第二艦隊転進ス 進路目標ハ未来

損傷艦帰還

運の途切れ

「対艦ミサイル急速接近中！！！」

　レーダー員の絶叫が各艦に響き渡る

「弾着まで30秒」

「弾幕を張れ」

「ダメです、あまりにも数が多すぎます！」

　敵機からの空対艦ミサイルに加えて潜水艦からのミサイル

　イージス艦がいたって1隻では対処しきれない


　雪風戦闘艦橋


「対艦ミサイルの数は！」

「計48発！！！」

「弾幕をはり続けろ　1発でも多く落とせ！」

艦隊の外縁にいる雪風の上空を何発もミサイルが過ぎ去っていく
駆逐艦などの小型艦は狙っていない

狙っているのは確実に
大和旗艦一隻だ


そんなことを思った瞬間
低空で突っ込んできた一弾が見えた

大和戦闘艦橋

「対艦弾高速接近　8時方向より19発　2時方向より17発　来ます！」

「くっ…………」


高速で迫る誘導弾がグングン迫ってくる
CIWS、76㎜砲の弾幕でいくつかは落とせたが焼け石に水

「弾着…今っ！」


見張り員の絶叫と共に艦に振動が走る

「被害知らせっ」

その声すらも被弾の轟音でかき消される

被弾による揺れが止まり
各所から被害が知らされる

「旗甲板大破　火災発生中」

「4番副砲バーベットに被弾あり
　貫通し弾薬庫誘爆の恐れあったため注水完了しました」

「右舷前半部対空機銃群　全滅」

「左舷後部対空機銃群　半壊」

「2番カタパルト損傷　発艦不可」

「装甲区画は…装甲区画は無事か」

「はい　敵弾のほとんどが舷側装甲に命中しました
　貫通はないようです　外側はベコベコですが」

「そうか　他の艦は！」

「雪風…轟沈しました」

艦橋内のほぼ全員が絶句する

あの幸運艦で一緒にいれば生き残れるとも言われた雪風が沈んだだ
それだけで艦の士気が下がったのが目に見える

「…他は」

「被弾なし　葛城航空隊は空戦で4機撃墜　順次着艦を行っています」



2140時
大和では被弾により戦死した210名の水葬が行われた
※雪風は轟沈により239人全員が戦死
　艦体も即座に沈み遺体の回収もまとまった形の遺体がなく回収不可能

現在出せる最高速の21節を出しながら
次々と棺が水中に沈んでいく

「また、大事な部下たちを失ってしまった」

「やはり、戦艦は時代遅れということでしょうか」

「適材適所といったところか　海上戦の主役は航空機に移り
　この主砲の相手もほとんどが航空機　今回も沈没が間延びになったにすぎん」

「今夜は…流れ星ですか」

空にはいくつもの航跡を描く流れ星が光る

「こと座流星群か、　懐かしい　私も息子と見ていたよ」

「………」

「死んだのは今から20年前だとさ　親が子供より長生きしてるとはね
　空の欠片が欲しいっていって聞かないでね
　いつだったか、万華鏡を作ってやったら大喜びでな
　死ぬ時までずっと大事に持ってたんだとさ　ほら、ここにある」


伊藤長官の手には古くも、儚い万華鏡があった





キラキラと光るその流れ星を見ながらも艦ふねは進む

今なお生きているものたちを
内地に運び、その傷を癒すために