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第二章 回想編
第三十三話 紫陽花の頃
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六月の初夏、柔らかな陽射しが降り注ぐ中、私たちは変わらぬ日常に取り組みながらも、命がけで挑んでくる刺客たちに対処していた。彼らは、まるで感情のない機械のように、ただ上からの命令に従い、無慈悲に私たちを襲ってきた。その冷徹な姿に、私の心はいつも不安と緊張でいっぱいだった。
移動の際には藤堂さんが運転する車に乗り、降車後も複数人の護衛に守られながら、私たちは慎重に行動をしていた。幸いにも、郭外の虎洞寺氏は術者の人相や特徴を含めた全情報を把握(※)しており、そのおかげで私たちは比較的安全に過ごすことができた。
虎洞寺邸にある天の地下本部には巨大なデータサーバーがあり、石与瀬各所の防犯カメラともリンクしていた。さらに、非合法にも必要に応じてドローンを飛ばし、私たちに近づく人間を監視する仕組みが整っていた。変装などはすぐに見破られ、データベースとAIの画像解析によって素性が瞬時に割れてしまう。その徹底ぶりには、驚かされると同時に深い安心感も感じていた。
戦いの場面では、私は決して相手を傷つけることはしなかった。私の目的は相手が蓄積している精霊子を強奪し、一時的に無力化させることにあり、それによって自分の器の容量を拡大することが唯一の目標だった。
だからこそ、降りかかる火の粉を払いのけることはあっても、命を奪うことは考えられなかった。その勇気も、決意も、私には持ち合わせていなかった。
しかし、任務に失敗した者たちの行く先にどんな処分が待っているのかは、私には全く想像がつかなかった。それが深淵の冷徹さそのものであり、その不安は私の心に深く根を張っていた。こうした現実を真凜にはどうしても伝えられなかった。彼女には、この無情な世界の一端を知ってほしくなかったし、知ったところでどうしようもないと感じていた。
この馬鹿らしい力が一刻も早く消え去ってしまえばいい。それが私の心の奥底からの切実な願いだった。
そのために、私がすべきことは黒鶴の力を駆使し、精霊子の器を完成に近づけることだった。そして、根源を再生し、解呪を成就させる。これだけが、力の束縛から解放されるための道だった。しかし、完成には一つの重要なピースが欠けている。「導き手」と呼ばれる存在が、まだ見つかっていなかった。
それでも、私は立ち止まるわけにはいかなかった。たとえどれだけ険しい道であっても、私には他に選択肢がないのだ。
◇ ◇
ある日、しとしとと降り続く雨の中、私たちは静かな道を歩いていた。傘の下、雨の音だけが静かに響く。濡れた舗道が淡い光を反射し、私たちの足音を優しく包み込んでいた。
私は足を止め、ふと視線を道端の紫陽花の花に向けた。花びらは淡い青と紫のグラデーションを描き、雨に濡れて一層鮮やかに輝いていた。その色合いの移ろいが、まるで雨の中でひとときの静かな美しさを作り出しているようで、私の心に深く染み入った。
私の指が花びらに触れると、その柔らかさとひんやりとした感触が、心をそっと和ませた。雨に濡れた花々が、私の心に潤いを与えてくれるようで、まるで小さな宝物を発見したかのような幸福感に包まれた。それは、長い間閉ざしていた感情の扉が、ほんの少しだけ開かれたような感覚だった。
しかし、私は驚きと戸惑いを覚えた。この心地よさは、本当に私が望んでいいものなのだろうか? 今ここで感じている幸福は、解呪と弟の奪還という目的のために生きる仮りそめの命に相応しいのだろうか。私はいつか消えていくしかないと理解しているのに、こんなにも心が温まっていいのだろうか。
茉凜が振り返り、花に触れる私の様子を見て静かに声をかけた。
