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第172話 泉の乙女の流行

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今日はアルがユベル子爵にグレム酒を持っていく日となっていた

アルが午前中に、お酒を取りにくるとサーヤさんは用意していたような箱のようなケースにグレム酒をいれると2人そろって身なりのいい服装をして出て行った

「サーヤさんすごく綺麗だったね」

「アルも遜色ない服装でしたよ」

2人の出来る人感が服装で一層引き立てられていた

「うちらは今日どうしよっかー、夜まで・・・いい?」

「・・・一回だけにして、図書館いきましょうよ。あっ前サリアに連れて行ってもらった王都の周りのゴンドラツアー楽しかったのでそれもシスレーと行きたいです」

「仕方ない、そうしようっか」

2人の時間がこんなに取れるのも珍しい為、シスレーは甘えてくるが僕もその気な為、この二人の時間を楽しむのだ



「行きましょうか」

「まって・・・腰が痛い・・・」

「ファーストエイド」

「・・・楽になった」

リコールも掛け直し、服を着なおすと

「ゴンドラツアーって時間あったよね?先にそっち行く?」

「ですね、図書館は入場時間は6時までとなってましたので、そのほうがよさそうです」

目的地も決まり、宿をでると

「おーい!」

アンナさんが宿屋のラウンジで待機して僕達を呼んでいるのだ

「げっ!?ノエル君部屋に戻ろ!」

「え?アンナさん待ってくれてますよ」

「いいの!」

「いや駄目ですよ」

僕らがその場で動かなくなった様子にアンナさんは立ち上がりこちらに歩いてきていた

「げっきた!?」

「おい人が待ってるってのに何してんだよ」

「アンナさんこんにちは」

「別に待ってもらわなくていいですー、うちら用事があるのでそれでは!」

シスレーは僕の右手をもって引っ張って行こうとしたところに

「おいおい待てって、折角いい場所連れて行ってやろうと思ったのによ」

アンナさんは僕の左手を掴みとめようとしていた

ちぎれる・・・二人とも僕より祝福高いんだから手加減してよ・・・

「アンナさん、ノエル君離してください。うちら予定があるので!」

「どこいくんだ?どうせありきたりな場所行こうとしてんだろ?」

「ゴンドラで王都周りのツアーと図書館ですよ」

「かっしょっぺえ予定だな、お前ら年取った熟年夫婦じゃねーんだから若者らしく楽しいことしろよ」

「いいじゃないですか、うちはノエル君とだったらなんでも楽しんですー!」

「シスレー、アンナさんわざわざ来てくれているので、予定だけでも聞きませんか?」

「おっノエルは気になるか?そんな小娘ほっといて私と楽しいことしにいこうぜ」

「ノエル君!」

「いやいや・・・二人ともダンジョンで仲良くなってたじゃないですか。シスレー僕ら王都は詳しくないので、騙されたと思って一回アンナさんについて行ってみましょうよ」

他人に不愛想なアンナさんが、わざわざ出向いて宿で待っていてくれているぐらいなのだ。悪いことではないと思うのだが

「・・・一回だけ!変な場所や、ノエル君に手出したらうちら帰りますから!」

「変な場所じゃねーけど、ノエルに手出すとかはしらねーなー。お前らずっとよろしくやってたんだろ、少しは私にわけてくれもいいじゃねーか」

