白蛇の花嫁

しろ卯

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1巻

1-2

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 笑顔で振り返った女中の顔が、睡蓮を目に映した途端、驚愕きょうがくと恐怖に染め変えられた。

「どうしたの? 兄上様は?」

 重ねて問う睡蓮に、女中は答えない。睡蓮をおびえた目で凝視したまま、後退あとずさる。
 今までに向けられたことのない眼差し。睡蓮はどう対応すればいいのか、分からなかった。
 躊躇ためらっている間に、女中は奥へ去る。代わって奥から、複数の女中を連れた、お万の方が現れた。

「睡蓮。このような時に、どこへ行って」

 昨日の夕刻から、誰にも告げずに姿を消していたのだ。心配させてしまったのだと申し訳なさを覚え、睡蓮は頭を下げた。お万の方の声が不自然に途切れたことには、気付かずに。

「勝手にいなくなり、申し訳ありませんでした。兄上様の御容態はいかがですか?」

 顔を上げた睡蓮は、小首をかしげる。
 お万の方が顔面蒼白そうはくとなって後退り、離れていく。その顔は、恐怖にゆがんでいた。

「母上様?」
「ひいっ!」

 睡蓮が声をかけながら一歩近づくと、お万の方は腰を抜かし、その場に座り込む。

「大丈夫ですか? 母上様」
「寄るな! 化け物!」

 助け起こそうと差し出した睡蓮の手を、お万の方は悲鳴と共に叩き払った。見開いた目で睡蓮を凝視し、おぼれるありのように手足を動かして、距離を取ろうともがく。
 いったい何が起きているのか。睡蓮は状況が呑み込めない。
 万両殿の混沌こんとんは、秀兼が寝ている、奥の間にも生じていた。

「駄目です、兄上様。まだじっとしていてください」

 菊香の高い声が響く。続いて、腕にすがる菊香をるようにして、秀兼が奥から出てきた。
 まだ顔色は悪い。それでも自分の足で立ち、歩いている。

「兄上様、御無事で」

 秀兼の姿を映した睡蓮の双眸そうぼうが、歓喜の涙を溢れさせ、頬を濡らす。

「睡蓮」

 喜ぶ睡蓮とは反対に、秀兼は顔をくしゃりと歪めた。睡蓮に向けて手を伸ばし、ゆっくりと近付いてくる。

「駄目です、兄上様! あれは姉上様ではありません! 近付けば、食べられてしまいます!」

 睡蓮を見て固まっていた菊香が、慌てた様子で叫び、兄の腕を引く。

「菊香? 何を言っているの?」
「来ないで!」

 困惑する睡蓮が一歩前に出ると、菊香は悲鳴を上げた。

「落ち着きなさい、菊香」
「だって兄上様、あの目を見て! 姉上様ではないわ! その者はきっと、姉上様に化けた写童うつしわらべに違いないわ!」

 写童は人に化け、油断させたところで人を喰らうと伝わるあやかしだ。
 いったいなぜ、そんなばかげたことを言い出したのか。そんなふうに疑問を抱いたのは、睡蓮だけだった。
 菊香の叫びを皮切りにして、周囲から注がれる目に、殺意が混じり出す。

「返しなさい! 私の娘を!」

 お万の方が投げた扇子せんすが、睡蓮の頬に当たる。痛いと思うよりも、驚きと混乱が、彼女を襲った。

「母上様?」

 愕然がくぜんとして、母を見つめてしまう。
 女中たちが、お万の方たちをまもるように、立ちふさがる。抜き放たれた懐刀ふところがたなは、睡蓮に向けられていた。
 もしも睡蓮が妙な動きをすれば、彼女たちはお万の方たちを護るため、睡蓮に斬りかかってくるだろう。

