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第92話 肌の黒いゴブリン

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ブレッド村をでた後、アルはやる気に満ち溢れている様子だった。

「そんなにサーヤさんと会ったのが嬉しいんですか?」

「は?」

「だって顔が嬉しそうなので」

「・・・お前帰って笑い話にするなよ」

「・・・僕も散々女騎士さんのことで馬鹿にされましたからね」

ニッと笑い今までの仕返しをしてやると決め込んだ

ブレッド村を出て二日目の夕方には、ウェッジコートが見えててきた。

近場の丘で、ベースキャンプを設置することに。どうやら魔物はウェッジコートへすでに入り込み占拠してしまっているようなのだ

門を塞ぎ、城壁には弓兵を配置し、こちらの進軍に備えているとのことだった

それを聞いて、かなり人間に近しい行動をする魔物達もいるもんだと感心してしまう

「ノエル聞いてきたぜ、俺たちは第3陣として戦場に向かう事になった」

「3陣ですか」

「あぁ騎士や兵士が1陣で南門から正面から突破を試みる間に、BランクやCランク、兵士の中でも身軽なやつらを合わせた何人かが、西門付近から城壁を登り弓兵を倒していくようだ。それが成功したら、次に2陣、3陣、4陣と徐々にウェッジコート内に入っていくそうだからよ」