「弓鶴くん、どうしたの?」
その声に気づくと、私の心は一瞬で冷たく閉ざされた。心の中で「こんなことを感じるべきじゃない」と自分に言い聞かせ、感情を再び押し殺そうとした。
「紫陽花の花、好きなの?」
茉凜の問いかけに驚き、私は慌てて手を引っ込めた。雨の雫が花びらからこぼれ落ち、その瞬間、恥ずかしさと共に、素の自分が見えてしまったことに、ほんの少しの照れくささを感じた。隠していた感情が無防備にさらけ出されたようで、心の奥深くでわずかに動揺していた。
その感情を隠すために、私は少し寂しげな口調で話し始めた。心の奥に秘めた感情を誤魔化すために、紫陽花の花言葉や花にまつわる話を茉凜に語り始めた。話すことで、自分を取り繕い、隠しきれない感情が表に出ることを防ごうとした。
すると、茉凜は明るい声で提案してきた。
「そうだ、弓鶴くん。次の休みにどこか行かない? 紫陽花がいっぱい咲いているところとか、どうかな?」
その言葉を聞いた瞬間、私は一瞬言葉を失った。心の奥底に封じ込めていた感情が、ざわめき始めたのがわかった。茉凜の言葉に心が揺れたのは否定できなかったが、それを認めるのが怖かった。彼女との距離を保ち続けることが、自分を守る唯一の手段だと信じていたから。
「俺は……別に行きたくもないが、真凜が行きたいというなら、かまわない」
その言葉には、茉凜と一緒に過ごす時間が増えることへの微かな期待感が含まれていた。しかし、その感情を意識しないように必死で努めようとしていた。
でも、茉凜はその裏に隠された私の本心を察していたに違いない。彼女は経験上から、私の反応を見抜く術を知っていて、どんなに冷静を装っても、私の感情はどこかで漏れてしまうのだった。
茉凜は、そのすべてを見逃さず、私を優しく見守っていると感じていた。彼女の無邪気な提案が、私の心にさらなる混乱をもたらすと同時に、温かさと共にどこか不安をも呼び起こしていた。茉凜と過ごす時間が私にとってどれほど大切で、同時にどれほど危険であるかを理解しつつも、その感情に正直になれない自分が、歯がゆくて仕方がなかった。
◇ ◇
日曜日の朝、藤堂さんが運転する車で、私たちは目的地に向かっていた。石寄瀬の街から四十キロほど離れた場所にある紫陽花畑で有名なお寺が、茉凜が事前にネットで調べて選んだ場所だった。
「さあ、行こう!」
車を降りた瞬間、茉凜は元気よく私の手を引っ張って駆け出した。その勢いに驚いて、私は一瞬固まってしまった。
「ちょ、ちょっ待ってよ!」
慌てて呼び止めたものの、私は自分が美鶴としての素の反応を出してしまったことに気づいて、内心で狼狽していた。もしかしたら、茉凜に何か勘付かれてしまうのではないかと、心配になった。
しかし、その心配は杞憂だったようで、茉凜は特に気にする様子もなく、ただ楽しそうに私の手を引いて歩き続けた。彼女の明るさに、私の不安は少しずつ和らいでいった。
参道を進むと、両側に紫陽花が咲き乱れ、視界にはまるで花の海が広がっていた。雨上がりの空気の中で、紫、青、赤と様々な色合いの花々が一層鮮やかに輝いていた。その色とりどりの花々が、心を穏やかにしてくれるようで、胸の奥に温かさが広がる感覚を覚えた。
参道をさらに進むと、紫陽花に囲まれた池が見えてきた。池には古びた橋が架かっており、橋を渡ると池の反対側に到達できるようになっている。木々の緑が水面に映り込み、まるで水彩画のような美しい風景が広がっていた。
私はその景色に心を奪われ、自然と深呼吸をした。紫陽花の香りがふわりと漂い、心が落ち着く。茉凜がそばにいることに気づき、その存在が私の心をさらに安らげていることを感じた。彼女の無邪気な笑顔と、自然の美しさが一緒になったこの瞬間が、私にとってどれほど大切なものなのか、少しずつ理解し始めていた。
