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第110話 調査③

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目が覚め目に映ったのは知らない天井ではなく、シスレーの泣き顔だった

「うっ・・・あれ?ここは?」

「もう!ばかぁグスグス」

「ふふシスレー最近泣いてばっかりですね。うっいててて・・・痛いです」

最後の意識がなくなる前のことを思い出すと・・・無事戻ってこれたようだ

シスレーに抱きしめられるだけで痛みがあるので、ファーストエイドを自分に掛けると、かなり痛みが引いていく

「起きたか、無茶すんなよ」

「あっアル、ご迷惑お掛けしました。フェリニカさんは?」

「あぁ生きてるぞ、今はロールさん達が看病してくれてる」

「よかったです」

周りを見てみると、セーフティーエリアのモーテルの一室のようだった

「あの途中に出てきた巨石もノエル君だよね?」

「ですね、ティアの射線塞いですいません」

「ううん、もう指が痛かったから助かったよ」

ティアの指は矢を撃ちすぎて、擦れて血が出ていた。ティアへとファーストエイドを掛けるが、よく見るとシスレーやアル、サリアさんも切り傷や打撲後がある。

上手く捌いていたと思ったがそれなりにみんなダメージを負っていたようで、ファーストエイドを全員に掛けてポーションを取り出す。

「ノエル、食いもんも出してくれ」

「あっですね!」

何時間倒れてたか知らないが、3時間は戦っていたはずだ。すぐに起き上がり、食べ物と水を出すと、みんなわっと手に取りすぐに口に入れて咀嚼していく。

「シスレーも泣き止んで食べてください。ほらあーん」

「ぐすぐす・・・あーん・・・」

食べている最中に、みんなにリコールをかける。僕も一緒に食事をしながら現状がどうなっているのか把握しておきたかった為にアルへと質問。

「僕が倒れて何時間たちました?」

「30分ぐらいか?そんな時間たってねーぞ」

「あっそんなもんなんですね」

「そんなもんじゃないよ!・・・あーん」

「あっごめんなさい、もう元気になったら自分で食べてくださいよ」

「駄目!心配かけた罰!」

「よくこんな状況でいちゃつけるなお前ら・・・みてるこっちがつれーんだが?」

「いやいや、僕がサーヤさんとアル、アンナさんとデックスさんから受けた仕打ちはこんなもんじゃありませんでしたよ。夜に馬車からもれてくる声は・・・」

「分かったから喋んな!」

僕らの様子をみてサリアさんがアルにあーんと食べさせようとして、普通に断られている

「夜空の人達は無事ですか?」

「あぁ怪我はあったが、誰も欠けてなかったぞ」

「兵士や騎士達はどうです?」

「俺たちがセーフティーエリアへ引いた時に倒れてるの見ただろ?5人はやられていたが、それだけだ」

「なるほど・・・」

「ちょっとこれからどうするのか聞いてくるわ」

アルは腹を満たすと、部屋を出て行った。

アルが居なくなり、少し手持無沙汰なサリアが僕へ声をかけてくる。

「ノエルも英雄の卵なのね」

「いえ違いますよ、能力に過信した愚か者です。外へ行く前にポーション飲んでいくべきでした」

「・・・そうかしら?行動する勇気が英雄に近い物を感じたけれど、まぁいいわ。ちょっと私もMPの回復したいから横になるわね」

サリアさんは僕と違いちゃんと寝ないとMPが回復しないようなので、ベッドに横になった

「私もちょっと疲れてるから寝てもいい?」

「いいですよ、僕はもう元気なのでどうぞ」

みんな疲れているのに、僕が倒れたせいで無理して起きていてくれたようだ。

この部屋にはベッドが二つしかない為に空いているスペースに貴族の椅子を取り出す。

「シスレーもこっちで寝てください」

「・・・どこにも行かない?」

「・・・アルが戻ってくるまでは」

