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みにみ

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沖縄突入作戦 略称 瑞月作戦

舞い散れ 

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「作戦が狂いますな」
有賀艦長がつぶやく


「あぁ…ロシアの戦闘機に自立戦闘無人機 新しい情報が多すぎる」
長官も頷く

「ロシアまで敵についたとなれば恐ろしいことになるぞ」

2022年のロシアによるウクライナ侵攻
制空権を奪われたウクライナは一瞬で壊滅かと思われたが
首都防衛戦で勝利し
欧米による武器供与で戦線を復活
今も続く侵攻の中
侵攻前の領土を回復し
一部の部隊は2014年に不法占拠されたクリミア半島の奪還戦にも動いている

そんな中ロシアが極東にも動く力が残っているのか…微妙なところだ


その時作戦室の厚い壁をこえて爆音が聞こえ
ほぼ同時に伝令が室内に入る

「申し上げます!駆逐艦朝霜被雷!敵潜です!」

「総員戦闘配置につけ 対潜戦闘 爆雷搭載零式水偵発艦しろ 急げ!」



艦内にスピーカーで次々と指示が出される

「対潜戦闘 艦内隔壁全て封鎖」

「敵艦はどこだ」

「艦隊西8キロ 深度90 おそらく晋級原潜」

「朝霜はどうなった」

モニターに艦尾をもぎ取られ、艦首を宙に突き上げて停止する朝霜が映し出される

「沈んでは…ないか」

「まやより入電!対潜弾発射!」

まやの前部VLSから07式SUMが発射され
敵潜の上空へ向かう

途中で前部に搭載された魚雷がパラシュートで降下する

着水と同時に魚雷が起動し
敵潜とおぼめし反応へ


ピィーン ピィーン

ソナーの探知音がなる装甲司令塔
魚雷の反応が 敵潜反応と衝突contact
反応が一度ぐしゃぐしゃになり
消えた


「敵潜撃沈!」

「よし 朝霜の救助にどの艦か迎え
 かがに収容してもらわないとな」

その時、対空レーダーに大編隊が映る

「本艦から2時方向敵機襲来!反応からして
 敵機種はH-6爆撃機7にJ–16戦闘機8 
 反応が薄いですがおそらくJ–20戦闘機4 JH–7戦爆6
 福岡沖で来襲したCJ–6練習機20機 J–6無人攻撃機20機
 合計、、、65機の大編隊です」

「65だと…?」

大戦期以来の大編隊による攻撃
いかに損害を少なく乗り切れるのか

「総員戦闘配置 対空戦闘!対空SAM発射用意!
 対空射撃員は戦闘配置につけ!」

「目標をH–6爆撃機6機に設定 26番セルから32番セルより発射
 方位325の高度8000 速度800の機体」

「ターゲット1からターゲット4が左旋回しながら高度下げます」

「ターゲットのデータ入力完了 発射」

「発射!」

艦橋右側甲板のVLSが開き
SM–2が6発発射される

「主砲射撃員主砲二七式対空弾装填」

主砲塔が旋回しながら仰角をとり
方位322で停止 各砲門は少しずつ仰角を変えている
対空弾幕をできるだけ大きく持つためだ


「SM–2、ターゲットと衝突contactまで残り5、4、3、2、1、0 弾着今」

第一艦橋の見張りが双眼鏡を覗くと
敵機のうち3機は胴に直撃し
空中で真っ二つに折れて落ちていく
2機はどちらかの主翼をもぎ取られ
バランスを崩して真っ逆さまだ
残り1機はかすり傷のようだ
撃墜はできていない


