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第167話 あの時の約束

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木漏れ日との宴の翌日、サーヤさんとアンナさんは拠点に泊まっていった。他の人は遠慮して帰ったのだが、アンナさんがどうしても泊るというのでサーヤさんはアンナさんのお目付け役で同行することになった

サーヤさんとアンナさんはミードさんも、寝泊まりした空き部屋をつかっている。ゲストルームのようになりつつある空き部屋だが、家具類は貴族から拝借したものを置いている為、使い心地はいいだろう

残ったアンナさん達と深夜遅くまで飲んでいた為に、流石にサリアも起きてはいない朝の7時

一人リビングで昨日の片付けを始める

「朝は少し寒くなってきたか、もう秋口か~」

一年の早さを感じるこの頃だ

アンナさんやデックスさんはよく食べてくれていた。食べ残しがないように余ったやつは全て食べてくれていたので残っているお皿の上は綺麗だ

リコールをかけながら、食器を仕舞っていく

「おっ・・・ノエルはやいな・・・」

「おはようございます」

アンナさんがまだ眠そうだが、降りてきた

「トイレどこだっけ・・・」

「あっ2階にもあったんですけど、教えて無かったですね。1階はそこを真っすぐいって右の緑のドアです」

「おう・・・」

ノソノソと歩いて向かっていく

特段早起きではない様子だ

こっちに戻ってくるときには、目が少し覚めた様子で

「くぁー!ノエルは普段も早起きなのか?」

背伸びをしながら、歩いてきていた

「そうですね、決まった時間に目が冷めちゃうんですよ」

「ふ~ん」

「アンナさん、何か食べます?」

「いや、昨日の食事がまだ腹にのこってるからいい。ノエルの部屋ってどこだ?」

「みます?何もないですよ」

「そうなのか?まぁみせてくれよ、こんな機会滅多にないんだからな」

「いいですよ、こっちです」

アンナさんを僕の部屋に招き入れるが、家具類はほぼイベントリへしまっている為、いまあるのはベッドと椅子と本棚と気に入った絵だけだ

「どうぞー」

「・・・ほんとなにもねーな」

「アハハ、シスレーの部屋は物が多くて楽しいんですけどね」

「そうか、後で突撃してやるわ」

アンナさんは何もない空間だが、絵を見たり本棚の本を何冊かパラパラとめくり

「サンキュー」

「いえいえ」

早々に飽きて部屋をでていく

「サーヤさんもまだ寝てますよね、アンナさんももう少し休んでますか?」

「う~ん?ノエル、お前は何する予定だ?」

「僕ですか?これから市場の方へいってアルマンドの掃除を手伝って、昨日分配した物の鑑定してもらいに行く予定です」

「アルマンド?メルのか?」

「ですです」

「なんでノエルが掃除の手伝いなんかやるんだよ、あのハーフリング、私が物みてるとすげー嫌そうな顔してくるんだよな」

「いつもお世話になってるので、そうなんですか?すごくいい人ですけどね」

「ふ~ん・・・私も鑑定してもらいたいからついて行ってもいいのか?」

「いいですよ、じゃあ僕の袋にいれて持っていきましょう」

「ラッキー、重い荷物は嫌いだからな」

”アンナさんとメルさんと店主のとこへ行ってきます”