「どこ行く気?」

「おそらくロールさん達や騎士の方は食料がないと思うので・・・少し分けに行こうかと」

ほぼ日帰りの予定だった為、食料はあっても携帯食料のはず。ドロップした肉も拾う余裕はなかったはずだ。

「・・・分かった」

僕が出ていく理由に納得しシスレーも椅子に横になろうとした時に、ティアがすっと起きて貴族の椅子に先に寝転んだ。疲れているとは嘘なような動きだった。

「えー・・・ティアちゃんひどー」

「早い者勝ちー」

もとあるティアが先ほどまで寝ていたベッドをイベントリへしまいスペースを確保し、もうひとつ貴族の椅子をだす。

「シスレーほらこっちですよ」

「流石~・・・サリアさん!」

だがサリアさんも狙っていたようで、シスレーよりも素早く椅子に寝っ転がった。

「いいじゃないの、これぐらい!優しくしてくれる男性が近くにいて美人で強くて!寝るとこぐらい譲ってほしいわ!」

「えーん、ノエルくーん」

もう一つのベッドをしまうと、ソファサイズのまだ隠しておきたかった一番いい椅子をおく

「シスレー、これが一番いいやつですよ」

「やったー!みたか泥棒たち!」

「えー、ノエル君それはひどいよー」

「ノエルも結局男なのね、美人にだけ優遇するそこら辺の男とかわらないわ!」

そんな事言われるとシスレーを優遇している様に感じ、結局ティアとサリアさんの貴族の椅子をソファへと起きなおし、ほぼこの部屋のスペースはなくなってしまった。



アルが戻ってきてこの光景に唖然としていたが、僕ら二人は部屋を変えてアルが聞いてきた話を聞くことに

「周りはオークに囲まれてるな、どうやって脱出するか決めかねているようだ」

「なるほど・・・結構ピンチですね」

「そうだが、お前が側にいるからそう思わねー自分がいる」

「いえ・・・全員は運べませんよ」

「だよな・・・でも何とかなるって思っちまうからな、頼りにして悪いが頼りにしてるぜ」

「・・・悪い気はしませんが。そうだ、アルお疲れの所悪いんですけど、ロールさんや兵士さん達に食料分けに行きません?」

「・・・そうだな。あの人たちには戦って貰わなければいけねーからな」

「この袋がアーティファクトで沢山入るっていって貰えたら、僕がそういう感じで取り出すので」

「・・・いつもそうやって大量に仕入れてんのか」

「はい、なので今回は喋りが上手いアルが説明してください。僕はだしていくだけなので」

「そうだな、Cランクと騎士団長様に恩をうっておくか!」

案の定、食料にこまっていたようで、早くなんとかしないと思っていたようだ。

だが食糧に余裕が出来たことにより、無茶な作戦をしなくてよくなったと団長さんからアルが褒められている。

その傍らで僕はただ立っていたが、フェリニカさんから声を掛けられた。

「ノエル君だっけ?」

「はい」

「助けてくれたのは君だよね。ありがとう」

「いえいえとんでもないです。他の方は見つけることが出来ませんでした、すいません」

「ううん・・・そこは君が気にすることじゃないよ、私の落ち度だから」

仲間を失ったフェリニカさんだが・・・やはりCランクだからななのか、フェリニカさん自体が強く立派な人なのか、そんな状況でも凛としていた。

フェリニカさん自体は外傷はそこまで無さそうだったが、オーク達に犯されそうになっていたことを思い、そっとリコールをかけてアルと部屋に戻った。

フェリニカさんはリコールに気づいているが、騒がずに僕に小さく微笑みかけ頷いた。



セーフティーエリアで一晩があけ早朝に外の様子を確かめに部屋を出ると、団長さんが一人警戒するように門の前にいた

「おはようございます」

「君は・・・祝福だったか?アルフレッドの仲間だな」

「はい、ノエルといいます」

「魔法使いだったか・・・使って悪いが水を少しくれないだろうか」

「はい、どうぞ」

