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第192話 雪ハーピー

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翌日からは6人での山越えとなった

ここからの位置で魔法国家までは徒歩で何日かかるかクラリア達は検討がつかない様だ。山を一直線に行くことなんてないからだという

「おっアルフレッド君、これがホグズマッシュだ」

「あー・・・一応こっちもそれなりにして置かなければいけねーか。サンキュー」

ユベル子爵の依頼なんて形だけのものだったが、関所から帰るということであれば達成しておくに限る

「それいるっすか?私結構探すの得意っすよ」

グリーンウッドにアルが受け取っているのをみて、ホルンが声をかけてくる

「いや気にするな、お前は余計な事しなくていい」

「えっ・・・はい・・」

だがアルは冷たい言葉で返す

「ホルンさん、気にすることないですよ。アルはホルンさんの方が強くて悔しいんですよ」

「はっはい・・・申し訳ないっす・・・」

「ノエル!俺は負けてねーっていってるだろ」

僕の言葉にアルは反応する

ホルンも祝福が7とシスレー達よりも上だった。帝国のほうがダンジョンは少なくても冒険者の祝福が高い傾向にあるのだろうか

僕が簡単に殺してしまった、ブラック達は9や8の集まりと聞いた時は驚いたのだ

野営した湖からブリンクを繰り返し、山を越えると標高が上がったのか、雪が積もる場所に

すでに10月を迎えている為、寒さがみなを襲っている

レビテーションを使用し歩く僕には関係のない話だが、正直山越えのルートは夏だろうが冬だろうが誰も選ばないだろう

アルは隊の戦闘。その後ろをクリスとグリーンウッド。続いてホルン、クラリア、最後尾に僕となる

「クラリアさん、ホルンさん大丈夫ですか?」

「えぇ、ありがとうございます」

「心配いらねっす、これぐらい余裕っす」

嘘を制限術で縛られている為に、彼女らは祝福がぼくらより高い為に本当に大丈夫な様子

その前をいく、アル達のほうが疲れている様子だ

「ノエル、ちょっとあそこで休憩しようぜ」

先頭のアルから声が掛かる。歩き始めてまだ3時間ほどだ、昼食にしては早すぎる

「はやくないです?」

「・・・疲れたんだよ、歩きづれーわ、息はすぐあがるわで、なんだよ山越えってよ」

う~ん・・・高山病とかになってもあれか

「分かりました」

「ブリンクであそこまで頼むぜ」

「・・・みなさんブリンク使うので楽したい方は掴まってください」

アルの願いにそういうと、みな僕の肩や腕を掴む

全員掴まったのを見ると、連続8回のブリンクでアルが示した休憩場所にたどり着く

着いたが、着いた途端に歌声が聞こえ始めていた

「うん・・・歌?」

「雪ハーピーです!シンプルサークル!」

僕の気付きと同時に、クラリアは奇跡を発動する。クラリアのいる地面に六芒星のような円がかかれ微弱な光を放つ

それをみて、僕もアルへと

「ウィンドシールド!アル!」

アルとクリス、ホルンは既に虚ろになりつつあったが

「ぐっ・・・いきなり意識とびかけた、助かる」

アルに風魔法の防御呪文を掛けると、フラフラと倒れそうになった体勢を持ちなおす

「崖の上だ。向こうはこちらに気づかづただ歌っているとこに飛び込んだ感じだな」

グリーンウッドがどこから聞こえてくるかを探り、現状を説明している

「アル、何匹いるか見に行きます?」

「・・・見るのがこえーんだが」

グリーンウッドが示す場所からかなり距離があるのに、合唱のように聞こえてくる歌声は5匹6匹というわけではなさそうだ

「今は雪ハーピーの産卵期・・・恐らく産卵場所なのかもしれません」

