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第34話 錬金術師と装飾品

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騎士団の詰め所は広大な敷地だった。演習場も一緒にあるようで、着くころには訓練の掛け声のようなものが聞こえてきていた。

鉄で出来た門があり、アルが門兵に声を掛けると中にすんなり入れて貰えた。

兵士2人が先導して案内してくれるようだ

「大きい場所ですねー」
「あぁ岩街の騎士団だ、かなりの人数を管理するためじゃないか」

僕がそういうと兵士が答える

「ここは南側の騎士団の詰め所だ、もう一つこの規模の詰め所が北側にもある」

兵士一人が僕らの会話を聞いて、すこし得意気にいった

敷地の中にはいろんな建物があったが、ひときわ大きな白の壁でできた建物の前に着く

「ここだ。中に通すが、副団長もいるから粗相のないようにな」

兵士はそういってまた先導していこうとするが

「アル、僕はこれで。店主を探しに行きますね」

「おう、分かった」

建物に入っていくアルを見送り

「では、店主のところまでお願いします」

もう一人の兵士に騎士団の宿舎と食堂がある建物へ案内してもらう

宿舎は演習場の隣にあるようで、兵士たちの訓練の音が更に大きく聞こえる。明日の討伐隊の為に気合が入っているのかな?

僕は建物に入ると食堂に案内された。

長い机が5列ほどあり、学食のような雰囲気だ

今は誰もいないようで、シーンと静まりかえっていた

「今呼んでくるから、ここで待ってろよ」

兵士はそう言って、僕だけを残し出て行った

僕はその食堂から、窓の外を見る。

あのダンジョンで出会った女騎士はいないかと無意識に探していたのだ

でも確か王都所属と言っていたから、見つかるわけが無いか

僕はいないと分かっていても女騎士を探しているところで、店主がやってきた。

「おはようございます」

「おぉ元気そうだな」

店主も元気のようだった

席に座り僕はすぐにこれからの経緯を話し、荷物をどうするかと説明をした。

「坊主が来たら、冒険者時代の仲間の所へ行こうと思ってたんだ、今からいいか?」

「いいですよ、行きましょう」

「多分、坊主は気に入られると思うぜ。それに坊主も得するかもな」

そういって店主は立ち上がり、騎士団をあとにしようとするので僕は聞いた

「あれ?もう騎士団のかたに何も言わないで出て行っていいんですか?」

「おう、ここにも昔の馴染みのやつに話をする為だったからな、構わないぞ」

店主は冒険者ランクCでもあり、騎士団に知り合いがいると聞きひょっとしてまぁまぁ有名な冒険者だったのかなと思いながら、店主について行った



歩いていくと、今朝の露店があった大通にたどり着く

どうやらここは商店区のようだ。朝は閉まっていて分からなかったけど、露店以外にも店が多く並んでいる。

そのまま店主に続き、一軒の店の前で止まり

「この店だ、ここの錬金術師が昔の馴染みだ。少し気難しい所があるが、売っているものは良いものがそろってるぞ。信頼できるやつだから、イベントリの魔法の事を言ってもいいか?じゃなきゃ説明が難しくてよ」

「いいですよ、僕は店主の事を信頼しているので」

「そうか!」

僕の言葉に嬉しそうに僕の背中を叩く

店に入る前に、店の前に看板があるので読むと

”装飾店アルマンド”

