはよう・・・」

僕、ロッツさん、アルスさんの順番で目を覚ました

昨夜、ロッツさんとも軽い会話をしたが、ロッツさんは口数少ない人であまりお互いの事の話はしなかった。出身地とウィロスと同じギズルモという領主の砦を制圧した時にグリモワールを手に入れたという事だけしか聞けていない

「ほら、朝食を食べたら訓練よ。アルスとノエルはまだまだ説明する事があるんだから」

ナタリアさんに言われて起き出す。兵士の時は朝は遅かったために僕とアルスさんはすぐに動けない

アルスさんに教えて貰った兵士の時は、戦までの準備に掛かる待機期間は基本自由だった。たまに訓練もあったが自由時間の方が長く、何もせず毎日ダラダラと過ごすのが普通だったが・・・魔道兵はどうやら規則正しく生活するようだ

「うげっ、まだ7時まえだぞ・・・」

昨日買った時計を見ながら時刻を教えてくれた

「・・・行きましょうか。朝食も楽しみですし」

「だな・・・」

ケープを羽織り、グリモワールが2冊ともあるのを確認し僕の支度は出来た



神聖とは別の小さなグリモワール。黄金の文字を浮かばせる神秘的な魔法

魔導士を殺してから、魔導士が持っていた斜め掛けのカバンに入れたまま、中身をまだ見れていない

軍で行動していると、一人になる時間が中々なくて確かめれていないのだ

どんな魔法なのか、確かめたいのに今は我慢の時だと自分を抑制していた

「やっと出てきたわ、朝の集会があるから急ぎなさい」

集会・・・そういうのもあるのか

僕らが天幕から出ていくと、ゾロゾロと他の魔道兵たちもどこかに向かっている様子だ

「集会は毎日あるのか?」

「そうよ」

「しっかりしてんなー、魔道兵達は」

「あなたももう魔道兵じゃない、しっかりしなさい」

昨日の少しきまずい雰囲気はアルスさんもナタリアさんも無くなっている様子だ

魔道兵の野営地、中央の広場に青のケープと白のケープが集まる。青ケープは20人ほど、白ケープは10人ほどだろうか。整列はしておらず青と白でも別れてはいない

総勢で30人弱ほどなので、集会を開いたりとまとめるには丁度いい人数のようだ

これを兵士でやれば900人ほどが一斉に集まれなければいけないと思うと・・・無理だと思う

「ここで黙って待ちなさい。ギレル様から通達や連絡事項があるから」

ナタリアさんにそう言われ、僕らも静かに待つことに。だが周りをキョロキョロとするのは仕方ないと思う

ウィロスはあくびをしながらだるそうに立っている。その横でラウンドさんが立っているのは・・・ウィロスのお世話係なのかと、心中お察しする

20人ほどの魔導士の雰囲気は色々だ。ロッツさんやアルスさん、ウィロスのような戦でグリモワールを勝ち取ったと思われる大柄な男

気品ある賢そうな顔つきの男性や女性・・・この人達は小さい頃から英才教育を受けた貴族だと思う。ナタリアさんと違い、魔法が使える人だったのだろう

ギレルさんのような老齢の魔導士もいることから、年齢や性別関係なくいる

だが半数は大柄な男たちなのは、この第四皇子の軍が制圧部隊だからなのだろうかと思う

そんな予測をしながら周りを見渡していると、ギレルさんが静かに現れた

「おはよう諸君。連絡事項は2つじゃ、昨日新たに魔道兵が2人増えた。ここでは紹介せんから個別で仲良くしてやってくれ。あとはウィロス、前に」

「おっしゃー!」

ウィロスが呼ばれ、前に出ていく。この人はいつも本当に元気だな

「ウィロス、別働隊での戦果が認められメイジ2級へと昇格とする。ウィロス紋章を」

「おうよ!」

ウィロスがケープを脱ぐと、ギレルさんは先が熱せられた細い棒を紋章に押し付けている

何か刻印てきな物をしているのかな・・・周りの魔導士の紋章を自分のと見比べる

すると、何人かは紋章の色自体もうっすらと違うように見える。これはナタリアさんが後で教えてくれるのかな?