「私は睡蓮です。加々巳秀正と、お万の方の娘です」

 睡蓮は必死に訴える。けれど女たちは、彼女の言葉に耳を貸そうともしない。
 刃を向けられた恐ろしさよりも、信じてもらえない悲しみが、睡蓮の心を切り裂いていく。
 そんな中、秀兼が鋭く一声を発した。

「控えよ!」

 秀兼は周囲の視線を無視して、睡蓮のもとに向かう。

「駄目です、兄上様!」
「近付いてはなりません、秀兼!」

 菊香とお万の方が叫ぶけれど、秀兼の足は止まらない。怒りに満ちた顔で、床を打つように踏み進む。

「兄上様?」

 秀兼の吊り上がった目を見て、睡蓮は、彼もまた、自分を妖だと思っていると感じた。実の兄に斬られるのかと、絶望が襲う。

「兄上様、私は」
「すまない」

 妖ではないのだと、訴えかけた睡蓮を、秀兼は強く抱きしめる。
 きたげられた厚い胸板や、太く硬い腕から伝わってくる、優しいぬくもり。そして、血と汗の匂い。
 兄の存在を五感で感じて、睡蓮は落ち着きを取り戻した。そっと体を離し、顔を上げる。
 秀兼は口を一文字に引き結んでいた。目は赤く染まり、涙が浮かんでいる。
 彼の黒い瞳に映る睡蓮の瞳は、赤く染まっていた。
 自分の目の色が変わっていることに気付いた睡蓮は、ひゅっと息を呑む。呆然とする彼女に、秀兼が告げる。

「朝方、夢にはくが出てきて、告げたのだ。私の傷をいやしてやると。その代わり、睡蓮を嫁に寄越せと」
「白蛇様が」

 やはり夢ではなかったのだ。白蛇が睡蓮の祈りに応え、願いを叶えてくれたのだ。
 そう理解して、強張こわばっていた睡蓮の表情が緩んでいく。
 一方、秀兼は傷付いたように、顔をゆがませた。

「私はすぐに断れなかった。生きたいと願い、迷ってしまった。逡巡しゅんじゅんしている間に、白蛇は消えた。すまない、睡蓮」

 絞り出すように口から押し出された、謝罪の言葉。
 秀兼の気持ちをった睡蓮は、震える兄の背を抱きしめ返す。

「それでいいのです、兄上様。私が願ったのですから。兄上様を、お助けくださいと」

 睡蓮を抱きしめる秀兼の腕の力が、強くなった。
 兄妹はしばらく抱きしめ合い、互いの存在を確かめ合う。
 命の危機に瀕していた兄は、生きている。白蛇に所望された妹は、まだ兄のそばにいた。
 そのことを充分に実感すると、睡蓮は秀兼の胸を押して、体を離す。そして彼の目を、真っ直ぐに見上げた。

「兄上様。御無事のお帰り、心よりお喜び申し上げます」

 昨日、戦から帰ってきた秀兼に、伝えられなかった言葉。
 涙を浮かべて微笑ほほえむ睡蓮を、秀兼は、今にも泣き出しそうな顔で見つめた。


   ※


 睡蓮は、座敷牢に入れられた。
 あやかしが成り代わっているのであれば、いずれ加々巳家にわざわいをもたらすだろう。城に仕える者たちを、食ってしまうかもしれない。
 そんな恐れから。
 座敷と頭に付くからといって、厚遇されているわけではない。さらしの土間の牢や、じめじめと暗い地下牢に比べれば、ましといった造りだ。
 天井近くに設けられた、灯り取りの窓からは、冷たい風が吹き込む。
 外は吹雪ふぶいていた。風をさえぎるためのすだれも、暖を取るための火鉢も、ここにはない。
 睡蓮は凍える手足をさすり、寒さに耐える。

「憎め」
「怨め」

 座敷牢に入れられてからというもの、日が暮れるたびに、声が聞こえた。目を向けると、隅に落ちた影が、ざわざわとうごめく。
 あやかしみついているのか。それとも、彼女の心が創り出した幻覚か。
 頭を振った睡蓮は、浮かんできた考えを振り払う。

