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第88話 今年の抱負

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年が明けると徐々に日が昇り始め、吹雪も止み寒波は通り過ぎたようだ

まだ雪は降るものの、シンシンと降り徐々に積雪も少なくなっていっている

ゲームも僕が参加しない方が接戦で盛り上がるらしく、それに賭けから賞金制にした為みんな負けても悔しがりはするが落ち込みはしなくなった。たまに入れて貰っても相手にならなさすぎるので、場をもりさげてしまっていた

1月が終わると、この世界では2月は暖かくなり始めるらしく中旬くらいには街にも少しづつ活気が戻り、ギルドでも一気に依頼が殺到するようだった

今は1月の後半、アルは2月の頭から行動を開始するようなので、話合いの場を設けた

「よしナタリーもきたな。早速本題に入る。冬がもう終わる、2月からまた活動する予定だ。今年何をするか冬の間に何か考えてたやつはいるか?」

「はい!」
「・・・」
「・・・」
「・・・」

勢いよく手を挙げたのは僕だけだった

「ノエル以外はいないのか?ったく何してたんだよこの長期休暇をよ」

「じゃあアルが考えてたこと教えてよ」

「だね、ノエル君の考えはアル君が言った後に聞こう」

「ですわね、人に偉そうに言うってことは何かしら案があるのでしょう」

僕は上げていた手を下ろし、アルの意見を聞く姿勢に

「俺は今年中にCランクに上がるって目標たてたんだよ」

へんっと胸を張って言うが、アルが言いたいことは今年の抱負なのだろうか?

「そんな事なら私だって祝福を6にあげようって決めたよ」

「うちも金貨50枚貯める予定」

「わたくしは教会の収益で、孤児院の生活費をまかなうって目標がありますわ」

目標ぐらいならみんな一応立ててたようだったが、逆に僕はそんなアバウトな目標ではなかった

「ったく今後の方針なのに、大雑把な事しか考えてねーなお前ら」

「アルが先に言いだしたんじゃん」

「そうだそうだー」

「ノエルさんはどんな事を考えてましたの?」

ナタリーに話を振られ、わいわいしていた人達も僕の方をみるので

「いえ、僕は皆さんみたいな目標じゃなくてお恥ずかしいですが・・・、えっと思ったよりは冬は長く、食料の備蓄に余裕があったと思っていたのですが、結構なくなりました。そこから使った消費量を計算して、一人当たり金貨3枚分の食料は最低限必要だと分かりましたetc...つまり、1か月は最低でも全員で金貨22枚は稼がなければ備蓄分をつくれないという事になりますetc...なので護衛依頼は2週間ほどの拘束で金貨3~5と全く割に合わなくてetc...」

