上 下
128 / 235

第128話 ゴブリンリーダー討伐 その後

しおりを挟む
「祝福のPT、今回は君たちのおかげで助かったよ。リーダーの魔石は持っているんだよね?」

「いや、お互い様です。あぁ倒したPTのものでいいんですよね?」

「あぁ、その通りだ。7日後に岩街のギルドで報告の為集合としてひとまず解散だ」

「はい、お疲れ様でした」

中和の二人とはダンジョンの出口ですぐに別れ、7日後に岩街のギルドで集合となった

「俺たちも宿に戻るか、疲れたぜ」

「そうですね」

依頼を達成し、みんな目立った損傷もなく帰ることが出来たのに、アルが落ち込んでいると祝う気にもなれず僕らは無言でアルについていき宿にたどりついた

「じゃあおつかれ、ゆっくり休んでくれ」

「うん、おつかれー。私はこのまま寝るね・・・」

「うちも・・・ノエル君は?」

「僕はもう少し起きてますよ、後で部屋に行きますね」

ティアとシスレーはそのまま部屋に吸い込まれて行き・・・アルは

「アル?眠くないならお酒でも飲みに行きますか?」

「・・・そうだな」

アルの後ろを歩き、酒場のカウンターテーブルに座り、適当にお酒とつまみを頼むと特段会話なくアルはゆっくりとお酒を飲んでいた

少しお酒が進むとアルが静かに喋り始めた

「手痛くやられたな」

「はい、まだまだですね僕らは」

「・・・まだまだなのは俺だ、お前は十分すぎるぜ」

「そんな事ないですよ、僕も周りを気に掛ける余裕は無かったのでただのゴブリン相手に無駄にMP使いました・・・」

結局僕も祝福が上がるにつれMPが増えていくので、近接戦をおろそかにしてしまい、ゴブリン相手でもMPを消費した戦いしかできないのはレインさん達と変わらない

「いやそれが普通だろ・・・俺たちはまだDランクだな・・・」

「ですね・・・」

ウェッジコートで功績をあげてアルも少し思い上がっていたのか、騎士団がCランクの推薦状をくれるという事で心はすでにCランクでいたのだろうか・・・

そんな素振りも感じられなかったが、こんなにみんな負傷したのは初めてだった

「俺はまだCランクの器じゃねーな・・・」

「これからですよ、ソーリンさん達はCランクになったのが24歳といってましたよ」

「・・・焦りすぎたか」

僕らはその後も静かにただ少ない会話で、響くのはアルのグラスに入った氷がカランとだけなる静かな夜だった



翌日、昨日の疲れからか僕が起床したのは朝の9時頃だった。流石に疲れがでたのかいつも通りというわけではなかった。となりでもアルが泥のように眠っている

昨日の今日だ、流石に起こすことはせずゆっくりさせてあげようと思い、僕は着替えてから一人朝食を食べた後に、昨日セーフティーエリアで拾った冒険者カードを確認することに