「憎しみも恨みも抱かない。私は、清らかでありたいから」

 胸元に引き寄せた手に、自分の肌やきぬとは違う感触が伝う。
 着の身着のまま、座敷牢へ放り込まれた。大切にしていたまりも、彼女の手元にはない。それでも一つだけ、持ち込めた物がある。
 ふところから取り出したのは、守り袋。封を開けると、一寸ほどの木の葉が出てきた。
 つややかな深緑色。椿つばきの葉に似ているが、葉脈はささのように平行に並ぶ。金川の地では、見かけない植物だ。
 幼いころに出会った男が残していった実から、睡蓮が育てた。
 紫色をした、銀杏ぎんなんに似た実。寝坊助な種は、夏を目前にして、ようやく芽吹く。
 大切に育てていたのに、秋の終わりごろに黄葉したかと思えば、春を待たずに枯れてしまった。
 残されたのは、珍しさにかれて一枚だけ摘み取っていた、深緑の葉。
 枯れることを忘れてしまった小さな葉を、睡蓮はもう一度あの人に会いたくて、今も大切に持ち歩いている。
 それをまぶしげに目を細めながら指でなぞった睡蓮は、守り袋にしまう。

「逃がしてやろうか?」

 聞こえてきたのは、いつもよりも明瞭めいりょうな声。どこかで聞いた声に似ている気がするが、思い出せなかった。
 これもきっと、弱い心が生み出したまぼろしだろう。そう考えた睡蓮は、首を横に振る。

「いいえ。必要ありません」
「お前の兄がねばっているが、このままでは始末されるぞ?」

 睡蓮の処分を決めるのは、彼女の父だ。座敷牢に閉じ込められても、命まで取られることはないと、どこかで信じていた。
 心の臓を鷲掴わしづかみにされたような、鈍い痛み。嘘だと否定したくても、外の出来事は、睡蓮の耳まで届かない。

「今なら間に合う。はくのもとまで送り届けよう」

 嗚呼ああ、これは幻聴ではなく、あやかしか――
 気付いた途端、睡蓮の口端が、ふっとかすかに上がる。
 弱った己の心がつぶやく、みにくい感情ではない。そのことが、嬉しかった。

「いいえ。ここにおります」
「なぜだ?」
「私が逃げれば、兄が疑われるでしょう」

 秀兼が助命を懇願しているというのが事実であれば、彼が逃がしたと思われかねない。
 加々巳家の長男である秀兼だが、側室の子。嫡男は、昨年、御正室お梅の方から生まれた、松千代まつちよと決まっている。
 お梅の方が懐妊するまで嫡男と見なされていたこと、年齢のことなどから、世継ぎ争いを危惧した者たちが、秀兼を危険視していた。
 ここで睡蓮がいなくなれば、ここぞとばかりに、秀兼は攻撃されるだろう。

「逃げません」

 はっきりと口にすると、壁の外で溜め息が零れる。

「お前に死なれては困る。いざとなったら、無理やりにでもっていくからな」

 それ以上、声は返ってこなかった。
 窓から迷い込んだ雪が、ひらひらと舞い落ちる。手を差し出して受けると、すぐに消えた。

「まるで、まぼろしの桜を見ているよう」

 もう一度、目にすることができるだろうか。
 小さな格子窓を見上げれば、暗い空。白く輝く雪さえも、漆黒しっこくに呑まれていく。
 睡蓮は横たわった。硬い床板が、何も持たない彼女から、体の熱まで奪う。行儀悪いと分かっていても耐え切れず、手足を縮めた。