僕が看板を呼んでいると、店主はドアに手を掛けて入っていくので僕も続く

カラン

店主の店の様に、ドアを開けるとベルが鳴った

「いらっしゃい、・・・ってあんたか久しぶりだね」

そう声を掛けてきたのは、人間の子供ぐらいの背の女の子のようだった。今は掃除中のようだ。

「よぉメル、元気にしてたかー?」
店主は気安そうに声を掛ける

「あんたが来る時は碌なことが無いんだけど?今回は何のような訳?」

メルと呼ばれた錬金術師は、店主の感じとは違いぶっきらぼうに言い放つ。

「そんな事ないだろ・・・多分?」

店主は心あたりがあるようだった

その後店主と錬金術師が再会の言葉からあーだこーだいっているので、僕は店を見て回ることにした。

店の中は埃っぽい感じは無く、白が基調になっていて清潔に感じる

空気も何かアロマのような甘い香りが主張しすぎないように漂っているのだ

品物は装飾品店とだけあって、腕輪、ピアス、ネックレス、ペンダント、指輪などのアクセサリーがメインに置いているが、どこか高級そうな雰囲気を醸し出している。

その訳は明白だった。前世でのジュエリーショップのように全てショーケースに入っているからだ

品数は少ないが、どれもデザイン性にあふれていて、男の自分でも綺麗と思えてしまう。その雰囲気が自分が場違い感を感じさせるのだ

ショーケースの中を見ると値段と効果が簡単に書かれた札がある

腕輪の横に耐久力+1、金貨5枚と書かれた札が

値段にもビックリしたが、能力値の概念があることにビックリしたのだ

アビリティを知る術はあったが、能力値を知る術は無かったので、もともとの能力値の概念が無いものだと思っていたからだ。転生者だけが知る情報かと思っていたが、そうではなかったようだ

色んな思考が頭をめぐるが、装飾品も気になるので全部一通り見ていくのだ

指輪 力+1 敏捷+1 金貨50枚

(金貨50枚!?っていうと500万円!?)

高すぎると思ったが、よくよく考えたら妥当なのかもしれない。レベルが上がり辛いのなら、その分能力値補正は重要になってくるのだ、それが例え+1だとしても十分な効果のような気がしてきた

「何か気になる物はあるかい、ぼうや」

僕が値段に驚いている所で錬金術師が声を掛けてきた、店主との話は終わったようだ

「はい、少し指輪をみてまして・・・ぼうや?」

僕は自分より年下のような女の子にそういわれたので、気になって声にでていた

「あぁ紹介してなかったな、こいつは昔のギルドで一緒に冒険をしていた錬金術師のメルだ。こう見えて、ハーフリングだから歳は俺と・・・いてぇ!」

店主は話の途中に錬金術師のメルさんににすねを蹴られた

「あんた、何言おうとしてたんだい?」

錬金術師が睨みを利かせる

「いってぁ・・・いやなんでもねぇーよ」

大柄な店主が縮こまっているのが少し滑稽だ

「あっ初めましてノエルです、店主さんにはいつもお世話になってます」

当たり障りない挨拶で、少し頭を下げる

「君のことはこいつに聞いたよ、よろしくね」

店主の扱いとは違い、僕には優しく声をかけられたのでホッした。誰これ構わずきつい性格ではなく店主に対してだけ厳しい様子で何よりだ。

「ここの商品はメルさんが作っているんですか?」

「そうだよ、で指輪が気になるのかい?」

「いえ少しみていただけですので、お洒落なものですし駆け出し冒険者の僕にはとても・・・」

僕は直接は高いとは言えず、少しはぐらかして言うのだ

「君なら少し融通きかすよ?」
メルさんはそう言った、初対面なのに不思議だ。

「融通?どうしてですか?」
僕が質問したら店主が割って入ってきた

「わりいな、こいつにイベントリの事と、クリアリコールの使い手でもあるのを喋っちまったんだ。倉庫を貸してくれるってことになったんだが、掃除を何年もしてないから、綺麗にするのに時間がかかると言われてお前のクリアリコールを思い出したんでついな・・・」