ウィロスはケープを受け取り、意気揚々とさがっていく

「それでは皆の者、リーディア達に教えを乞い励むに」

ギレルさんがまた静かに歩いていくと、青と白のケープたちは散らばって行った

「なんか知らねー事ばっかだったな。途中途中で聞きたい事が山ほどでてきたぜ」

「そうよ、説明することが山ほどあるってことがわかったでしょ?じゃあ朝食たべながら話をするわ、ロッツとノエルも行くわよ」

ジェフ料理長の所は人だかりができていた。朝集まってから朝食となると30人弱でも並ぶのか

「ほらグズグズしてるから、遅くなったじゃないの」

「は?このぐらいすぐだろ?兵士の所並んでみろよ」

「ですね、こんなの短いですよ」

「あなた達もロッツと同じこというのね・・・」

「・・・ほらな俺は間違っていないだろ」

ロッツさんも兵士の行列を知っているからか、ここで愚痴をいうのはナタリアさんだけだった

20分かそこらで、僕らの番になり

「ジェフさん、おはよう。4人分貰うわよ」

「おう、ナタリア。おっそっちの坊主はナタリアがリーディアか、口うるさいやつだが我慢してはげめよ」

「ちょっとジェフさん!」

ナタリアさんはジェフさんにいじられる

「おはようございます、ジェフさん。ナタリアさんは優しいですよ」

「ふふ~ん、ノエルは分かってるわね」

僕が少し気遣いを見せると、ナタリアさんは腰に手をあて胸を張った

「と、そっちの兄ちゃんも新入りか?俺は料理長のジェフだ」

「アルスです。よろしくお願いします。昨日のスープ美味かったです」

「おう、ほれ4人分だぜ」

ジェフさんは、器にスープをすくいながらも話をしていた為、4人分を用意してくれた

空いている席へ。僕はアルスさんの隣でナタリアさんとロッツさんと対面に座る

「なぁギレル様もいってたリーディアって、白いケープのナタリア達のことか?」

「そうよ、あれ言わなかったっけ?」

「初耳だ」

「そう?じゃあ今教えたわ。あなた達魔導士を導く者って意味よ。まぁやってることはお世話、教育だけどね」

ナタリアさんは少し恥ずかしそうに、意味を教えてくれて、少しの自虐をしたが

「へー、いい呼び名でいい意味だな」

「ですね、ナタリアさんやグランドさんにぴったりな言葉ですね」

僕とアルスさんはその通りだと思い、口にした

「な、なによ2人して!さっさと食べるわよ!」

そして僕らの言葉を聞いて、また恥ずかしそうにするナタリアさん

「ククッ」

それをみたロッツさんも少し笑う

「もう!ロッツまで!」

ナタリアさんは一人、食事を始めた為に僕らも続く

「あっアルスさん、水ください。詠唱覚えてます?」

僕は昨日のゴブレットとフォークを取り出し、アルスさんにお願いした

「流石に覚えてるっつーの。水よきたれだろ、いいぜ出してやるよ」

アルスさんがグリモワールを取り出し、ボソボソっと呟き

「”水よきたれ”」

魔法名を口にだすが、発動はしなかった

「あれ・・・」

首をひねり、なぜだという顔をするアルスさん

「ぷっアハハハ、あんた、おおみえきって出来てないじゃないの」

ナタリアさんにはかなりうけている。僕も笑いそうになるが

「笑うなよ!ノエル、ささやかな力をだよな?」

「いやぁ~・・・それは加熱の詠唱ですね。その源に感謝をが水をだすほうかと」

「クスクスクス」

「いやうっかりだろ!俺達昨日教わったばっかだからだよ!」

少し顔を赤くし、アルスさんはもう一度呟くと水球を出した

「ほらな、できるっつーの」

「流石ですアルスさん。これすくっていいですか?」

「おう、飲め飲め」

許可をもらい、ゴブレットにすくいあげると、ゴブレットに入った分だけ水球から切り離された

「ロッツやナタリアはいらねーのか?」

「頂く、感謝する」

ロッツさんも自分のカップ持っていたのか、それですくいあげた

「私もいいの?」

先ほど笑っていたとは打って変わり、なぜかしおらしく遠慮気味のナタリアさん

「いいぜ?何遠慮してんだ?」

「そう・・・じゃあ貰うわね。ありがとう」

ナタリアさんも木のカップを取り出しすくいあげた

僕とアルスさんはその様子を見て、またお互い顔を見合わせてはてなマークを浮かべ、食事を始めた

「かー、毎日肉くえるとか最高だな」

メニューは昨日の夜と変わらない。だが、それでも十分だ。この食事なら毎日食べてもいいと思える

「ですね!あっジェフさんが戦に勝てばもっとすごいと言ってましたよ」

「まじかよ!楽しみだな!」

僕とアルスさんの会話は呑気な内容に聞こえるのか、ヤレヤレという表情のナタリアさん

「いい二人とも、そろそろ今日の予定を伝えるわよ」

「あっおう」

「はい」

「食事をしながらでいいわ」

ナタリアさんは今日の予定を伝え始めた

「午前中はアルスとノエルは魔道兵、グリモワール、ここのルール、水よきたれと同じ基本魔法全部の説明をするわ。その間、ロッツは一人で時間をつぶしておいて。午後から、ロッツとアルスは詠唱の勉強よ。ノエルはギレル様が訪ねてくるから、一度魔法をお見せして」

「分かった」

「了解だ」

「はい」

ギレルさんがくるのか~・・・僕も少しは詠唱を覚えた方がよさそうなきがしてきた

食事はしばらく雑談のような兵士時代の事をナタリアさんに聞かれたり、ロッツさんも懐かしいなと少し話に加わりながらと魔法とは別の事を話した

「じゃあロッツ、また昼に迎えにいくから天幕にいて頂戴ね」

「あぁ」

ロッツさんは席を立つとどこかに歩いていく

「2人ともちょっと待っててくれる?これ片づけてから説明するわ」

ナタリアさんが4人分の皿と器をてに持つとどこかへ行こうとする

「それ洗うんだろ?水いるんじゃねーか?」

「ですね、洗うぐらいなら手伝いますよ?」

「・・・あなた達変わってるわね、いいのよ私の仕事なんだから。すぐだから待ってて頂戴」

ナタリアさんは遠慮なのか気遣いなのか、それとも仕事だから責任なのか行ってしまった

「どうした?あいつ?水の時もそうだけど何遠慮してんだ?」

「う~ん・・・白のケープ、リーディアさん達は魔道兵よりかは実際待遇がよくないとかでしょうか?それか魔道兵との間に確執があるとか」

「・・・俺そういうの一番だりーんだよな・・・ここのルールか暗黙の了解かしらねーけど」

「いや僕の推測なので・・・でも、僕はそういうのが面倒というアルスさんは好きです。僕も同じように思うので」

「ククク、そうか?俺はおおらかだからな」

「ふふ、ですね」

「まぁこれも後で聞いてみようぜ」

アルスさんは兵士の中でも、大柄な態度をとらず真っすぐな正確の持ち主だと常々思う

しばらく待っていると、ナタリアさんは食器を洗い終わり僕らの方へ戻ってきた
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