パージ Cランク
ロック Eランク
どこか聞いたことのある名前もあり、それが誰だったか思い出すことなく次々と確認していく

メフィス、スカーレット、デックス・・・知り合った人の名前もある程度あり、他人であればいいなと思いギルドカードの確認を終えた

ギルドカードは合計34枚あり、この中にフィストのメンバーのもある

財布用の小袋などのお金は一つにまとめ、金貨21枚分ほど集まった。残りは武器や防具の類だが、これはリコールをかけて店主に売り捌いてもらえばいいだろう。

今回のゴブリンリーダー討伐は報酬が金貨3枚と正直旨味が少ない依頼だったが、それでもこういう感じで集めれば結構な額になるのだ

残りはスキルブックなどのドロップ品だ、今回討伐した数は少ない為スキルブックも1冊と少ないがスキルブックはたいてい銀貨以上の価値がある為、あたりの部類だ

「くぁーーーーっ」

収穫品の整理を始めて1時間、アルが背伸びをしながら起き上がった

「あっおはようございます」

「おう・・・珍しいな出かけないのも」

「僕も・・・1時間ほど前に起きたので、流石に疲れました」

時間を確認したら11時ぐらいになっていた

「そうか、そこに置いてるのが今回の戦利品か?」

「戦利品はこっちで、ここはセーフティーエリアで集めた物で、こっちがフィストのメンバーが持ってたものですね」

アルは立ち上がり、僕が仕訳て並べられた収穫品が置いてある机に

「結構あるな・・・冒険者カード」

「フィスト含め、34枚です」

「・・・ギルドで行方不明者とか出てるからな、これも渡せば情報料に金くれるぜ」

「そうなんですね、でもそういう死体あさり同様に、あまりいいお金ではないですね」

「そうだけどな、死体あさり屋ってのも立派な職業だからな。ギルドではそういう事いうなよ」

「あっすいません・・・分かりました」

ダンジョンから戻ってこない人を待ち続けている人もいるかもしれないのかと思い、いろんな事を生業にしているんだなと思う

少し思案していると

「これがフィストのか・・・やっぱりそうか・・・」

アルがボソっというのが聞こえ

「やっぱり?」

「・・・いや独り言だ気にするな」

「そうですか」

アルはミラとリゲルの身に着けていたものを確認している

「事情が何か知りませんが、そのフィストの物も今回の取得物は全て僕の物ということなので売りますよ」

「・・・おい」

「はい?」

「これとこれは売らないで欲しい」

アルが言うのはリゲル君がもっていた、ショートソードとミラが身に着けていたネックレスだ。僕も確認しこの二つにはライオンのような紋章がついていた

「う~ん?それかっこいい紋章ついてるので高く売れそうですよ?アルが僕から買うならいいですけど・・・二つでそうですね金貨15枚にしましょうか」

「は!高すぎだろ!」

「う~ん?」

「てめぇ足元みやがって・・・」

「じゃあただであげる代わりにその紋章の意味を教えてください」

別にお金なんてどうでもよかったが、アルがずっとそれっぽく振舞うので流石に気になってしまう

「・・・誰にもいうなよ」

「僕はお喋りですが?」

アルは諦めたかの様にはぁーと一息いれ

「くそが・・・貴族の紋章だ」

「貴族?どこのです?」

「・・・帝国と王国の堺にある辺境伯だった」

「だった?名前は?」

「ウォール卿だ・・・今はない」

この世界の貴族事情なんて知らないから名前を聞いてもピンとこないが、アルが気にしているのなら何か関りがあるのだろうが、アルを虐めるのはこのぐらいにしておこう

「ふ~ん、それが本当か嘘かもわかりませんが、それは上げますね」

「・・・いいのか?」

「はい、正直貴族の名前とか知りませんもん。アルが少しは僕に心を開いてくれてるのか試したかっただけなので」

「・・・開いてるだろ」

「そうですか?まぁそう思ってくれてるならいいですよ。あっお腹すきました?」

時間を見ると昼に差し掛かろうとしていた

「お前のその切り替えの早さに俺はついていけねーよ、肉」

「ついてこれてますよ」

僕がイベントリから取り出すと、シスレーとティアもドアを開けて入ってくる

「私もお腹空いた~」

「そうだよ~、なんかウォール家とか貴族とか入り辛い雰囲気だすから」

「げっ・・・聞き耳たててんじゃねーよ」

シスレー達も加わり、僕らはゴブリンリーダー討伐を終えたのだとみんなで話し合った

シスレーとティアはウォール卿がアルとどんな関係があるのか聞いていたが、ずっとだんまりを貫き通していた

「それにしてもゴブリンリーダーうちらだけで倒せたんだね」

「だよな、レインさんの話じゃフィストもさほどダメージ与えてなかったみたいだぜ」

「ロードさんはゴブリンリーダーを何度か倒していると話でしたが、やはり罠や奇襲でうまく動けなかったのでしょうか」

「どうなんだろうな、ロードさんも他のPTで何度か倒しただけで、今のPTじゃなかったのかもしれねーしわからねーな」

ロードさんやメイサさんには悪いが、穴だらけの作戦だったが僕らには運が味方についたようだ。恐らく僕ら以外のPTはハイゴブリンすら倒せていないと思うからだ。2PTが時間を稼いでくれたおかげで僕らが取り巻きを倒し、ゴブリンリーダーの相手が出来たのだ