「・・・ほぼ城壁組の成功するかできまりそうですね」

「どうやら城壁をのぼる中に、実力がある冒険者がいるようだ」

「ほー、その人にかけた作戦なんですね」

「みたいだな、名前は出なかったがPT名が鷹の片翼って名前らしいぜ、だから鷹ってよばれているそうだ」

「ふむふむ」

「明日の早朝に作戦開始だ」

この討伐隊総勢900人前後、魔物の報告は800とされているが誰も魔物の数なんて数えていないのだから憶測の数だろう

人数で上回っていても、今の士気や体力ではそうそう厳しい戦いになることが予想される

もう周りは物資が尽きたのか、食事をほぼしていない

王都組から食料を分けて貰っているがそれも、ほんの一部にすぎないのだろう

僕らも陰に隠れながら、食べやすい食事をしていく

「こんなんで力なんてでねーだろうな」

「そうですね・・・今回は敵が誰かは分かりませんが数々の布石からなるものでしょうね」

「ん?どういうことだ?」

サイシアールからの襲撃は偶然とは思えない、それにこれだけの戦略を魔物だけで行うとも思えないのだ

誰かが裏で糸を引いている気がしている、何かを見落としているような感覚だ・・・それが何か答えが出そうで出てこない

「・・・そう考えればそうだが、考えすぎだろ」

「そうですかね、ならいいですが」

午後の木漏れ日の所へ合流し

「私達は第2陣として、参加するわ」

「俺たちは第3陣だ、気をつけろよサーヤ」

「おいおいにーちゃん、熱いったらねーぜ」

「すいません・・・デックスさんサーヤをよろしくお願いします」

「おう!俺の盾は何も通さねーぞ」

アルがサーヤさんに声を掛けているのを、デックスさんに冷やかされている

「ノエル、お前もむちゃするなよー」

「はい、アンナさんも気を付けてくださいね」

「こっちもできてるのか?どうなってんだこいつらは・・・」

アンナさんが僕を気遣かっている光景をみて、弓使いのドットさんは呆れている様子だが

「あっアンナさん、そいつに手を出すとPTメンバーの女の共がうるさいから、ほどほどにお願いしますよ」

アルは格上には敬称をつけて、敬語を使う

「アハハ、そんなつもりはないよ。でも、ノエル人気者なんだ?」

「いえ、便利道具みたいなもんですよアハハ・・・」

「そう?PTメンバーに捨てられたら、私のとこにおいで一生養ってやるからさ」

なんという男前なのだろうか、女性からそんな言葉をきくとは思っても無かった

「アハハありがとうございます、考えときますね」

サーヤさんとアルが闇夜に消えていくのが見えたが・・・明日どうなるか分からない為、何も言う事はなかった

僕は一人、いつものようにリコールをかけて回り、女騎士のスカーレットさんの事を思い出したが、特に探すことはしなかった

僕の中ではもうシスレーやティア、アル達の方が大きく大切な存在になっていた為、あの時の感情は憧れに近いもんなんだと納得していた



早朝目が覚めると、周りは空腹からかあまり寝れていないのか起きている人達が結構いた

アルは隣に帰ってきていたのでをゆすり起こし、パンをかじっていく

周りの視線やのどを鳴らす音が聞こえるので早々に食べ終える。何人かがまだ持っているなら売ってくれと、声を掛けてくるのでアルはパン一つだけを金貨1枚で売っていた

第一陣が準備を終えて出発していく様子を見送る総勢500人の第1陣、大きな盾持ちを前列に置き、兵士たちが並んでいる遅れて第2陣弓兵や魔法使いを含むPT100人が出発し、1陣の後ろから遠距離で攻撃するとのことだ。この中にサーヤさん達がいる

そして僕達3陣目と4陣目が出発となり、街に入るまでに、1陣、2陣を後ろや横から奇襲に合わないようにする為の配備だ

    1 ________
    2 ________
3_______    4_______



僕達が出発する頃には、1陣は敵に矢の雨にさらされていた。2陣の弓兵や魔法使いも応戦しているが、敵は高所からの攻撃だ地の利は向こうにあった




30分は弓矢、魔法対決をしていたが2陣はかなり押されている

「ウルフだーーー!森からウルフだ!」

4陣の方からだ!森に潜んでいた、フォレストウルフの群れが4陣と2陣を襲っていた

「ノエル気をつけろ、こっちも何かくるかもしれねぞ」
「わかりました」

アルがそう僕に注意すると同時に、こちら側からはトロルが5匹現れた

「どうしますか?」
「・・・戦うしかねーだろ、一番左端を狙うぞ」
「了解」

僕達に一番近いトロルがこちらに向かってきているので、アルは盾を構え迎撃態勢にはいった。近くにいる冒険者も同じトロルを狙うように、1匹のトロルに対して10人ほどは固まった

冒険者の一人が前衛は足を狙え!後衛は目だ!目を狙え!怒号のような指示が飛んできた

その叫んだ冒険者はいの一番に、トロルに向かった

つづけー!

その姿に回りの前衛も飛び出していく

アルは渋々ながらも向かっているようだ

僕もアイスショットで目を狙ってみるが、魔法は弓矢に比べて弾速が遅いので簡単に弾かれた

後衛の弓をもっている冒険者3人も目をねらっているが、ティアほどの練度はない

それに目に当たらず、皮膚に当たっているとこを見ると刺さりもしていないのだ

マジックミサイルを放つも、あたりはするがピンポイントを狙う魔法ではない為ダメージはありそうだが、少しトロルの動きを遅くするだけだった

足だ足をねらえ!
今はむりだろ!おまえがいけ!
そこ!なぜ今攻撃にいかない

前はティアが上手く部位破壊をしたからうまくいったが・・・今回は前衛もバラバラで実力か空腹のせいか分からないが動きも悪いような感じだ

アルも一人ではどうすることもできず、手をこまねいている

味方同士もつれ合いながらも、何度か切りかかりダメージを与えアルもそれに続いているがトロルの自然治癒力でほぼ無傷の状態になっているのだろう

僕はマジックミサイルを3発うったあたりで攻撃が無意味だと悟り、MP切れを装い見ていることしかできなかった

結局、他のトロルを倒した他の人たちが増援にきて倒したのだったが、トロル1匹に40分かかっていたのだ

僕らがトロルと戦っている間に、騎士団率いる第1陣と第2陣は門からの侵入に成功したようだ

城壁からの矢もとまっている、残っているこの3陣の端っこの僕達と第2陣でMPや矢を消費した人達だけだった。先に第4陣も街の中へ進軍していったようだった

行くぞ!