騎士団長さんは恐らく兵士達に遠慮して、水や食事をあまりとっていないように見えたのでウォーターの魔法と一緒にパンも一つ渡す

「あとこれも」

「すまないな・・・団員の手前あまり食べてないものだから助かる」

パンを渡すとすぐに食べ始めた。その様子を見て結構お腹すいていたようでリンゴやチーズとそのまま食べられる物も渡す。

「これから脱出の事を考えても、団長さんには頑張ってもらいたいので、これ食べて力つけてください」

「ククク、これは手厳しいな。そういうことなら遠慮なくいただくとしよう」

リンゴも受け取るとシャリシャリとかじりながら、どうやって脱出するかを団長さんが独り言のように喋り出したので、僕も耳を傾ける。

「防衛戦でもいいが・・・物資もあまりなかったからな・・・うって出るには危険すぎる・・・」

独り言のようだが、一応必要そうな物資は提供しようと思う。

「あの、この袋には矢束が40入ってます。門前においた巨石も後5あるのでそれも戦力にいれて考えてください」

「それは本当か!?」

「はい、武器も何種類かあるので弓が使える兵士には貸出ができますよ」

「ふむふむ・・・分かった。アルフレッド君を呼んできてくれないか。リーダーたちで話し合いをしよう、君もよければ参加してくれ」

「分かりました」

部屋に戻り寝ているアルに団長がよんでいると声を掛けると、すぐに起きる。いつもこんな感じで起きてくれればいいのにと思う。

多少寝ぐせが付いて、いそいそと装備をつけ始めたアル。

着替えてリコールを掛けると、ビシっと決まった祝福のリーダーが現れた。こいつは真剣な時はカッコイイんだよな。

外に出ると他のリーダーも揃っていた。

「すいません、遅れました」

「いや大丈夫だ、休んでいる所すまない」

そこからリーダー同士の話し合いに初めて参加し、僕にも意見を求められる事もあった

話合いはどうやって、魔物の数を減らすかに絞られて行く。

「まとめると矢がある限りは矢で殲滅し、そこから固まって動く方針でいいか?」

「あぁそれが一番無難そうだ」

「それでいいと思います」

「私もさんせいさ」

「よし、兵士たちに準備させよう。ノエル君も頼めるか」

「はい」

団長さんに続き兵士達へ朝食の為に食料を出す。調理済みでないリンゴやパンなどの質素な物だが文句は誰も言わない、皆感謝の言葉を口にして食べる兵士達。

ロールさん達にも同じように食べ物を渡すが、こちらも一緒だ。感謝の言葉とかなり褒めてくれるので、流石に僕もいい気持ちを通り越して少し恥ずかしい気持ちになる。


その後に僕の戦闘での準備の役割を果たす事に。門の内側に巨石を並べ、門を開いた時にオークが分散しないように通路を作ることだ。

門を開いた時にオークが一斉に雪崩れ込んでこないように巨石を設置していく。巨石と巨石の隙間はクレイの魔法で気持ち程度に塞ぐと長さ10mほどの通路が完成した。

並べるだけで準備は終わった為に少し不安が残る。ただ、隣にいるアルにも確認してもらうと大丈夫だと心強い返事がきた。

後はコテージの屋根に矢束を並べていき、食料やポーションも気持ち程度に並べた。

屋根から門までまぁまぁな距離がある為、ここはティアの黒弓用だ。

兵士達の矢倉と言えるものかは不明だが、通路の巨石に簡易な階段をクレイで段々状に作り上げ、巨石の上に小さく平らな部分を作り矢を撃てる場所を作る。

これで巨石で出来た道を進んでくるオークを上から撃ちおろすことが出来、リスクなく数を減らせられると思う。

「そのぐらいで大丈夫だ、メンバーのとこに戻るぞ」

僕らの仕事はひと段落終えたので、後は騎士達の準備と打ち合わせが終わるのを待つだけだった

「おう、シスレーも起きてるな。食いながらでいいから聞いてくれ」

ソファを仕舞い、ベッドを再設置しテーブルを並べている間にアルは作戦内容を話し始めた。僕は向こうで聞いていた為に、話半分で朝食を並べていきみんなそれに手を出して食べながら話を聞いていた。

