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第57話 ブレッド村

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2日目から舗装されていた道も、土のでこぼこ道へと変わっていった

「とまれーー!前方にオーク3匹!持ち場につけ!」

先頭で歩いているゲイルさんから、敵との合図だ

「ノエル、背中は頼むぞ」

「狼ですね、分かりました」

僕達はオークよりも、狼の連中を警戒するのだ

小盾をアルの後ろへ飛ばしておく

3匹ということなので、アル、ゲインさんガロが戦うことになった

ゲインさんでも一太刀ではオークは倒せないようだ、押してはいるが徐々に削っていている

アルもオークと対等に戦い、一瞬の隙を狙う戦い方だ

ガロは・・・どういう戦法か分からない。無茶苦茶なようだが攻撃は与え、避けては反撃とシミターのような曲剣を使いながら戦っていた・

ガガとガミにも注意を払っているが、特に何かをする気配は感じられない

ゲインさん、ガロ、アルの順番でさほど時間差はなくオークを倒しきった

しばらくの休憩後に馬車を進めるようだったので

血抜きをする時間もない為、ここにオークを燃やしていくようだった

(あぁもったいない・・・新鮮なオーク肉はイベントリのストックが切れてしまっていたので欲しかった・・・)

僕がそう思っているとアルも隣で「もってね・・・」とぼそりと呟いたのが聞こえた

その後も2回ほど魔物と出くわすが、単体であったり複数でも2匹と数は少ないようだ

僕はずっと狼の動向を探っているが、特にこちらに危害をくわえようとはしていなかった

2日目も同じように野営をし3.4日と小さな村を経由し5日目の夕方に差し掛かった時には、少し整備されているような道になった

両隣に柵を超えたら小麦?畑のような黄金色に輝く作物

「アル、ここれは小麦畑ですか?」

「そうだな、ノース地方は小麦の栽培が盛んにおこなわれている、今日たどり着き1泊するブレッド村はパンやバケット、マフィンなどが美味しいと有名だぞ」

「おぉ!村そのものも名前がブレッドとは・・・じゅるり、期待できますね」

僕たちが会話をしていると、メネラウトさんが馬車から顔をのぞかせ話に入ってきた

「私も、ブレッド村のマフィンサンドは大好きですの」

「もう名前からして美味しそうですね!」

「村についたら案内しますわ!ぜひご一緒にいきましょう」

「おぉいいんですか!お願いします」

「俺も好きですよ、ブレッド村のマフィンサンド」

アルも得意げにマフィンサンドの良さを口にする

「そうですのね!オーク肉が良く合いますものね」

「そうですね、話をするだけでも腹がへってきました」

「ちょっとちょっと、2人して食べた事あるからって二人で盛り上がらないでくださいよ」

「ノエルは食べたことないんだろ?あれは食べた事あるやつしか旨さをかたれないからな」

「ですわねー」

2人は顔を見合わせて、僕に悪い笑顔をむけてきた

メネラウトさんは、今回の旅で同世代が僕らだけで、雰囲気が近い僕らを気に入ってくれているようだ

アルも依頼主とだけあって言葉遣いは丁寧でありながらも、親しみのある喋り方をしている。ジンさんとゲイルさんはカール家のお抱えの兵士らしく、僕達にももっと喋ってあげて欲しいと逆に頼まれたぐらいだ