3陣のまとめ役がそういうと、僕達も街の中へ進軍を開始した

アルにウォーターの球体の塊をだすと顔ごとつっこみがぶがぶと飲んでいた

「ぷはっ・・・うめぇ」

アルが飲み終わると、近くの冒険者が近くにきて飲もうとしていたが

こいつはさっきの指示を出して何もしなかったやつだ、それにアルを突き飛ばしていた

僕はウォーターの制御をきって地面におとした

「ちっ勿体無いことしやがって!」

そういうと離れて行った

「ククク、意地悪だなお前」

「え?なんのことですか」

城門前は騎士や兵士の死体が何人も転がっている・・・街に入る前からかなりやられてしまったようだ

街に入るも同じ惨状だ、僕らが遅れて入ったのが良かったのか悪かったのか・・・

至るとこで鉄同士がぶつかり合う甲高い音、人と魔物の叫び様な声であふれている

門をくぐれば各自サーチアンドデストロイとなっている、第1陣や第2陣が漏らした敵を殲滅していくのが仕事になっている

一緒に入った第3陣のメンバーが30人ほどだが、門をくぐるとPTごとにバラバラに進んでいった

僕らも警戒しながら街を進んでいくが、前にきたウェッジコートの街並みは消えていた。サイシアールを思わせる惨状となっている

「ノエル、敵だ・・・」

「はい・・・」

アルが敵を見つけ声を潜めながら、確認すると騎士含む兵士4人と魔物7匹が戦っている

オークとゴブリンアーチャーだ。騎士たちには遠距離武器持ちがいないようで盾で防ぎながら、少しのカウンターをしているが防戦いっぽうのようだ。

「加勢するぞ・・・」
「どこからいきますか?」
「後ろの弓を倒す、あの見える赤い屋根の下にいるやつから叩くできるな?」
「もう少し近づきましょう・・・あそこの路地裏からなら届きます」

僕らは身を潜めながら移動し、ブリンクでゴブリンとオークの後ろをとった

「俺が右側を、ノエルは左側だ」
「了解」

「いまだっ」

アルの合図でアルは距離を一気につめ、ゴブリンアーチャーの喉を突き刺した

僕も同じタイミングでアイスショットを、頭に目掛け打ち抜いた

そしてすぐさま身を隠したアルと合流した

ゴブリンアーチャーは声を出す間もなく死んだので、残りの魔物はきずいていないようだったがこちらを見ていた騎士団は、僕達に気づいたようでヘイトをかうように盾をならした