「―――――――、一応こんな感じだが何か質問あるか?」

「はい、私はその弓矢の時は狼召喚は使った方がいいのですか?」

「いや、サリアはMPを温存していてくれ。外に出た時に必要になると思うからな」

「分かりましたわ」

「他は?」

「うちも弓多少使えるけど、矢はいっぱいないんだよね?」

「いえ、団長さんには40束と行ってますがこれは僕の物です。ティアのはティアで別に50束あります」

「そうなんだ、じゃあ少しは手伝おうかな」

「・・・なんでお前弓つかわねーのに矢なんて買ってんだよ」

「こういう時の為ですが?」

「ぐっ・・・賢いな・・・」

備えることに越したことがないため、意味なくイベントリを圧迫していたがやっぱり備えあれば憂いなしとは本当のことの様だ

「祝福あげるチャンスだー、いっぱい倒すよー」

やる気になって、右手を上げるティア。その仕草は可愛いもんだが、本当にティアは言葉通り精密な射撃で無数のオークが地に伏せると思う。

「プレッシャーかけるようで悪いが、前半の作戦はティアと夜空のメインさんが作戦の肝だからな。兵士達の中でメインの射手は今回いないらしいからな」

「任せてー。あったくさん撃ちたいからノエル君たまにファーストエイド掛けてくれる?」

「はい分かりました。ティア頑張ってくださいね」

「もちろーん!」



ある程度役割は決まり、アルとシスレーも弓矢を使えるみたいなので巨石の上に待機。全員で射手は7人となった。

残り兵士と騎士が27人。魔法使いが2人。召喚士が1人での防衛戦となった。

「よし・・・全員配置についたな!」

おう
おーう

気合の入った兵士達の言葉。低く重音な男たちの声はこの場ではとても頼もしい。

「ノエル君、巨石の撤去を頼む」

「分かりました」

門は結局閉まり切っていなかった為、巨石をどかせばすぐにオークが入ってくるはずだ。
門を入ってくれば、巨石に挟まれた狭い通路が10M伸びている。オークなら3体がギリギリ並べるかどうかぐらいの狭さだ。

岩の後ろからはぶひぶひ、ぶもぶもとオークの鳴き声。それとは別に多数いると分かる足音や武器が鳴る音が直に伝わってくる。

巨石をイベントリへ仕舞い、全速力で通路を駆け抜ける!

ブリンクを使えば一瞬だが、他の人に見られているため走るしかない状況。

ブリンク縛りという事で気持ち的にかなり焦る。岩をどかした瞬間からオーク達の鳴き声が本当にすぐ後ろに聞こえてきたのもある。

だが、僕の不安は僕の頭上を矢が飛んでいく1本の矢が吹き飛ばした。

後ろからオークのくぐもった声が聞こえる。ティア達が早速援護してくれたのだ。

10Mなのにその距離は長く感じ、滑り込むように騎士団の場所へ。僕が滑り込むと同時にその体と盾でオーク達の道を阻むような壁が出来上がった。

これからはオークの波を兵士が食い止めながら、射撃戦となる。

だが、僕にもこの狭い通路に適した魔法があるのだ!

この状態ではスリップの恰好の餌食だった!