 夢の中で、睡蓮は七歳に戻っていた。
 城山のふもとに広がる雑木林ぞうきばやし。山桜が花弁を散らす中、彼女は青い小袖を着て、供も付けずに一人さ迷い歩く。
 先日、みやこに出かけていた秀正が、土産みやげまりをくれた。
 睡蓮には青地に白のまり。妹の菊香には、赤地に黄の鞠。それぞれ睡蓮の花と、菊の花を連想できる模様だ。そして兄の秀兼には、皮でできた蹴鞠けまり用の鞠を。
 娘二人は、美しい鞠を大切に扱った。けれど秀兼は、鞠を持って外に出かけ、くしてしまう。
 蹴鞠の面白さに目覚めつつあった秀兼は、妹二人に、鞠を貸してほしいと頼む。
 綺麗な鞠を蹴られたら、汚れたり、糸が切れたりするかもしれない。菊香は泣いて嫌がった。
 菊香を見て、彼女の鞠をまもってあげなければとでも、思ったのか。それとも必死に頼む秀兼を助けたかったのか。
 睡蓮は自分の鞠を差し出す。

「兄上様、私の鞠をお使いください」
「必ず返すから」

 約束をして、秀兼は出かけていく。だけど帰ってきた彼の手に、睡蓮の鞠はなかった。

「すまない、睡蓮。失くしてしまった」
「気にしないでください」

 睡蓮は微笑ほほえんで許す。でも本当は、悲しくて泣きそうだった。
 秀正が睡蓮を気に掛けてくれるなんて、滅多にないこと。土産みやげをくれた思い出なんて、片手の指より少ない。だから余計に、大切にしていた。
 失くしたなんて知られたら、もう興味を持ってもらえないのではないか。
 そんなおびえに突き動かされ、睡蓮は翌朝、屋敷を抜け出す。しかし鞠が見つからないまま、彼女まで迷子になった。
 濡れた目をぬぐおうと、両手でこする。だけど、次から次へと零れる涙は、小さな手ではすくい切れない。

「何を泣いている?」

 声に驚いて立ち止まった睡蓮の前に、いつの間にか男が立っていた。顔はかすみが掛かっていて見えない。
 真っ白な狩衣かりぎぬ狩袴かりばかまみやこから離れた金川では滅多に見かけない、公家くげよそおいだ。

「鞠を探しています」
「どんな鞠だ?」
「青に白で、睡蓮の模様になっています」
「一緒に探してやろう。すぐに見つかる。だから泣くな」

 男が睡蓮を抱き上げた。
 彼の顔は目の前にあるのに、やっぱりもやで隠れている。それでも睡蓮は、真っ白な髪と、赤い瞳が、綺麗だと思った。
 幼い睡蓮を抱えた男は、雑木林ぞうきばやしを進む。その足取りには、迷いがない。しばらく進むと、睡蓮を地面に下ろした。
 しげみにしゃがみ込んだ彼が振り返る。差し出された手には、青と白の糸を巻いた、花柄のまりがあった。

「ほら、これだろう?」
「ありがとうございます」

 受け取った睡蓮は、とても大切なのだと、全身で表すように抱きしめる。満面の笑みを浮かべた彼女を見て、男も微笑ほほえんだ。

「大切な物なら、もうくすなよ?」
「はい」
「じゃあな」
「もう行ってしまうのですか?」

 睡蓮は慌てて顔を上げる。
 まだ何もお礼をしていないのに、行ってしまうのか。そんな気持ちが、顔に出ていたのだろう。男は申し訳なさそうに、眉を下げた。

あるじがお待ちだからな」

 主君の命令は絶対だ。無理に引き留めれば、彼がおしかりを受けてしまう。助けてもらったのに、これ以上の迷惑を掛けるわけにはいかない。
 睡蓮は、引き留めたい気持ちを呑み込む。

「また会えますか?」
「会う必要などないだろう?」

 素っ気ない男の答えを聞いて、睡蓮の表情が沈んでいく。止まっていた涙が、再び目蓋まぶたに溜まり始めた。
 動揺した男が、何やら言い訳めいた言葉を繰り返す。それから困ったように頬をき、ひざかがめて、睡蓮と目線を合わせた。