「艦橋見張りより伝達 撃墜5の効果なし1」

「了 主砲射撃 目標敵戦闘機編隊」

「主砲射程まで10秒」

「主砲、射撃準備よし てっ!」

爆音が響き
直径46㎝、重量1360㎏の砲弾が
宙に秒速780m、マッハ2.3で放たれる

「弾着まで、3、2、1、今」


マグネシウムや黄燐が空中に燃えながらばら撒かれて
敵機に衝突し
表面を溶解させて燃料タンクに火をつける


有人機隊は回避行動をとって命中弾がなかったが
無人のJ–6攻撃隊は半数近くを削り取った

「敵機8機撃墜確認!残機52機!」

「全砲門開け!対空戦闘 高角砲分隊撃ち方用意 って!」

ドン ドン ドン ドン

両舷4基(3番4番高角砲は超音速滑空弾により損傷し射撃不能)の高角砲が火を吹く

「冬月、涼月射撃開始」

2艦の長10センチ高角砲も火を吹き始める

しかし高速で突っ込んでくる敵機に命中弾はない

「面舵一杯っ!!!」

「敵爆撃機直上!!!」

大和が転舵し始めるのと敵機補足の確認とがほぼ同時だった

J–6無人機が太陽を背に突っ込んでくる
25ミリ機銃は照準が合わせられない

唯一CIWSだけが火を吹くが
あまりにも数が多すぎる
全機大和めがけて突っ込んでくる

「あっの無人機、特攻か!?」

5機ほど落としたがセイロン沖での二航戦の九九式艦爆を
思い出させるような滑らかな機動で突っ込んでくる

「総員、衝撃備えっ!」

「敵機、爆弾投下!」


キィィィィイイン


爆弾が風を切り裂く音が
鳴り響く



ドバッッシャァァン


左舷海上に爆弾は落下し、艦橋を軽く超えるような水柱を上げる

「次来るぞ!」

修正された機動で次の機体が爆弾を落とす


ゴォン………


艦に被弾した不快な衝撃が響く



ゴガッシャァン


艦首の方から爆炎が上がり
鉄片や木片が弾け飛ぶ

「艦首部被弾 兵員室損傷 錨鎖庫大破」

「応急要員急げ」

「敵機突っ込んできます!」

次弾は艦の中心を捉え
1番主砲塔天蓋に命中し






弾かれた

カァン

虚しく、270㎜VH鋼装甲に弾かれた爆弾は
右舷海中に落下し爆発した

「………………は?」

艦橋内の司令部全員が絶句した
天蓋上で起爆するなら理解できるが

弾いた……だと?

「マジかよ」

海自の乗艦士官も困惑である

「敵雷撃機7時方向より10機 1時方向より10機飛来!目標本艦!」

弾くのを見ていなかったレーダー員が叫び
それでようやく正気を取り戻す

「面舵!前方雷撃隊に艦首を向けよ 造船波で魚雷を受け流す!」

「しかし、それでは後方からの魚雷を喰らって航行不能になる可能性が」

「敵機との相対速度を遅らせて対空射撃時間を長く持つ!
 全責任は私が取る!面舵!」

航海長の指示で艦が旋回し

25㎜機銃と後部副砲がCJ–6練習機改造雷撃機に
砲門を向けて撃ちまくる




「敵じゃぁぁぁ」

機銃砲塔指揮官の指示に従い
反対のペアと息を合わせて回転ハンドルを回し
敵機に向ける


「今や!」


装填された25㎜弾が突っ込んでくる敵機に向けて
吸い込まれていく

25㎜機銃群には曳光弾の配合を多くした
弾倉が配られていた

雷撃慣れしていない中国パイロットに恐怖感を与えて
できる限り混乱させるためだ

思った通り、敵機は混乱して
射程外なのに魚雷を投下する機体もいた

だが、その混乱が予想外の方向へ向く


「敵機突っ込んで来るぞぉぉぉ」

魚雷を落とさない雷撃機が
艦尾機銃群へ向けて突っ込んできた

何らかの故障で魚雷を投下できずに
そのまま特攻しようというのか


「う、撃て!撃て!」

予想外の敵機の行動に焦って
機銃を撃つがなかなか当たらない

そしてグングン距離を縮めた敵機は
急に高度をあげて艦尾エレベーターに向けてダイブ


その機銃手が最後に見た光景は
迫り来る敵機のコクピットの中に見えた
恐怖で引き攣った中国人の若いパイロットの顔だった




「伝令!後部水上機エレベーターに敵機が突入
 機銃砲塔4基損傷 エレベーター付近で大火災!」


「消火だ!消火急げ!」

消火の指示を出し
外を見るとあんなにいた敵機がほぼ見当たらない

「その他の敵機は」

「周りの護衛艦艇がかなり落としてくれました
 一番落としたのは葛城の戦闘機隊ですが」

「そうか……各艦の損傷は」

「通信が入ったものを読み上げます
 朝霜被雷大破航行不能 自沈処分許可を求む
 葛城に至近弾2発 機関室異常音あり出しえる速力25ノット
 いなづま対艦ミサイル被弾 ヘリ格納庫損傷 消火済み
 大和、後部エレベーター炎上中、前部甲板被弾あり
 榛名に小型爆弾の直撃弾 戦闘航海異常なし 2番高角砲損傷」


「何とか、乗り切ったか」

「朝霜はいかがいたしましょう」

「内地には持って帰れんだろうな 悔しいが、自沈処分とする」

乗員を雪風へ、そこから大和へ移乗させ
冬月に撃沈処分させる


1本目の魚雷は儀式的に艦艇を通過させ
2本目を艦の煙突下部に命中させた

たちまちギリギリの浮力で浮いていた朝霜の艦体は
浮力を失い、海中へと沈んでいった
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