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第109話 調査②

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ダンジョン調査2日目

「ティア!」

「分かってるよ」

「ノエルスリップ右端!」

「はい!」

「サリア、奥のアーチャーに牽制!」

「わかりましたわ!」

「シスレー!右!」

「はいはーい」

昨日と変わらず、騎士団の後ろをついていたが森に入ったことで騎士団が漏らした敵も多い

「ったく今日は昨日と違って大変だぜ」

「ですね、あまり騎士達と離れない方がいいですね」

視界が開けていない為、わざわざ遠くの敵までは倒しには今日はいかないのだ

「そろそろセーフティーエリアがある頃だぜ、そこが使えればいいが無ければ逆戻りだ」

時間にして3時を回っていたが、出発が早くてこの時間になっている。後戻りならまた6時間ほど歩いて帰らなければならない様子だ。

森を抜けると、騎士達の前には木の柵で囲われたセーフティーエリアだ。壊されているかと思ったが、そのままの形で残っていた

「中には入らないのでしょうか?」

「魔物の住みかになってるかもしれねーからな、魔物じゃなくても盗賊が占拠している可能性もあるぜ」

固く閉ざされた門を、兵士達が押し上げている

そうこうしているうちに、雫と夜空も集まり門があくのを待っている状態になった

徐々に押されてあいていく門・・・ゴゴゴゴと音を立てている

僕はシスレーの手を握り、不足の事態に備える。用心に越したことはない

兵士5人ほどが先に中の様子を見に入っていくのを見届ける

誰一人喋ることはなく、中の状況を固唾をのんで待つ時間となった。


5分ほどまっただろうか、そろそろ戻ってきてもよさそうだと思うころ

ぎゃーーーー

と叫び声が聞こえたと思うと、その声よりも大きな鳴き声というよりも咆哮が聞こえた

ブボォーーーーーーーー!!!

「戦闘体勢にはいれ!」

咆哮と共に騎士団長が指示で盾を構える騎士や兵士達

「なにがいるってんだ・・・俺たちも陣形だ。サリア狼を先頭にだしてくれ」

「分かりましたわ」

「シスレー、一度下がっておけ。ノエル俺と前線頼めるか」

「はい」

こういう時は女性を守ろうとするアルはやはり男らしく感じる

「ティア、シスレー、サリアを頼む」

騎士団の後ろとは言え、それでも緊張感がはしる

ドスンドスンと足音が響きわたり、振動で地面が揺れる

レビテーションを使い、シールドを張り、浮遊盾も浮かせ今できる限りの戦闘体勢に入った。

ゴンッ

セーフティーエリアの中から、何かが飛んできて兵士達の盾にぶつかった様子だ

「うわっ・・・」

一人の兵士がそれを確認し声を漏らしたかと思うと

「オークロードだ!騎士、兵士たち気合いれろ!」

騎士団長が敵の姿を確認し、その後ろの僕らも敵の姿がはっきりと見えた。

以前ウェッジコートでみたオークキングより一回り小さく3mほどの体格。だが、その右手にもっている禍々しい形をした大剣がオークロードを実際よりも大きくみせている。

赤黒い毛並みに、魔物のくせに鎧をきてマントをなびかせている。

オークロードは僕らをみるとまた咆哮を上げると同時に、騎士達に突進をしてきた

ガンっとその突進をとめる兵士達

あれを止めるのかと思っていると

「アル!周りにオークの影多数!」

ティアが森からオークが集まってきていると報告があり、僕達も倒しきれなかった生き残りが、先ほどの咆哮で集まってきているようだ

「冒険者は周りのオークを倒してくれ!ロードとその取り巻きのセーフティーエリアにいるやつらは我々がやる!」

騎士団長の指示により、雫と夜空のPTはさっと左右にわかれ迎撃を始めた。

「サリア狼を自由にさせ、ノエルからポーション受け取って回復役だ。ティア近づいてくるやつから構わず射抜け、シスレー、ティアとサリアの護衛だ。迎撃だけで、出る必要はない」

アルは回復役をサリアさんに任せたということは僕は先ほどの通り前線だ。

ポーションを5個ほどサリアさんに渡し、森から出てくるオーク潰しが始まった。

「行くぞノエル!」

「はい!」

ある程度倒して進みながらきた為に、マウンテンフロッグのような波のように押し寄せてくるわけでは無かったが、波状攻撃のように、次から次にオークは森から出てくる

今更オークに遅れはとらないと思っていたが、結局数の暴力だ

「シスレー!取り逃した!」

「おっけー!まかせて!」

オークもゴブリンも人間の女が好きなようで、僕達に目もくれずシスレーやティアに目掛けていくやつもいるので取り逃すこともあったが、僕とアルと狼の前衛はほぼ鉄壁だった。MPを常に半分の30は保つように戦えている。

