歩夢さん

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男と女

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男女が二人、深夜の喫茶店で向かい合って座っている。
 男は黒いパンツに白いワイシャツ、この時期によく見かけるサラリーマンの姿だが、長い前髪の隙間から覗く眼はやけに鋭く、鼻筋の通ったやけに整った顔に冷たさをもたらしている。
 一方女の方は、金髪混じりのこげ茶色の髪を右耳の下で軽くまとめて右肩に流している。黒いブラウスにグレーのパンツスーツで、長身でスレンダーな体型が映えている。

 男がタバコをくわえて火をつけた。女はそれを黙って見つめる。それに気づいた男は新しいタバコを女に差し出すが、女はそれを断った。

「今日、なんでついてきたの。」

女は若干の怒りをにじませた声で男に尋ねた。男は煙を吐き出して答える。

「俺のがキャンセルになった。」

「新規でしょ?まずくない?」

眉をひそめ、女は尋ねる。

「・・・ボスの指示。そのうち鎮圧の指示が出ると思う。」

「グレーが黒に変わったってこと?だとしたら私のスケジュール変わるのか。」

「どうだろ。規模的に小さいし、下っ端に回るんじゃない?」

「私も十分下っ端だけど。」

「幹部に名前覚えられててよくそんなこと言うね。」

「売り込んだのはあなたでしょ。」

やっぱタバコ吸う、と言って男から新しいタバコと火をもらう。男は女のタバコに火をつけながら言う。

「身体に悪いから、今日はこれだけね。」

「はいはい。」

女はめんどくさそうに返事をした。テーブルの上で一瞬震えたスマホを手に取り、通知を確認する。

「あ、明後日の仕事、後半に振替で明後日例の鎮圧になったって。」

「・・・いくら?」

「100万。」

「振替になったやつはいくら?」

「それも100。」

「振替のやつ俺に回して。」

「ボスに言って。」

男はだるそうに吸っていたタバコを灰皿に押し付けて店から出た。店の外で”ボス”に電話をかけているのを、女は窓から眺めていた。
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