続・聖玉を継ぐ者

しろ卯

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 いずれ別つ運命だとは分かっていた。
 誰にも望まれていないとはいえ、一国の王子である身だ。
 何の後ろ盾も持たぬ、親さえいない平民の少女と、結ばれるはずがない。
 ただ言葉を交わすだけでも罪に問われかねない関係など、いつまでも続くはずがないと、理解していた。
 そのはずなのに――

「ゼノ」

 そう言って笑いかけてくれる彼女を失いたくなくて、私は彼女に何度も会いにいった。
 決して見つかってはならない、秘密の時間。

「私の聖石を持っていれば、ゼノは死ねないでしょう?」

 生きる意味を失っていた私に、彼女はそう言って、自らの聖石を差し出した。
 人間は皆、聖石を胸に宿して生まれてくる。聖石は人間に、石能と呼ばれる魔法を与えた。
 聖石は力の源であり、魂の欠片。傷付けば主も損なわれ、砕かれれば主はその命を終える。
 かつては忠誠の印に差し出し、または愛の誓いに交わしたと伝えられるが、今はもう、そんな習慣は存在しない。
 けれど、彼女は私に自らの魂の欠片を差し出した。私の命を守るために。
 私もまた、彼女に聖石を差し出した。古の婚礼を真似るように、幼い私たちは互いの聖石を交わしあったのだ。
 それなのに――

 終わりは突然だった。

「どうか、生きていてくれ」

 血の海に沈む彼女に、私は縋るように懇願した。
 後ろ髪を引かれる思いでその場を去り、幻想の中で彼女を想い続けた。二度と会えないだろうという現実に蓋をして――。

 けれど彼女は、再び私の前に現れた。
 それは奇跡と呼ぶに相応しい出来事だろう。
 通常ならば命を保つことのできぬほどの傷を負いながら、彼女は自身の能力を用い、柘榴の木に体を宿して命を長らえたのだ。

「ゼノ、行ってくるね」
「ああ、気を付けて」

 目の前で笑う、愛しい人。
 二度と手放してなるものかと、私は笑顔の裏で決意の炎を燃やした。
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