今回の戦いを振替りみんな思う事があるようで

「ねえアル・・・私もっと祝福上げしたい」

「うちも、ちょっとこのままノエル君に頼りっぱなしはよくないよね」

「だな、俺も同じ事おもってたぜ。このまま実力なく推薦だけでCにあがっても意味がない」

冬があけて、祝福上げの為に活動したのはダンジョンの調査だけだ。その他は実績あげの為にうけた護衛や採取が大半を占め、バランスが悪い受け方をしていた

それが今回の力不足に繋がったのか分からないが、現状でみんな満足いく戦いが出来なかったのは確かなのだろう

僕は現状で少し満足していたが、みんながやる気になっているのだ水を差すことはない

「何ノエル一人だけ、満足そうな顔してんだよ」

「えっいや別に・・・」

「絶対一人だけそこまでやられてないからだよ!攻撃に補助にお金稼ぎ全てやりきった顔してるもん!」

「えっそんな事は・・・」

「そうだよ、うちが手こずったホブゴブリンも一瞬で倒してたし!」

「いえあれはブリンクからレイでの必殺技なので・・・」

顔に出てしまっていたようだ

「どこかダンジョン行こうよ!強化合宿だよ!」

「沼地のダンジョン、俺たちもいってみるか!」

「いいねー、あそこは罠も豊富にあるそうだから斥候としてもうち活躍できるよ」

それってポートランド行った後だよねと聞きたくなるが、口を出すことが出来ず3人はこれからの計画を練っていたのだった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不眠騎士様、私の胸の中で(エッチな)悦い夢を【R18】

冬見 六花
恋愛
「店主、今日も俺を抱きしめてくれないか…?」 枕屋を営むアンナの元を訪れたのは不眠症で悩む褐色の肌の騎士様、レナード。 急遽始まった不眠治療はなかなかうまくいかないものだったが、ようやく見つけた治療法は眠る前に彼を抱きしめてあげることだった。すると夜な夜な眠っているレナードとの淫靡な行為が始まってしまい……―――― 【女子力低めな巨乳美人枕屋店主 × とある悪夢(無自覚)で悩むオカン系スパダリ騎士様】 ◆拙作「美形司書さんは絶倫肉体派」と同じ世界観のお話。 ◆単独でお楽しみいただけますが、一部「美形司書さん」のネタバレがあります。

婚約者の様子がおかしい。明らかに不自然。そんな時、知り合いから、ある情報を得まして……?

四季
恋愛
婚約者の様子がおかしい。 明らかに不自然。 ※展開上、一部汚い描写などがあります。ご了承ください。m(_ _)m

伯爵令嬢の秘密の愛し子〜傲慢な王弟は運命の恋に跪く

コプラ
恋愛
♡ドラマティックな愛憎劇の果ての超絶溺愛ハッピーエンド♡ たまにはこんな王道ラブロマンスで世界観に浸ってみてはいかがでしょう♡ ★先行ムーンにて日間連載ランキング最高位3位→2位(new❣️) お気に入り500new❣️ありがとうございます♡ 私の秘密は腕の中の可愛い愛し子にある。 父親が誰なのか分からない私の愛する息子は、可愛い笑顔で私を癒していた。伯爵令嬢である私はこの醜聞に負けずに毎日を必死で紡いでいた。そんな時に現れたあの男は、私が運命だと幼い恋を燃え上がらせた相手なの? 愛し子を奪われるくらいなら、私はどんな条件も耐えてみせる。夢見がちな私が一足飛びに少女から大人にならなくてはならなかった運命の愛が連れてきたのは、元々赤の他人同然の正体を明かされた大人の男との契約結婚生活だった。 燃え上がった過去の恋に振り回されて素直になれない二人のその先にあるのは?

