上 下
212 / 265

第212話 帝国の野営地へと

しおりを挟む
「アル、悪戯は順調に終わりましたね」

「だな!このままあいつらよりも先にスードリカへ向かおうぜ!」

物資輸送隊から離れ、一度森の中へ入った僕らは変装をといていく。

「はー・・・やっぱり俺は軽装鎧だな。やっぱこんなの着てられるかよ」

「リコール、汗まみれでしたね」

「ふぅ・・・サンキュー」

アルは重装鎧を脱ぎ、少し冷たい風を感じている。

「アル、次は何着ますか?後は斥候のような軽装か、弓使いのぼくが着ているようなレザー系の装備ですかね」

「まだ変装するのか?」

「一応、僕らは王国側の人達にも見られたらいけないですからね。それと、こっちの新しいタグも渡しておきます」

一度ブラックとメディアのは輸送体の冒険者に見られた為、クラリアの後輩がいたという龍の牙から取り上げた5等級のタグを渡す

「へー・・・タグの色が違うんだな」

「みたいですね、じっくり見ずとも色で判別できるのはいいですね。で、何着ます?」

僕らはまた装備を変えて、アルは弓使い、僕は剣士風とまたガラリと装備を変更。

「あー、楽だわ」

重装鎧からレザー装備に変わり動きやすさを実感しているアル。

「なんか、剣って腰に指すと邪魔ですね・・・それに盾を背負うのって首にガツガツあたって気になりますね」

軽装鎧にショートソードを脇に差し、盾を背中に着けたはいいもの慣れない装備がここまで気になるとは思わなかった。矢筒はそこまで邪魔ではなかったのに・・・

「俺は剣を背負う派だからな、鞘が腰にあると俺も邪魔だと思ってやめたな」

「そうですか・・・盾なしで僕もロングソードにして背負う事にします」

アルのアドバイスを聞き、僕らの変装は出来た。

ブリンクで距離を稼ぎ、補給部隊と離れると・・・遠目から煙が上がっているのが見えたのは朝の6時頃だった。

「戦地か・・・いや野営地か」

「煙が白いのでそのようですね・・・静けさから今はお互いに休息しているのでしょうか」

「どうだ?戦地はここよりも離れているのかもしれないぜ?」

「う~ん・・・」

僕は地図を広げ、スードリカ平原周辺を見る。

スードリカ平原が戦地と言っても、スードリカ平原自体がかなり広い平原となっている為、一カ所で戦が怒っているのか、複数の地点で戦っているのか知らなかった

「まぁ広いよな。とりあえず、あの野営地にいってみようぜ。そしたらどこで戦が怒っているのか分かるだろ」

「ですかね、補給部隊がここを目指していたとなるとメインの戦場ではありますか」

街道を進むととすぐにその野営地が見えてきた。おびただしい数のテント、広大なキャンプ場だと思わされる光景だ。

冒険者や兵士、騎士とバラバラといるがここまでくるとガヤガヤと人の声が混ざった喧騒が聞こえてきていた。

「すげーな・・・何人いるんだよ」

「どうでしょうか・・・ウェッジコート奪還作戦が1,000人ほどと記憶しているので、その4倍か5倍の4,000~5,000人ほどでしょうか」

テントの数から適当に推測するが・・・テントを持たない人もいると考えると+1,000や2,000は行きそうではある。

「かなりの人数だな・・・どうやってこの中からサーヤをみつけるかだな」

「ここにくれば勝手に見つかるかもと思いましたが・・・う~ん・・・」

戦争にしては数は少ないなと少し思ったが・・・王国もそこまで人は多くないのでこのぐらいが順当なのかと思えた。

「とりあえず歩くか?」

「そうですね、じっとしてても見つけれないでしょうし。赤ローブの男は帝国へ貸し出したと言っていたので、もしかしたらオーティマスのローブを着ているかもしれません」

「なるほどな・・・それをまずは手掛かりに探してみるか」

「はい」

僕らは敵地へと足を踏み入れた。

街や村でなくテントの集まりの為、門番などはおらず周囲を警戒する見張り番のような人達がたっているのみ

木のバリケードは簡易に作ってはいる様子だが、ブリンクで適当な位置に飛び、中に入れば僕らはもう立派な帝国側へと様変わりした。

「ザルだな」

「まぁ正面から入れば何か言われたかもしれませんが、その心配もありませんでしたね」

燃え尽きた焚火の白くなった跡がそこかしらにあるのは、この寒くなった時期に野営するのはきついだろうなと思える。

寒い寒いと、回りからよく聞こえてきている。

「あまり士気は高くなさそうですか?」

「いやぁどうだ?朝方だからじゃね?」

「ふん・・・そんなもんなのでしょうか」

ブラックや最初であったホルンの様子を見ると、ここの野営地は少し戦いにおける熱意というものが低く思えたがメリハリか?と思いそのまま野営地を彷徨う