「だめだめ!ぜったいだめー!」

「ノエルー、私の事好きにしてもいいんだぜー?ほら触ってみろよ」

「ノエル君!」

「僕何もしてませんよ・・・」

今だ宿屋のラウンジにいる為に、ここで騒いでる二人と距離を置きたかったが両手を掴まれている

周りの視線もある為に、2人をひっぱりながら外へ出ることになった

「アンナさんどこに連れて行ってくれるんですか?」

「最近できた遊び場だな、ガキが行くようなとこだが大人もまあまあ楽しめていいぞ。お前らは絶対気に入ると思うけどな」

「そんな所いって本当に楽しめるんですよね・・・?」

「ふ~ん、お前らカードとかできるよな?カジノも隣に併設されてるからよ、そっちが面白くなかったらギャンブルで一勝負でも楽しいぜ?」

「カードですか?うちめちゃくちゃ強いですよ?その上に更にノエル君はつよいですから!」

「へー・・・勝負するか?」

シスレーの言葉にニヤっと笑ったアンナさんから勝負の提案が

「いいですよ」

そしてシスレーも僕の運の良さをしっている為に勝ちを確信した顔をして勝負をうけた

アンナさんに連れられてきたのは広場の所にテントや屋台がでている場所だった

祭りのような雰囲気だ。その隣にきらびやかな装飾の建物があることから隣がカジノなのだろうと簡単にわかった

「ここだな、まずカードの勝負はこっち回ってからでいいだろ?魔法使いの集まりも7時からならまだ余裕あるよな?」

「ですね、アンナさんは行かないんですか?」

「行く予定だぜ?ノエル第二号がいるかもしれねーからな」

「ぜったい2号君さがしてください」

別に僕2号という名前じゃなくてもいいのに・・・

「カップ入れあるぜ、シスレーお前得意じゃねーのか?」

「自信ありますよ」

景品のような物は、何をモチーフにしたぬいぐるみなのだろうか?訳の分からないウサギっぽいの二足歩行のぬいぐるみが飾られている

子供がやっているのをみるが、カップの中にボールを投げ入れるようだがかなり難しそうだ

一度はいっても、バウンドして出たりと一筋縄ではいかなさそうだ。大人も子供の為にチャレンジしているが成功している人はまだでていない様子だ

「これやろっ!うちがとってみせますよ」

「あのぬいぐるみ欲しいんですか?あれなんです?」

「ノエルしらねーのか?あれ泉の乙女にでてくるアルベット君だぜ?」

ぶーーー

思いっきり笑ってしまう

「すいません・・・」

アルベット君といったら、アルのことだった。面白すぎて笑いをこらえきれないとは別にあのぬいぐるみが欲しくなってしまった

「シスレー、あれアルベット君クスクス、絶対とって帰りましょう」

「アルベット君、うちの中だともう少しスマートなんだけど・・・まぁいいか」

確かに僕らはアルをモチーフにしていると知っていれば、もう少しカッコよくつくりそうだが・・・世間は歌だけの判断だとアルの言動はああいう風に伝わるのかと笑いが止まらない

僕達の順番になり、我先にとアンナさんが銅貨1枚払うとボールを3玉もらった

「はいよ、姉ちゃん。1個でもはいったら景品プレゼントだ」

「よっしゃー、ぜってーとるからなおっちゃん!」

アンナさんは勢いよく投げ入れようとするが、カップは上向きだ綺麗な放物線を描いて入れないと上手く入らないと思うが、不器用なのか力づくでなんとかできると思っているのか上投げでカップを狙った