「スリップ!」

オークの先頭集団は、綺麗に転び。それに続くオークも転んだオークに躓き自滅していく様は滑稽だ。戦闘面においてブリンクの次に信頼している魔法なだけはあった。

転んだオークや詰まっているオークには、矢が撃ち放題な為ティアだけでなくシスレーやアルも矢を放ち、一斉に矢の雨を浴びせ消滅させていく。

それでもオークは転んでいるやつらを踏み台にして近づいてくる為、物量が圧倒的だ。

「くるぞ!備えろ!」

オークと盾を持つ兵士達がぶつかりあう。

オークも兵士も剣や槍などの武器を持っているが、それを使う事なく体当たりの押し合いなのだ。

「レイ!」

自分もちょっとは経験値を稼ぎたい為、レイを使用したが一直線にならんだオークを貫通して7体ほどを一気に消滅させる。

単体高火力のレイが、場所を選べば範囲攻撃となっていた瞬間だった。

そこからはティアやシスレー達の場所を往復し、戦況を見ながらオークが押し寄せ過ぎていると巨石で一度通路を塞ぎながら着実にオークの数を減らしていった。

僕は不謹慎にもタワーディフェンスをやっている気分になり、ここに配置しておけば効率的に・・・と少しゲーム感覚になるほどこの作戦は順調に進んだ。



2時間が経過した頃に矢は全て使い切り、オークも最初の勢いを失くした為セーフティーエリアを出る判断を団長さんが下した。

「兵士達!突撃陣形でいくぞ!冒険者は後ろにつづけー!」

一息入れたい気がするが、数が少ない今を好機とみて脱出を優先した団長が叫んだ。

その言葉を聞いてアルはメンバーへと指示を出す。

「サリア、狼は一番殿を頼むぞ」

「わかりましたわ」

「ティア、シスレー、サリア、騎士達から離れるなよ」

夜空も隣に並び、兵士達が小走りぐらいのスピードで盾を構え走りだすと僕達もそれに続いた。

殿が狼だが、アルと僕が人では最後尾だ。これは僕がブリンクがある為にアルがわざと一番最後を陣取る形にしたんだと、アルの正義感のような物を感じる。

だがそれは僕にとっては好機だった。

通路を駆け抜けていくときに、僕は落ちているドロップアイテムを全てイベントリへしまっていく。

恐らく気づいているはアルだけだろう。500匹は倒したと思うのでそれなりに落ちていたし、僕もレイで何度かまとめて倒した為スキルブックもおちていたのだ。

だがそれを拾う余裕は誰にもないし、イベントリ以外ではかさ張る為誰も見向きもしなかった物だ。

外で死んでいた騎士や兵士達は、もうその姿はない。ただ鎧と服などが落ちていた為それも回収できる範囲にある為に少し横にそれて回収、回収!

昨日のセーフティーエリアに入る前の防衛戦でも拾い切れていない物が沢山あり、ホクホク顔で回収していく。走るだけでアイテムがどっさりのボーナスタイムだった。



森の中に入ってもその勢いは止まることなく、騎士達は道を切り開いていく。

巨石が勿体ないが定期的に後ろを取られない様に巨石を吐き出し、たまにスリップを使いオークが追いつけないように罠を仕掛け、僕も殿の役目を十分全うしていた

徐々に視界が開けていき森の終わりを告げているのが分かると、騎士達も一層速さを増して一気に森をかけぬけた!