バラバラと背の引くいテントが立つ箇所を抜けると、おおきな天幕のようなテントが並ぶ場所へとたどり着いた。

「ここは兵士達か?」

「かもしれませんね、テントが綺麗に並んで立ってますし、ここを中心に冒険者たちは周りに乱雑に立てて行ったのかもしれませんね」

「っぽいな」

僕らが兵士達のテント付近にたどり着き、そこからサーヤさん達がいないかと少し立ち止まり辺りを確認していると

「おい、冒険者。朝食の支給には早いぞ」

「・・・いやぁ腹減っちまって、少しでも早くもらえねーかと思ったんだが」

鎧に身を包み、赤いマントを付けた騎士に声を掛けられた。

咄嗟の出来事だが、アルは普通に返事をした。

「ふん、5等級か・・・。昨日は冒険者にそれなりに活躍してもらったからな、着いてこい。パンの一つぐらい貰ってやろう」

「ありがてぇ、助かりますぜ」

タグをみて、昨日の戦は帝国が有利に終わったのか騎士は僕らに食べ物をくれることになった。

僕らはその騎士に続いて、綺麗にならぶテントの側を歩く。だが見えるのは兵士や騎士といった姿の人らだ。サーヤさんや魔法使いのような人らの姿は見えなかった。

「補給物資も時期に届くはずだ、そしたら腹いっぱい食えるようになるからな。これでもうしばらく辛抱して今日も頼むぞ」

「任せてくれよ、今日も王国の連中を殺しまわってやりますぜ」

・・・アルの口調がどこか下っ端のような口調で少し笑える。

「そうか。腹が減ってるなら、補給隊が来た時に手伝えば何かしらくれるだろう」

騎士はそういうと、僕らを兵士の野営地の北側に送り届けると戻って行った

「・・・なんかいい人でしたね」

「だな、正直ああいうやつと殺し合うのかと思うと気が滅入るな戦争って」

「ですね」

あまりここでは人と喋らない方がいいのかもしれないな。僕は殺せても、アルは躊躇してしまうかもしれないな。

「このまま真っ直ぐ北に行くか?」

「う~ん、折角ここの物資がある場所を教えてくれたので、あの騎士さんには申し訳ないですが・・・僕の仕事をしようかと思います。食糧だけでなく矢や武器なんかもあるかもしれませんし」

「・・・だな、俺は一人でその辺うろついてサーヤを探すわ」

「ですね、僕も物資を荒らし終わるとサーヤさんを探しますよ。どこで集合にしますか?」

「時計あるか?」

「ありますよ、はいどうぞ」

「今が7時前か・・・騎士の話じゃあ朝食の支給があるようだからな、支給が7時30か8時ぐらいか?」

「だとしたらその時、みなが一カ所に集まりますよね?それに補給隊の到着は早くて、後3時間後ぐらいでしょう」

「よし、9時に北側に集合だ。補給隊の手伝いで集まったていでいくぞ」

「分かりました。アルこのスクロールを2本渡しておきますね。サーヤさんとガナートさんがいたら使ってあげてください」

「おう、ノエル気をつけろよ」

「アルもね。ではお互いの幸運を祈りましょう」

僕とアルは一度、別行動となる。正直アルと離れるのは心配と不安もあるが、物資を攫うのは基本的に僕一人のほうがスムーズに行える為、理にかなった行動だった。

後は物資を頂くだけだが、すでに早朝の時間はすぎ兵士達が起きている時間だ。夜ならまだしもこの中を堂々と行くのは無理だ。それに先ほど騎士に顔を見られているのでまた会うと、言い訳が出来ない。

兵士達のテントの中に冒険者が混ざっているのなら堂々と行けるのに、兵士は兵士、冒険者は冒険者と線引きしているように分かれているのがな~・・・一人兵士をやって鎧を頂く?

う~ん・・・と頭を捻る。いっそ食料は燃やした方が早いか?

穏便に済ませる方法が中々浮かばないが、サーヤさんを探す時間もいるためにとりあえず隠れながらブリンクで行くかと行き当たりばったりな作戦をすることにした
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

辺境領主になった俺は、極上のスローライフを約束する~無限の現代知識チートで世界を塗り替える~

昼から山猫
ファンタジー
突然、交通事故で命を落とした俺は、気づけば剣と魔法が支配する異世界に転生していた。 前世で培った現代知識(チート)を武器に、しかも見知らぬ領地の弱小貴族として新たな人生をスタートすることに。 ところが、この世界には数々の危機や差別、さらに魔物の脅威が山積みだった。 俺は「もっと楽しく、もっと快適に暮らしたい!」という欲望丸出しのモチベーションで、片っ端から問題を解決していく。 領地改革はもちろん、出会う仲間たちの支援に恋愛にと、あっという間に忙しい毎日。 その中で、気づけば俺はこの世界にとって欠かせない存在になっていく。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...