店主はそう謝ってきたが、もとはリコールは店主の計らいで安く買えたのだ。いやティアへの下心か・・・どちらでもいいか、別に喋って困ることではないと僕は思った

「いえ別に大丈夫ですよ、リコールは隠すような魔法じゃないですし」

「おっそうか、やっぱお前は俺が見込んだやつだな」

そういって僕の背中をバンバン叩いた。これ店主はよくやるけど、痛くはないけど体に響くんだよな~。

「それでメルさんは綺麗好きそうなので、それを条件に融通してくれるってことですか?」

僕は単刀直入にきいた

「そうよ!清潔に保つのは苦労するのよ、毎日掃除で終わっちゃうわ」

確かに店に入った時も掃除していたなと僕はおもった

「ショーケースだと埃や指紋が気になりますもんね」

「そう!それよ!ガサツな冒険者は買いもしないのにベタベタ触って、汚すだけ汚して帰っていくのよ!思い出すだけでも・・・キーーー」

メルさんは話していると、誰か客を思い出したかのように怒っている。

「おいおい、坊主が困ってるじゃねーか、戻ってこい」
店主がメルさんを宥める

「あっごめんね、あまりにも前きたやつが汚かったから。試しにクリアリコール使ってみてくれない?その効果で値引き額決めちゃおっかな?」

メルさんはそういい試すように言われた

「いいですよ、僕としても安くなるなら嬉しいです。どこに使えばいいですか?」

安くなったとしても、買えるような値段にはならないと思うが。別にそれはそれでいいのだ、今後の付き合いにも関ってきそうだから。

「じゃあここに使ってみてくれるかな?」

メルさんはそう言って一つのショーケースを指さす

別段汚れてはいないが、よく見ると指紋やショーケース内の端にほこりが見える。

「リコール」

ぼくはショーケースに向かい使ったことが分かるように唱えた

ショーケースの周りに光が動きだし、徐々に綺麗になっていくが見えるのだ

確認すると指紋、ほこりはなくなり、経年劣化によるくすみも消えていた。

隣のショーケースを見比べると、明らかに分かる。恐らく新品同様になっているように思えた。

「どうですか?結構きれいになってそうですけど」

僕は確認の為、メルさんに問いかける

「これは・・・すごいわ・・・君!冒険者やめてうちで働かない?いえ養子としてうちの子にならないかな?結婚してもいいわ!」

メルさんはリコールの効果に突拍子のないことを言い出した

僕はティアもリコールの効果で、変なテンションになっていることを思い出したのでさほど驚かずに返事をする

「いえ僕には目標がありますので・・・それが終わった後に就職先のひとつとして考えておきますね」

「だから、坊主が困ってるじゃねーか」

店主が助け舟を出してくれた

「あっ!?そうだったわね、この店全部にかけることできる?そしたら今回このショーケスにあるものなら1個ただであげるわよ!次回よりクリアリコールを掛けてくれるなら全商品半額にするわ!」

錬金術師はそういって、金貨5枚のショーケースを指さした

「えっ!?そこまでして貰っていいんですか?」

ただでもらえるとは思っていなかった、リコールでダンジョンで儲けた金額は一回銀貨1枚だったからだ

「うんうん、大丈夫!掃除の時間を省ければ、その分錬金術で作れる時間が増えるからね!こう見えて、セイクリッドストーンでは人気の錬金術師なのよ?」

「そうだぞ坊主、もらえるんなら貰っとけ。こいつ性格はあれだが作る物は一級品だ」

店主も後押ししてくれる。ただ余計な一言の為にすねをまた蹴られて痛がっている。うん、自業自得です。

でも、簡単な魔法で金貨5枚の価値を1個、わらしべ長者のようだ。

「ありがとうございます、じゃあ先にリコールを使いましょうか」

僕はメルさんの指示に従い、隅々までリコールを使っていった



「店が見違えたわ!綺麗にしていても年月がたった部分は仕方ないと思って諦めていたけど、やっぱり綺麗なのっていいわ~」

メルさんは一つ一つ確認し悦に浸っている様なので、店主が僕にしゃべりかけてくる

「なにか欲しい効果はあるのか?」

「根本的なことなんですけど、装飾品って何個でもつけても効果があるんですか?」

僕がそう聞くと店主は詳しく説明してくれた。

そうだ、指輪なんて足をいれたら合計20個はつけれるのだ。能力値が低くても装備でカバーできるなら、魔力+30なんてレベルを上げなくても、お金を貯めたらいいのではないかと思ってしまったからだ。

だけど、僕の淡い期待は店主の説明を受けて崩れ落ちたのだった

装飾品はどの部位につけても、効果がついた物は2個までしか反映されないとのことだ

もし2個以上つけても、最初に付けたものが反映される

ただ指輪、指輪と同じでもいいとのこと。

ただし効果は重複はしないとのこと

指輪に力+1が付いていて、腕輪に力+2が付いていたら、高いほうが優先され力+2だけ反映されるようだ

指輪 力+1、腕輪 力+1、ネックレス 魔力+1力+1の順に装備を付けるとステータスに反映されるのは力+1だけとなる

僕は装飾品のルールのようなものを理解したのでショーケースの品物をみることにした

欲しいのは魔力とMPだが・・・金貨5枚の列にMP+5の指輪を見つけた

そういえば、アルが装飾品は高いから駆け出し冒険者の俺たちには無縁だといっていたと思い出し、この値段だからなのだと分かった。

「すいません・・・外の外壁や看板にもリコールをかけるので、今回から半額になりませんかね?」

ぼくはおずおずとそういうと

「えっ私はもちろんいいけど、装飾品は2個までしかつけれないから、こっちの高い方買いたいの?」

メルさんは少しキョトンとした表情で聞いてきた

「いえ、PTメンバー3人にも買ってあげたいのですが、駆け出しですので、そんなに予算がなくてですね・・・明日にはそのPTのうち二人はサイシアールの討伐隊として出てしまうので今日買って渡しときたいのです」

