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第177話 僕の役目

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シスレーと、ギルドの方針がでるまで、ギルドの建物がある近くのカフェで時間を潰すこと4時間

朝からずっと待っているが、一向に進捗が無く痺れを切らした冒険者たちは、ギルド前からはほとんどが居なくなっていた

「本当に何も動きがないねー」

「ですね、アルも大人しく待っているといいですが」

僕らも特段やることもない状況だが、この場を離れることも出来ずにいた

そこからもう1時間ほど、待っていると街全体がざわつき始めたようにガヤガヤとした音とともに、冒険者たちがまたギルド前へと集まり始めた

「騒がしくなってきましたね」

「だね、何か知らせでも入ったのかな?」

周りでは同じようにカフェで待機していた冒険者たちも、席を離れギルドへと向かって行き始める

「僕らも様子を見に行きますか?」

「う~ん、少し離れた所で待ってたら、副ギルドマスターが大声で通達してくれるんじゃないかな?」

「そうですね、じゃあ聞こえる範囲に行って待機してましょうか」

「うん」

僕らもカフェを離れ、ギルド近くに行くとキョロキョロと周囲の状況を探るアンナさんとデックスさんを見つける

「アンナさーん!」

「どこいたんだよ、探したぜ」

シスレーが声を掛ると、僕らを探していたようだった

「近くのカフェで待機してましたよ、何か動きがありましたか?」

僕が訪ねると、デックスさんが喋り始めた

「あぁ、さっき知り合いの騎士団のやつから聞いた話じゃあ、帝国が宣戦布告してきたらしいんだよ」

「宣戦布告・・・戦争になるってことですよね」

「あぁ、それで帝国側に魔法国家もついたと聞いたぞ。戦争前に宮廷魔導士も参加している集会を襲うとかきたねーよな」

「ちっ・・・戦争なんて勝手にやれよな、私やサーヤらを巻き込むんじゃねーよ」

アンナさんはいつものように悪態を付いているが、サーヤさんを心配している事は分かる

「騎士団は順次、国境へと派遣されていくみたいだぜ。冒険者にもそろそろお達しがくると思うが」

僕らがデックスさんから話を聞いていると、ギルドからオールバックの副ギルドマスターが出てきた

「噂をすればだな」

「あぁ、どう出るのか黙って聞いてようぜ」

周りのざわつきも静かになり始めるだけあり、やはりあの副ギルドマスターは冒険者から慕われている人なのだと感じた

「冒険者諸君聞けー!帝国が王国へ宣戦布告をしてきた!我が国が他国の脅威に脅かされている!みなの仲間も連れ去られ戦争の道具に使われる可能性がでている!」

副ギルドマスターが喋る間は誰一人会話をすることなく、ただその威厳のある低い声質から放たれる言葉をただじっと聞いている

「王国もこれに対し、拮抗上体が続いた状態から戦いの火ぶたが落とされた!騎士団は今日から順に戦地となるであろうウェスト地方のスードリカへ向かう事になった!冒険者諸君も、一王国民として参加されたしということだ!」

スードリカ・・・ホーク火山を抜けた地方なのだろうか、それに戦争・・・

「戦闘、物資調達、補給輸送、工作活動、魔法使い探索と仕事は多岐にわたる!国からの依頼として出る物ばかりだ!諸君随時受け付けているからな!心して引き受けよ!」

戦いだけが戦争じゃないか、裏方も仕事もあるんだな

副ギルドマスターの言葉が終わると、冒険者たちはすぐに副ギルドマスターにアピールするかのように戦争参加へのアピールを始めるものも出始め、大いに戦争への意欲を燃やしていた

