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第7話 生活魔法は生活に

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少女がドアを開けて、中に入るので僕も続く

「ただいまー、お客さんつれてきたよー」

元気よく少女は扉を開けた先、カウンターでなにやら書き物をしている女性へと声をかけた。

「いらっしゃいませ、あの無理矢理連れてこられてないでしょうか、ご迷惑をお掛けしてなければいいのですが」

その女性は恐らく少女の母親件、この宿屋の女将。少女と違い落ち着いた雰囲気がある。

「いえ、宿を探していた所に声を掛けてもらったので」

あーぁ、これでもう断り辛くなっちゃった・・・まぁ、悪い人達では無さそうだからいいかな。

「それでしたら、一泊銅貨2枚になります。朝食、夕食付きとなりますがいかがいたしますか?」

ふむ・・・金銭価値もわからないけど・・・この世界の事、色々教えて貰えばラッキーと思い、泊まる事にしよう。

「じゃあとりあえず、5日お願いします」

「はい、では銀貨1枚になります。お食事の際は夕方の鐘から、夜の鐘の間となっていますので、よろしくお願いしますね」

「分かりました、こちらの宿には時計は置いてないんですか?」

「時計は高いでしょう、欲しいとは思うのですがうちの宿には置いておりません、申し訳ございません」

「あっ・・そうですよね、田舎から出て来たのでそう言うことに疎くて、あはは・・・」

異世界人だとバレないように、無駄な質問を避け話を進めようとするが、こっちの常識が分からない今、やっぱりボロが出る。

これ以上ボロがでない用に、鍵を貰い早々に部屋に行くことにした。

森の中を歩いたから、少し汗臭いような・・

異世界って、基本お風呂ないんだよね・・・。中世を模倣しているのか、だいたい主人公が前世パワーで作るイメージなんだよな。

まぁ僕もその為に水魔法をとったぐらいだし・・・

汗臭さを感じ、どこか井戸水的な物を聞きに下へと降りる。

ロビーへ行き、体を拭きたいと伝える。すると体を拭くだけなら無料、お風呂に入るなら銅貨1枚と伝えられたのだ。

お風呂あるの!?

すぐさま銀貨を渡すと銅貨9枚が返ってきたので、それを受け取りお風呂場へ直行!

そこには簡素だが、風呂桶があったのだ。だが、水は入ってない。

水は井戸水とかかな~?これから湧く感じか?そんな風に考えて待っていると異世界ならではの光景が始まった。

女将さんが、ウォーターと呟くと風呂桶に水が張り、ファイアと呟くと湯気が立ち込めたのだ。

「では、ごゆっくりして下さい」

特段澄ましている様子もなく、当たり前のように女将さんは魔法を使った事を気にも留めていない様子。

「今のは魔法ですよね!?」

だが僕はブリンク以外の魔法を始めて見た為か、少し興奮気味に聞いたのだ。

「えっえぇ、生活魔法ですよ」

あっ、なんかそんなのがあったような?

瞬間移動以外ほぼ流し読みだった為、気にもとめてなかった。だが、間近で見るとやはり魔法はすごいと思ってしまった。

「すごいなー、魔法始めてみました!」

「生活魔法ならどなたでも使えると思いますよ、でも私の場合は1日5組限定ですが」

微笑みながら教えてくれた後、気を利かせて直ぐにその場を出ていった。


「あっ!?」

脱衣所には鏡があり、始めて転移して自分の顔を確認したが・・・前世の16歳ぐらいの時のような幼い顔立ちに。

いや少し美化されているのは+に振ってディティマールにしたからだろうか、でも特におかしくなさそうなので安心した。

服を脱ぎ軽く身体を洗い流し浴槽へ。

「ふーーー」

大きなため息を一つ長く吐いた。全ての疲れた不安を吐き出すように。

癒されるー、体は歩き続けても疲れは無かったが、やはりお風呂は落ち着くのだ。

ぼーっと湯舟に浸かりながら、さっきの女将との会話を思い出してみる。

ヒューマンは確か、初期MPが10だったような、生活魔法の消費MPはわからないけど、ウォーターとファイアって言ってたよね。

生活魔法がもし消費1だとしたら、女将さんは生きている間にレベルは上がってない?上がらないの?

それを一日5組限定って事は、MPもすぐには回復しないのかな?

だとするとディティマールの、MP回復率って破格の性能のような気がするぞ・・・

思考を終えて、さっぱりした気持ちになる。だが、着る服が着ていた服しかないのだ。せっかくお風呂に入っても意味がないなと思い、着替えだけでも買いに行く事にした。




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