僕はそう説明した

「えっすごい、いい子・・・ノエル君、気に入ったわ!分かったわ!1個プレゼントと3個は材料費だけで金貨3枚でいいわ」

メルさんはそう言ってくれたのだ

「ありがとうございます!すぐにリコールを掛けてきます!」



僕は意気揚々に外にでて、リコールで外壁、看板を綺麗にして店に戻った。

「指輪はサイズとかはどうなってるんですか?」

そう聞いてみると、ひとつ指輪を取り出して僕に渡し説明するメルさん。

「はめてごらん、勝手にサイズが調整されるから」

僕は指輪を親指にはめると同時にサイズが大きくなりぴったりになった

「おぉすごい!」

「私が作ったものだからね」

メルさんはそういって自慢するように笑った

僕は自分用にMP+5の指輪を、みんなにはデザイン違いの耐久+1の指輪に決めた。

ゲームなら力や魔力、敏捷を優先するだろうが・・・今は死んだら終わりだ。

僕は指輪を左の人差し指につけなおし、みんなの指輪はまとめて小箱に入れて貰った。

僕は良い買い物ができたと、これからもよろしくお願いしますといい店を出ようとしたところで店主に引き留められた。

「おいおい、目的わすれてるじゃねーか、これから倉庫いくぞ」

「あっそうでした!忘れてましたよ」

「ったく、メルいまからいけるのか?」

「あぁいいよ、少しくらい店を閉めても大丈夫さ」

3人で店をでて、大通りより外れ、路地に入った場所に倉庫があるようだ。

「ここだよ」
メルさんに案内された場所はメルさんの店から歩いて5分の場所。メルさんがカギを開けて中に入る。

天井は高く、棚が散見され木箱も高く積まれている。布でくるまれているようなものがあちらこちらに散らばっている

埃がすごい場所もあり、自然の光が入ってきていない為か暗い雰囲気だ。先ほどの店とは打って変わるこの倉庫に僕と店主は言葉を失くしただ黙っている。

「ハハハ・・・ここはあんまり人に見せれる場所じゃないんだよね・・・」

メルさんも自覚しているようで少し恥ずかし気にしている。装飾品店とは大違いの散らかりようだ。

「坊主、クリアリコール頼めるか?MPがさっきのでなくなっているならポーション使ってくれ」

店主はマジックポーションを進めてくれる。

「大丈夫ですよ、多分」

MPはまだ大丈夫だろうと思い、僕は倉庫の中全体にクリーンをかけて回った。



時間にして10分くらいで全てを掛け終えた。

「はぁー君はこれだけでも食べていけるよ」

メルさんはリコールの効果に感心してそういってくれた。

僕は埃まみれのこの倉庫をねり歩きリコールを掛けていたので、自分にもリコールを使う。

その光景をみていたメルさんが期待のまなざしで見ているのに気が付き

「メルさんにもかけましょうか?」

僕が問いかけると、うんうんとすごい勢いで首を縦に振っている。

「リコール」

「うっそ!?なにこの爽快感は・・・ありがとう、また今度おまけしてあげるね」

メルさんが上機嫌になったのでよかった

「でもここにアイテム置くスペースはないですよね」

埃やかび臭さは綺麗になっても、かたずけられてはいないのだ。店主の荷物は棚事もってきたために置くスペースが今は無い

「おう今から仕訳と整理をしなきゃならねぇーな・・・」

店主はこれから片づけるようだった

