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戦い方7
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紅雷はベッドの淵に腰掛け、タバコを吸っていた。
「優しくして欲しい」と言う雪音の要望を叶えたところ、前戯で気絶させてしまい噛むことも強引に起こすこともできず、行為は終わってしまった。紅雷としてはまだ満足いかないので雪音が起きるを待っている。
ふと、雪音の右手小指の付け根がわずかに切れていることに気づいた。
そう言えば、今日は派手に肉弾戦を繰り広げていたはずだ。雪音の身体にかかっている毛布を剥ぎ取り身体中を観察した。傷は指の付け根の切り傷だけのようだ。例えハッカーとして頭脳を武器に戦うようになっても、かつて自分が教え込んだ体術は忘れていないようだ。…確かに抱き心地も戦い方を変える前後で変わっていない。筋肉量も体脂肪率も変わっていないと言うことか、と紅雷は納得する。筋肉が落ちれば多少は柔らかくなるはずだ。
「…寒い。」
雪音が呟いた。身を起こし、紅雷の方を見る。紅雷はその視線が毛布を寄越せと訴えているわけではないと悟り、ベッドに登ると雪音を抱きしめた。
「あなたも身体冷えてる。早く寝よう。」
「…わかった。」
念願の雪音のお目覚めだが、無理やり抱く気も起きず、雪音と布団に潜り込んだ。
「成長したね。」
紅雷は雪音を後ろから抱きしめ、雪音の首元に顔を埋めながらそういった。
「何が?」
「怪我が減ったから。」
自傷も含め、生傷の絶えない時期からの成長は凄まじい。二つの任務、それも昔とはレベルが桁違いのもので小さな切り傷一つで済むなんて、かつてなら想像できなかった。
「あー、どうしても小指のとこは切れちゃう。」
雪音は右手を布団から取り出し、傷を見つめる。雪音の右手小指はほとんど動かない。
「逆手でナイフ握る時に刃が当たるんだろうね。握れないからナイフがずれるとすぐ切れるでしょ。」
「刃の向き変えればいいかな。」
雪音は紅雷に振り向く。
「それが一番だけど、慣れるまで大変だよ。」
「そっか。」
「前ほど深くないし、予めテープでも巻いておけば防げるかも。」
うーん、と唸る雪音の頭を紅雷はそっと撫でた。
どんな戦い方であれ自分の戦い方を振り返り、考察し、次に活かしていく能力こそ、雪音が組織のなかを一気に出世できた大きな理由だろう。
「優しくして欲しい」と言う雪音の要望を叶えたところ、前戯で気絶させてしまい噛むことも強引に起こすこともできず、行為は終わってしまった。紅雷としてはまだ満足いかないので雪音が起きるを待っている。
ふと、雪音の右手小指の付け根がわずかに切れていることに気づいた。
そう言えば、今日は派手に肉弾戦を繰り広げていたはずだ。雪音の身体にかかっている毛布を剥ぎ取り身体中を観察した。傷は指の付け根の切り傷だけのようだ。例えハッカーとして頭脳を武器に戦うようになっても、かつて自分が教え込んだ体術は忘れていないようだ。…確かに抱き心地も戦い方を変える前後で変わっていない。筋肉量も体脂肪率も変わっていないと言うことか、と紅雷は納得する。筋肉が落ちれば多少は柔らかくなるはずだ。
「…寒い。」
雪音が呟いた。身を起こし、紅雷の方を見る。紅雷はその視線が毛布を寄越せと訴えているわけではないと悟り、ベッドに登ると雪音を抱きしめた。
「あなたも身体冷えてる。早く寝よう。」
「…わかった。」
念願の雪音のお目覚めだが、無理やり抱く気も起きず、雪音と布団に潜り込んだ。
「成長したね。」
紅雷は雪音を後ろから抱きしめ、雪音の首元に顔を埋めながらそういった。
「何が?」
「怪我が減ったから。」
自傷も含め、生傷の絶えない時期からの成長は凄まじい。二つの任務、それも昔とはレベルが桁違いのもので小さな切り傷一つで済むなんて、かつてなら想像できなかった。
「あー、どうしても小指のとこは切れちゃう。」
雪音は右手を布団から取り出し、傷を見つめる。雪音の右手小指はほとんど動かない。
「逆手でナイフ握る時に刃が当たるんだろうね。握れないからナイフがずれるとすぐ切れるでしょ。」
「刃の向き変えればいいかな。」
雪音は紅雷に振り向く。
「それが一番だけど、慣れるまで大変だよ。」
「そっか。」
「前ほど深くないし、予めテープでも巻いておけば防げるかも。」
うーん、と唸る雪音の頭を紅雷はそっと撫でた。
どんな戦い方であれ自分の戦い方を振り返り、考察し、次に活かしていく能力こそ、雪音が組織のなかを一気に出世できた大きな理由だろう。
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