メモ書きを残し、まずはメルさんの所へ行くことに

「掃除ってすぐ終わるのか?」

「はい、クリアリコールかけるだけですから」

「なるほどな、それ終わってすぐに鑑定しにいこうぜ。いい素材ってのは知ってるがどんな効果ついてるのか楽しみだぜ」

よっぽど手に入れた武器が気になる様子だ

市場で朝食を食べる予定だったが、アンナさんはまだお腹空いていないのいっていた為に、食事は後回しでメルさんのお店へ足を運んだ

カランカラン

いつもの耳に心地よいベルが鳴り響く

「あっノエル君いらっしゃー・・・い」

メルさんがアンナさんを見て少し、止まったのが分かったが

「おはようございます、リコールかけに来ました」

「ありがとうねー、奥からお願いしようかな」

「分かりました、アンナさん僕ちょっと作業してきますね」

「おう」

引っ張られるようにメルさんの作業場へ連れていかれ

「ノエル君、あの女と知り合いなの?」

「アンナさん?木漏れ日の午後っていうCランクのPTの人で、今回の依頼者でしたよ」

「へー・・・」

「メルさんも知ってました?」

「・・・最近こないから安心してたけど、去年ぐらいに店にきてはショーケースに手あかをつけてくるやつでよく覚えてるわ」

「あぁ~・・・やりそうですね・・・。今日は僕が帰る前にリコール掛けるので見逃してあげてください・・・」

「そう・・・それならいいけど・・・買いもしないのにいつも見に来て・・・あぁ思い出してきたわ!」

「あっ早く終わらせますね!リコール!」

メルさんの怒りが爆発する前に、リコールをかけて早々に退散することに

「ふー・・・次は鑑定に行きましょうか。すぐ近くなので」

「何をそんなに急いでたんだ?別に鑑定は楽しみだがゆっくりでよかったぜ?」

人の気も知らないで・・・

「アハハ、僕も鑑定は楽しみなので」

「そうか!」

笑って誤魔化しながら店主の店に倉庫にきたが、店はまだオープン前の9時前だ。メルさんの所を早足で終わらせてしまった為だが、仕方なし

コンコンコン

ドアをノックし

「ここがその店か?倉庫にみえるんだけど?」

「まぁ倉庫ですが、中は商品が充実してますよ」

アンナさんに説明していると、オープン10分前なので店主はすぐに

「ちょっとまってくれよー、後10分後なんだよ」

ドア越しから声が聞こえ

「店主ー、僕ですよー。ダンジョンで手に入った物が分配されたのできましたー」

昨日来た時はベルの鑑定しかしてない為、店主には何も渡せていなかったのだ

僕がそう声を掛けると、中からカチャリと音が聞こえドアをあけてくれた

「おう、お前か。っと・・・綺麗な姉ちゃんだな」

「あ?」

「あ?じゃなくてアンナさん。店主、木漏れ日のアンナさんです、アンナさんの分配された物も鑑定してくれませんか?」

なぜすぐに威嚇するのだろうか・・・

「なんだよ、ただのスケベ親父かと思ったが。おやっさんよろしく頼むぜ」

まぁ・・・店主の視線も顔より30cmほど下をみていたのだろう

「威勢のいい姉ちゃんだな。あぁいいぜ、中にはいってくれよ」

店主の店に入りながらこそっと、空間魔法の事は伏せてとジェスチャーすると軽く頷いてくれた

「じゃあまずは・・・」

「私の!2本の剣をみてくれよ!」

「おう、なんでもいいぞ、いつも通り並べて行ってくれよ」

店主に言われ、僕とアンナさんの分を分けて並べていく。その間にアンナさんはすぐに2本の剣を鑑定してもらっていた

「こいつは・・・大したことねーな。効果も何ついてないただのミスリル製の剣に装飾に宝石がちりばめられているだけだな。まぁ武器としての価値はないが、素材としての価値は高いかもな」