それにティアの弓の援護もあり、こちらに近づいてくるオークは動きが鈍ってくる為戦いやすかった

慣れない剣を持ち、斬りつける。敵が近くにいなくなると、ナイフや手斧を投げ、アイスショットで遠距離からトドメを刺す。

「ノエル、右にスリップ頼む!」

「分かりました!」

特にスリップのおかげで固まってきていても対処が出来ている。

だが、ピンチにならないわけではない。

「アルっ!いけ盾!」
背後からアルに迫るオークの槍の突きをガキンっとふせぐ

アルが攻撃を喰らいそうになっても浮遊盾で一撃は防げる為、乱戦でもかなり役立つ代物だ

「うぉ助かったぜ!っノエルしゃがめ!」

「えっ!?はい!」

アルがそういう時に背筋に危険察知を感じすぐにしゃがむ

アルのバスターソードが僕の頭をかすめるように薙ぎ払われ、後ろからオークの呻き声が聞こえた

「油断すんなよ!」

「すいません!」

アルと二人での前衛だったのだが、今までの経験から息があっていた。しゃがんだ僕に手を差し出そうとしたアル

そこに僕とアルの隙間を縫うように矢が飛んできた。僕らが気づいて振り向いた時にはオークはこん棒を振りかぶる形で頭に矢が刺さり消滅した

「二人とも油断しないでー!」

ティアが僕らの様子を見て助けてくれたようだ。危険察知も連続では発動してくれないようで、僕もアルやティアの援護をかなり受けながら戦っていた

サリアさんも狼がやられても、MPを狼召喚にまわしている為、すぐに再召喚を行った。


僕らは他のPTよりも人数が多くなんとかなっていたが、徐々に戦線の崩壊は足音を立てて近づいてきていたのだ・・・

「アル君!右側から徐々にオークが増えてきてるよ!」

右側には雫のフェリニカさん達だったが、何かあったのかもしれない

「ティア!右側狙ってくれ!」

「りょうかい!」

「アルフレッド様!MPが切れます、次に狼召喚したらもうだせません!」

サリアさんも4度目の狼召喚を行いMPが切れてしまった様だ

右側からくる敵はシスレーとティアがさばいているが、徐々に押され始めているようだ。僕らもティアの援護がなくなってしまい、無傷のオークと戦うことになり慣れない剣だけで倒すのも時間が掛かり始めた。

アルがぼそっとまずいなと言うのが聞こえた時だ。

「オークロードは倒した!冒険者たち!セーフティーエリアにはいれ!!」

押され始めている所に鶴の一声だった、騎士達はオークロードを倒しこちらを援護しに来てくれた。

「行くぞみんな!サリア、ティア、シスレー先にいけ!」

なだれ込むようにセーフティーエリアに駆け込んでいくが、門がさび付いていたようで重かったのだ。

はやくしめろーー!
やってる!

開けた門を閉めるのも一苦労のようで、迎撃をやめてしまった為波のように迫りくるオーク達。

う、うごかねぇ・・・!
おらーーー!

兵士達も必死に押し、アルやロールさん団長も加わって押し、ティアや夜空の射手のメインさんは隙間から確実に狙い撃っていた

「シスレー、外に行ってきますね」

「えっ駄目だよ!」

「大丈夫です、MPにまだ余裕あるので」

すっとブリンクでそとに降り立ち、門の前に巨石を一つ門を塞ぐように置く

すでにオークが回りを包囲し始めていたが、間に合ったと思い中に戻ろうとした時、フェリニカさんが戦っているのを見かけてしまった

距離は50m先だが、撤退に遅れてしまったようだった。

ブリンクの回数的に・・・大丈夫助けれる・・・!

残りMPは40ある、ブリンク4回分あれば帰ってこれる!そう思った時には体が動いていた

オークの隙間を縫うようにブリンクを繰り返し、倒れて今にも殺されそうか犯されそうになっているフェリニカさんにたどり着き、フェリニカさんを掴むが・・・オーク1匹がしっかりとフェリニカさんを捕まえていた。

「くっそ!レイ!」

一撃のもとにオークを消滅させて、もう一度ブリンクをした時に・・・MPが足りないことに気づいた。レイを使うのは予想外の出来事だったからだ

「やばいやばい」

目の前10mの距離にはオーク達だ、恐らく後ろや左右にもだ

イベントリから焦って震える手でマジックポーションを取り出し、ふたをあけて飲み干す。もう一度ブリンクをし、門の前に置いた巨石の上に降り立ちなんとかセーフティーエリアの中へ倒れこむことが出来た。と同時に落下した衝撃とは別に、背中に鈍い痛みが今更になって感じ始め僕は意識を手放した。
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