僕の知らない、ブレッド村の情報をアルとメネラウトさんが喋っているのでラジオのように聞いている

「ブレッド村は規模はそんなに大きくないんですけど、明るい人達が集まって賑やかな村なんですよいつも街全体に陽気な音楽が流れているのも特徴ですよ」

メネラウトさんがどんどんブレッド村の情報を出してくれるので、楽しみが膨らんでいく

「そろそろ音楽が聞こえてもいいころなのですが、今日は静かですわね」

メネラウトさんがそういうのだけど、何も聞こえない静かだ

風で小麦がサヤサヤとなり、僕達の足音以外には聞こえない

ブレッド村は壁で囲まれてはいない、腰ぐらいの木の柵で囲まれている村のようだ

入口にはアーチ状の門があり、ブレッド村と書かれていた

アーチの門をくぐり民家などが立ち並ぶ場所なのに、人っ子一人見当たらない

馬車を止めこの異様な気配に、ゲインさんとスローグさんが少し街を見て回るという事なのでその場に待機となった

「静かだな・・・」
「ですね・・・少し気味が悪いです」
「ノエル、警戒しとけ」
「はい、万が一があるのでアルも離れないで下さい」
「あぁ・・・」

僕達は小声で話し合っていると、ゲインさんとスローグさんが戻ってきたのだ

全員を集め、村がどうなっているのかゲインさんが説明をしてくれるようだ

「・・・村人が殺されていた。恐らく全員だ」

「うそ!?」

メネラウトさんが声を出すが、驚いているのは皆だ

ただ狼の連中の表情は・・・しかめっ面になっている、どういう感情なのだろうか・・・

「殺されてからそんなに日は経っていないだろう・・・1日や2日だと思っている」

「それに、殺され方が魔物ではなく人の手によるものだ」

「盗賊ってことですか?」

アルが質問をする

「恐らくそうだろう・・・村人は衣服を脱がされている者もかなりいたからな」

(・・・盗賊、やっぱり物騒な連中はいるんだ)

「ウェッジコートまでまだ2日だ、どこかで野宿はしなければ行けない。今日ここでするか、もう少し歩いて離れるか決めかねている」

ゲインさんが今後の方針をいう

「俺たちはここに1票だな、どっかの家で壁がある方が安心だ」
ガロがそういう

「木漏れ日は、早急にここから離れることを提案する」
スローグさんは離れたいようだ

「祝福は先輩方の決めた意見に賛同します」
アルはこの判断はのらないようだ

となると、多数決なら結局ゲインさん達が判断するようだ

「そうか・・・分かった・・・1軒離れた民家を探そう、そこを借りて今晩は固まって過ごすことにする」

「・・・分かりました」

日が暮れだしているので、夜の移動は危険だという判断になった

スローグさんは不満そうだが、無駄な言い合いはしないようだ

村の中央付近を通り、広場にいくとサイシアールのような時計塔があるのだが村の規模が小さいので、時計塔もこじんまりしている。3階建ての建物ぐらいだ

そこには積まれた村人の死体が・・・

「これは・・・悲惨な状況ですね」

「あぁ・・・ひでぇ、女も子供も容赦なしか・・・魔物とかわらねーな・・・」

ゲインさんが少し離れた農家のような民家の中を確認し、安全だと分かると今日はそこで一泊するようだった

馬車を止め、敷地内には馬小屋のような物もあるので馬2頭をしまうようだ

「では、今日も昨日と同じように見張り番でいいな」

「ちょっと待ってくれ、俺たちはこいつらとは馬が合わない.そんな中で、こんな狭い家の中にいたら争いのもとだ。俺たちは馬小屋で勝手に過ごすからよ、見張りも自分達でやってくれ」

ゲインさんが見張り番を決めようとすると、またガロが勝手な事をいっているが僕からしても、その案は賛成だ

「また君たちは勝手な事をいうな!」

「ほらな、ゲイン隊長さんよ、俺が何をいってもこうなんだよ。これが一晩続くと思うと周りの連中もいやだろ」

「ふむ・・・分かった、その意見を呑むが危険が迫った時は自分たちで対処するように」

「へいへい、じゃあな」

手をひらひらふり、馬を引き連れて馬小屋へ行った

「あいつら馬を持ち逃げしませんか?」

僕が聞いてみるとジンさんが答えてくれる

「大丈夫だよ、あの子たちには主従契約の魔法をほどこしてあるからね、僕のいう事以外はきかないさ」

(主従契約の魔法・・・どの属性にはいるものなのだろうか?)