「すごく綺麗だ」と私は心からの感想を漏らした。茉凜も同じように目を輝かせて、花々の間を歩いている。彼女の嬉しそうな顔を見ていると、私も自然と笑顔がこぼれる。こうして過ごす時間が、私にとってどれほど心地よいものであるかを、改めて実感していた。
「ね? 来てよかったでしょ?」
茉凜の無邪気で明るい表情が、私の心を和ませていた。その笑顔は、心の奥底にある深い罪悪感を少しだけ和らげてくれるように思えた。
やっぱり、彼女の笑顔を見るのは嬉しかった。どこか不安を抱えながらも、こうして一緒に過ごす時間が私にとってどれほど大切なものであるかを、しみじみと感じていた。
「あ、そうだ!」
茉凜が何かを思いついたようで、突然声を上げた。どうやら、記念写真を撮りたいらしい。彼女はスマホを取り出し、私をその場に強引に引き寄せた。私は少し抵抗したものの、彼女の勢いに押し切られて、渋々写真に収まることになった。
「おい、ちょっと待てっ!」
写真が撮られる瞬間、私は思わず目を閉じてしまった。スマホのシャッター音が響くと、茉凜は楽しそうに写真を見せてくれた。そこには、私が引きつった顔で写っており、それを見た彼女は心から楽しそうに笑った。
「ひ、酷いぞお前。こんなものすぐに消せ!」
私の顔は思わず赤くなり、声を上げてしまった。彼女の前では、いつもの冷静さがどこかへ消えてしまい、恥ずかしさと照れくささが一気に押し寄せてきた。
「いいじゃないの。この顔、最高だよ」
茉凜の言葉に、私はますます顔を赤らめた。彼女の無邪気な言葉に、どうしても自分の感情を抑えきれず、恥ずかしさに溺れていくのだった。
そんな風にして、私の心は溶けていったのかもしれない。彼女の存在が、少しずつ私の心の壁を崩し、深い部分に眠る感情を呼び起こしていくようだった。茉凜と過ごすこの瞬間が、私にとってかけがえのないものになっていたのだ。
※ 外郭組織『郭外』が依頼の橋渡し役をし、それに基づいて術者が派遣される仕組み。郭外は術者に協力する。そうした都合を利用して、虎洞寺氏は秘密裏に術者を把握するリストを作り上げていた。ただし、三家に関してはアンタッチャブルで、鳴海沢の接近を察知できなかった。
移動の際には藤堂さんが運転する車に乗り、降車後も複数人の護衛に守られながら、私たちは慎重に行動をしていた。幸いにも、郭外の虎洞寺氏は術者の人相や特徴を含めた全情報を把握(※)しており、そのおかげで私たちは比較的安全に過ごすことができた。
虎洞寺邸にある天の地下本部には巨大なデータサーバーがあり、石与瀬各所の防犯カメラともリンクしていた。さらに、非合法にも必要に応じてドローンを飛ばし、私たちに近づく人間を監視する仕組みが整っていた。変装などはすぐに見破られ、データベースとAIの画像解析によって素性が瞬時に割れてしまう。その徹底ぶりには、驚かされると同時に深い安心感も感じていた。
戦いの場面では、私は決して相手を傷つけることはしなかった。私の目的は相手が蓄積している精霊子を強奪し、一時的に無力化させることにあり、それによって自分の器の容量を拡大することが唯一の目標だった。
だからこそ、降りかかる火の粉を払いのけることはあっても、命を奪うことは考えられなかった。その勇気も、決意も、私には持ち合わせていなかった。
しかし、任務に失敗した者たちの行く先にどんな処分が待っているのかは、私には全く想像がつかなかった。それが深淵の冷徹さそのものであり、その不安は私の心に深く根を張っていた。こうした現実を真凜にはどうしても伝えられなかった。彼女には、この無情な世界の一端を知ってほしくなかったし、知ったところでどうしようもないと感じていた。
この馬鹿らしい力が一刻も早く消え去ってしまえばいい。それが私の心の奥底からの切実な願いだった。