長くなったが、稼がなければいけない量や、優先して受けた方がいい依頼などを説明した

みんな真剣な表情なので、理解してくれていればいいが

「・・・とまぁ、俺が考えていたことをノエルが詳しく説明してくれたわけだが」

「よく考えてるねー」

「長く喋ったので言いたいことは伝わりましたかね?」

「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」

「えっ?」

アルはお金好きだし、ナタリーは教会の経営をしているので理解してくれている物だと思い聞き直したが、みんな無反応だった

「もっと簡潔に説明できねーのか?」

アルの言葉にみんなコクリと頷く

「お金目的なら僕が鉱山で稼ぐ、祝福あげるならどこか魔物が適度に出るとこ行く、ランク上げなら護衛や納品など金額度返しのを受ける」

簡潔にいうとみんなホッとしたような表情になると同時に、難しい顔にも変わった

「でも僕は地理に疎いので、詳しいことはみんなに教えてもらわなければいけません」

「だ、だよな!ノエルでも一人じゃむりだもんな!」

「ふー!そうだよアル!てっきり私達いらないのかと思っちゃったよ」

「焦ったー捨てられるかもと脳裏をよぎったよ」

「で、ですわね、ノエルさんが居ない冬はもうこせないのかもと思いましたわ」

「何言ってるんですか、こんな長い冬一人で過ごすの嫌ですよアハハ」

とりあえずの方針が決まり、僕とアルとでギルドの依頼を見に行くことになった

「雪もほぼ無くなってるな」

「ですねー、あんなに真っ白だったのに。あっアル帰り道に店主のとこ寄っていいですか?マーリンのゴブレット鑑定してもらいたいです」

「おっいいぜ、俺もきになってたからな」

ギルドではまだあまり依頼が張り出されていなかった、ちらほらある依頼はギルド主催の物で食料の確保だったのでまだ動き出してはいないようだった

「また2日後にくるか」

「ですね、でもどこかで妥協もする必要がありそうですね」

「そうだな」

「アル達が近場の依頼にでている間でも、僕は一人鉱山でお金稼いでおけるので」

「そうか・・そう考えたら、割に合わなくても実績は積めるか」

「はい、僕は祝福上げがメインで冒険者ランクは気にしてないですからね」

「クククやっぱりお前は俺の相棒だぜ」

肩を組まれるので

「・・・アルってホント男も好きとかないですよね?」

「ちがうわ!離れろ!」

「そっちから組んで来たくせにー」

サーヤさんは良くて、シスレーやティアが無いのはなんでだろ?と不思議に思うのだ、PTメンバーだからと言ってそこまで線引き出来るものなのだろうか

アルの不思議を考えながら店主の倉庫前までくるが、店主はここで冬の間生活していたのだろうか?暖炉なんてないよな・・・死んでないといいがと思いながらドアをノックする

コンコンコン

「いませんね」

「ここにいるのか?冬ここで越したとは思えねーが」

「ですよね・・・メルさんが知ってるかもしれません、近所だし挨拶がてらいっていいですか?」

「おう」

メルさんのお店はもうオープンしていて、看板も出ていた

「あいてるっぽいですよ」

カランカラン

少しなつかしさを感じるドアのベルを鳴らしお店へ入る

「こんにちはー」

「いらっしゃーい!久しぶりね!」

「メルさんもお元気そうで、あっ一回合ってると思いますが今日はリーダーのアルフレッドも一緒です」

「お久ぶりですメルさん」

「覚えてるよ、赤髪のハンサム君ね。サイシアールから子供達の歓迎会以来ねー」

あの時メルさん号泣してたっけ、懐かしいなー

「店主しりませんか?倉庫にいったのですが、返事が無くて・・・死んでないといいですが」

「プアハハハ、あいつならうちいるよ。12月の中頃に震えながら入れてくれって迷惑なもんさ。ちょっと呼ぶから待っててね」

メルさん所にいたようで、死んでなくて一安心

「あっメルさん装飾品見させてもらってもいいですか」

「いいよー」

「じゃあ僕はリコール使っておきますね」

「いつもありがとっ。じゃあちょっと声かけてくるね」

メルさんは奥へ行き、アルは装飾品を見て回っているので僕はリコールをかけていく

「すげー・・・これがあれば俺ももっと強くなれるのか」

「でも自分で買おうと思ったら結構いりますよ、だから宝石を探さないといけませんね」

「二度も裏切ったやつのセリフかよそれ」

「・・・一回だけです、シスレーのはノーカウントです」

リコールをかけながら、アルと話をしているとメルさんと店主が出てきた

「おうお前ら久しぶりだな!」

「メルさんの所にいるとは知らず、死んだかと思いましたよアハハ」

「いやお前んとこの孤児院に世話になろうかと思ったんだがよ、行こうと思ったその日から吹雪になっちまってたどり着けそうになかったんだよ」

「ほー?」

アルも店主がメルさん似の肖像画を持っている事をしっているので、店主の言葉が言い訳の様に聞こえたようだ

「いやほんとだぜ・・・?」

「まぁノエル君に迷惑かけるぐらいなら、私が引き取るさね」

「店主、メルさんが優しくて良かったですね」

「ハハハ・・・だな。ところで俺に用事なんだろ?」

イベントリからゴブレットを取り出して

「これ手に入れたのですが、何か分からないので鑑定してもらいたくて」

店主に手渡すと、すぐに鑑定するようにゴブレットをみると

「アーティファクトか、聖印のゴブレットだな。これで飲む飲み物はあらゆる毒を打ち消すそうだ」

「やっぱり本当にお宝なんだ」

「へーノエル君すごいの持ってるね、どこで手に入れたの?」

メルさんに聞かれ、シスレーの絵を取り出して説明すると

「マーリンか・・・伝記通り粋な事するやつだな」

「それでこれ売ったらいくらぐらいになりそうだ?」

アルが一番気になっているのはそこだった

「わからねーが・・・王族や貴族は喉から手が欲しくなるものだろうからな。金貨100は軽くいくだろう」

「なるほど、僕達には毒とか関係ありませんから効果聞いてもピンときませんでしたが、そういう用途ですか」

「ノエル!金貨100枚だってよ!うろーぜ!」

「嫌ですよ、これ見た目も白に金の縁取りと美しいじゃないですか。あっナタリーの教会に飾っていたら雰囲気でそうじゃないですか?」

「いやもってーねーわ!」

メルさんのお店で話をしてもお客さんは誰も入ってこないことからして、まだ誰も活動しておらず資金不足なのかもしれない

そろそろ帰るかと思った頃に、アルが何か訴えてくるので装飾品のことだろうと思う

「あっメルさん、今度アルに装飾品の宝石が手に入ったら作ってもらいたいのですが、力+2がつきやすい宝石とかってあるんですか?」

「う~ん・・・宝石自体で何がつきやすいかってあまりないんだよね。色とかで結構かわるんだ」

「色ですか、何色とかですか?」

「赤やオレンジとかかな~でもこれも何となくだからねー」

「なるほど・・・どこにあるかも知ってたら教えて頂けると助かります」

「う~ん・・・前はホーク火山でとれていた炎熱結晶とかが付きやすかったかもしれないけど、今は取れないみたいだからね」

「炎熱結晶・・・どこかで聞いたな・・・」

アルが何かを思い出しているようだが、僕は冷や汗がとまらなかった

「でもアルフレッド君も、いいもの持ってきたら作ってあげるからね。それにノエル君と一緒にいつでも遊びにおいでね」

「はい、ありがとうございます。帰るかノエル」

「はい、じゃ店主ありがとうございます。店主、メルさん今年もよろしくお願いしますね」

「はーいこちらこそよろしくねー」

「おう!また露店やるとき声かけるな!」

明けましておめでとうや、ハッピーニューイヤーなんて挨拶はないが、今年もよろしくは使えるようだった

一通り、用事が終わったので家に帰ろうと思っていたが

「炎熱結晶、しってるな?」

「はは聞き覚えがあるような・・・」

「3度目だな?」

「いや、それは装飾品に使えるとはしらなくて・・・」

「シスレーに言って溶かして貰え」

「何むちゃくちゃ言ってるんですか!?」

「お前はいつも女ばっかり優先しやがって!マーリンのゴブレットもだせ!あれも売る!」

家に帰ったとたんアルはシスレーに詰め寄り、黄昏をとかして装飾品にすると迫りビンタを喰らっていた
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