ちょっと気になったが今はそこを置いといて、これからの方針に耳を傾ける

基本的にはゲインさんとスローグさんが話をしてどうするか決める方針だ

ただ、岩街に戻るのも4日、ウェッジコートにも2日となれば、ウェッジコートへ行く方がいいとの判断になった

この農家の家にはリビングと1部屋しかないようなので、メネラウトさんとジンさんゲイルさんが部屋で木漏れ日と祝福の5人はリビングでの休息となり解散した

「アル、盗賊は今どこにいるのでしょうか」

「さぁなー、なぜこの村を襲ったのかわからねー・・・」

「どうしてですか?盗賊なんて目についた村々を襲っていくんじゃないんですか」

「それはないだろ、ここブレッド村は小麦の生産地だ、ここを潰しちまうと自分達も食い扶持に困るだろう、襲うとしても1軒か2軒だ、村人全員なんてことはおかしいんだよ」

「ほー、まるで自分が盗賊のような考えですが納得しました」

「失礼なやつだなお前は・・・」

「ふふ君たちの会話面白いわね」

近くにいたサーヤさんだ

「いえいえ面白いのはアルだけですよ」

「お前がとぼけたこといってるからだろ」

「ふふ、そうね、アル君の推測は正しいと思うわ。私も疑問に思っているから」

「ほらな、サーヤさんもこう言ってるだろ」

「ぐぬぬ・・・」

「私は早くここから離れたかったが、ゲインさんの方針だ仕方ないが君たちも用心し解いて欲しい、それにあの狼の疾走のやつら・・・何か隠している感じだ」

僕らの話にスローグさんも加わり、警戒をという事になった

夕食を食べ終え、見張り番は家の中という事もあり、祝福と木漏れ日で4時間交代となり先に僕達が寝ることに

「やっとゆっくり寝れますね」

「そうだな・・・もう俺はねるぞ」

「僕もです」
何か起こると思っていたが、僕らが起きた後も特に何も起こらなかったのだ起床集合時刻の5時になり木漏れ日の3人を起こすと、部屋からメネラウトさんとゲインさん、ジンさんが起きてきた

「昨夜はなんともなくてよかった、朝食をとった後早急に出発しよう」

ゲインさんも早く出たい様だったので、早めの出発をほのめかす

こんなに朝早起きをして出るのは盗賊に出くわさないようにする為だ、夏だが5時はほのかに薄暗い

出発時刻の5:30になり、外にはまだ狼のやつらは出てきていなかった

ゲインさんが馬を出す次いでに声を掛けるといって馬小屋へ

「おい!きてくれ!」

馬小屋からゲインさんの大きな声が響き、みんなが走っていくと馬が殺され、そこには狼のやつらの姿はなかった

「くっ・・・あいつら!」
スローグさんが怒りをあらわにし

「あぁ・・・僕の馬が・・・」
ジンさんも殺されるとは思っていなかったようで、膝から崩れていた

「狼の連中がやったことに間違いはないだろう・・・この切り傷、毒によるものだ。とりあえずウェッジコートまで急ごう、お嬢様申し訳ありませんが歩いてください」

「えぇ、もちろんです」

なんともわりに合わない依頼になったようだと感じたが、口には出さない

なぜならアルも隣で同じように思っていそうな、苦い顔をしているからだ

「みんな急ぐぞ!メネラウト様を囲うように陣形を組み進むぞ」

この薄暗い朝の中、ブレッド村の住民は惨殺され、僕達の移動手段を奪われた現状に雰囲気は悪い

いきなり背筋が冷たくなる!この感覚は危険察知だ!

「アル!敵で・・グッ」
声を掛けようとしたタイミングで矢が足に刺さった

「ノエル!ぐはっ!?」
アルが僕の名前を呼んでいるが、アルにも矢が何本か刺さっているのが見えた

(あれ?しゃべりたいのに声が・・・意識がもうろうとする・・・)

「敵だ!」
ゲインさんの声が聞こえるが遠くの方で聞こえるような感覚だ・・・

動きが鈍い手をアルの方に伸ばし・・・アルが掴んでいるのか感覚は分からないが・・・

ブ・・リン・・ク・・・

倒れる間際に見えた小麦畑の中へ移動することが出来たが、僕の意識はそこで途切れてしまった
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