そのために、私がすべきことは黒鶴の力を駆使し、精霊子の器を完成に近づけることだった。そして、根源を再生し、解呪を成就させる。これだけが、力の束縛から解放されるための道だった。しかし、完成には一つの重要なピースが欠けている。「導き手」と呼ばれる存在が、まだ見つかっていなかった。
それでも、私は立ち止まるわけにはいかなかった。たとえどれだけ険しい道であっても、私には他に選択肢がないのだ。
◇ ◇
ある日、しとしとと降り続く雨の中、私たちは静かな道を歩いていた。傘の下、雨の音だけが静かに響く。濡れた舗道が淡い光を反射し、私たちの足音を優しく包み込んでいた。
私は足を止め、ふと視線を道端の紫陽花の花に向けた。花びらは淡い青と紫のグラデーションを描き、雨に濡れて一層鮮やかに輝いていた。その色合いの移ろいが、まるで雨の中でひとときの静かな美しさを作り出しているようで、私の心に深く染み入った。
私の指が花びらに触れると、その柔らかさとひんやりとした感触が、心をそっと和ませた。雨に濡れた花々が、私の心に潤いを与えてくれるようで、まるで小さな宝物を発見したかのような幸福感に包まれた。それは、長い間閉ざしていた感情の扉が、ほんの少しだけ開かれたような感覚だった。
しかし、私は驚きと戸惑いを覚えた。この心地よさは、本当に私が望んでいいものなのだろうか? 今ここで感じている幸福は、解呪と弟の奪還という目的のために生きる仮りそめの命に相応しいのだろうか。私はいつか消えていくしかないと理解しているのに、こんなにも心が温まっていいのだろうか。
茉凜が振り返り、花に触れる私の様子を見て静かに声をかけた。
「弓鶴くん、どうしたの?」
その声に気づくと、私の心は一瞬で冷たく閉ざされた。心の中で「こんなことを感じるべきじゃない」と自分に言い聞かせ、感情を再び押し殺そうとした。
「紫陽花の花、好きなの?」
茉凜の問いかけに驚き、私は慌てて手を引っ込めた。雨の雫が花びらからこぼれ落ち、その瞬間、恥ずかしさと共に、素の自分が見えてしまったことに、ほんの少しの照れくささを感じた。隠していた感情が無防備にさらけ出されたようで、心の奥深くでわずかに動揺していた。
その感情を隠すために、私は少し寂しげな口調で話し始めた。心の奥に秘めた感情を誤魔化すために、紫陽花の花言葉や花にまつわる話を茉凜に語り始めた。話すことで、自分を取り繕い、隠しきれない感情が表に出ることを防ごうとした。
すると、茉凜は明るい声で提案してきた。
「そうだ、弓鶴くん。次の休みにどこか行かない? 紫陽花がいっぱい咲いているところとか、どうかな?」
その言葉を聞いた瞬間、私は一瞬言葉を失った。心の奥底に封じ込めていた感情が、ざわめき始めたのがわかった。茉凜の言葉に心が揺れたのは否定できなかったが、それを認めるのが怖かった。彼女との距離を保ち続けることが、自分を守る唯一の手段だと信じていたから。
「俺は……別に行きたくもないが、真凜が行きたいというなら、かまわない」
その言葉には、茉凜と一緒に過ごす時間が増えることへの微かな期待感が含まれていた。しかし、その感情を意識しないように必死で努めようとしていた。
でも、茉凜はその裏に隠された私の本心を察していたに違いない。彼女は経験上から、私の反応を見抜く術を知っていて、どんなに冷静を装っても、私の感情はどこかで漏れてしまうのだった。
茉凜は、そのすべてを見逃さず、私を優しく見守っていると感じていた。彼女の無邪気な提案が、私の心にさらなる混乱をもたらすと同時に、温かさと共にどこか不安をも呼び起こしていた。茉凜と過ごす時間が私にとってどれほど大切で、同時にどれほど危険であるかを理解しつつも、その感情に正直になれない自分が、歯がゆくて仕方がなかった。
◇ ◇
日曜日の朝、藤堂さんが運転する車で、私たちは目的地に向かっていた。石寄瀬の街から四十キロほど離れた場所にある紫陽花畑で有名なお寺が、茉凜が事前にネットで調べて選んだ場所だった。