「それほど俺に会いたければ、いい女になれ」
「いい女、ですか?」
「そうだ。神に仕えるのに相応ふさわしい、清らかで美しい女だ」
「神様に?」
「ああ。そうしたら、迎えに来てやってもいい」

 幼い睡蓮は、疑問に思うこともなく、すんなりと受け入れる。はずむ笑顔で男を見上げ、小指を差し出した。

「約束です」

 男は戸惑いながら、細く小さな小指に、太く武骨な小指を絡める。

「申し遅れました。私は」

 名乗ろうとした睡蓮の口元に、男の人差し指が添えられた。長くとがった爪が、視界に入る。

「女がそう簡単に、名を教えるものではない」
「では、あなた様のお名前をうかがうのも、いけませんか?」

 睡蓮がじっと男の目を見つめると、彼は眉間みけんにしわを寄せて、悩む素振りをした。

「誰にも言うなよ? 我があるじからたまわった、大切な名だからな。……気に入ってはおらぬが」
「約束いたします。誰にも申しません」

 男は苦笑を零し、唇を動かす。

「俺の名は――」

 立ち上がって去っていく男の背が、桜吹雪の中に消えていく。男が去った後には、小さな木の実が落ちていた。


 目を覚ました睡蓮は、不思議と寒さを覚えなかった。それどころか、胸元からぬくもりが込み上げてくる。

「あの後、家中の者たちに見つけられて、父上様と母上様にしかられたのよね」

 屋敷に帰ると、顔を青くした秀兼が待っていた。そして父母に叱られる睡蓮を、必死になってかばってくれたのだ。

「今と同じね」

 思わず、くすりと笑ってしまう。

「清らかで美しい女。私はあの方の望むような女性に、なれているのかしら?」

 無意識に、手がふところの守り袋を求める。

はく様も、白い髪に、赤い瞳だった」

 男の顔は、憶えていない。
 白蛇の顔も、夢現ゆめうつつだったため、はっきりしない。
 しかし年の頃は、どちらも今の秀兼と、同じくらいだろうと思われた。もしも白蛇が彼ならば、年を重ねていないことになる。

「でも、あやかしならば――」

 人とは違い、長い歳月を生きる異形。人のように年を取ることはないだろう。

「迎えに来てくださったのかしら?」

 けれど、白蛇は睡蓮を残して去った。迎えに来ると、約束を残して。

「私は、待つばかりね」

 零れたのは、自嘲じちょうの笑み。

「また会える日を、楽しみにしていたのです」

 未だ、男と再会した記憶はない。
 彼がわらべ戯言たわごとと、忘れてしまったのならばいい。
 けれど、戦乱の世だ。人の命は容易たやすく失われてしまう。約束を守れない状況になっている可能性だって、考えられた。
 ちりりと焼けるような、胸の痛み。
 睡蓮は、自然と窓に目を向けた。

「どうかあの御方が、ご無事でありますように」

 まるで散りゆく桜のように、外はまだ吹雪ふぶく。


   ※


 睡蓮がはくの嫁に選ばれてから、二年の歳月が経った。寒い冬を超えた山裾やますそに、緑が芽吹いていく。
 彼女は今、白蛇と出会ったほこらの脇に建てられた、小さな離れ家で暮らしている。
 猫のひたいほどの狭い土間と、囲炉裏いろりを切った三畳足らずの板の間。土間には水を溜めておく瓶と、食器などを並べた棚。居室となる板の間には、衣類などを入れた葛籠つづらが一つ。それに、色褪いろあせた古いまり
 これを見て当主の娘が暮らしているなどと、誰が思うだろうか。
 日に日に夜明けの時間が早くなる。けれど、まだ薄暗い時間。目覚めた睡蓮は、身なりを整え始めた。
 下女の一人も付けられていない有り様では、ったよそおいはできない。小袖をまとった上から、ふくらはぎまである湯巻ゆまきを巻く。


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