「この調子で向こうの2体をやるぞ・・・」
「わかりました・・・」

同じ要領でブリンクで後ろをとり、アルと同時にアーチャーを仕留めると騎士達は攻撃に転じ、息のあった連携によってオークを瞬殺した

「君たちたすかったよ」
「お互い様だ、第一陣はどうなってる、なぜこんなバラバラなんだ」

僕ら2、3、4陣は1陣が漏らしたやつらを見つけ次第殺すのだが、1陣の兵士達はまとめって行動していると思っていたのだ

「門をくぐるとオークキングが待ち構えていてな・・・いきなり乱戦となって、大きい盾持ちの騎士たちは味方の盾に身動きがとれなくなっていたので散開となったのだ」

「よくない流れだな・・・」

「あぁ・・・隊も何もないからな、近くにいた者たちで固まっているだけだ」

ほー、グループやPTでもないのにあの連携なんだ、基礎ができているとある程度は出来るんだと感心する

「このまま街を突き進む、よかったらともに行動して欲しい」

「ああ、構わないぜ。俺たちは祝福探しのアルフレッドとノエルだ」

「俺は騎士団のキリシュタイン」
「同じくガララッド」
「俺は兵士のミルズ」
「俺も兵士だ、ガリバーだ」

簡単な自己紹介が終わり、騎士たちが先頭に歩いてくれるようだ僕はさっき騎士がたおしたオーク4匹を回収し、後ろに続く。食糧確保も今回の遠征で大事な部分だった

散らばって倒れている兵士や魔物、崩れ落ちた建物。住民の生き残りはいなさそうだ

歩きながら、魔物も殲滅していく。遠距離のやつらを倒せば、騎士たちが倒してくれるので僕たちは隠密行動だ

何度か戦闘を繰り返し、一つの広場の前にいきつくと、騎士や兵士がかなりの数が倒れている

「どうなってんだ・・・かなりここでやられてるぞ・・・」
「あぁ・・・何かあったんだろうな」

殺されている兵士たちのその先に

木の杭に括りつけられた騎士や兵士、冒険者が10人いるが、うなだれている

生きてそうな雰囲気だが・・・かなり罠の匂いがする

「おい!トロス!」
知り合いを見つけたのか、兵士のミルズが括りつけられている兵士の側に駆け寄りそれをみた騎士のキリシュタインと兵士のガリバーも続いた

「おまえら!ちょっとまてよ!」
一人残るガララッドさんはこの異様な光景に足が動かせないでいたようだ

アルも行きそうになるのを引っ張って止める

僕は気づいてしまった、括りつけられている中に木漏れ日のメンバーがいて、サーヤさんがいることに

「ノエル行かせてくれ!サーヤがいるだろ!みえねーのか!」
「分かってます・・・僕だって助けたいですよ!でもこれは罠です!」

僕達が言いあいをしている間ににキリシュタインさん達に、槍や矢がとんだ

「グハッ」
「キリシュタイン!くそ!」
残っていたガララッドさんは飛び出して盾を掲げて守るように立ちはだかった

僕とアルはその場に残り、槍が飛んできた方向を確認すると

「ゴブリンリーダーだ・・・」

アルがそう呟くのでみると、ゴブリンを10匹引き連れた先頭に周りのゴブリンとは見た目が違う、ひときわ目立つゴブリンがいた

肌の色は黒く、ボールのような丸丸とした大きな太った体に、自分の身長と同じ大きさの棍棒をもっている。ゴブリンリーダーはCランクの魔物で今の状況ではかなり分が悪かった

僕たちは身を潜めていたので見つかりはしていないが・・・このまま逃げたらサーヤさんは犯され殺される・・・

現に転がっている死体の中には裸に向かれた女の冒険者や兵士がいるからだ

ゴブリンリーダーは楽しむように、ガララッドさん達へ一人で向かっていく。後ろには矢を構えたゴブリンが待機しているが射ようとはしなかった

リーダーの一振りで、盾を構えていたガララッドさんが吹き飛ばされてしまったのを見て、アルは今にも駆けだしそうになる

僕はアルを屋根の上に移動させた

「おいっ!おろせ!!」
「いやです!だって死ににいきそうなので」

「死なねーから!時間がねーだろーが!」
「いえ、無理です」

明らかに罠な上、相手は僕らよりも格上の魔物だ、サーヤさんには悪いがアルを死なせたくない僕の冷酷な判断だった

「頼む!サーヤを助けてくれ!」

それでもアルは僕に土下座をして頼み込んできたのだ

そこまで必死になるアルをみて本気なんだと悟り、流石に断れなくなってしまう

「分かりました・・・倒しかたはどうやればいいですか?」

「・・・お前でも倒すのは無理だ。ゴブリンリーダーには魔法は効かない。あの肌は魔法耐性だ、マジックミサイルなんてほぼきかないと思え、レイもはじかれるだろう・・・」

「ッ!?」

(そんな魔法が効かない魔物から、サーヤさん達を助けれるのだろうか・・・どうやれば・・・)

最終的にレイで頭を打ちぬけば倒せると思ったがそうはいかないらしい

「俺がガララッドさん達と一緒に足止めしている間に、サーヤを頼む」

アルが苦い顔をしながらも、僕にそういうのだが・・・その提案に納得は出来なかった

「そんな事したらアル死にますよ・・・ガララッドさん達であの惨状です、役割を反対にしましょう。二人で射手を何匹か無力化した後に、僕がリーダーへ、アルがサーヤさん達を」

「は?魔法は聞かねーんだぞ」

「魔法が無くても僕の方がアルより強いです」

これはディティマールの能力値の話だが、ヒューマンよりもほぼ倍の数値なのだ。アルには失礼かもしれないが、これは転生者ボーナスでもあり事実だった為厳しい一言となった

「・・・力不足ですまん」

「いえ、避けるのだけは上手なだけです」

アルは今までの僕の戦いを見て、魔法だけではないと分かっているようで、危険な役割を僕に任せることに渋い顔をしているが納得してくれた

「でもよ、それならお前が戦っている間に、俺が後ろから斬る」

「いえ、助けて逃げる事を優先しましょう・・・恐らく魔法が効かないのなら勝てる自信がありません」

「ぐっ・・・損な役回りを押し付けてすまん」

作戦が決まりブリンクで下に降りるが、もうガララッドさん達は虫の息だ・・・

ゴブリンたちにこっそり近づいて、スリップ、マジックミサイル、アルの奇襲で10匹のうち7匹を無力化に成功

「アルいまです!」
僕の掛け声とともに、アルはサーヤさんへ

(早めにお願いしますよ・・・ブリンクはあと・・・10回)

キリシュタインさんガララッドさん達はもう地面に突っ伏している、兵士のミルズ、ガリバーはあの棍棒で胴体、顔をつぶされていた

僕の声にリーダーが反応にこちらを向くがそれは狩る者の目だ、ブリンクがあるにしても遠くへ逃げればアルたちが狙われる、ギリギリでよけながら時間を稼がなくてはいけない・・・

リーダーが近づき、こん棒を振り上げた時

リーダーの大振りに威圧のような効果があるのか、体が硬直してしまった

(う・・・うごかない!?ぶ、ブリンク!)