「さあ、行こう!」
車を降りた瞬間、茉凜は元気よく私の手を引っ張って駆け出した。その勢いに驚いて、私は一瞬固まってしまった。
「ちょ、ちょっ待ってよ!」
慌てて呼び止めたものの、私は自分が美鶴としての素の反応を出してしまったことに気づいて、内心で狼狽していた。もしかしたら、茉凜に何か勘付かれてしまうのではないかと、心配になった。
しかし、その心配は杞憂だったようで、茉凜は特に気にする様子もなく、ただ楽しそうに私の手を引いて歩き続けた。彼女の明るさに、私の不安は少しずつ和らいでいった。
参道を進むと、両側に紫陽花が咲き乱れ、視界にはまるで花の海が広がっていた。雨上がりの空気の中で、紫、青、赤と様々な色合いの花々が一層鮮やかに輝いていた。その色とりどりの花々が、心を穏やかにしてくれるようで、胸の奥に温かさが広がる感覚を覚えた。
参道をさらに進むと、紫陽花に囲まれた池が見えてきた。池には古びた橋が架かっており、橋を渡ると池の反対側に到達できるようになっている。木々の緑が水面に映り込み、まるで水彩画のような美しい風景が広がっていた。
私はその景色に心を奪われ、自然と深呼吸をした。紫陽花の香りがふわりと漂い、心が落ち着く。茉凜がそばにいることに気づき、その存在が私の心をさらに安らげていることを感じた。彼女の無邪気な笑顔と、自然の美しさが一緒になったこの瞬間が、私にとってどれほど大切なものなのか、少しずつ理解し始めていた。
「すごく綺麗だ」と私は心からの感想を漏らした。茉凜も同じように目を輝かせて、花々の間を歩いている。彼女の嬉しそうな顔を見ていると、私も自然と笑顔がこぼれる。こうして過ごす時間が、私にとってどれほど心地よいものであるかを、改めて実感していた。
「ね? 来てよかったでしょ?」
茉凜の無邪気で明るい表情が、私の心を和ませていた。その笑顔は、心の奥底にある深い罪悪感を少しだけ和らげてくれるように思えた。
やっぱり、彼女の笑顔を見るのは嬉しかった。どこか不安を抱えながらも、こうして一緒に過ごす時間が私にとってどれほど大切なものであるかを、しみじみと感じていた。
「あ、そうだ!」
茉凜が何かを思いついたようで、突然声を上げた。どうやら、記念写真を撮りたいらしい。彼女はスマホを取り出し、私をその場に強引に引き寄せた。私は少し抵抗したものの、彼女の勢いに押し切られて、渋々写真に収まることになった。
「おい、ちょっと待てっ!」
写真が撮られる瞬間、私は思わず目を閉じてしまった。スマホのシャッター音が響くと、茉凜は楽しそうに写真を見せてくれた。そこには、私が引きつった顔で写っており、それを見た彼女は心から楽しそうに笑った。
「ひ、酷いぞお前。こんなものすぐに消せ!」
私の顔は思わず赤くなり、声を上げてしまった。彼女の前では、いつもの冷静さがどこかへ消えてしまい、恥ずかしさと照れくささが一気に押し寄せてきた。
「いいじゃないの。この顔、最高だよ」
茉凜の言葉に、私はますます顔を赤らめた。彼女の無邪気な言葉に、どうしても自分の感情を抑えきれず、恥ずかしさに溺れていくのだった。
そんな風にして、私の心は溶けていったのかもしれない。彼女の存在が、少しずつ私の心の壁を崩し、深い部分に眠る感情を呼び起こしていくようだった。茉凜と過ごすこの瞬間が、私にとってかけがえのないものになっていたのだ。
※ 外郭組織『郭外』が依頼の橋渡し役をし、それに基づいて術者が派遣される仕組み。郭外は術者に協力する。そうした都合を利用して、虎洞寺氏は秘密裏に術者を把握するリストを作り上げていた。ただし、三家に関してはアンタッチャブルで、鳴海沢の接近を察知できなかった。
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