「突撃陣形をくずせ!防御陣形ですすむぞ!」

平野には、掃討していたオークやゴブリンがまた湧いているようだが、見る限り数はそこまで多くはない。

先ほどの雪崩れ込んでくるオークを見ていた僕らにとっては、今は大した数には見えなかった。

「兵士10人、殿にまわれ!」

ここで兵士達が僕らの後ろにも回ってくれるようで、セーフーティーエリア脱出は誰一人掛けることなく成功を果たしたのだった。



勢いのあった移動に息があがる騎士達に水を振舞いながら、歩を進め、4時間歩いた後に地上への階段をみつけダンジョンを脱出することが出来た。

長い階段を上り、祠からでると、騎士や兵士達も今回は流石に疲労を隠すことなく、すぐに腰掛け倒れていた。団長さんも何も言わずに地べたに座った。

「みんなではないですけど、無事に帰れてよかったですね」

「なっお前がいれば何とかなるんだよ」

アルはポンっと僕の肩を叩いた。

夜空もティアやシスレーも座り込み、サリアさんにいたっては横になってティアに膝枕されている。

アルもその場に座り込み、仰向けで転がった。調査として成功か失敗かと言われたら失敗だと思うが、あの危機的状況から犠牲者を出さずに帰れた事は大成功だろう。

みなが疲れている所、僕一人、体の疲れは感じてはいない。いい運動になった程度の気持ちだ。

僕は袋からソーセージやパン、水、エールを取り出しながら、騎士や兵士、夜空とこへ置いて回る。

「ノエル君、その辺で大丈夫だ。君もやすみなさい」

そんな暇つぶしをしていると、騎士団長さんから声が掛かる。

「分かりました。団長さんもこれをどうぞ」

最後に団長さんにも食事を渡して皆の所へ戻った。

「ノエル、お前も休めよ。もういいだろ」

「団長さんにもそう言われて、戻って来たとこですよ」

「そうか」

周りではガチャガチャと僕が出した食事を静かに食べ始めていた。



しばらく小休憩を挟んだ後に、祝福のメンバーも起き上がり軽く食事を始めだした。

「みんな聞いてー、私祝福5にあがったんだよー」

「おめでとうございます」

「あれだけ倒してたらそうだよな、今回一番倒してたんじゃねーか?」

「セーフティーエリアで撃ってる時は、94匹倒したからね」

自慢げに、だが嬉しそうに94匹というティア。

「ティアちゃん数えてたの?」

「もちろん、シスレーとアルは弓で何匹たおしたの?」

「うちは20匹いくか行かないかだと思う」

「俺もそのぐらいだろうな、まず一撃で死なねーからどいつにトドメさせたか分からなかったな」

「あっうちもそうだよ」

確かにティアは一射の元倒していたが、巨石の矢倉組は数を撃って倒していた。

「ノエル君は魔法で何匹倒したの?」

「う~ん・・・レイでまとめて7匹は倒せてたので、6回は使いましたので恐らく40匹ぐらいでしょうか」

「あれは爽快だったな、魔法が羨ましく思えたぜ」

僕達が成果を話して、お互いが活躍していた場面をしゃべっていると

「私、1倒もしてないわ・・・」

サリアさんがボソっといじけるように言う。

「それは俺の指示だからだ、あの森を抜ける時に何度狼に助けて貰ったか。サリア助かったぞ」

ただそんな事は悲観することがないとばかりに、アルはちゃんとフォローするのだ

「ですね、ありがとうございました」

「あっはい!お役に立てられて光栄ですわ!」

今回は適材適所で各々が幅広く活躍していたのだ

敵を倒すだけが活躍ではない、回復に陽動も立派な役目だ。

ひと段落ついたあたりで、団長さんがリーダーを集め今後の方針を話し出す様だ。僕も参加するように言われ、出しゃばりすぎたなと後悔した。

「今回の調査はここまでにしようと思う。人も減り、ダンジョンを見誤っていたようだ。王都にも呼び掛けて数を集めることにする」

「あぁ・・・これは質より数だな。夜空も賛成だ」

「私はもう夜空に拾われたからね、ロールに賛同する」

雫はフェリニカさん以外亡くなってしまい、今回参加したメンバーで全員だったようだ。その為に解散を余儀なくされたようだが、夜空に加入という事で落ち着いていた。

「俺も問題ありません」

「そうか、騎士達は明日にはセイクリッドストーンへ戻る。よければ一緒についてきてくれ。特に今回はDランクとは思えない活躍をしてくれた祝福達に感謝を、帰ってギルドへ報告させてもらう」

「だな、助かったぜ。次もよろしく頼むな」

「ノエル君、本当にありがとう」

ここで今回の調査は終わったようだ、BランクPTは自由調査の為、今どうなっているのか知らないが勝手に切り上げるそうだ

セーフティーエリアで使った矢や食料は、報酬金とは別に岩街に戻ったら別に払われるようだ。

時刻はすでに夜の8時回っていた為、兵士や夜空も祠周りで雑魚寝をするような感じでテントを張る気配も無かった。

アルに確認すると僕らも今日はここでいいとのことなので、部屋の隅に行きマットを引くだけとなり、そうそうにみんな寝ていた。兵士達もいびきをかいているものいるので、すみっこにきたのは正解だった
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