クラリアは結構魔物に詳しいなと思いながらも、その説明をきく。すでにホルンとクリスはその場に倒れて寝ている様子だ

「あの崖の上って・・・一応ぼくら渡ろうとしてますよね」

「その予定だな」

「地図を見る限りは・・・どの程度いるか分かりませんが全てのMPを使ってブリンクで渡りきれるか心配ですね」

「だけど。回り道なんてあるか?どこかしらの山は越えなきゃいけねーのによ」

「うっ・・・悪いが二人とも作戦会議なら少し離れないか・・・」

グリーンウッドは魔法をかけている様子ではないが、もう倒れそうだ。クラリアをみると同じようにサークル内で眠気と戦っている様子

そう声を掛けられ、アルはハッとした表情をすると周囲をさぐりながら

「ひとまずあの岩場に逃げ込むか」

アルは少し離れた岩でできた10mほどの岩が重なり合う場所をさす

「分かりました」

またブリンクを3度使い、ハーピーの歌声の地域を脱出した

「ちょっと考えねーとな・・・」

「MP回復したら一人で何匹いるか探ってきますよ」

「あぁ頼む、でも気をつけろよ」

岩場の影に腰掛けながら、アルは疲れた面持ち

グリーンウッドとクラリアも同じように、座り込む

普通のハーピーよりも歌が強力なのか、数が居るためか前であったやつらよりもアルには歌が効いていた

斜面の為、ソファが置けないのでマットを引くとそこにホルンを寝かせる

クリスは・・・地面の上でいいだろう

「アル、何か落ち着くの飲みますか?コーヒーやハーブティーなど」

「あぁ、コーヒー頼む」

アル達に飲み物を配り終えると、僕はマジックポーションを飲み干す

「キュアを使いましょうか?」

「いや、MPは温存しておいてくれ。ノ、俺たちの休息もあるからな、しばらくしたら勝手におきるだろ」

「分かりました」

アルは僕のMP回復の事を言いそうになったのかな?もう今更な気がするが。僕も少し目を瞑り寝たふりをしておくか

「アル、僕はMP回復に努めます」

「あぁ分かった」

「アルフレッド君、俺が一応考えたルートなんだが聞いて欲しい」

「あぁ、思いつく事があるなら言ってくれ」

アル達が経路を話あうのを耳を傾けながら、MP回復につとめた

1時間後に、目を開けた。アル達も結局崖の上の様子次第でルートを見つめなおす方針になり、その間にクリスやホルンも眠りから目を覚ましていた

僕も寝ていた素振りを見せながら、目を覚ます演技だ

MPも万全になり、一人崖の上へと様子を見に行くことに

崖を昇るのにブリンク4回・・・となると帰りもだから・・・

ブリンクの計算をしながら先ほどのハーピーの歌が聞こえる地点へとたどり着く

いまだ合唱のような歌が響いている

一応自分へウィンドシールドを張り、崖の上へとブリンクを重ねていく

崖下から上を覗き込むところまでブリンクでたどり着く

もうここまでくると、歌のようには聞こえないボリュームだ

ウィンドシールドを張っていなかったら、声の大きさだけで眠り云々の前に意識が飛ぶのではないかと思えるのだ

崖からどうなっているのか覗き込むように確認する

そーっと頭だけをだして、目が地面を超えたあたりで僕の想像以上の光景が目の前に広がる

白一色といっていいほどの光景

崖から離れ30mほど離れた位置にそいつらはいた

目を凝らしよくみると所々に足や目が見え不気味さをます。

崖の上は平地だが、大きな岩の山がいくつもあり、その上にも雪ハーピーは座っている

平地には隙間を埋め尽くす様なハーピーの数、恐らく何千匹という単位だろう

そのハーピー達全匹が座りこみ、歌を歌っていた

・・・これは横断はむりそうだな

ブリンクで飛んでいくとしても、崖を昇るのに4回。このハーピーの群れを超えるのに少なく見積もって12回は最低必要そうだ