「当たり前でしょ、ただで場所を貸してあげるんだから、それくらい当然よ!でもノエル君が綺麗にしてくれたんだから文句いわない」

メルさんは店主にはきついようだったが、やはり仲間なのだろう条件はあるにしろ、ただで貸す様だった

「店主がんばってくださいね」

僕はねぎらいの言葉を掛ける

そこで肩をがしっと掴まれて

「おいおい、俺たちは生死をともにした仲間じゃねーか、冷たいこというなよ」

ニヤっと怖い顔で笑って言われる

「君はもう十分働いたよ、あとはこのごついのにやらせればいいさ」

錬金術師がそういって助け船がでて店主のすねを蹴る

「いてぇ・・・おい・・・坊主、お前は見捨てたりしないよな?」

まぁこの量を一人ですると後発組の明後日までに片付かないか・・・

「バイト代でるんですか?」

僕はそう聞くと、店主は満面の笑顔になる、強面の満面の笑顔・・・いや考えるな僕

「初級か中級のスキルブック1冊でどうだ!」

「イベントリのスキルブックをもらったのでダメ元でしたけど、言ってみるもんですね!分かりました手伝いましょう!」

僕はそういうと、しまったという顔をした店主がいたが、メルさんのいる前で言質をとったのだ

「じゃあ私は店に戻るから、後はたのんだよ。ノエル君またね、いつでも店に遊びにおいで」

メルさんはそういうと、鍵を店主に渡し倉庫をでていった



僕らはその後、6時間ぐらい片づけていた

僕は平気だが店主は昨日の今日なのだ、あの逃走劇からまだ24時間もたっていない

体調も万全には回復していないようなので、今日はここで作業を終了する事にしたのだ

材料となる小物が多く、一度イベントリに全て入れてから少しづつ分けていったので、結構はかどった。明日には終わる目途がついたのだ

「よし、今日はたすかったぜ!明日も頼めるのか?」

「はい、討伐隊の後発組に間に合うようにしなければいけないので」

「助かるぜ!」

明日の集合時間を決めると、店主はその後はメルさんや昔の仲間と飲みにいくようだった

僕も誘われたが、昔馴染みの中に僕がいても浮くだけだと思い断った


戻る最中に、今朝の露店市場を覗くことにした

時間はちょうど午後5時になる頃だった

お腹空いた・・・昼からごはんを食べずに作業をしていたのだ

市場の露店で牛くしのようなものが売っていた、香ばしい匂いが僕の食欲をそそる。それを2本買い、食べながら歩くことにした

今朝の絵をかった広場に到着。ナタリーがいっていたように武器や、防具以外にも芸術品が多々あるように見える

絵を専門に売っている露店の前に足を止める

これは水性画のようで、ひとつの街が描かれている。その風景画を凝視するが場所の名前のようなものは浮かび上がってこない

「すいません、これはどの場所の風景画ですか?」

店主の男性に尋ねてみることに

「あぁこれは、ブラハで描いたものだ」

僕は地名を聞いて、もう一度絵を凝視して見るが、名前は浮かび上がらなかった

「・・・なるほど、ありがとうございます」

(う~ん、場所が分かれば名前が出てくるのだとおもっていたがそうではないのか?)

僕はこの露店を後に、ほかにも5店舗ぐらい同じように風景画を見つけては場所を聞いて回った。分かった法則としては、はっきり言うと上手いか下手だ。あとその場所がちゃんとわかるような地名だってことだった

