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第147話 ねえ、シスレー知ってた?

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僕はシスレーと二人で倒したマッドフィッシュとスリップの氷の床が目にはいった

「シスレーちょっときてください」

「どうしたの?」

「少し実験を」

水面にはったスリップ厚さ30cmほどはある

「ふんふん」

イベントリから布を取り出しスリップの上に掛けると

「シスレー、僕の膝に足かけていいのでここに乗れます?」

「えっ、これ布かけても滑るよね・・・」

「まぁ布は寒さ対策ですよ、はいどうぞ」

「うん」

シスレーは僕の膝に足をかけてスリップで出来た氷の上に、手を付くも

「滑る滑るーー」

「滑って立てなくてもいいので、乗ってくださいよ」

それでもシスレーは意地なのか、必死に立とうとバランスを保ちながらプルプル震えている足で布を噛ませたスリップの上にほぼ四つん這いの状態で立った

「シスレー、次はこのスリップ運べるか試すので伏せてないとこけますよ」

僕がそういうとシスレーは止まっている状態でギリギリだったので、諦めたかのように正座でちょこんと座った

スリップの氷をビート版代わりにバタ足で泳ぐとスリップも一緒に移動できる

「おお、動きますね。みんなのとこへ行きますよ」

「えぇ、少し恥ずかしいんだけど・・・それに冷たい・・・」

僕らがスリップの船で移動してくると

「ブアアハハハ、なんだそれシスレー!私ものせろよ」

「いいですけど、冷たくて滑りますよ・・・」

「あっ、これ一応一人じゃないとバランス保てないと思うので、乗るのはサーヤさんかホルドさんかガナートさんの誰かや荷物用です。あと戦闘時だけですよ、そろそろ効果時間きれて消えますし」

人が乗れると実証したかっただけなので、みんなで氷に乗って移動までは無理だと思っているし、効果時間も30分の為、何度もスリップを使っていると同じ水属性使いのガナートさんが不思議がるはずだ

「じゃあもう、うち降りていいの?すごい冷たいの・・・」

「いいですよ」

シスレーはペンギンのようにスイーっと滑って、スリップの上からおりた

「そうね、結局デックスの荷物も見つからなかったわけだしね・・・マッドフィッシュが水中に引き釣り込むこと考えるといいかもしれないわね」

「デックスさんの荷物はあそこにありますよ」

暗月のブローチをつけると、このマッドフィッシュが動き回り、泥が巻き上げられた水中も鮮明に見えた為荷物の場所を教える

「おっどこだ?」

「こっちですよ」

アンナさん達が水中に引きずりこまれていた為、結構移動していたようで探している場所もずれていたみたいだった

「ありました」

「おぉ!何から何まですまねえな!」

デックスさんと荷物をもって戻ると、スリップの上にホルドさんが登っている様子から戦闘時の練習をしているようだったが、うまくのれたと思った矢先、スリップの効果がきれてドボンと水中におちた

「みんなわりぃな!荷物あったぜ!」

「ちっ最初からノエルに頼むんだったぜ」

「ホルドさん乗れそうですか?」

「あっあぁ・・・どうだろうな、一人じゃむりだろうから戦闘時にモタモタもしてられねーし・・・」

「そうですか」

いい案かなと思ったが、咄嗟には使えなさそうな様子から僕やシスレーみたいな身軽な人用かと納得できた

「荷物もあったことなので、移動をつづけましょう」

サーヤさんがそう言いながら、ホルドさんとガナートさんへマジックポーションを渡した

戦闘おわりにマジックポーションを飲むことが通例となっている木漏れ日

レインさん達は飲んだり飲まなかったり自由にしていたが、こういう些細な所もしっかりしているなと思う

そこからまた移動が続き1時間ほど歩くと腰まであった水かさもまたひざ下ほどまでに水位が下がり、陸地もところどころ見て取れるようになった

「そろそろダンジョンが見えてくるはずだ」

隣にいるガナートさんが、独り言なのか僕にいったのか分からなかったがボソリとそう呟いた

「洞窟なんですよね?」

「あぁまぁダンジョンの周りに冒険者がたむろしているだろうからすぐにわかるさ」

時間にして午後の3時ほどになっている。雨も強まったり弱まったりと絶えず降り続いているが、周りの水草も低いものに変わりだし見通しのいい湿地帯・・・というよりもここは沼地のようになっていた