サイシアールの時と違い、皆が皆積極的になっていることにあの人の人望なのか、みな王国が好きなのかという感想が生まれる

「方針は決まったんだな」

「えぇ・・・えっアル!?」

隣には着替えて、サリアと一緒に立っているアルがいた

「まだ横になっている方がいいといったのだけれど・・・」

「いえ、サリアは十分してくれましたよ。もう大丈夫なんですか?」

「おう、ある程度はな。今の話聞いたがあれが最初の通達か?」

「ですよ、僕らもずっとまってやっと進捗があった感じです」

「そうか、俺中に行ってくるわ!」

「えっ、この人の中を!?」

アルはその言葉を残し、人ごみをかき分けてギルドへと入って行った

「愛の力だねー」

シスレーがアルの姿をみて呑気にそう言っているが、サリアもアルに続いて中に入っていく様子に僕はこっちのほうが愛の力のように感じた

「デックス!私らもいくぞ!」

「おう!」

アンナさん達もアルに続き人をかき分けて行ってしまった

「シスレー、僕らは待ってましょうか。ここにいるのも邪魔になりそうですし」

「だね」

少し場所を変えて、アル達がギルドから出てくるのを待つ間にシスレーと戦争の事について聞いてみる

「戦争なんですね」

「20年前にも起こっているよね、王国と帝国は頻繁に戦争してるんだよ」

「・・・表立って戦いたくはないですね」

「だね、平和が一番だよ」

魔物がいる世界でなぜ、人同士で戦う必要があるのだろうか・・・戦いたければダンジョンにいけばいいのに・・・

ファンタジーを感じているこの世界、僕にとって魔物以外と戦う事に嫌気を感じる

「あっ帝国と魔法国家って何か関係があるんですか?サーヤさん達を攫ったのはほぼ魔法国家で決まりなのに、戦争相手は帝国って」

「えっと・・・なんだったけ?魔法国家はもとは帝国領の一つの街のことで、そこから独立して国になったとかだったか・・・まだ独立はしてないけど、魔法国家って勝手に名乗ってるとかだったような」

「ふんふん・・・じゃあ帝国なのには変わりないんですね」

「まぁそんな感じ」

帝国ってどんな場所なのだろうか・・・、知らない世界を見て回りたい僕にとっては帝国もいずれ行ってみたい場所なのに変わりなく、戦争で悪いイメージをつけたくなかった

「シスレーは帝国に行ったことあるんですか?」

「ううん、ないよ」

「結構遠いんですかね?」

「う~ん・・・国境付近だと、ネバースノーから10日あればいけるのかな?それぐらいの距離」

「なるほど」

帝国の全容が分からないが、わりかし近い距離にあるのかなと感じる

もし・・・ここからサーヤさん達を探しに帝国に行くと往復でも30日か・・・う~ん・・・冬の事を考えると相手からしたらいいタイミングで攻撃を仕掛けてきたな・・・

サーヤさんの事も心配ではあるが、これからの事を考えると色々な事が頭に浮かぶのは僕が冷たいからなのだろうか・・・やはり他人の為にそこまで善人には慣れない気持ちが僕を揺さぶる

「また黙り込んで考え事してー」

「ごめんなさい、色々と今後の事も考えるとどうも思考が先走ってしまいます」

「そっか、もしサーヤさん見つけてもめでたしめでたしじゃないもんね」

「・・・まぁそういう事ですね」

シスレーは本当に僕の思考を読んでいるかのようだ

この事件において自分の役目は何なのだろうか・・・何をするのが最適なのだろうか・・・

自分の役割なんてないのかもしれない、戦争は任せて後方で支援物資を集めたり、冬の準備を進めた方がいいのかもしれない。

それか別に王国に未練なんてない、すべてを投げ出しシスレーと海を渡って別の国にいってもいいかもしれない

そんな弱気な気持ちが、戦争という言葉に怖気づいている

「大丈夫、ノエル君とアル君ならきっとサーヤさんを見つけれるよ」

「・・・そうでしょうか」

「うん、だから家の事とかはうちやティアちゃんに任せてよ。本音は一緒に行きたいけどね」

「シスレー・・・ですね。アルに見つけると大見栄もきっちゃいましたし、もしアルが帝国領に行くといったら僕はそのままアルと行きますね」

「うん、そこはちゃんとアル君のように男らしく即答だよ」

シスレーは先に決めてくれた。アルが帝国領に行くというのは目に見えているのに、そこで僕が今のように他の事を考えて悩むとアルが不安になる。ただでさえ今も不安でたまらないはずなの余計にそう思うはずだ

それを見越して先にシミュレートして、いつも離れたくないと言ってるシスレーが送り出そうとしているのだ

「やはりシスレーにはかないませんね。僕の部屋のシスレーが描いた絵だけの裏に金貨を張り付けているので、PT資金が足りなくなったらそれ使ってください」

「うん・・・ただし!帝国いったり魔法国家にいって女の匂いつけて帰ってきたら許さないからね!」

「そこは大丈夫ですよ、僕にはリコールがありますから」

「そういう事じゃない!関わっていい女性はサーヤさんだけ!」

「分かってますよ、こんな素敵な女性が僕の事を思っているのに浮気なんてしません」

「よろしい!」

僕の中で決心はついた、後はアルがどんな依頼、役割をもってきたとしてもそれに付き従おうと決めたのだった
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