ズドンと土煙がまうその棍棒が振り下ろされた後は、地面を砕き丸くひび割れた後が残っている

(寸前でよけれたが・・・ブリンクじゃないと避けれない!?)

体が恐怖で硬直したような感覚だった

移動した僕にその巨体に似つかわしくない、跳躍をした

「とぶの!?」

跳躍後から勢いよくたたきつけをしてくるようだ

ブリンク!

地面がグラグラと揺れる

立っていられないほどだ・・・レビテーション!

土煙の中から棍棒が薙ぎ払うように飛んでるのを、見えたのでなく危険察知を感じブリンクをパッシブアビリィのように発動した

「いっつ・・・」

少し腕にかすっただけなのに、かなりえぐれている・・・

ゴブリンリーダーは僕が痛がる様子が面白いらしく、その醜いぶつぶつだらけの顔をゆがませてニヤリと口角をあげた

(・・・くっそー、こっちが逃げるだけどおもっているな)

「ノエル!!」
その時、アルからの合図があり、救出する準備が出来たようだ

「レイ!!」
去り際にゴブリンリーダーのふとももに一発お見舞いしてやると

「ぎょぉおーー!」
貫通まではしなかったが、明らかにダメージは通っている様子で血を流し叫んだ

心のなかで、窮鼠猫を噛む。してやったと思うと、ゴブリンにニヤリと笑いブリンクでアルの元に戻り、アル、サーヤさん、アンナさん、デックスさん、ドットさんを抱え込むように抱き、一人は口で服を噛む

僕が逃げると分かったのか、ゴブリンリーダーは痛みをこらえながら残った射手に指示を出しているのが、射手が弓を弾き絞っている様子で分かった

それでも射手の攻撃はブリンクに対しては遅かった・・・が、みんなを抱え一回ブリンクをし距離をとった後に安全な場所をさぐる為に2度目のブリンクをすぐには使用しなかったのがいけなかった

トスンと矢が抱えている誰かに刺さった衝撃があった

(えっ・・・)

何が起こったのか頭が真っ白になるが

「ノエル!いそげ!」

アルの言葉に我に返り、何も考えずただただブリンクで距離をとりひとつの壊れかけの民家へ入った

「ノエル、解毒ポーションと回復ポーションをだせ!、ドットさんに解毒ポーションとファーストエイドだ」

アルがすぐにドットさんに刺さった矢を抜くと、解毒ポーションをふりかけているので僕もファーストエイドを使用したが・・・刺さっている場所は心臓付近でかなり血が流れている

「くっ・・・遅かったか・・・」

「そんな・・・他の4人は!?」

「恐らく死んでない、回復ポーション使っていけ」

他の3人は息があるようで一命はとりとめたようだ、アルは助けている間に息があることを確認していたようだ

3人の手当を終えると、自分も怪我をしていた事を思い出しファーストエイドを掛けていたら

「手間取って悪かった・・・」

「いえこれぐらいで済んだのなら安いものですよ」

「・・・そうか、後どれぐらい魔法使えそうだ?」

ここまで連続戦闘を繰り返していた、普通ならMPは切れていてもおかしくない。MPが多すぎるよりも回復が早い方が説明しやすいと思うと、簡単に説明することにしたのだ

「この際だから言いますが、人よりMPの回復が早い体質なんです。みんなが起きる頃にはほ全回復します」

「・・・分かった」

その後、何か聞きたそうだったがアルは口をつぐんだ

周りではまだ騒がしく戦闘音が聞こえてきている

食料と飲み物をアルにだし、食欲は湧かないが無理やり少し食べておく

「アル、最後なんで弓があたったか分かりますか?」

「あぁ・・・お前が一回ブリンクした後だろ、あれは広場のゴブリンからだぞ」

「えっ・・・そんな事・・・適当に撃って偶然か、僕の移動先をよそく・・・」

そこまでいいかけてゾワリとした感覚に陥った

「恐らくそうだろうな、あのリーダーが指示してたんだからよ、現に俺は最後に矢が当たった時にリーダーが歪んだ笑みを浮かべているのをみたぜ・・・気味が悪りぃわ」

(あのやろう・・・)