沼と陸地、水たまりが点在とし先導するデックスさんは陸地以外を踏まない様に歩き進めていた

「ノエル君、ここら辺の草は毒草だから無暗に触っちゃだめよ」

「これがそうなんですね、分かりました」

「だからその下の泥も毒の成分を含んでいるから気を付けてね」

サーヤさんが注意を促す様子に、シスレーは大丈夫だが僕は触りそうだと思っているのだろうか

「分かりました・・・ということはここに出てくる魔物はポイズンラットですね」

「そうね正解よ」

僕らの会話を聞いているシスレーがポーチに入っている小さ目なナイフを取り出し

「噂をすればだよ」

そう言いながら構えた

「デックス、アンナ下がって!」

前を行くデックスさん達もポイズンラットの気配にきずいているかのように、サーヤさんの指示よりも早くこちらへ下がって来た

「マジックミサイル」

先うちで停滞させておくと、3匹のカピバラのような見た目の魔物が草のしげみからでてきた

「近づけさせないで!」

「アイスピラー!」

ポイズンラットは毒の塊をはいたり、毒霧を噴射してくるため極力遠距離で倒すと決めていたのだ

「スローイングダガー」

シスレーも投げナイフ様の短剣を投げて牽制し、僕のマジックミサイルの感知範囲にも入ったのでマジックミサイルが勢いよく飛んでいく

名前的にポイズンラットと弱そうな名前ではあるがDランクの魔物だ。繁殖力、生命力、毒による攻撃、移動速度全てにおいて高水準な為、見つけたら必ず討伐するように言われているほどの魔物だ

「エアロバースト!」

うぉ!?

隣にいるサーヤさんの杖から突風が吹き荒れた。目に見える緑色の粒子の乗った風はポイズンラット3匹を空高く舞い上げていく

「すごい・・・」

隣にいるシスレーもその魔法を初めて見たようで、声を漏らした

ボトッボトッボトッっと空高く舞い上がったポイズンラットはズタズタに切り裂かれた状態で地面に落ちてきたのだ

「ふー・・・終わりね」

中級の風魔法だろうか、ウィンドスラッシュやマッドフィッシュと戦っているとき使っていたエアロブラストとはまた違った魔法で見た目がかなり派手だった

「サーヤ、お前ネズミが嫌いだからって上級魔法うつことはないだろ」

「上級・・・」

「嫌いだからじゃないわ、毒をもってるから危ないからよ」

中級と思ってたが上級の様だ

「だからってよ、もうMP尽きたんだろ」

「・・・仕方なかったのよ。もうダンジョンにつくのだからいいのよ」

「はぁ~・・・ノエルは好き嫌いでこう使うなよ」

「えっはっはい」

何事にも冷静で正しく判断していたサーヤさんだったが、やはり一緒に行動すると人柄もよくみえてきて、Cランクだからと特別な人達ではないのだというのが分かってきたのだった

戦闘がすぐに終わったので早々に移動を再開し

「すごかったねサーヤさんの魔法」

「ですね、上級の魔法他の人の初めてみました」

「上級のスキルブック自体が数が少ないし、使える人なんてほんの僅かだからだよね」

「ですよね、僕もサイシアールで拾ったの数えるぐらいしかないですもん」

「・・・それ自慢してるの?」

「えぇ!?してませんよ」

「ふ~ん・・・ノエル君は上級魔法はまだ使えないの?」

少し自慢になってしまったようで、シスレーは僕に上級魔法をまだ使えないと言わせたい様だったが

シスレーの耳もとでこっそりと

「ブリンクは単距離テレポート。上級魔法ですよ」

そう小声で教えてあげると

「もう!おいてくよ!」

帰って来た言葉が思っていた事と違いムスっとしてしまい、さきさきと歩いて行った
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