「は!?それほんとかよ・・・」

素材が良くてもそういう事もあるのか

「まぁ落ち込むなねえちゃん、こっちがすげーからな」

頭をたらし俯いていたが、店主の言葉にがっと頭をあげて

「なんだよ、早くおしえてくれよ!」

僕もいいものだと聞き、並べるのを一時中断し話を聞くことに

「こいつはレジェンダリーだぞ。名前は深紅の剣士の剣、効果は突きの攻撃時に中級の炎魔法、パッシングファイアの威力を帯びると書いてるな」

「レジェンダリー!?」

「レジェンダリー?」

「こいつは結構いいものだな、炎のエンチャント武器よりも威力は期待できるよな」

「やりー!こっちが本命だったんだよ」

後でレジェンダリーとかはシスレーかティアに聞こうかな、今はアンナさんが喜んでいる所に水を差すのは野暮なようだ

「これだと、金貨34枚ほどか?」

「こいつは売らねーよ、私が使うんだ」

「そうか、じゃ次みていくかな」

僕が全て並べ終えると、店主はいつも通り高価な物、効果付き、ガラクタと分けて行く

「おっこっちはエピックだぞ」

店主がエピックといったのは、ティアが選んだカラミールの繊維が編み込まれているといったものだ

エピックという言葉の意味を聞きたいが

「くっそー!やっぱりそっちも当たりかよ!あのエルフの姉ちゃんほんといい目もってるな!」

「これは、持っていると徐々にHPが回復する、ホーリーエンチャントの効果が付いてるぞ」

「うぉ!?めちゃくちゃいいじゃねーか!ヒーラーいらずだな!」

「これ使っているとMPは使うんですか?」

「いやいらねーな。魔力の補充も必要ないぞ。さっきの姉ちゃんのレジェンダリーは補充式で回数が5回ってきまってるけどな」

武器にも色々あるんだな

「5回もつかえるのか!?そこらの魔法使いよりつえーな!」

「確かに、中級魔法ほどの威力を5回も使えるって破格ですね」

「だからレジェンダリーなんだよな。こっちもエピックだが性能的にまけてねーけどな」

なるほど、順番的にレジェンダリーの方が上なのか

ある程度目ぼしいものを鑑定し終わり、アンナさんは武器以外はお金に変えて、僕もティアの剣以外はほぼ価値がないようだったので、お金はもらわず二人分の鑑定料として渡した

「いやー、おやっさん岩街きたらまた寄らせてもらうぜ!」

「おう、Cランクらしいからこっちも期待してまってるぜ」

アンナさんは店主にはうけがよく、結構居座ってしまったが楽しかったので良かった

「じゃあ店主またお願いしますねー」

「おうこっちこそなー」

パタンと店主の倉庫をでて時間を確認すると、10時になっていた為1時間近く経過していたようだ。僕らが店をでると店主も慌ててオープンの看板を掲げていた

「金に変えれてから帰るのが楽になったぜ、小腹もすいてきたしなんか食っていくか?」

「いいですね、何食べます?」

「岩街離れてもう1年だ、どこか新しい店か・・・いや、あの時の約束まだ果たしてないな!」

「あの時?」

「馬車馬の集いだよ!ダンジョンで約束しただろ」

「あっでしたね、行きましょう!」

1年の時を経て、一杯奢ってくれるという約束を果たしてくれた。人との出会いとは不思議な物だなと思う事もあるが、これもディティマールの運の能力値が作用しているのだろうか

アンナさんと昼過ぎに拠点に戻ると、丁度サーヤさんが帰ろうとしてみんなが庭で見送っていた

「おーい、もどったぞー」

「アンナ遅いわ、帰るわよ」

「そっか、祝福のみんなありがとな!ノエルまた依頼いこうな!」

「サーヤさん、アンナさん勉強になりました。またいつかお会いできるのを楽しみにしてます」

「ふふ、そうねまたね」

サーヤさんがなぜわらったのか理解できなかったが、グレム酒まだ渡してないから帰る時に取りに来るとかかな?そんな風に思いながら、サーヤさん達は帰っていった

「ノエル君」

少しいつもよりトーンの引くシスレーの言葉に、周りにいたティアやナタリー、サリア、アルはさっとはけて行き、庭に残ったのは僕とシスレーのみとなった

「はい」

「どこ行ってたの」

「メルさんと、店主と、馬車馬の集いに」

「ふ~ん」

「一応、馬車馬の集いは一年前に約束していたことなので・・・」

「どういうこと」

ことの経緯を伝えると

「ずるい!そんなロマンチックな約束はたすとか!ゆるさーん!」

「シ、シスレーとだって約束は果たしてますよ!そろそろ秋になると収穫蔡です、またパンプ村の収穫蔡に行きましょうね」

「なんか違う!」

シスレーのいう事がよくわからず、色々な約束をさせられ全て記憶しておくんだぞディティマールと自分の記憶術に頼ることになった
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