ダメダメ妻が優しい夫に離婚を申し出た結果、めちゃくちゃに犯される話

小野
恋愛
タイトル通りです。

物語のようにはいかない

わらびもち
恋愛
 転生したら「お前を愛することはない」と夫に向かって言ってしまった『妻』だった。  そう、言われる方ではなく『言う』方。  しかも言ってしまってから一年は経過している。  そして案の定、夫婦関係はもうキンキンに冷え切っていた。  え? これ、どうやって関係を修復したらいいの?  いや、そもそも修復可能なの?   発言直後ならまだしも、一年も経っているのに今更仲直りとか無理じゃない?  せめて失言『前』に転生していればよかったのに!  自分が言われた側なら、初夜でこんな阿呆な事を言う相手と夫婦関係を続けるなど無理だ。諦めて夫に離婚を申し出たのだが、彼は婚姻継続を望んだ。  夫が望むならと婚姻継続を受け入れたレイチェル。これから少しずつでも仲を改善出来たらいいなと希望を持つのだが、現実はそう上手くいかなかった……。

アルファポリスでホクホク計画~実録・投稿インセンティブで稼ぐ☆ 初書籍発売中 ☆第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞(22年12月16205)

天田れおぽん
エッセイ・ノンフィクション
 ~ これは、投稿インセンティブを稼ぎながら10万文字かける人を目指す戦いの記録である ~ アルファポリスでお小遣いを稼ぐと決めた私がやったこと、感じたことを綴ったエッセイ 文章を書いているんだから、自分の文章で稼いだお金で本が買いたい。 投稿インセンティブを稼ぎたい。 ついでに長編書ける人になりたい。 10万文字が目安なのは分かるけど、なかなか10万文字が書けない。 そんな私がアルファポリスでやったこと、感じたことを綴ったエッセイです。 。o○。o○゚・*:.。. .。.:*・゜○o。○o。゚・*:.。. .。.:*・゜。o○。o○゚・*:.。. 初書籍「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」が、レジーナブックスさまより発売中です。 月戸先生による可愛く美しいイラストと共にお楽しみいただけます。 清楚系イケオジ辺境伯アレクサンドロ(笑)と、頑張り屋さんの悪役令嬢(?)クラウディアの物語。 よろしくお願いいたします。m(_ _)m  。o○。o○゚・*:.。. .。.:*・゜○o。○o。゚・*:.。. .。.:*・゜。o○。o○゚・*:.。.

最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音
ファンタジー
『目的はただ1つ、1年間でその喋り方をどうにかすること』  辺境伯令嬢である主人公はそんな手紙を持たされ実家を追放された為、冒険者にならざるを得なかった。 「人生ってクソぞーーーーーー!!!」 「嬢ちゃんうるせぇよッ!」  隣の部屋の男が相棒になるとも知らず、現状を嘆いた。  リィンという偽名を名乗った少女はへっぽこ言語を駆使し、相棒のおっさんもといライアーと共に次々襲いかかる災厄に立ち向かう。  盗賊、スタンピード、敵国のスパイ。挙句の果てに心当たりが全くないのに王族誘拐疑惑!? 世界よ、私が一体何をした!?  最低ランクと舐めてかかる敵が居れば痛い目を見る。立ちはだかる敵を薙ぎ倒し、味方から「敵に同情する」と言われながらも、でこぼこ最凶コンビは我が道を進む。 「誰かあのFランク共の脅威度を上げろッッ!」  あいつら最低ランク詐欺だ。  とは、ライバルパーティーのリーダーのお言葉だ。  ────これは嘘つき達の物語 *毎日更新中*小説家になろうと重複投稿

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

処理中です...