向こう側がどうなっているか分からない為、降りるのにも5回はブリンクできるようにしておきたい・・・

となると今僕はポーションとオールリング込みで連続19回使用可能だ

そこにウィンドシールドや他の魔法も考えると・・・このルートは諦めるしかない

一度にまとめて処理する道具、魔法、手段は・・・持ち合わせていない

周りを見渡しても、解決策が浮かばずに僕は頭を下げて覗かせた顔を引っ込める

ブリンクで下まで降りると、そのままブリンクでアル達の所まで戻る

「戻りました」

「ひゃっ!?」

「おぉ!?」

「あっ驚かせてごめんないさい、僕です」

アル以外はまだ慣れない様子で、僕が突然現れることに驚く

「どうだった上の様子は?」

だがアルはそんな事はほっておいて本題へ行こうとする為、僕も見たままをアルに告げる

「崖の上は平地でした、でも岩で出来た山がいくつもある地形。そこを埋め尽くす様に雪ハーピーが何千匹といましたね」

「何千匹か」

「はい、大袈裟ではなく2千はかるくいたかと」

「それはブリンクで渡れそうなのか?」

「僕の見立てでは無理でしょうね」

「参ったな・・・」

僕らの話している様子を見て、クリス達も話に参加する

「他にルートはないのですか?」

「いやあるぜ、ノエルがいたらルートなんてほぼ関係ねーからな。でもよ」

アルは地図を広げる

「ノエル、ここからだと崖の上のハーピーはどこまで広がってそうだよ」

アルが示す地図の崖の上を僕は指でなぞりながら

「ここからここまではいましたね、でも僕が崖下から覗いた範囲なのでもっと広がっているかもしれません」

「だよな、それだとここが駄目なら迂回するように一度ここ下って行かなきゃいけねーだろ」

みんなに分かるように取ろうとする別のルートを示す

「それだと・・・」

「あぁ結構な時間ロスだよな」

崖の上が駄目だという時用に、代替案はあったがやはりそれをいざとるとなると渋るのも分かる

ここを一直線に進めば何時間かの道なに、迂回すれば+3日はかかるかもしれないからだ

急がば回れという言葉はあるが、今回は回りたくないだろう

う~ん、とアル達は決めきれない様子だが

「アル、上の様子を見ていた僕の意見では、上を渡るのは無理ですよ。仕方ないですが、軌道修正して迂回する道を行きましょう」

「・・・そうだよな」

僕は何千匹というハーピーの群れの中を突っ切る勇気はない

アルに無理だと念押しするように伝える

「あの・・・ハーピーは夜は深く眠る生き物です。それに寒さを和らげるために昼間よりもっと密集して眠るはずはので・・・もしかすると、ここのルートの端を通れるのではないかと・・・すいません」

上を行くルートを断念した時に、クラリアがハーピーの事を詳しいような感じで喋る。いやイエティの事も教えてくれた為、魔物に詳しい様子だ

「それは本当かい?」

「はい・・・いえ、すいません出過ぎた事を」

クリスがクラリアに確認した為、嘘ではないようだ。間違った知識だとしてもクラリアはそう思っているということは分かる

「どう思うノエル」

「いやぁ~・・・危ない橋のような気がします、別に今渡らないでもという考えです」

「ふん・・・」

また悩み続けることになるアル

「クラリアさん、他に何か考えついたことありますか?」

「そうですね・・・ハーピーは視力はいいのですが聴力はよくないので足音などは気にしないでいいかと・・・」

自ら最初は意見をくれたが、少し歯切れの悪い喋り方は自分の立場を理解しているからだろう

「ごめんねクラリアさん。僕らに積極的に協力するのは、クラリアさんやホルンさんの立場からだと変とは思いますけどね、正直ランクも祝福も恐らく年齢もクラリアさんの方が高い為、意見がいただけたら助かります」