カップは木製のような物で出来ている為、力が強すぎれば倒れてしまう

アンナさんも案の定カップ近くにいきはするが3球とも倒してしまった

「ちくしょー!ほらシスレー」

「アンナさんそんなに肩に力入れてたら入りませんよ」

「何言ってんだ、入れてから偉そうな事いえよな」

シスレーの分をおじさんに払うと、シスレーは狙いを定めて大きく放物線を描いた球がカップの横をバウンドしていった

「ふんふん・・・もう少し右か」

シスレーは真剣に呟き、もう一度投げた球はカップの淵にあたり弾かれる

「かーおしい!シスレー最後だぞ」

「わかってますよ!いまので掴めました」

シスレーの最後の一球は綺麗にカップへと吸い込まれるように中に入ると

「やった・・・ええーー!」

バウンドして外に出てしまったのだ

シスレーの投げた球の様子から、カップの底はかなり浅そうに見える

「惜しかったな姉ちゃん!」

「シスレーも人に偉そうな事いって駄目じゃねーか」

「くっ・・・えーん。ノエル君、駄目だった~」

「僕もやりますよ」

おじさんに銅貨を渡し、僕の番に

空間魔法のアビリティのおかげで距離は把握できる。キャシーさんにりんごをあげた要領だ・・・

どうやってバウンドしても外に出ないかか・・・

ボールを受け取り、その肌触りを確認する。木製で出来ているようで弾力はなく簡単に弾かれてしまいそうな材質だ

どれだけ柔らかく投げても、バウンドはしてしまうと思う

「にいちゃん後ろがつかえてるぜ」

「あっすいません」

考えても駄目な為とりあえず、出来る限り柔らかく投げてみることに

ふわっとした僕の玉はカップの中に吸い込まれたが、カンと音がなり外に転がった

今ので駄目なら無理か・・・

「おしい!ノエル君いけるよ!」

「はい!」

逆に淵を狙って投げればいいのか

また軽くふちを狙ってあげてみるが、淵に当たりバウンドしてしまい玉は無常にも地面に転がった

淵でももっとすれすれか・・・

最後の一投、同じように淵に当たるとこすれるように内側に転がり・・・くるくるとカップの中で回り綺麗にカップの中へ納まった

「やったー!流石ノエル君!」

「やりましたよシスレー!」

「おめでとさん、にいちゃん。今日初の成功者だな」

店員のおじさんはくくりつけている、不細工なぬいぐるみのアルベット君をひとつ外して僕にわたしてきた

近くで見れば見るほど不細工で味がある・・・

「やるなノエル!」

「はい、楽しいですね!」

「だろ!ほらなシスレー!お前も楽しいだろ」

「ぐっ・・・次行きましょう!」

普通にシスレーも楽しんでゲームをしていた為、アンナさんの前では素直になれない様子だ

その広場をみて回ると、どうやら泉の乙女が話題になっているために泉の乙女に関わる景品がちらほらとあるのだ

「ノエル君!次あれとって!」

「ノエル!あれお前のモチーフだろ!私も欲しいぞ!」

シスレー達も同じように挑戦するが、簡単にとれるような物はなく僕は二人が取れなかったものを挑戦させられ、その度に攻略方法を考えてはシンさんがモチーフのネズミのシーマ。エマさんがモチーフのリスのエルビーのぬいぐるみを仲間に加えて行った

シスレーのモチーフのぬいぐるみはショートカットのシリア。人をデフォルメされたぬいぐるみだったが、これは僕が欲しくて一番気合をいれて手に入れた物だった

そして最後に僕がモチーフの青の賢者だ。青いフードに身をまとったぬいぐるみだが・・・この景品だけ人気がないようで人があまり並んでいない・・・シスレーのモチーフはやるのに1時間は並んだのに・・・

自分が人気がないと分かると少し切ない気持ちになるが、シスレーとアンナさんは一番ほしいと言ってくれている

「おじさん、2回連続でやってもいいですか?」

「おう、いいぜ。かぁー周りが羨ましいぜ、ここだけ人気ねーんだよな毎日」

「あっそうですか、ごめんなさい」

ごめんよ店員さん・・・僕のせいで・・・

「なんでにいちゃんが謝るんだ?ほらよ、全部倒せたら景品だからな」

ここはカップが5段に積まれて一投で全てを倒せばいいというものだった

狙う場所は分かっている為、僕は連続で2回成功させたのだ

「やるなにいちゃん、ほらよ。少しは在庫が減ってこっちも助かるぜ」

「アハハ・・・」

青の賢者、顔は何も描かれておらず、フードの中は黒一色なのはその謎の雰囲気を醸し出す為かもしれないが他のぬいぐるみと違い味気ないのも人気の無さなのだろうか

それでも二人に渡すと嬉しそうに抱いている姿は二人とも女の子ようだった

「それうれしいですか?」

「うん!一番すき!」

「私も!他のはいらねーがこれは嬉しい」

「そうですか」

複雑な気分にこれを考えた人は、もう少しひねったデザインを考えるべきだと発案者に抗議したくなる

カジノをメインにいく予定だったが、すっかり僕らはその広場を楽しみつくしていたのだ

「ほらな楽しかっただろ?時間もいい時間になってるじゃんか」

「楽しかった・・・」

「はぁ?聞こえなーな」

「もう!楽しかったといってるの!連れてきてくれてありがとうございました!」

「クックック、最初からそういえばいいんだよ」

「アンナさん、僕ら一度着替えてきますがどうします?」

「着替えなきゃいけねーのか?」

「サーヤさんから今回は、場所がいいところなので少しフォーマルな服装がいいかもと言われてますよ」

「はぁ~、私そんなのもってねーぞ。私はこのままいくぜ」

「駄目だよ、今から帰りにここに教えてくれたお礼に選んであげるよ」

「ですね、僕も今日のお礼にシスレーが選んだ服プレゼントしますよ」

「・・・変な風にすんなよ」

「大丈夫ですよ、シスレーはお洒落さんなので任せておけば」

図書館で調べものは出来なかったが、これはこれで楽しいひと時となり。アルへ見せつけれるアルベット君は大きな収穫物となり楽しい時間だった
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