絵が上手くても、書いたのは自分ではないから場所までは分からないと言われたら、名前は表示されないのだ

結局2時間ほどブラブラしていたので、もう日が暮れ始めていた。店じまいする所も多くなったので僕は宿に戻ることにした。



僕が宿に戻ると案の定、3人そろって食事をしているようだった

なんだかんだで、みんな仲いいなと思いながら近づいていく

「僕もいいですか、お腹すきましたー」

そういいながらアルの横に座る

「遅かったな、何してたんだ?」

アルがそう聞いてきたので僕は倉庫の片付けをして、その後に市場を見て回って帰ってきたと簡単に説明をすると、3人とも唖然としていた

「お前・・・バケモンか?その体力や元気は流石におかしいぞ」
アルが失礼な事をいうのだ

「まぁ・・・私たちより若いですから・・・?いえ・・・」
ナタリーも否定の言葉を口には出してみるが、納得できないようだった

「えっと・・・お腹空いているんだよね?何たべる?」
ティアはもう気にしないことにしている

「ティア、食事はちょっと後で頼みますね。アルそんな失礼な事をいうんだったら、アルにはお土産あげませんよ?」

僕はそういってニヤリと笑い小箱を取り出す

「なんだよ・・・小さいし、どうせ大したものじゃねーだろ、もったいぶるな」
アルはそう言うがちょっと期待しているようだった

「なんだと思います?当てた人は最初に選んでいいですよ」
僕はそういって小箱を開けずにいた

「だからもっていぶるなよ!なんか食いもんだ」

アルは乗り気では無さそうなのに、一番に答えた

「残念、違います」

「箱からして小さい物・・・ポーションとかですか?」

ナタリーが次にこたえる

「ブッブー」

ティアは考えながらも、僕の手に違和感を感じていたようで、その答えを見つけ聞いてくる

「あれ?ノエル君指輪なんてしてたっけ?」

「ふふッ」

僕は少し笑うと3人同時に答えた

「「「指輪!!」」」

「正解でーす」

そういって小箱のふたを開けて指輪を見せた

「すごい素敵なデザインですわね」

「うん、3つともついている宝石が違うようだけどどれも綺麗だよ」

ナタリーとティアは指輪のデザインに見入っている、流石メルさんの指輪だ

「でもなんで指輪なんだ?」

アルはそう聞いてきた

「あれ?嬉しくなかったですか?」

僕はアルが一番喜ぶと思っていたので以外だった

「いや・・・男から指輪もらっても・・・いやくれるなら貰うが・・・ありがとな」

この指輪はただの指輪だと思っているの様だ、鑑定も無ければ買った場所も言っていない。効果付きの指輪は高いのでそうも思ってなさそうだ。男から、ただの指輪をもらっても、アルの微妙そうな様子は当たり前の反応だ。

それでもアルの優しさが垣間見えて、ぼくは思わず笑ってしまった

「ぶっあははは、すいませんそうですよね、アルのその反応に納得してしまってアハハハ」

「何笑ってんだよ、お前ぶん殴るぞ!」

アルは笑われている事に意味が分からず、ちょっと恥ずかしくなったのか顔を赤くしてそういった

「これは僕のミスですアハハハ、ふー・・・えっとこれ付加効果に耐久+1がついているんですよ」

ちょっと笑いが収まり説明を続ける。僕の付与効果の説明にみんな指輪を見ている顔を僕へと向けた。

「今日店主さんの知り合いの錬金術師さんのとこで、安く譲っていただいたので、ただの指輪じゃないんです」

その言葉を聞いてアルは顔をにやけ、僕のかたを掴んで揺らす。

「おいおいおいおい、ノエルそれ本当かよ!それを先に言えよ!」

「ちょっとまって!錬金術師っていいました!?岩街の?このデザインはもしかして商店区にある店の名前はアルマンドってところ!?」

ナタリーがそういってすごい食いついてきた

「たしかそんな名前だったような・・・多分そこです」

僕は看板にそんな名前が書いてあったなと思いだす

「え!?ほんとう!?錬金術師メルさんの作品?」

ティアもメルさんの名前もしっているようだった

「はいそうですよ。あれ?皆しってたんですね」

それを聞いて女性二人はキャーキャーいって指輪を選び始めた

「アルはしってましたか?メルさんの事」

「そりゃ岩街で一番有名・・・いや王国全体でも有名な錬金術師だぞ。その装飾品は冒険者なら誰でも欲しがるだろ」

「あーたしかメルさんも自分でそんな感じの事をいっていたような・・・」

メルさんって僕が思っているよりもすごい人だったようだ

「こんな高価なもの貰っていいのですか?あとから返せはなしですわ」

「私も貰ったら絶対返さない!」

「ちょっとまてよ!俺の分もあるんだぞ!勝手に選ぶなよ!」

ちょっと3人が怖い

「はいお土産兼、お守り代わりに皆さんにもっていて貰いたいので」

僕がそういうと3人でどの指輪にするか決めたようだ

「はぁ~綺麗・・・こほんっノエルさんありがとうございます」

「ノエル君ありがとね、大事にするよ」

ナタリーもティアも気に入ってくれたようで、何よりだ

「ノエル!今回ばかりはすげー嬉しいぜ!ありがとな、次は力+のやつ頼むわ」

アルは上機嫌に次の催促をしてきたが、顔が満面の笑顔なのだ憎めないやつ

「まぁ気が向いたらですかね」

僕は笑ってそう答えた

お土産を渡し終わり、食事を注文し食事をしながら、情報共有を行った

「僕は明日には、店主の荷物を渡すことが出来そうなので、後発組に参加できそうです」

「そうか、俺たちも準備が整ったから明日の8時に岩街をでてサイシアールへ向かう事になる。後発組は冒険者ギルドが取りまとめているから、明日ノエルとティアは顔を出して依頼をうけてくれ」

「わたくしも体調も良さそうなので、予定通り先発組としてアルと参加しますわ」

「ノエル君が後発組で行けそうなら、私も予定通り後発組だね。明日の朝に、ギルドで依頼を受けた後に私達の物資を買いに行こうか」

今のところ予定通り準備が出来ていた

明日の予定や情報共有を終えて、僕達はそれぞれのタイミングで部屋に戻り眠りについたのだった
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川原源明
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 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

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