仕返しできたと思ったらやり返されてしまった、その結果、人が死んでしまった・・・あのゴブリンは自分よりも何枚も上手なのだとはっきりと分かった

どっとさんには悪いが、これがアルだったらと思うと・・・僕ははっきりと序列をつけられたようで、あいつの前にはもう立てない気がした

「みんな起きませんね」

「外傷は消したのにな・・・麻痺か・・・解毒ポーション飲ませとくか」

1時間休息したぐらいで3人が起きない事に、アルも麻痺の状態異常を疑い・・・解毒ポーションを含むと口移しでサーヤさんへ飲ませた

「えっ」

「アンナさんはお前の知り合いだろ、お前がやれよ」

「えっえっ・・・」

「じゃあデックスさんやるのか?」

「普通に飲ませれないんですか?」

「気絶してるから無理だろ」

さも当たり前のように言うが僕は・・・

「全員お願いしますよ・・・」

「お前なぁ・・・いや、そうだよな。お前は助けてくれたんだ、俺がやるよ」

アルはアンナさんやデックスさんにもサーヤさんと同じように、解毒ポーションを飲ませ顔色一つ変えずやりとげた

(やっぱアルってすごいな・・・人命を優先して男女関係なくやり遂げるんだもん・・・)

全て飲ませ終えると、みんなの表情が少し和らいだようにみえたので状態異常にかかっていたようだった

しばらく待つと、徐々にデックスさんを順番にみんな目を覚まし始めた

サーヤさんはやられる前にゴブリンたちに何かされたのだろう・・・起き上がると同時に思い出したかのように体が震え始めていた

またそっと優しくアルが抱きしめているが・・・サーヤさんって運が悪いのかいいのか・・・と僕はサーヤさんを不憫に思った

「うっうっ・・・」

あんなぶっきら棒で粗暴なアンナさんが泣くぐらいの恐怖をと思うが、あのゴブリンリーダーは頭がいい。人がどうやって恐怖に陥るのか熟知しているのだろう

デックスさんも、手が震えている様子だがそれでも泣いているアンナさんの元に寄り添った

「ノエル・・・辺りが静かになってきている、そろそろここを出るぞ」

みんなが無事だといっても、うかうかはしていられない。ここは戦場の真っただ中だった

しばらく休息した後にアルは戦場の静けさを感じ、ここを出る判断をした。今のリーダーはCランクの人がいたとしてもアルだった

「はい、僕が先導します」

「あぁ頼む」

サーヤさんはアルが抱え、デックスさんとアンナさんは二人で支えあうように歩くようだ

民家をでてみると確かに物音は少なくなっていた

僕らは静かな街を出口に向かって歩くことに、状況が分からない以上、ベースキャンプに戻る事を選んだのだ

道には多くの魔物が倒れているので、かなり奮闘した様子だが、その分、冒険者や兵士、村人も沢山倒れている

変わってしまった街並みを記憶を頼りに歩き、出口までたどり着くが魔物には出くわさなかった

街を出ると、騎士団の人達が待機していた

「おつかれ、討伐は完了したようだな。ベースキャンプに戻ってゆっくりしてくれ」

そう声を掛けられるので、僕らが休んでいる間に戦いは終わっていたようだった

ベースキャンプに戻ると、負傷者を治療している所や、肉を焼いている所など様々だが静かにだが慌ただしく、戦の終わりを告げているような雰囲気だった

一応サーヤさん達も治療を受けに行くという事なのだが、アルはサーヤさんに付き添うようだった

僕一人残されてしまった・・・中和の光のレインさんを見つけ、声を掛けたくなかったが、現状を知りたくて聞き込みを行う事に

「レインさんご無事でよかったです」

「あぁノエル君か!僕達は中に入ってないからね、問題ないよ」

(えぇ~・・・入る前にMP尽きた組か・・・)