帝国だろうと先輩冒険者だ

「いえ・・・そうですよね。でも、年齢はかわらないんじゃ・・・」

「クラリア君やホルン君はいくつなんだい?」

おぉ、断れない嘘偽れない状況で女性に歳をきくとは、クリスさんやるなー

「・・・26です」

「24っすー・・・」

結構上だな、いや祝福やランクの事を考えると妥当か

「へー・・・結構上だったんだね」

「・・・言いたくなかったです」

「私もっす・・・クリス様ひどいっす」

その様子をきまずく見る僕ら

「一応僕は23歳だからね、まぁあまり変わらないさハハ」

なんのフォローにもなってない、クリスさんの年齢発言はおいておき本題に戻ろうとする

「えっと、まぁ年齢は年上ってことで置いておいて、ホルンさんは何かありませんかね?雪ハーピーやルートについて」

「・・・」

「う~ん・・・私はここの上を行くルートよりも、こっちここを行く方がいいと思うっす・・・ノエル兄貴やアル君は年いくつなんすか?」

ホルンは迂回のルートを選択しながら、年齢の話を続ける

「は?アル君?」

「アル仕方ないですよ、ホルンさんもこう見えて僕らより年上なんですから。僕が18、アルが19です。それでなんでこっちのほうがいいと?」

「18!?ごめんなさい・・・」

「えぇ!?ええっと、雪ハーピーは今産卵期っす、巣の近くでもし見つかるような事になれば一斉に襲い掛かってくるっすぅぅ、ノエルの兄貴そんな若いんすか!?」

クラリアは大きな声で驚き、ホルンも驚き答えてから、また驚く。この制限忙しそうだ

「ノエル君は分かってたけど、アルフレッドさんも年下だったんですね」

クリスも年齢の話を続けるが、こっちはそんな事もうどうでもいいのに・・・

「アル、どう思いますか?」

「いや、ホルンが年上だからって俺を君付けで呼ぶのはきにいらねーな」

お前もか

「それは・・・私より歳が下で私よりも実力がともなってないっすから」

「・・・ばばあが」

「!?・・・ひどいっす」

アルの発言に、ホルンさんより年上のクラリアさんの方がダメージを受けている様子で、顔が引きつる

「クラリアさん、雪ハーピーに見つからず抜ける自信はありますか?」

「ばばあ・・・・はっ、えっと・・・自信はありません。深く眠ると言っても個体差はあります、それに眠る時間もですね」

「起きているやつも中にはいる可能性があるという事ですね」

「はい・・・」

「アル、クラリアさんが傷ついてますよ。綺麗な女性にばばあは駄目ですよ」

「いや・・・クラリアの事をばばあといったつもりじゃなくてよ」

「いえ、いいんです・・・ノエルさんやアルフレッドさんからしたら・・・仕方ないです」

クラリアはそのまま落ち込み、俯いた

落ち込むクラリアはひとまず置いておくとして

「どうします?」

「・・・多数決にするか?」

「人数は6人数ですよ?同じだった場合はどうするんですか?」

「その時は・・・崖の上をいく」

隊のリーダーのアルがそういう為に、みな納得したように頷く

少しでも速くサーヤさんを見つけたいというアルの気持ちを僕も組むことに

「じゃあ崖を渡るのがいいと思うやつは挙手してくれ」

アルと僕、クラリアが手を挙げる

結果綺麗に別れてしまう

「クリス達は迂回がいいのか?」

「・・・アルフレッドさんはノエルさんがいるから危険な橋を渡れますけど、僕らは・・・」

「そうだな、俺だってノエル君が近くにいてくれるなら崖の上をいくさ」

クリス達は僕が見捨てると思っているようだ

だが、その通り、僕が誰か一人を助けるとなるなら迷わずアルを選ぶ。時点でクリスかクラリアだろう

「お前らそんな事考えてるのか?自分の身は自分で守れないでどうすんだ」

アルがもっともらしいことを言うのに驚く

「ですね、アルの言う通りです。僕はクラリアさんとホルンさんで両手が塞がると思うので後の方は万が一は自分で何とかするように」

アルに続いて僕もクリス達へ冷たい一言だ

「・・・いや片手は俺の為にあけとけよ」

「恥ずかしくないんですか?」

クリス達に言った事を撤回するかのように、アルは僕へ遠回しに助けろという

「ほら!やっぱりそうですよ、アルフレッドさん!」

「ノエル君、仮にも君は彼女らを殺そうとしたのではないのかね」

「それはそれ、これはこれです。事情は変わりましたから」

「ノエル、てめぇ女の手握ったりでもしてみろ、シスレーにすぐチクってやるからな」

「いやいやおかしいですから!」

僕ら4人のいい合い、だが移動ルートは崖の上を通りハーピーの横をかすめるように行くという事になった
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