「えっと・・・現状どうなっているか知ってますか?」

「討伐は完了したと聞いたが、オークキングが所在が不明なようなんだよ。だから喜ぼうにも喜べない現状ってわけさ」

「なるほど・・・ありがとうございます」

「君は中に入ったのかい?」

「え?はいPTメンバーが一緒なので」

「僕らとだったら、最初の砲撃がメインの仕事になるから危険な仕事ではなくなるよ、どうだいこれも僕のPTに入るメリットだよ」

「たしかに・・・考えておきます」

(・・・でも適材適所なのか、わざわざ魔法使いが奇襲されそうな街に入る必要ないもんな)

レインさんは思っているよりも、合理的な考えなのかもと思えてしまった

他にも緑の光や、副団長さんから聞き込みをした結果同じような話だった

僕が手も足も出なかった、ゴブリンリーダーは鷹の片翼が倒しらしいのだ。あんな化け物を倒せる人達は、その人達も化け物なのだろうと思う

治療を終えた、木漏れ日の人達がひとつのテント前に集まっているのを見つけ、もう目新しい情報は無さそうだったので僕も休息することにした

「アル・・・どうやら殲滅は成功したようですね」

「でもオークキングだろ?なんか腑に落ちねーな」

「ですね、親玉を倒してこそですよね」

僕達が情報を集めた限りでは、やはりオークキングが気になるようだった

情報は行き詰まり、アルが疑問に思っていたことを聞く

「サーヤ、どうしてゴブリンリーダーに捕まっていたんだ?」

「・・・そうね」

サーヤさんが喋りにくそうだったが静かに喋り始めた





騎士や兵士合わせて10人で街を探索していたら、広場につき住民たちが縛り付けられていたそうだ。それを外そうとしたが、住民たちは死んでいてその間に奇襲をされた

ゴブリンリーダー率いるゴブリンは30はいたそうだが、ゴブリンは減らせていったが数の力にまけて徐々にリーダーに殺されて行き、死を悟った瞬間にあのゴブリンたちは私達を縛り上げた

ゴブリンリーダーやゴブリンから毒を飲まされた。女は口移しで、男は矢をうたれ・・・あの舌の感触は今でも忘れないと・・・

そのままゴブリンたちはどこかへ行ってしまったのだと、それから兵士や冒険者が通りかかると助けを呼ぶのだが、それはゴブリンたちの罠で私達を助けにきた者たちを奇襲していたった

それでも縛られた者の中には希望にすがるように、通りがかる人に助けをよぶのだが私は罠だと知らせようとするもうまく喋れず・・・うめくだけ・・・

そんな事をしたら・・・逆に助けて欲しいようにみえているのか・・それを何回か繰り返し、麻痺毒のせいで徐々に立っている事も適わずうなだれていたと・

僕はその話をきいて、アル、ゴブリンと間接キスしてるんだ、と他人事のように思ってしまった

「・・・だからあの広場には死体がたくさんあったんですね」

「俺たちのせいなんだ・・・ハープもドットもしんじまってよ」

重苦しい雰囲気を払拭することもかなわず、アルとサーヤさんは消えていき。アンナさんとデックスさんもテントへ入っていった

僕は一人、また人の死を何とも思わなくなっている事に気づき途方に暮れた

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最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音
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『目的はただ1つ、1年間でその喋り方をどうにかすること』  辺境伯令嬢である主人公はそんな手紙を持たされ実家を追放された為、冒険者にならざるを得なかった。 「人生ってクソぞーーーーーー!!!」 「嬢ちゃんうるせぇよッ!」  隣の部屋の男が相棒になるとも知らず、現状を嘆いた。  リィンという偽名を名乗った少女はへっぽこ言語を駆使し、相棒のおっさんもといライアーと共に次々襲いかかる災厄に立ち向かう。  盗賊、スタンピード、敵国のスパイ。挙句の果てに心当たりが全くないのに王族誘拐疑惑!? 世界よ、私が一体何をした!?  最低ランクと舐めてかかる敵が居れば痛い目を見る。立ちはだかる敵を薙ぎ倒し、味方から「敵に同情する」と言われながらも、でこぼこ最凶コンビは我が道を進む。 「誰かあのFランク共の脅威度を上げろッッ!」  あいつら最低ランク詐欺だ。  とは、ライバルパーティーのリーダーのお言葉だ。  ────これは嘘つき達の物語 *毎日更新中*小説家になろうと重複投稿

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

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